転職でミスマッチが起こる要因とは?未然に防ぐ方法

転職に不安はつきものです。中でも大きいのは、入社後に「こんなはずじゃなかった」とミスマッチが起こることではないでしょうか。
ミスマッチが起こる要因と防ぐ方法について、組織人事コンサルタントの粟野友樹氏に聞きました。
そもそも「ミスマッチ」とはどういう状態を指す?
「ミスマッチ」とは「マッチしない・していない」「調和しない・していない」状態を指します。
転職でミスマッチが生じる場合、転職者自身や転職先企業、もしくは両方が認識する「転職者・転職先企業間に何らかのズレが生じているネガティブな状態」にあるといえるでしょう。
似た言葉として、「転職ギャップ」や「カルチャーショック」がありますが、こちらにはポジティブな場合もネガティブな場合もあります。
ギャップとは、ズレや食い違いのこと。転職ギャップとは、「転職者が、自身の認識・想定と、入社後の現実とのギャップがあると感じること」と言えます。
例えば、「選考時はリーダー候補として評価されていたつもりが、入社したら一メンバーからのスタートだった」といったケースは、転職ギャップの一つでしょう。
カルチャーショックは、「転職者が、転職による企業文化・カルチャー面の変化・ギャップによって、心理的にショックを受けたり、戸惑ったりすること」です。
カルチャー面での転職ギャップを認識したことによる反応の一つでもあり、「前職と同じような感じだろうと想定していた企業文化が、転職先では全然違うので驚いた」という場合があります。
「転職ギャップ」「カルチャーショック」との違いで言えば、ミスマッチとは、「ネガティブな転職ギャップやカルチャーショックを受けて陥るネガティブな状態」だということ。ミスマッチ状態が続いたり、ミスマッチをより強く感じるようになったりすると、
- モチベーション低下
- パフォーマンス低下
- 組織内での孤立や組織エンゲージメントの低下
- 短期離職
などのリスクが生じます。
転職ではどんなミスマッチが起こりやすい?
ミスマッチが起こりやすい内容には、職場や仕事に関するあらゆる側面(労働条件、仕事内容や進め方、スキル・キャリアの方向性、人・組織、カルチャー、評価のされ方など)がかかわってきます。
リクルートが行った「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」によると、正社員・正職員の20~50代転職経験者の退職理由の上位5項目は「仕事内容への不満」「人間関係への不満」「賃金への不満」「労働条件や勤務地への不満」「成長機会がない」でした。
これらは、転職先で起こるミスマッチにも共通しているといえるでしょう。
なぜ転職でミスマッチが起こるのか?原因と予防する方法は?
では、転職後にミスマッチが起こってしまうのには、どんな原因や背景があるのでしょう。求職者側の要因、企業側の要因、そしてミスマッチを予防するためにできることをそれぞれ見ていきましょう。
求職者側の要因
一つの原因は、転職活動中の準備不足やリサーチ不足にあります。
- 転職理由や転職の軸、希望条件があいまい
そもそも自分がどんなことを大事にするのか、何が重要なのかなどを明らかにせずに転職をしてしまう。 - 比較検討が不十分
応募・選考を受けた企業数が少ない、転職活動期間が短いなど、十分な比較検討をせずに転職先を決めてしまう。 - 情報収集が不十分
転職先のことを丁寧に調べたり、第三者のアドバイスを受けたりする時間を取らず、検討のための情報量が足りないまま転職をしてしまう。
また、転職後の行動にもミスマッチを招く要因があります。
- 転職先に過度な期待を抱く
「転職したから、前職で抱いていた不満や課題がすべて解消するはず!」など、理想を高く持ちすぎている。 - 新しい環境に馴染もうとしない
転職先で人間関係や仕事の進め方などがこれまでと違っていても、「前職ではこうやってきたから」「こうやって実績を積んできたから」などと、自分のやり方に固執して変化に適応しようとしない。
求職者側の要因で起こるミスマッチを予防する方法
ミスマッチを予防するには、上記の要因を一つひとつ取り除いていくことです。
- 自己分析をして転職目的を明確にする
- 転職先に求める条件を整理し、優先順位を決めておく
ことは欠かせません。優先順位を決める際には「これだけは叶えたい」という転職の一番の目的を決めておくといいでしょう。
また、転職とは職場環境・人間関係を一変させることですので、同じ業界や職種だとしても、何らかのギャップ・カルチャーショックを感じることは少なからずあります。
「この会社、この仕事に自分は合わないかも…」とミスマッチを感じる場面や瞬間は誰にでもあるもの。その前提を理解し、ネガティブに捉えすぎない心構えも大切です。
企業側の要因
企業側にも、ミスマッチを生じさせる原因はさまざまあります。その一つが、企業側の情報開示の問題です。
- 企業側の人材要件や選考基準が不明瞭
- 企業側の選考スキルやプロセスが不適切
など、求職者の経験スキル、人物タイプや希望条件などを適切に評価・確認しないまま選考を進め、比較検討をせずに採用することで、入社後のミスマッチにつながります。
入社受け入れ後には、
- 受け入れ態勢の不足
- 入社後の教育プランの未整備
もミスマッチを高める要因になります。
企業側の要因で起こるミスマッチを予防する方法
企業側の要因で起こるミスマッチを防ぐには、主に企業側のアクションが必要となります。
- 研修資料、事業や組織に関する情報を提供する
- メンター、教育担当の制度を整え、適した人材を用意しておく
- 配属部署での歓迎する雰囲気の醸成や社内ネットワークの構築支援を行う
- 入社後の教育プランを整備し、「最初の〇~△か月は業務に慣れてもらうために◇の業務を担当してもらう、▲か月後に対応してもらいたいミッションは◇」など目的・意図も含めて明確にする
- 転職者への適宜フィードバックの場、時間を作る
などです。
これらの予防策には、求職者側からはどうにもできない内容も含まれます。そのため、求職者側は、企業要因のミスマッチがあるという前提に立ち、それらを防止する逆質問を用意しておくといいでしょう。
仕事の進め方、評価のされ方、人間関係、やりたい仕事と合っているか、労働環境、特筆すべき独自の文化などの観点で具体的な質問を用意し、選考段階で解消できると安心です。
<求職者が企業側の要因で起こるミスマッチを防ぐためにできる質問例> 「現職(前職)では、チームとの情報共有を重視した仕事の進め方をしてきましたが、御社では、どのようにプロジェクトワークが進んでいくのでしょうか」 「現職(前職)では、個人の営業成績が評価に結びつき、それぞれがスケジュールを管理して動くような、“個”を重視した働き方でした。御社の評価基準はどのようなものでしょうか」 「これからは、よりお客様に近く、悩みに伴走していくような営業活動をしていきたいのですが、私がやりたい仕事と合っていますでしょうか」 「御社では、どのようなタイプの方が活躍されていますか」 「上司や先輩との関係性など、御社ならではの社内の雰囲気を教えてください」 「御社独自の社内イベントなど、独自のカルチャーがわかるようなものはありますか」 |
こうした質問に対して詳しい情報が得られなければ、入社後にミスマッチが生じる可能性があると考えておくといいかもしれません。
転職でのミスマッチが起きてしまった時の対処法
では、すでに転職した先でミスマッチが起きている場合は、どのように対処できるのでしょうか。
まずは、「ミスマッチは誰にでも、どんな環境でも生じるもの」と捉えることが大切です。「ミスマッチを感じたから、この職場・仕事内容は合っていない」などと早急に結論を出さず、ミスマッチを解消する方法や時間軸を少し長めにとって考えるようにするといいでしょう。
転職した直後は、ギャップやカルチャーショックをネガティブに受け止めて「ミスマッチ」と感じたことでも、時間が経過したり慣れたりすると捉え方が変わる可能性もあります。
その上で、ミスマッチを解消・緩和するためには、次のようなアクションが考えられます。
社内に仲間を見つけて相談する
上司や同僚、中途同期、出身業界が同じ人、年代が近くライフステージが近い人、趣味が同じ人など、何等か接点がある人に相談してみては。「入社した頃は、自分も同じようにミスマッチを感じたよ」などと話を聞いてもらうだけで、自分だけが感じるものではないと安心できるかもしれません。
人事に相談をする
業務面のスキルミスマッチや、カルチャー面でのミスマッチなどを相談し、フォロー・サポート体制を強化してもらうのも一つの方法です。
労働条件通知書で提示された労働条件(給与、休日休暇など)と異なる場合や、転職前に説明された仕事内容や配属と異なるなどといったミスマッチの場合は、上司や人事に事実状況確認をしたほうが良いでしょう。
社外の友人知人に相談をする
自分ではミスマッチだと感じていても、同業他社の友人から「うちの会社でもそうだった」「この業界はスピード感が大事だから、そういう仕事の進め方が多いよ」などと業界共通の話を聞くと、カルチャーギャップへの理解が高まるかもしれません。
転職経験者であれば、ミスマッチにどう対処していったかのアドバイスをもらえることもあります。
自分から仕事を教わりに行くなど、積極的にコミュニケーションを試みる
先輩に仕事を教わる、資料を読み込む・研修を受ける、同僚に積極的に質問しに行く、任された仕事を着実に対応するなど、自分でできることをコツコツ積み上げていきましょう。
最後に(まとめ)
どんな環境でもギャップはあります。もし入社後に違和感を覚え、不安や不満を感じたときは「転職の一番の目的」に立ち戻り、「それが満たされているのであればOK」と割り切ることも大切でしょう。
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