退職金にかかる税金の計算方法
会社を退職した際には、退職者に対して退職金が支払われます。この退職金については、給与と同じく、所得税と住民税がかかります。
ただし、退職金は一時的に支払われるものであり、長年の勤務に対しての報償であることなどから、他の所得よりも税負担が軽くなるよう配慮されています。退職金にかかる税金の計算方法をご説明します。
アドバイザー
税理士 片田絵理税理士事務所代表 片田 絵理
1994年に会計事務所に入社、同年に税理士試験5科目に合格。その後、所属税理士として税理士業務に携わり、2017年に独立し税理士事務所を開業、現在に至る。
退職所得とは
退職所得とは、退職金や一時恩給など、退職したことにより一時に支払われる給与をいいます。退職の際に支払われる退職金のほかに、「解雇予告手当」を受け取った場合も退職所得になります。また、個人型確定拠出年金の加入者が老齢給付金を一時金として受け取る場合や、厚生年金基金などの脱退一時金なども退職所得となります。
税金の計算方法
退職金にかかる税金の計算には、退職所得控除額が設けられたり、他の所得と分離して税額を計算するというかたちで、税負担が軽くなるように配慮されています。では、どのように計算されているかみてみましょう。
所得税の計算方法
退職金にかかる所得税は「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しているかどうかで、計算方法が変わります。
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出している場合
(1)退職金の支払額から退職所得控除額を差し引いた額に2分の1をかけて退職所得の金額を計算します。
※ 平成25年以降、役員としての勤続年数が5年以下である法人の役員などで一定の者が受けとる退職金のうち、役員としての勤続年数に応じた退職金を受け取った分については、退職金の支払額から退職所得控除額を差し引いた金額が退職所得金額の金額となります。
(2) (1)で計算した退職所得の金額に税率をかけて控除額を差し引いた金額が所得税額(基準所得税額)となります。
(3) (2)の基準所得税額に2.1%をかけて復興特別所得税を計算します。
(4) (2)の所得税と(3)の復興特別所得税を足したものが、源泉徴収税額として退職金から差し引かれます。
退職所得の源泉徴収税額の速算表
課税退職所得金額 (A) |
所得税率(B) | 控除額 (C) |
税額 =((A)×(B)-(C))×102.1% |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 | ((A)×5%)×102.1% |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 | ((A)×10%-97,500円)×102.1% |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 | ((A)×20%-427,500円)×102.1% |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 | ((A)×23%-636,000円)×102.1% |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 | ((A)×33%-1,536,000円)×102.1% |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 | ((A)×40%-2,796,000円)×102.1% |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 | ((A)×45%-4,796,000円)×102.1% |
※2018年9月時点
(5) 退職所得控除額は勤務年数に応じて計算します。
勤続年数が20年以下の場合 | 40万円×勤続年数 |
勤続年数が20年を超える場合 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
※1年未満の端数があるときは、1年に切り上げて計算します。
※計算した金額が80万円未満の場合は、退職所得控除額は80万円となります。
※障がい者となったことが直接の原因で退職した場合は、上記の計算式で計算した金額に100万円を加算した金額となります。
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していない場合
退職金の支払額に20.42%の税率をかけて計算した所得税及び復興特別所得税が源泉徴収税額として退職金から差し引かれます。
住民税の計算方法
上記(1)で計算した退職所得金額に、住民税の税率(10%)をかけて計算した税額が特別徴収すべき税額として、退職金から差し引かれます。
退職所得があった場合、源泉徴収票はどうなる?
退職金の支払いがあった場合、「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」が作成され、会社から退職者に対して1カ月以内に交付されることになっています。
退職所得の源泉徴収票には、退職金の支払金額、源泉徴収税額、特別徴収税額(市町村民税・道府県民税)、退職所得控除額、勤続年数、就職年月日、退職年月日が記載されています。
退職金に確定申告は必要?
退職金が支払われる際に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出している方は、源泉徴収だけで完了しますので、原則として確定申告をする必要はありません。
ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、確定申告をすることによって所得税額を精算することになります。
退職金の課税シミュレーション
具体的な例を元に、税金がどのくらいかかるのか見てみましょう。
勤続年数30年、退職金2,000万円のAさんの場合
Aさん:勤続年数30年 退職金2,000万円
退職所得の受給に関する申告書を提出している場合
退職所得控除額 | 800万円+70万円×(30年-20万円)=1,500万円 |
退職所得の金額 | (2,000万円-1,500円)×1/2=250万円 |
所得税及び復興特別所得税 | (250万円×10%-97,500)×102.1%=155,702円 |
住民税額 | 250万円×10%=250,000円 |
退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合
所得税及び復興特別所得税 | 2,000万円×20.42%=4,084,000円 |
住民税 | 250,000円(提出している場合と同じ) |
勤続年数15年、退職金300万円のBさんの場合
Bさん:勤続年数15年 退職金 300万円
退職所得の受給に関する申告書を提出している場合
退職所得控除額 | 40万円×15万円=600万円 |
退職所得の金額 | (300万円-600万円)×1/2=0円 |
所得税及び復興特別所得税 | 0円 |
住民税額 | 0円 |
退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合
所得税及び復興特別所得税 | 300万円×20.42%=612,600円 |
住民税 | 0円 |
このように、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出している場合と提出していない場合では、源泉徴収される税額が大きく変わります。この申告書を提出していない場合は、本人が確定申告をすることにより、所得税及び復興特別所得税が精算されます。
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