シフト制・フレックスタイム制の残業代の計算方法
時期や業務内容によって1日の勤務時間に変動のある、シフト制やフレックス制の場合の、残業代はどのように計算されるのでしょうか。
この記事では、シフト制、フレックスタイム制、そして残業代込の固定残業代制度など、具体的な残業代の計算方法について解説します。
プロフィール
あべ社労士事務所
代表 社会保険労務士 安部敏志(あべさとし)
大学卒業後、国家公務員I種職員として厚生労働省に入省。労働基準法や労働安全衛生法を所管する労働基準局、在シンガポール日本国大使館での外交官勤務を経て、長野労働局監督課長を最後に退職。法改正や政策の立案、企業への指導経験を武器に、現在は福岡県を拠点に中小企業の人事労務を担当する役員や管理職の育成に従事。事務所公式サイト:https://sr-abe.jp/
シフト制の残業代
シフト制とは、ホテルや病院など24時間の接客が求められる職場で、2交替や3交替などで運用される勤務形態です。
変形労働時間制とは
「シフト制」という用語は法律用語ではありません。法律上は、「1カ月単位の変形労働時間制」または「1年単位の変形労働時間制」と位置づけられている制度です。
法律で決められている労働時間は、1日8時間、1週40時間が上限ですが、シフト制の場合は、2交替制などで1日12時間勤務というケースもあります。これは、「1週平均の労働時間を40時間以内にすれば良い」という法的な根拠によるもので、1カ月単位の変形労働時間制の場合、1日の労働時間の上限はありません。
なお、1年単位の変形労働時間制の場合は、1日の労働時間の上限が10時間と決まっています。
残業代の計算対象となる時間
シフト制の残業代として、1カ月単位の変形労働時間制の場合の、残業代の対象になる労働時間は以下となります。
(1)1日について
例えば当番日など、8時間を超える時間を定めている日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
(2)1週間について
40時間を超える時間を定めている週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間
※(1)で時間外労働となる時間を除く
(3)それ以外
対象期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間
※(1)または(2)で時間外労働となる時間を除く
残業代の計算方法
変形労働時間制を理解するために、1カ月が31日の月をモデルケースにして、残業の対象をご説明します。なお、31日の場合の総労働時間の上限は177.1時間です。
残業代の対象となる時間外労働となる時間を整理すると以下のようになります。
- 1日8時間を超え、かつ所定労働時間を超えている時間外労働
- 1日8時間・1週40時間を超えておらず、月の法定労働時間の枠内である法定内労働
- 1日8時間を超えていないが、1週40時間を超えている時間外労働
- 1日8時間を超え、かつ所定労働時間を超えている時間外労働
- 1日8時間・1週40時間を超えていないが、2の労働により、月の法定労働時間を超え、所定労働時間内であるが時間外労働
時給1,000円の場合の残業代を実際に計算してみると以下のようになります。
計算式 | 残業代 | |
---|---|---|
基本賃金 | 1,000 × 172時間 | 172,000円 |
2の賃金(法定内労働) | 1,000 × 6時間 | 6,000円 |
1・3・4の賃金(時間外労働) | 1,000 × 1.25 × 3時間 | 3,750円 |
5の賃金(時間外労働) | 1,000 × 0.25 × 0.9時間 | 225円 |
合計 | 172,000 + 6,000 + 3,750 + 225 | 181,975円 |
フレックスタイム制の残業代
フレックスタイム制とは、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1カ月以内の一定の期間の総労働時間の範囲で、日々の労働時間を自分で決めることができる制度です。
必ず勤務しなければならない時間帯の「コアタイム」、出社または退社が自由な時間帯である「フレキシブルタイム」で構成されますが、フレックスタイム制の導入要件等は労働基準法令で定められています。
残業代の計算対象となる時間
フレックスタイム制の大きな特徴は、労働者が自分自身で日々の労働時間を決めることができる点です。そのため、1日8時間、1週40時間という法定労働時間を超えて働いたとしても、残業代の対象にはなりません。
1カ月などの清算期間で、総労働時間の総枠を超えた時間のみが残業代の計算対象になりますが、2割5分増となるのは法定労働時間の総枠(以下の表を参照)を超えた場合です。
清算期間の暦日数 | 週の法定労働時間数が40時間の場合 |
---|---|
31日の場合 | 177.1時間 |
30日の場合 | 171.4時間 |
29日の場合 | 165.7時間 |
28日の場合 | 160.0時間 |
残業代の計算方法
清算期間の暦日数が28日の場合で、実際の労働時間が170時間だったとき、
となります。すでにご説明した通り、フレックスタイム制は1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えたとしても、残業代の対象にはなりません。
参考:1か月単位の変形労働時間制(厚生労働省リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-2.pdf
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