転職時の保険証切り替え方法と、切り替え前後の使い方
転職することが決まったら、さまざまな手続き業務が増えます。その中でも「健康保険証」の切り替えについて詳しく知りたいという方は多いでしょう。今現在、定期的に病院に通院している持病のある方や、扶養家族をお持ちの方は、特にどうしたらいいか不安になるかもしれません。
でも安心してください。これを読めば、転職時の保険証の扱いに戸惑うことなく切り替え手続きを行うことができます。すでに転職先が決まっている方だけでなく、次の職場が決まるまでブランクが空きそうな方の対処方法までわかります。
また、保険証切り替えのタイミングで保険証を使う場合の一番迷いやすい2つのケースの対処方法もご紹介しますので、もしかしたら切り替えのタイミングで病院に行くかもしれないと予想される方は、ぜひお読みください。身分証明書としても使用可能な健康保険証ですから、切り替え手続きはしっかり行いましょう。
監修
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
岡 佳伸氏
アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。
1.転職時の保険証切り替え手続き方法
転職時の標準的な保険証の切り替え手続きの方法をご紹介します。もし、今の会社を退職した後は少し休養期間を取ろうと思っているなど、ブランクが空きそうなことがわかっている場合には、2章も合わせてお読みください。
1-1.保険証は退職する会社に必ず返却する
今現在使っている保険証は退職した次の日から使えなくなります。必ず退職日までに会社に返却しましょう。もし退職後に返し忘れに気づいたら、郵便や宅配便を利用してすみやかに返却することが大切です。(退職時に紛失していたことがわかったら会社に相談しましょう。再発行の手続きを取らなくても会社は退職手続きを進めることができます)
万が一、退職後に前の会社の保険証を使って病院にかかってしまうと、非常に厄介な手続きをすることになりますので、退職後に返し忘れた保険証を使ってしまうことがないよう十分に注意しましょう。
◉誤って失効した保険証を使ってしまった場合の対処方法
万一、失効した保険証を使用してしまった場合は、後日、失効した健康保険の保険者(協会けんぽ又は健康保険組合等)から返還請求を受けることになります。
返還請求を受けたら、一時的に健康保険の負担分を立て替えて支払い、新しく加入した健康保険の保険者(協会けんぽ又は健康保険組合等)へ改めて療養費の申請を行います。
新旧どちらの保険者(協会けんぽ又は健康保険組合等)にも負担をかけることになりますし大変手間がかかりますので、くれぐれも失効した保険証を使うことがないように気をつけましょう。
(繰り返し失効した保険証を使用すると、詐欺罪等で処罰されることがあります)
上記以外にも保険証の返却手続きに戸惑うケースがあると思いますので、その対処方法をご紹介します。
(1)保険証を紛失していた場合
普段あまり病院に行かないタイプの方は、いざ保険証を返却するときになって紛失していることに気づくこともあります。まずは、徹底的に探してみてどうしても見つからなかった場合には、早急に会社に連絡をして指示を仰ぎましょう。健康保険証は身分証明書としても使用可能な場合がありますので、心当たりの場所を探してみても見つからなかった場合、特に家の外で失くした可能性が高い場合には警察に届けることも必要になってきます。
紛失に気づいてから退職する日までかなり日数がある場合は、再発行してもらうほうがいいかもしれません。退職日までに全く病気やケガをしないとは言い切れないからです。それ以外のケースでは、会社の判断に従いましょう。再発行した保険証を返すことも忘れないでください。
(2)被扶養者がいる場合
被扶養者である配偶者や子どもの保険証も、扶養者であるあなたが退職した次の日から使えなくなります。ご家族全員の保険証は、あなたの保険証と合わせて退職日までに返却をするようにしましょう。
一緒に住んでいないが扶養している家族がいる場合などは、返却までに時間がかかってしまうことも考えられますので早めに連絡してスムーズに返却ができるようにしましょう。
また、子どもが保険証を失くしてしまっていた、といったことが発覚した場合には、(1)同様、早急に会社に連絡して対応するようにしてください。
1-2.転職先の会社から新しい保険証を取得する
転職先の会社で新しい保険証を交付してもらうための手続きを取ります。扶養家族がいる方は被扶養者の分も同時に申請を行うことを忘れないようにしてください。
転職先の会社で健康保険の資格取得手続きを行うときには、原則、マイナンバー(個人番号)を届け出する必要があります。扶養家族がいる方はご家族全員のマイナンバー(個人番号)が必要になるとともに、扶養家族との関係をしめす、世帯の住民票や収入証明(非課税証明書等)を提出する必要があります。会社の担当者の指示に従って入社前に必要な資料や情報を揃えるようにしましょう。
会社の担当者が手続きを行った後に、だいたい1週間から3週間前後で、会社宛てに健康保険証が届くのが普通です。新卒が入ってくる春など保険証発行の件数が増加する季節には、届くまで時間がかかることがあるので注意しましょう。直ぐに医師の受診を受ける予定がある場合は、後述する健康保険資格証明書の発行を受けることができるときもあるので、会社に相談しましょう。
2.ブランク期間ができる場合の3つのパターン
前の会社を退社してすぐに新しい会社で働くのであれば1章の手順で問題ありませんが、もし新しい会社に就職するまでに少し間があくという場合には3つの選択肢があります。個人個人の事情によっては選択肢が限られますので、よく考えてから選び手続きをするようにしましょう。
2-1.国民健康保険に加入する
国民健康保険への加入手続きは退職日の翌日から14日以内に行います。このときに、前職の会社を退職した事実がわかるものが必要になります。前職の会社から健康保険の資格喪失連絡票等の発行を受け提出するのが原則ですが、雇用保険の離職票の写しや後述する健康保険資格喪失証明書の発行を年金事務所で受けて提出することもできます。国民健康保険には扶養の概念がありませんので、加入者分(例:今まで扶養家族3人なら自分と合わせて4人分)を支払うことになります。
2-2.任意継続を選択する
任意継続とは、以前働いていた会社で加入していた保険を最長2年間継続できる制度です。
加入には条件があり、①退職日以前に継続して2カ月以上の被保険者期間があること ②退職日の翌日から20日以内に手続きが必要 この2つをクリアする必要があります。また、最長で2年間しか継続ができませんし、一度任意継続を始めたら原則、2年間の間に国民健康保険に切り替えたり、家族の扶養に入ったりすることもできません。(ただし、負担する保険料の支払いをしないことで任意継続の資格を喪失することもできます)
保険料もこれまでは会社が負担してくれていた分がなくなるので、退職時の約2倍程度になります。扶養者が多い場合は国民健康保険に加入するよりも割安となる可能性があるので、よく検討してから決めましょう。
2-3.家族の扶養に入る
稀なケースになると思いますが、今まで扶養者だった人が仕事を休養し、その代わりに被扶養者だった配偶者や成人した子どもが働いて保険証を持つことになり、立場が逆転するといった場合です。そのときには、国民健康保険への切り替えと同じく前職の会社を退職した事実がわかるものが必要になります。(資格喪失連絡票等)
今までにも被扶養者となる条件は決められていましたが、2018年10月より被扶養者の条件が厳しくなりました。収入等を証明できる公的な書類を提出して申請し、審査に通らなければ家族の扶養に入ることはできません。
退職後に家族の扶養に入りたいと考えている場合には、条件をよく確認することが必要です。詳細な条件については日本年金機構のホームページでご確認ください。ご家族の会社の担当者に事前に相談することも重要です。
参考:日本年金機構 健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き
◉健康保険資格喪失連絡票等、前職の会社を退職した事実わかる書類がもらえなかった時の手続き方法
もし、前の会社が倒産してしまい健康保険資格喪失連絡票がもらえなかったといった事情がある場合には、お近くの年金事務所へ相談にいきましょう。年金事務所で健康保険資格喪失証明書を発行してもらうためには、身分証明書と印鑑が必要となります。(ただし、協会けんぽ加入の会社に限ります。また、会社より社会保険資格喪失届が提出されている必要性があります)
詳しくは日本年金機構のホームページでご確認ください。この手続きは郵送で行うことも可能です。
3.【ケース別】切り替え前後の保険証の使い方
もしこの2つのケースが当てはまってしまったとしても、慌てずに対処を行なってください。
3-1.退職日当日も医者に行きたいときは後から郵送で返却
退職日当日まで健康保険証は使うことができます。どうしても退職する日にも医者に行きたいのであれば後日、郵送等で返却をすれば大丈夫です。しかし、退職日の次の日には資格失効してしまうので、くれぐれも次の日に使ってしまうことがないよう注意してください。
3-2.新しい保険証が届いていない場合には全額立替払いで対処
転職先の会社が入社手続きを行って、保険者(協会けんぽ又は健康保険組合等)から新しい保険証が手に入るまでには、1週間から3週間の期間が空きます。
健康保険証が届く前であっても病院にかかりたいという場合は、一時的に全額を立て替え払いで対処することになります。このとき支払った代金は新しい健康保険証を受け取った後で返金してもらうことができますので必ず手続きを行なってください。手続き方法は会社に相談するか直接保険者(協会けんぽ又は健康保険組合等)に問い合わせて、健康保険療養費支給申請書を提出して手続きを行います。
◉健康保険被保険者資格証明書を発行してもらう方法
「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらうという手もあります。これは保険証が届くまでの間、保険証代わりに使うことができる書類で、この証明書を持って医療機関に行った場合には通常の3割負担で診療を受けることができます。「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらう方法は (1)転職先の会社に相談する (2)最寄りの年金事務所の2つです。(ただし、年金事務所で発行して貰えるのは、協会けんぽに加入の場合のみとなります)急に病院に行くことになってしまった場合などは、年金事務所であれば即日発行してもらえます。(ただし、会社が社会保険取得手続きを行っており、日本年金機構の受付処理が完了した場合に限ります)持参する書類は、健康保険被保険者資格証明書交付申請書と本人確認書類(運転免許証やパスポートなど写真付き証明書類等)です。詳しい手続き方法は日本年金機構のホームページでご確認ください。
4. まとめ
退職する会社に保険証は必ず返却すること、新しい保険証が手に入るまでは1週間から3週間前後かかることなどを理解していだだけたでしょうか。
また、保険証がない期間にも病院に行きたい場合は、基本的に全額負担をした後に返金申請をするということもわかっていただけたと思います。
病気やケガは予測ができないものですから、保険証を持たない期間はできるだけ短くして、保険証の切り替えはできるだけスピーディーにそしてスムーズに行うようにしましょう。
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