試用期間中の給与や社会保険はどうなる?退職は可能?
入社日を迎え、いよいよ新しい会社で仕事がスタートする、といっても入社後すぐに本採用で働けるとは限りません。多くの会社には3カ月~6カ月の試用期間というものが設定されており、試用期間の過ごし方によっては本採用につながらない可能性もあります。
逆に、試用期間中に働いてみて、職務内容や処遇が聞いていた話と全然違うため、本採用前に退職したいというケースもあるかもしれません。今回は、試用期間の法的性質、試用期間中の賃金・社会保険の取扱い、退職時の注意点について解説します。
プロフィール
あべ社労士事務所
代表 社会保険労務士 安部敏志(あべさとし)
大学卒業後、国家公務員I種職員として厚生労働省に入省。労働基準法や労働安全衛生法を所管する労働基準局、在シンガポール日本国大使館での外交官勤務を経て、長野労働局監督課長を最後に退職。法改正や政策の立案、企業への指導経験を武器に、現在は福岡県を拠点に中小企業の人事労務を担当する役員や管理職の育成に従事。事務所公式サイト:https://sr-abe.jp/
試用期間とは
試用期間とは、入社後の一定期間に、人物・能力を評価して本採用するか否かを判断・決定する制度です。そして、試用期間については、現行法上、明確な法的規制は存在しません。会社によって3カ月、6カ月など試用期間が異なるのもこのためです。
ただし、試用期間の法的性質として、個別の契約ごとの具体的な解釈の問題であるという留保はありながらも「解約権留保特約のある雇用契約」であるという考え方が判例で確立されています。
「解約権留保特約のある雇用契約」とは、試用期間中に不適格であると認められたとき、それだけの理由で雇用を解約しうるという雇用契約であり、わかりやすく言うと、会社側には、通常の解雇よりも広い範囲の解雇の自由が認められるということです。
もちろん、広い範囲の解雇の自由が認められるといっても、どんな理由でも認められるわけではないため、その点はご安心ください。
判例では「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」とされており、具体的には以下の場合に解雇が認められた事例があります。
– 引き続き企業に雇用しておくことが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に相当であると認められる場合
試用期間中の給与はどうなる?
試用期間中は賃金を安く設定している会社もあります。
わかりやすい例として時給で解説すると、例えば、本採用後は時給1,200円、ただし試用期間中は1,000円といった設定をしているケースです。契約開始時に、労働条件通知書等で明示していれば、これ自体は違法ではありません。
ただし、試用期間中といってもあくまで雇用契約は締結されている状態であるため、最低賃金を下回ることはできません。最低賃金は都道府県別に設定されており、例えば、東京都の最低賃金は平成30年9月30日までは時間額958円、10月1日から時間額985円になります。
試用期間中の社会保険は?
賃金の取扱いと同様に、試用期間中といってもあくまで雇用契約は締結されている状態であるため、社会保険の加入対象になります。
ただし、社会保険の除外対象に該当する方は加入できません。これは試用期間かどうかは関係ありません。
社会保険には健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険があり、適用除外の要件はそれぞれ異なるため、今回は、健康保険・厚生年金保険の適用除外を例示すると、以下に該当する方は健康保険・厚生年金保険には加入できません。
– 臨時に日々雇用される人で1か月を超えない人
– 季節的業務に4か月を超えない期間使用される予定の人
– 臨時的事業の事業所に6か月を超えない期間使用される予定の人
– 所在地が一定しない事業所に使用される人
– 後期高齢者医療の被保険者等(75歳以上):健康保険の場合
– 70歳以上の者:厚生年金保険の場合
– 短時間労働者(1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3未満)
退職したい場合、理由はどんなことでもいい?
試用期間中は、会社には、通常の解雇よりも広い範囲の解雇の自由が認められますが、解約権留保の趣旨、目的に照らして、「客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」という説明をしましたが、労働者側の希望による退職の場合、退職理由に法的な制約はありません。
退職時期の注意点
退職時期については、雇用形態によって以下のような法的な制約があるため注意が必要です。
期間の定めのある雇用契約の場合
1年契約、2年契約といった期間の定めのある雇用契約の場合、原則として契約期間中の退職はできません。
ただし、1年を超える雇用契約の場合で、1年を経過したら労働者はいつでも退職できることが労働基準法137条により認められています。
期間の定めのない雇用契約の場合
正社員のように期間の定めのない雇用契約の場合は、民法上は2週間前までに会社に連絡すれば希望の日に雇用契約は終了することになります。ただし、退職の告知から退職日までの期間を就業規則で別途定めている会社もあるため、円満退職のためにも就業規則を事前に確認し、1カ月前には告知するようにしましょう。
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