「ベンチャー企業への転職」メリット・デメリットと失敗しないための3つのポイント
「成長性は高いしやりがいもありそうだけれど、将来性は未知数、経営不安リスクもある」というのがベンチャー企業の一般的なイメージ。「転職先として気になるけれど、果たして踏み切っていいものかどうか」と迷っている人もいるのではないでしょうか。
そこで人事歴20年超、転職市場の動向に詳しい「転職のプロ」曽和さんに、ベンチャー企業で働くメリット・デメリット、失敗しないためのポイントなどについて伺いました。
アドバイザー
株式会社人材研究所・代表取締役社長
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略』(講談社)など著書多数。
そもそも「ベンチャー企業」とは?
ベンチャー企業には明確な定義はありませんが、一般的には、設立して5年以内程度の新しい企業であり、かつ新しいビジネスを手掛けている企業が当てはまるといわれています。
さらに、置かれているステージによって、大きく2つにわけられます。
スタートアップ期
会社を立ち上げてまだ間もない時期。事業コンセプトはあるが方向性が定まりきっておらず、試行錯誤しながら「勝ち筋」を見つけている段階。まだ組織も整備されておらず、制度面も整っていないため、公募による採用活動を行う企業は比較的少なく、社員紹介(リファラル採用)などで人材を集めるケースが多い。
拡大・成長期
事業の方向性が確立し、自社の商品・サービスの拡販体制に入っている時期。売り上げ・利益が倍々ペースで伸びるケースもあり、会社の成長スピードを肌で感じられる時期。拡販を担う営業職や、会社の成長を支えるバックオフィス部門の強化のため、採用を強化する企業が増える。
ベンチャー企業に転職するメリット・デメリットは?
ベンチャー企業に転職するメリット・デメリットは、スタートアップ期か、拡大・成長期かによって変わります。
スタートアップ期のベンチャー企業の場合
スタートアップ期のベンチャーで働くメリットは、フロンティア精神をもって試行錯誤しながら、自ら事業の方向性を決められること。新しい商品・サービスを考える、新しい制度を考えるなど、0→1にかかわれるチャンスも大いにあります。
一方で、組織が小さく人も少ないため、個人が任される範囲が広く、一人で何役もこなす必要があります。自身の専門領域を突き詰めたいという人には、あまり向いていないかもしれません。収益基盤がまだ確立されていないので、給与水準も比較的低い傾向にありますが、ストックオプションやRSUといった形で企業の成長に応じた経済的なメリットもあります。
拡大・成長期のベンチャー企業の場合
拡大・成長期の場合は、商品・サービスが確立して、ある程度の「勝ち筋」が見えています。それを拡販するべくたくさん打席に立つ(=現場の最前線で商品・サービスを軌道に乗せるため奮闘する)ことができるため、「短期間で数多くの経験を積むことができる」というメリットがあります。まだ組織が小さいため、仕事の全体感をつかむことができ、「自身で事業を動かす喜び」も感じられるでしょう。
一方で、成功体験だけでなく失敗経験も多く積むことになるため、失敗から学び、次につなげる姿勢が必要とされます。また、これらの経験をもとに、高速でPDCAを回し続けることも求められます。スピード感が何より求められるため、物事にじっくり取り組みたい人には厳しい環境かもしれません。
ベンチャー企業に向いている人はどんな人?
ベンチャー企業への向き・不向きを測るには、大きく3つの判断軸があります。
あいまい耐性がある人
あいまい耐性とは、先行きがわからないなどといったあいまいな状況へのストレス耐性のこと。設立間もない企業、急成長中にある企業は不安定なもの。「事業計画がうまくいくかわからない」「本当にこの方向性でいいのかどうかわからない」というあいまいな状況の中でも前向きに頑張れる人、既知より未知にワクワクできる人がベンチャー企業に向いています。
思考タイプが「他責」の人
ビジネスシーンにおいて、自責思考・他責思考という言葉をよく耳にすると思います。「自責」とは、何か問題が起きたときに自らを変えることで状況を好転させようとする思考であり、「他責」とは、自分ではなく他社や環境を変えることによって状況を好転させようとする思考のこと。特に設立間もないベンチャー企業においては、ルールはあってないようなもの。会社を取り巻く環境はめまぐるしく変化し、自社に合わなくなったルールはどんどん変えていく必要があるため、「自分ではなく環境を変える」他責思考の人のほうが向いているといえます。
意思決定スタイルが「即断型」の人
物事を決める際、即断するタイプと熟慮するタイプがいますが、ベンチャー企業に向いているのは「即断型」の人。重要な局面で、熟慮して決断することは大切ではありますが、スピード感が命のベンチャーにおいては、重要なチャンスを逃してしまう恐れがあります。タイミングを見極め、手持ちの判断材料の中で「やる・やらない」を決断できる人のほうが向いています。
ベンチャー企業への転職で失敗しないための3つのポイント
ベンチャー企業の見極めについてはいくつかのポイントがあります。以下のポイントをチェックして、自分に合う企業を選びましょう。
(1)社長との相性を確認する
組織が小さければ小さいほど、「社長」が企業のすべてです。事業の方向性も社風も、何もかもが社長の意向で決まります。そんなベンチャー企業において社長との相性が悪いのは致命的であり、組織が小さいだけに逃げ場もありません。理念や志に共感できるか、人柄や仕事の進め方などが自分に合っているかどうか、しっかり確認したうえで転職を決めましょう。
(2)業界の1番手、2番手に絞る
「ここは成長分野」とみると、たくさんの企業が一気に市場に参入してきます。しかし多くの場合、その分野の1番手、2番手しか生き残れないのが現実。「成長が見込まれる分野だから」という理由だけで転職を決めるのではなく、先駆者的な立場の企業、現状でトップを走っている企業を選ぶようにしましょう。
(3)スタートアップ期と、拡大・成長期を混同しない
よく耳にする転職失敗例がこれです。同じベンチャーでも求められる役割が異なるので、注意が必要です。自分の手で事業を生み出したい、クリエイティビティを発揮したいという理由でベンチャーを志したものの、もう試行錯誤の段階を過ぎた拡大・成長期にあるベンチャーを選び、「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースが多いようです。逆に、右肩上がりの成長を感じたい、自分の手で会社を大きくしたいという人は、0→1を強いられるスタートアップ期の企業は合わないかもしれません。
よく「ベンチャーは大手に比べて経営が安定していないから、潰れてしまったらどうしよう…」と気にする人がいますが、大手企業に比べて潰れる確率が高いのは当たり前。潰れるか否かを気にしている時点で、ベンチャー企業への転職は止めたほうがいいでしょう。
スタートアップ期に試行錯誤しながら0から1を生み出す力、拡大・成長期にたくさんの現場経験を積み、高速でPDCAを回しながら会社を成長に導く力は、ベンチャー企業だからこそ磨かれるもの。変化の波が激しく、人々の志向も多様化する中で事業の賞味期限がどんどん短くなっている今、これらのスキルはどの企業においても高く評価されるものであり、ビジネスパーソンとしての有力な武器になるはずです。
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