40代の転職の実態と、「成功する人」の共通点は?
40代からの転職、その実態は?
35歳、40歳、45歳……。超人手不足市場と言われる、2017年の状況においても転職市場は、ほぼ5歳ごとに大きく潮目が変化します。特に40歳は大きな分岐点で、転職することで年収が上昇する割合が顕著に低下しはじめます。この転職市場の潮目の変化は、景況はもちろん、業界や専門領域により微妙に異なることもあり、意外な落とし穴になりがちです。
20代後半から30代前半で転職した経験がある人は、転職市場での自分の市場価値が、予想以上に高かったと感じた人も多いのではないでしょうか?
先日面談させていただいた39歳のAさんも、5年前に初めて転職活動をした際に、とんとん拍子で複数の企業から内定をもらい、また年収やポストも好条件が提示されたりしたことで、「自分は世の中からこんなに必要とされているのか」と驚いたと振り返っておられました。
ただ、このAさん、会社の業績悪化に伴い、今年、転職活動を始めたところ、5年前とはまったく違う状況にショックを受けていました。これだけ人手不足がニュースになっているにもかかわらず、書類通過すら難しく、結局20社以上応募して面接に進めたのが3社、しかもいずれも最終選考で不採用になってしまいました。年齢による企業の視線の違い、をいまAさんは肌身に感じておられます。
そればかりではなく、転職できたとしても、転職前後の年収変化は世代が上がるとともに厳しくなります。男性・会社員という分類で「10%以上年収が上がる人」の割合は、30~34歳世代で47.2%いるのに対して、35~39歳世代で44.6%、40~49歳では40.3%、50~59歳では22.2%と年齢とともに急減していきます。(リクルートワークス研究所「ワーキングパーソン調査2014」)
「希望する職種」によって激変する転職難易度
また、転職市場におけるミスマッチは、企業側・求職者側双方にとって悩ましい課題です。
求職者側=「いい会社を見つけて応募をしても、不採用になってしまう」
という、相互の立場からのミスマッチはいつの時代も一向に解消されていません。これは「職種」によって非常に大きなばらつきがあります。
求職者側の視点でみると「どんな職種で仕事を探すか?」を決めた時点で、転職成功の難易度がほぼ確定するといっても過言ではありません。これを、需給バランスや需給の量、仕事の性質でシンプルに分けると、図のような4分類になります。
A.ハイリスク・ハイリターンの「コントラクター」職種
個人で生み出す成果が重視される高付加価値な職種で、固定給比率が低めで、成果型の報酬比率が高いケースが多いことから「ハイリスク・ハイリターン」という印象を持つ人が多い職種群です。景気に関係なく一定の求人需要があるのですが、希望者(人材供給)が少なく、常に人手不足になりがちです。正社員・業務委託契約、場合によってはフランチャイズ型などの雇用形態でも募集されることが多く、転職サイトやエージェントからのスカウトも最も活発に行われています。
B.組織成果を求められる「スペシャリスト」職種
組織としての成果を最大化するために、結果に対する強いコミットメントを求められるスペシャリストやエグゼクティブ領域の職種です。場合によっては、年収3000万円クラスの求人もある超高付加価値型の領域になります。
事業の中核をつかさどる職域ゆえに、求人件数は最も少なく、転職サイトなどの公開型の求人よりも、ヘッドハンターやエグゼクティブ専門エージェントが秘密裏に動いてマッチングするケースが多いのも特徴です。
C.定型的なタスクを処理する「オペレーター」職種
契約社員、派遣、アルバイト・パートも含めて、最も求人の数が多いのがこの領域です。手順や業務パターンがシンプルで定型的な業務や運用的な業務が多く、業務が生み出す期待利益に連動して、賃金水準も雇用の安定性も低くなりやすい領域です。
相対的に募集要件も緩やかな分、求人需要に対して対象となる求職者数も多く、D領域で転職先が決まらない人からの流入も加わるため、より一層デフレ化しやすい性質があります。
D.組織貢献型の「ゼネラリスト」職種
いわゆる正社員の転職に限定した場合、最も求職者数が多いのがこの領域。総合職型の正社員として、組織貢献を求められるゼネラリストやミドルマネジメントの方々です。
高付加価値な組織成果を求められる領域でありながら、特に日本の場合、一貫したスペシャリストとしてのキャリアを積みにくく、「新入社員で配属されたのはA事業部の新規開拓営業、3年後にB事業部の既存顧客向け営業に転属され、10年目からは営業企画部門でリーダー」というように、組織の中での必要に迫られた経歴となり「なんでも屋ではあるが、なに屋とも答えられない」という状況に陥りがちな側面があります。
「過去の経験を生かしたい」が逆効果になることも
「役職定年」「業績不振」などを背景に、これまで組織に貢献してきた人が、突然転職市場に出ることになった場合、上記の構造の影響もあり多数のミスマッチが生まれます。
特に、「DからBに移動したい」「Dのままでキャリアを磨きたい」という希望を持たれる方が多いのですが、きわめて高い要件ハードルのBと供給過剰なDでは、その希望を受け入れられる余地は少なく、結果的に、希望の有無にかかわらず、需要過多のAや需要の絶対数が多いCへの移動を促される構造になっています。それでもBやDの領域を志向する場合は、高い競争率を突破する戦略と行動が必要になります。
転職活動をされる方には「これまでやってきたキャリアを生かしたい」という思いを口にされる方が多いのですが、特に40代を超えてこれまでやってきたキャリアを生かすには、「会社を超えても通用する競争優位なスキル水準を獲得するために、これまでの2倍、3倍の努力が必要になる」というのが実情です。
「これまでのキャリアを生かすこと」が、ご本人の頭の中では「過去やってきたレベルの努力を続けること」「過去の待遇水準をキープすること」と同義語になっている方の場合、激しい競争を勝ち抜くにはパワー不足になる可能性が極めて高くなってしまいます。
過去の経験を超えて、競争に勝てる人の共通点
しかし、どれだけ競争が激しくても、ご自身の希望通りの働き方をまっとうされる方も必ず存在します。転職支援という仕事を通じて多数の方とお会いしてきた経験から、競争に勝つ人の共通点をいくつか挙げてみたいと思います。
1.「過去の経験を超える」という思考
これまでのご自身の経験を「資産」ではなく「負債」だととらえて、過去のキャリアを「生かす」のではなく「超える」という考え方をする方。
大手情報システム開発会社で営業職をしてきたAさん(41歳)は、初めての転職活動で面接に行った会社で、これまでの会社で評価されてきた経験がまったく評価されないことに気付き、驚愕されたそうです。しかし、ゼロリセットでやり直すのは時間がかかりすぎると考え、経験値を分解、「使えるキャリア資産をベースにしながら、いかに自分の過去を超えられるかにチャレンジしよう」と思ったそうです。この方は現在、通信系のベンチャー企業で社長室長(執行役員)として活躍されています。
2.「謙虚に学び、大胆に行動する」バランス感覚
大手のインターネット関連会社を経て、大学のキャリアセンターで学生の就職支援をしているCさん(39歳)は、まったく別の世界に飛び込む転職をされました。業種の違いからくるカルチャーギャップで当初は相当戸惑われたそうです。
しかし、3年目に入って課長として活躍している理由を聞くと、「異文化に飛び込んだ立場として、いかに謙虚に学ぶかを心がけました。一方で成果を出すための行動量は意識して作り出しました」。インプットは謙虚に、アウトプットは大胆に。このバランスも、きわめて重要なポイントです。
3.「人生に本当に大切なものを絞り込む」勇気
経験年数、役職、年収、会社の知名度、部下の数、通勤の便など、いったん自分にとって住み心地のいい場所や条件を手に入れてしまうと、転職を迫られたとしても、どれもこれも全部守りたいと考えるのも不思議なことではありません。しかし、それらを守ろうとすればするほど逆効果になることもあります。
広告代理店でディレクターをしてきたBさん(44歳)は、転職活動で20社以上から不採用となった結果、「今後、思い通りに働ける20年で得たいものを絞り込んだ」そうです。そして、一番重視した“モノづくりの現場の第一線で能力を生かすこと”を追求し、食品メーカーのパッケージデザインのマネジャー職に就かれました。年収は前職から半減しても、心理的な満足度は以前より高まった状態で働かれています。
40代で転職活動をする場合でも、少し戦略を変えてみるだけで、満足度の高い転職を実現することはまったく不可能ではありません。次回は、さらに成功するポイントにクローズアップしていきたいと思います。
(記事作成日:2017年8月28日)
黒田 真行(くろだ・まさゆき) ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役
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