転職活動の面接でキャリアプランを聞かれた場合の対策【作り方と回答例】
転職をする際には、改めて「自分はどんなキャリアを歩んでいきたいのか」と今後のキャリアプランについて考えることになります。
しかし、キャリアプラン自体を具体的に描けない、キャリアプランをどのように作成したらいいのかわからないという方も多いようです。
そこで、キャリア形成のプロフェッショナルとして、人事・採用コンサルティング・教育研修を手掛ける株式会社人材研究所・代表取締役社長である曽和利光氏へ具体的な対応法について伺いました。
アドバイザー
株式会社人材研究所・代表取締役社長
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略』(講談社)など著書多数。
転職活動の面接で企業が「キャリアプラン」を質問する意図とは
転職活動の面接で「入社してからどうなりたいですか?」「5年後10年後にどうなっていたいですか」という質問をされることがあります。この質問をする企業の意図は、多くの場合、次の3つが挙げられます。
- キャリアの志向が、自社のキャリアパスと一致するかどうかを確認したい
- 自社の社風・文化に合うかどうかを見極めたい
- 応募者の「成長意欲」を確認したい
企業の面接官に納得して判断してもらうためには、応募者自身の経験と志向を整理して、キャリアプランを掘り下げておくことが必要になります。
「キャリアプラン」の掘り下げ方
キャリアプランを掘り下げる際に着目したいのが、キャリア形成の方法です。キャリア形成法には大きく2種類あり、主に職種に紐づいて分けられます。
目指すところがあいまいなキャリア形成法
キャリアドリフト、キャリアアンカー、プランドハップンスタンスと呼ぶようなキャリア形成方法です。
- キャリアドリフト
- キャリアをドリフト(=漂流)するという意味があり、時代や社会背景の影響でキャリアが意図していたものと変わることもあるので、ある程度身を任せつつ、就職や転職の節目にキャリアと向き合うという考え方。
- キャリアアンカー
- 自分の中の価値観にアンカー(=いかり)を置き、明確な目標となるものがなくとも、生きていく上で大事にしたいことを基準にキャリアを決めていくという考え方。
- プランドハップンスタンス(Planned Happenstance)
- 計画的偶発性と訳され、予期しない偶然の出来事によってキャリアが形成されており、偶然の出来事は、本人の主体性によって最大限に活用することでキャリアを歩む力につなげていけるという考え方。
これらの「目指すところがあいまい」なキャリア形成方法に共通しているのが、キャリアの最終的に目指すところを明確にせず、人生の節目において出会う機会に正面から向き合い、キャリアを形成していくという点です。
終身雇用が前提の働き方が当たり前ではなくなっている今の時代、特にこうした考えが当てはまる職種が増えてきています。大手企業の総合職や、配属されるプロジェクトでキャリアが構成されていくITエンジニアなどはここに当てはまります。
目指すところが明確なキャリア形成法
キャリアについてのビジョン(目指す方向性)を描き、実際にそのビジョンと行動をつなげてキャリアプランを築いていくキャリア形成方法です。
士業やメーカーの技術職、トレーダー、営業職などすでに一般的なキャリアプランが見えていて、そこにたどり着くまでのキャリアパスが明確になっている場合に当てはまります。多くの人が「キャリアプラン」という言葉から想起するものはこちらが多いのではないでしょうか。
以上のように、自分が目指したい職種がどちらのキャリア形成法を取り入れるものなのか確認したうえでキャリアプランを伝える必要があります。
「目指すところがあいまいなキャリア形成法」の職種の場合、転職活動の面接で「入社してからどうなりたいですか?」という質問に、あまりにも明確なキャリアプランを伝えてしまうと、「うちの会社ではそのプランに応えられない」「既にそのポジションには決まった人がいるから受け入れられない」「それしかやりたくない人なのか」など、ネガティブに受け取られることがあります。
この場合は、緩やかなキャリアの方向性を指し示すくらいの方が、幅広く活躍してくれそう、自社に貢献してくれそうと面接官は感じやすくなるようです。
また、多くの面接官は、事実に基づいた言葉からその人の自社への適性を判断しています。事実を確認することで、その人の描くキャリアプランが本人に根付いているのか、本気なのか、覚悟ができているかが見えてくるためです。そのため、事実に基づかず、主観、思考、思いだけのキャリアプランは信用できないとみなされるので、伝え方には注意が必要です。
「キャリアプラン」の作成方法と手順
では具体的にキャリアプランを作成する方法と手順について見てみましょう。ここでは作成方法を4つのステップに分け、その方法に従ってTさん(20代男性・Web業界)にキャリプランを作成してもらいました。
STEP1.キャリアビジョンを描こう
「自分が将来実現したい価値」を軸に、キャリアビジョンを考えます。
職種や仕事内容を書き出して、イメージしやすい将来像を描いてみましょう。仕事の内容が具体的にわからない場合は、その職種に就いている人に話を聞くなどすると、本当に自分が実現したい将来像なのかが見えてきます。ほかにも、働き方の観点でロールモデルになる人を見つけて、そのような働き方をするためにはどんな職種がいいのかを考えるのも一つの方法です。
<例>Tさん(20代男性・Web業界)のキャリアビジョン
STEP2. 根拠と事実を明らかにするための棚卸をしよう
キャリアビジョンの根拠を明らかにするために、①なぜそう思うのか?(Why)、②そのために何をしてきたのか?(How did you do?)を書き出し、棚卸しをします。先にも書きましたが、事実を確認することが、その人の描くキャリアプランの本気度を計るのに一番適切なためです。ですから、「これからやりたいこと」ではなく、今までのライフ・ヒストリーに紐づけたうえで、①なぜそう思うのか?②そのために何をしてきたのか?と、過去の事実を棚卸することがポイントです。
<例>Tさん(20代男性・Web業界)のライフ・ヒストリーに紐づけた事実の棚卸
- ①なぜそう思うのか?(Why)
- 日本にまだ成功事例がないが、コンテンツマーケティングに関わり始めたことで、チャレンジングでやりがいのある分野だと考えているから
- かつて自身が人生に悩んでいたとき、Web上のコンテンツによって心が救われた経験があり、自分もそういうコンテンツを生み出す側になりたいと思ったから
- ②そのために何をしてきたのか?(How did you do?)
- これまで7年間、Webマーケティング全般の業務に携わり、直近2年は、コンテンツマーケティングの業務にも携わっている。
- コンテンツマーケティングは大きな成果を生み出せる可能性があるにも関わらず、上手く運用できている企業がほとんどないと7年の業務経験から気づいている。
- 4名程度の小規模チームのマネジメント経験がある。
- 学生時代にWordPressで個人ブログを作り、月間5万PVをコンスタントに出してきた。
STEP3.必要に応じて「キャリアビジョン」を修正しよう。
キャリアビジョンの根拠と本気度を伝えるための事実を棚卸ししたら、客観的に見て、事実を並べた際に共通している傾向を見つけ出し、自分を理解します。ここで、STEP1で書いたキャリアビジョンとのズレがあると感じたら、キャリアビジョンを修正します。
<例>Tさん(20代男性・Web業界)のキャリアビジョン【修正版】
事実に基づく背景を入れたことで、キャリアビジョンに納得感が生まれました。
STEP4.キャリアビジョン実現のために行動化(What do you do?)することを書き出そう
今までにやってきたことと紐づけながら、今後どのような行動をしてキャリアビジョンにつなげていきたいのかを書き出します。
<例>Tさんの(20代男性・Web業界)行動化の内容
- 過去のWebマーケティングで経験してきた数字とロジックによる「科学的なコンテンツマーケティング」に引き続き取り組み、コンテンツマーケティングへ活かしていく。
- 今までの4名のチームマネジメント経験を活かして、より大規模な組織のマネジメントにも取り組む。
以上の手順で、キャリアビジョンを掲げ、なぜそれを実現したいのか、具体的な事実から背景を伝え、そのために取り組んでいることと併せて、キャリアプランへまとめていきます。
「キャリアプラン」の事例とプロによる講評
では最後に、実際にこの作成方法で作ったキャリアプランを曽和さんに添削していただきましょう。
■Tさんのキャリアプラン
1つは、コンテンツマーケティングを通じて、「事業成長とブランド価値向上」を実現させること。
そしてもう1つは、「良質なコンテンツを生み出し続けられる仕組みを作る」ことです。コンテンツマーケティングを軸に考えている理由は、
(※2)
- 日本にまだ成功事例が無く、チャレンジングでやりがいのある分野だと考えているから
- 私自身がコンテンツによって人の心が動く瞬間が好きだから
です。
(※3)私はこれまで7年間、Webマーケティング全般の業務に携わり、直近2年は、コンテンツマーケティングの業務にも携わっています。また学生時代に個人でWebサイトを立ち上げており、現在までWebコンテンツの制作・発信を続けています。自身でもコンテンツを作り続けながら、「どうすれば人を動かすコンテンツが作れるか?」を日々研究・模索しています。
今後私は、これまでWebマーケティング全般の業務を通じて培った経験・スキルを活かし、数字とロジックによる科学的なコンテンツマーケティングへつなげていくことで、成果がしっかりと見える形で「事業成長」と「ブランド価値向上」を実現していきたいと考えています。
また、コンテンツマーケティングを上手く運用するためには高い組織マネジメント能力が必要だと思います。私はこれまで4名程度の小規模チームのマネジメント経験しかありませんが、今後はより大規模な組織のマネジメントにも携わり、「良質なコンテンツが生まれる仕組みづくり」も取り組んでいきたいと考えています。
■曽和さんからのアドバイス
(※1)
まず、キャリアにおける目標は「世の中に価値をもたらす人材になる」ということですが、やや抽象的すぎるかもしれません。「価値をもたらす」≒「何かよいことをする」で、あまり特定の意味を示してはいません。
ただ、現時点では具体的に「これ」という目標がないのであれば、作って話す必要はありません。
(※2)
ですから、修正するとすれば、コンテンツマーケティングの領域自体に強い関心や執着があることを伝えてはどうでしょうか(もちろん、それが実際にそうであればですが)。その分野が三度の飯よりも好きだということを伝えることができれば、聞く側からすれば頼もしく思えるでしょう。
その場合、「Why」、つまりなぜ、この領域に強い興味を抱いたのか、その興味は根っこの生えたもので、多少大変なことがあっても乗り越える糧となるようなものであるのかを次に知りたくなります。
上記では「成功事例がない」ことと「コンテンツで人の心が動く瞬間が好き」ということですが、これだけだと本気の興味なのか、ただのちょっとした関心なのかがあまりわかりません。
「好き」を証明するには、そうなった「きっかけ」や「理由」を自分のライフヒストリーの中で示すことです。そうすれば納得性や信憑性が高まります。
(※3)
また、ライフヒストリーの中ではなかなか「きっかけ」はなく、「気がついたらそうだった」というような場合は、書いていただいているように、そのために何をしてきたのか(How did you do?)の水準を伝えることでも代替できます。
程度を示すためには、できるだけ数値にできることは数値にして、相手にイメージしてもらうことが必要ですが、現状では経験年数ぐらいしか書かれていません。
興味の強さの程度を証明するために、「どのぐらい」がわかるような数値で表せる定量的なエビデンスを探すか、それがなければ乗り越えてきた障害物などの定性的なエビデンスを探して示しましょう。
これらの「事実から来る根拠」があってこそ、後半の「今後はこうしたい」が生きてきます。
逆に言うと、それがなければ、いくら「今後はこうしたい」と言っても、そのまま相手は鵜呑みにして信じてはくれません。言うだけは簡単で、本当に実行してくれるかどうかわからないからです。
「何かを好きである」ことを証明するのは難しいですが、本気であれば探せば何かあるのではないでしょうか。改めて過去を振り返って、自分の好きの本気度を示す事実がないかを見つけて、相手にそれを伝えましょう。
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