大手から大手への転職を実現させるために知っておくべきこと

大手から大手への転職は、近年の転職市場を考えると、第二新卒も含めて大いにチャンスがあります。
そこで、転職成功のために知っておくべきこと・注意点、大手企業への転職事例、大手企業が評価する第二新卒のポテンシャルの具体例などを、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏がアドバイスします。
「大手企業に勤務しているが、転職したい」「大手企業ならではのメリットは手放したくないから、次も大手企業に行きたい」そう考えている皆さんは、ぜひご確認ください。
目次
大手から大手への転職は可能?転職市場はどうなっている?
大手企業の中途採用事情を基に、大手から大手への転職チャンスがどのくらいあるか、第二新卒でも転職しやすいのかなどを解説します。
大手企業の中途採用は活発化。大手から大手への転職チャンスは大いにある
株式会社リクルートの調査(※)によると、2023年度の「従業員5000人以上の企業の1社当たりの中途採用人数」は110人、「中途採用増減率」は前年度比+44.7%となり、大手企業の中途採用が活発化していることがわかります。
また、2025年4月の新卒採用と2024年度の中途採用の割合について、前年との比較を尋ねたところ、すべての従業員規模で「中途採用の割合を増やす予定」が「新卒採用の割合を増やす予定」に対して大きいという結果になりました。
中でも、その差が特に大きかったのは従業員5000人以上企業で、7.2%ポイント差となりました。
大手企業は中途採用に力を入れているため、大手から大手への転職のチャンスも大いにあると言えるでしょう。
※出典:株式会社リクルート「中途採用実態調査(2023年度実績、正規社員)」
第二新卒も大手企業から大手企業への転職を実現しやすい環境にある
第二新卒での転職は、求人も多く、企業の採用傾向がポテンシャル重視となったことにより、大手から大手への転職も含めて希望を実現しやすい傾向にあると言えるでしょう。
リクルートエージェントの調査「Z世代(26 歳以下)の就業意識や転職動向」によると、「第二新卒歓迎と記載がある求人」の推移は、5年間で約5.5倍増となっています。

※出典:株式会社リクルート「Z世代(26 歳以下)の就業意識や転職動向(PDF)」より
また、採用にあたり「本人の潜在的成長力や伸びしろ」を重視することが重要であると答えた企業は半数を超えました。
かつての中途採用といえば、経験や専門性を持つ即戦力採用が主流でしたが、ポテンシャルを重視して採用する企業が増加。
経験が浅い第二新卒にとっても、キャリア選択の機会が広がっていると言えそうです。

※出典:株式会社リクルート「Z世代(26 歳以下)の就業意識や転職動向(PDF)」より
大手企業や上場企業が中途採用を行う背景・目的とは
そもそも人材の層が厚い大手企業がなぜ中途採用を行うのか――採用の背景・目的を知っておきましょう。
もちろん、企業によって事情は異なりますが、大きく分けると次のような3パターンが挙げられます。
1. 自社にない知見・ノウハウを導入したい 2. 組織変革・風土変革を図りたい 3. 新卒採用予定数が満たなかったため、中途採用で補いたい |
1. 自社にない知見・ノウハウを導入したい
変化が激しい今の時代においては、大手企業といえどもこれまで築いたブランドや実績だけでは勝負できません。
時代の変化に対応し、新たな領域へ踏み出す必要に迫られています。
例えば、これまでの事業や業務オペレーションにITを導入する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を推進する動きが活発になり、知見のある人を採用するケースもあるでしょう。
また、他社・研究機関・自治体などと連携して新たな社会的価値やビジネスモデルの創出を図る「オープンイノベーション」に注力する企業も多数あります。
あるいは、これまでの事業とは異なる領域に進出し、新規事業を立ち上げる動きもあります。
こうした新しい取り組みに関しては、大手企業であっても自社内に知見やノウハウを持つ人材がいないケースもあり、外部から人材を招き入れるというわけです。
2. 組織変革・風土変革を図りたい
時代の変化に対応するため、組織体制や風土そのものを変革しなくてはならないと考えている大手企業も多数あります。
そういった企業では、組織に新しい風を送り込み、固定観念を打ち破るような組織づくり・風土づくりを推進してくれる人材を求めています。
近年では、「ダイバーシティ(多様性)推進」「女性活躍推進」「働き方改革」などが重要課題となっているので、そうした施策の策定から実現までを手がけた経験者を採用するケースも多いでしょう。
3. 新卒採用予定数が満たなかったため、中途採用で補いたい
近年の少子化に伴い、大手企業でも新卒採用に苦戦する企業は多数あります。
特に、BtoBの事業を手がける企業は、上場企業であっても一般消費者の知名度が低く、新卒採用で学生が集まりにくい傾向があります。
新卒採用予定数を満たせていない大手企業も多く、新卒採用の未充足分を補うため、社会人1~3年程度の「第二新卒」を中心に、若手を中途採用する企業も多いでしょう。
大手企業から大手企業への転職では「情報収集」が大切
中途採用が活発になっていたとしても、大手企業への転職は一般的に狭き門です。
その狭き門を通過するには、情報収集が重要になります。
興味がある大手企業の採用背景・目的をつかむために、求人情報や採用サイトだけでなく、ニュースリリースやメディアの記事、経営陣によるSNSでの発信などにも目を通してみるといいでしょう。
その企業が抱えている課題や新たな取り組み、将来ビジョンなどを理解し、「中途採用人材に求めるもの」をイメージしてください。
そこから、自分の転職目的に合っているか、選考で何をアピールすればいいかを考えてみることをおすすめします。
大手企業から大手企業への転職成功事例
大手企業から大手企業の転職はどういった職歴やスキルの人が成功させているのでしょうか。
ここでは、「経験・スキル」がマッチした転職事例、「第二新卒」でポテンシャルを期待されていた転職事例をそれぞれ紹介します。
「経験・スキル」がマッチして、大手から大手へ転職成功させた事例
企業の採用目的が「自社にない知見・ノウハウを導入したい」「組織変革・風土変革を図りたい」などである場合、経験・スキルをしっかりアピールすることで異業種への転職を果たしている事例が複数あります。
下記は、新たな領域に進出する、あるいは既存の手法を変革しようとする大手企業が求める「経験・スキル」にマッチしたことで採用に至った事例です。
【転職前】大手電機メーカーの生産現場のデータ収集・分析 【転職後】大手金融機関の顧客データの分析・新サービスのプロジェクト責任者 |
【転職前】大手製薬メーカーの研究・マーケティング 【転職後】大手IT企業のヘルスケア分野での新規事業の立ち上げ |
【転職前】大手金融機関の事業企画 【転職後】大手メーカーの金融関連の事業企画 |
【転職前】大手メーカーの生産管理・物流企画 【転職後】大手ECサイト運営会社のSCM(サプライチェーンマネジメント)戦略のプロジェクトを担当 |
【転職前】大手飲料メーカーの営業 【転職後】大手医療機器メーカーで新たな販売手法の導入を担当 |
「第二新卒」でポテンシャルを期待され、大手から大手へ転職成功させた事例
一方、「新卒採用の補充目的」「若年層の増員」などを目的とした中途採用では、ビジネス経験そのものは問わず、「ポテンシャル」に期待して、第二新卒を採用している例が数多くあります。
【転職前】メガバンクの法人営業 【転職後】大手自動車メーカーの海外営業 <企業が第二新卒に期待したポテンシャルとは> 英語・中国語を大学時代に学び、英語圏への留学経験あることから、語学力を期待された。 また、就職活動のときにも自動車メーカーを志望しており、現職でもグローバル展開する製造業の大手企業向けの営業経験があることから、転職後の仕事にも意欲的に取り組めるだろうとポテンシャルを評価された。 |
【転職前】大手エレクトロニクスメーカーの海外営業 【転職後】大手消費財メーカーのマーケティング <企業が第二新卒に期待したポテンシャルとは> 現職の海外営業では、北米エリアを担当しており、言語や商習慣の違い、物理的な距離の遠さなど対応が難しい顧客に対応して一定の成果を出していることから、企画力や論理的思考力、分析力、プレゼンテーション力、調整・交渉力のポテンシャルが高いと判断された。 |
【転職前】大手証券会社の個人向け営業 【転職後】大手情報サービス企業の法人営業 <企業が第二新卒に期待したポテンシャルとは> 現職の個人向け営業で、計画性や論理的思考力・分析力を活かして、社内MVPなどの成果を出していることから、ポテンシャルの高さを期待された。 さらに、目標達成意欲が高く、現状に慢心せずに、法人営業という異なる領域に柔軟に変化対応しようとする変化対応力・柔軟性や学ぶ姿勢の高さと、新しい環境にも適応ができそうなコミュニケーション力の高さを評価された。 |
大手企業から大手企業への転職活動で注意すべきポイント
大手企業から大手企業を目指して転職活動をする場合は、以下の4つのポイントに注意しましょう。
1. 「大手企業の出身者」であることに市場価値があると過信しない 2. 転職の「目的」を明確にする 3. 求人が出てくるタイミングを逃さない 4. 第二新卒は、特に「転職理由・退職理由」の伝え方に注意 |
1. 「大手企業の出身者」であることに市場価値があると過信しない
大手企業で働いていた人の中には、ご自身の経験・スキルを過信している人もいらっしゃいます。
しかし、中途採用選考では、会社の戦略や商品のブランド力、優秀なチームメンバーなど、本人の実力以外の部分で成果を挙げられたのではないか……と、シビアな目で見られることもあります。
大手企業で働いていたとしても、これまでの経験・スキルを転職先企業でも活かせるのかどうかは客観的に判断することが重要です。
また、「大手出身」という経歴は転職市場で高く評価されるはず……と考える方も多いようです。
しかし、大手企業の募集は転職希望者に人気があるので、優秀なライバルが多数集まります。
また、大手企業の中途採用が活発になったとしても、応募者数よりも採用人数が少ないため、新卒の就活時以上に競争が厳しく、門戸が狭いということを覚悟しましょう。
2. 転職の「目的」を明確にする
現在勤務している大手企業を辞めたいという人に理由を聞くと、こんな答えがよく返ってきます。
「上のポストが詰まっていて、裁量権を持てるまで5年も10年もかかってしまう」
「稟議や根回しに時間と手間を取られるのがストレス。スピード感を持って仕事をしたい」
「会社都合で異動・転勤させられ、自分が望むキャリアを積めない」
こうした不満は中小ベンチャーに転職することで解決できる可能性が高いといえますが、転職活動を進める過程では、ついネームバリューのある大手企業に目を奪われてしまう傾向があります。
大手ならではの安定感、福利厚生、ステイタスを「やはり失いたくない」という気持ちも出てくるのでしょう。
そうすると、転職活動の目的を見失い、企業選びの軸がブレてしまいます。
大手企業のネームバリューやブランド力だけにとらわれず、「転職によって本当に実現したいことは何か」を突き詰めて考えることをおすすめします。
3. 求人が出てくるタイミングを逃さない
大手企業では、多くの場合、年間の採用スケジュールがきっちりと決まっているものです。
決まった時期に募集を開始し、選考期間や入社時期も定められています。
応募したい企業がいつ頃、募集~選考を行うのか、情報収集しておいてください。
なお、中小ベンチャーなどであれば、面接日程や入社日などについて、応募者の都合に合わせてくれることも多いのですが、大手の場合、よほど強く求めている人材でないかぎりは融通を利かせてもらいにくいといえます。
「この日に入社できないのであれば不採用」ということもあり得ますので、スケジューリングに注意が必要です。
また、中小企業と大手企業では、大手企業の方が選考期間は長くなるケースが多いでしょう。
中小企業と並行応募する場合は、なるべく内定が出る時期を揃えられるように調整するようにしましょう。
4. 第二新卒は、特に「転職理由・退職理由」の伝え方に注意
社会人として比較的早い段階で転職を決意している第二新卒の場合、現職にミスマッチを感じて不満を抱えている人もいるでしょう。
しかし、ネガティブな感情をそのまま転職理由や退職理由で伝えるのはおすすめできません。
例えば、大手企業で働いている場合には、経験を積んできた先輩を差し置いて責任ある役割や大きな案件を任されたり、企画案を採用されたりすることは多くないでしょう。
客観的データや根拠もなく「自分にはもっと大きな仕事ができるはずだ」と転職理由や退職理由で伝えるのは避けましょう。
企業が第二新卒を採用する場合は、応募者のポテンシャルや入社後の成長などに期待をしています。
そのため、転職理由や退職理由を伝える際は、「成長意欲」「向上心」「柔軟性」「新しい事柄への挑戦意欲」など、ポジティブな面を盛り込むように意識すると良いでしょう。
まとめ
大手企業への転職は、中途採用が活発になっていても応募人数よりも採用人数が少ないことや他社から優秀な人材が集まるといった理由から競争率は依然として高いままでしょう。
そのため、大手出身という経歴だけで転職活動が有利に進むことはない、ということをお伝えしました。
転職活動を始めるにあたっては、そういった採用背景を知った上で、転職の目的を明確にし、企業選びの「軸」を定めることが大切です。
自分がやりたいことができる会社、理想とするキャリアを積める会社とはどんな会社なのかを考えてみましょう。
場合によっては、転職目的を現できるのは、中堅中小企業やスタートアップベンチャーなどかもしれません。
大手への選考応募と並行して、企業規模だけにこだわらず、視野を広げて企業探しをすることもおすすめします。
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