属人的すぎる仕事が嫌で、転職を考えています【転職相談室】

属人的すぎる今の仕事に嫌気がさして転職を考えているものの、予想される引き止め攻勢や引き継ぎの大変さを考えると、なかなか踏み切れない相談者。
どうすれば転職への第一歩を踏み出せるのか、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタント・粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
現在の属人的な仕事が嫌で転職を考えているのですが、なかなか踏み切れません(Iさん/34歳/社長秘書)

<相談内容>
ある中小企業の社長秘書として勤務し、10年目となります。ライフステージの変化などもあって、かなり前からほかの仕事に就きたいと考えてきましたが、多忙すぎて転職に真剣に向き合う時間がありませんでした。
勤続10年という節目を迎え、年齢的にもここで動かなければ…と危機感を覚えています。とはいえ、社長秘書は私一人。自分にしかわからない業務が多く、後任の育成にはかなりの時間と労力が予想されます。
社内で相談することもできず、どうすればいいのか悩んでいます。
特殊な仕事でもスキルや強みは必ず見つかる
▶アドバイザー
Iさんの担当業務は、かなり属人的だと感じているんですね。
▶相談者
はい。入社以来、一人で社長秘書をしています。
中小企業ということもあって、ここ数年は新人も入社していませんし、異動もないので秘書業務を経験している人がほかにいません。
プライベートの時間を増やしたくて、今度こそ真剣に転職したいと考えているんですが…。
▶アドバイザー
転職に踏み切れない理由は何ですか?
▶相談者
1つは、社長秘書というやや特殊な仕事なので、他社で生かせるスキルがあるのかという不安です。
もう1つは、私1人で担当しているので、業務手順や進捗状況などをほかの社員に報告する必要がなく、私にしかわからないことが多いんです。
退職することになったら会社に迷惑がかかるでしょうし、後任への引き継ぎも難航しそうで心配です。
▶アドバイザー
なるほど、わかりました。それでは1つずつ、まずはスキルの悩みから解決していきましょう。
▶相談者
よろしくお願いします。
▶アドバイザー
最初に取り組んでみて欲しいのは、自分がやっている仕事をリストアップすることです。
そして、その中でとても印象に残っている仕事、褒められた仕事などを思い出してみてください。
自分の仕事をしっかりと振り返ることで、ポータブルスキルとなるものを見つけていくんです。
▶相談者
社長秘書の仕事にポータブルスキルがあるんでしょうか?
▶アドバイザー
同じ仕事を10年近く続けているので、無意識にできていることがたくさんあるはずです。
例えば、秘書の主な仕事の1つに、社長の3カ月先や半年先のスケジュールまで常に把握・更新しながら、先回りして案内をすることがありますよね。
であれば、計画力や広い視点でとらえる力、気配りや想像力が養われていると考えられます。
▶相談者
そういうふうに考えて、見つけていくんですね。
▶アドバイザー
秘書として、社内外から社長に上がってくる情報を取捨選択したり、社長が業務に集中してパフォーマンスを発揮できるように環境を整えたりすることも、秘書業務の一部ではありませんか?
このような仕事からは、調整力や交渉力、傾聴力、提案力や分析力、周囲に働きかける力やリーダーシップなどが身についている可能性があります。
▶相談者
これまで意識したことがありませんでしたが、いくつかのスキルは身についているかもしれません。
▶アドバイザー
社長と社員の橋渡し役として、相手の状況をくみ取って翻訳して伝えたり、提案したりすることもあるでしょう。
そうした経験で培われたコミュニケーション力やプレゼン力、主体性や積極性などもIさんの強みとなります。
▶相談者
そうなんですね。自分にもポータブルスキルがあるとわかって、自信が湧いてきました。
▶アドバイザー
これまで携わってきた仕事をリストアップして、自分のスキルや強みを明らかにしたら、職務経歴書や面接で伝えていきましょう。
▶相談者
はい、わかりました。
▶アドバイザー
ところで、転職してどんな職種に就きたいのか、具体的に決まっていますか?
▶相談者
漠然とですが、管理部門の総務などの事務職を考えています。
▶アドバイザー
それなら、先ほど挙げたように、社内外から集まってくる社長への依頼を取捨選択したり、優先順位をつけてさばいていく臨機応変な対応力、現場の言葉を翻訳して社長に伝えたり提案したりするコミュニケーション力やプレゼン力など、総務事務で生かせるようなスキルや強みにフォーカスしてアピールするといいでしょう。
転職は決まるまで口外せず、引き継ぎは粛々と
▶相談者
ところで、転職することは会社には内緒にしておいたほうがいいんですか?
▶アドバイザー
転職先が決まるまで、言わないほうが賢明です。なぜなら、引き止めに遭う可能性が高いからです。
Iさんのように属人的な仕事をしているのなら、なおさら強い引き止めに遭うことが予想されます。
場合によっては、終業後に面接に行くタイミングで仕事を依頼されるなど、転職活動に支障が出る可能性もないとは言えません。
▶相談者
わかりました。転職活動を会社に気づかれないよう、十分注意します。
とはいえ、転職先が決まったとしても、引き継ぎのことを考えると気が重いです。どうすればいいですか?
▶アドバイザー
一般的な転職時の引き継ぎ手順に則って、粛々と進めていけば問題ありません。
Iさんは、ご自身の仕事は属人的だと感じているかもしれませんが、改めて書き出してみたら、案外そうでもないかもしれませんよ。
▶相談者
そうですね、あまり心配しすぎないようにします。
▶アドバイザー
とはいえ、社長秘書という仕事には、社長の習慣や癖、「関係性の深さに応じて、このお客さまにはこの手土産を用意する」といったマニュアル化にはそぐわないような引き継ぎ事項もありそうですね。
▶相談者
実はそうなんです。社長の好みに関わる部分など、マニュアルとして文書に残すのもどうかと思いますし、どう引き継げばいいのか悩んでいます。
▶アドバイザー
文書に残して引継ぎにくいことは、後任者に口頭で伝えるとか、後任が見つからなければ中継ぎの担当者に伝言すればいいでしょう。
▶相談者
わかりました、必要に応じて口頭での引継ぎも活用したいと思います。
会社に気を遣うより、自分の将来を優先しよう
▶アドバイザー
自分にしかできない仕事をしているからといって、必要以上に会社に気を遣う必要はありません。
自分を優先して、今やりたいことや将来に向けて転職活動を頑張ってください。
▶相談者
わかりました。お話を聞いて、気持ちが楽になりました。
▶アドバイザー
仕事が忙しくて自力での転職活動が難しいようなら、転職エージェントを利用する方法もあります。
転職エージェントであれば、属人的な仕事をしている方ならではの悩みに対するアドバイスも具体的にしてくれるはずです。
いずれにしても、退職する際に交渉が難航したり文句を言われたりすることもあるかもしれませんが、Iさん自身が意志を強く持って臨む限り、そのような経験は数カ月後には懐かしい思い出になるはずです。
▶相談者
ようやく転職する決意が固まりました。早速、仕事のリストアップを始めます。この度は、参考になるアドバイスをありがとうございました。
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