「40代の転職」で成功する人、失敗する人
40代の転職は人生において、大きな分岐点になります。そのため、失敗したくないという気持ちを強く持つ方も多いはず。
今回は、元リクナビNEXT編集長の黒田真行氏に、40代転職で成功する人と失敗する人の差はどこにあるのかについて、解説していただきます。
転職先の探し方、「コト軸」「モノ軸」どちらを重視?
転職支援の仕事をしていると、すぐに理想の転職先が決まる方と、なかなか転職先が決まらない方、それぞれに共通する典型的なパターンがみえてきます。
「コト軸」で探すと可能性を広げられる
転職先を探す際に、自分が大切にしているコトを軸に探すのが「コト軸」。
希望条件を細かく決めず、抽象的にやりたいことを中心に考えることで可能性は広がります。
転職アドバイザーに相談しているとすると、アドバイザーの客観視を最大に引き出す相談方法になっていきます。
以下は具体例です。
「長く深く人間関係を構築できて、かつプロモーションのスキルを生かせる仕事を希望しています。メーカーとか商社はあまり気にしませんが、お客さまの要望がダイレクトに返ってくる環境かどうかは重視しています。初年度の年収は下がっても、実績によって報酬が上がっていく可能性があれば、頑張っていけると思います」
この事例は、比較的早く、納得度が高い仕事に決まる方のパターンです。要件が抽象化されているため、一気に幅広い求人が浮かび上がってきます。
「モノ軸」で探すと限定的な探し方になる
転職先を探す際、職域、地域などを具体的に絞って探すのが「モノ軸」。「何となくいい求人がないか探している」という方に比べれば、希望条件が自分の中でしっかり整理されているのですが、その分選択肢を極端に少なくしてしまうので要注意。
その条件が、転職市場で需要や出現率が少ない職域・地域・条件であるがために極端に選択肢を減らすことになる可能性があります。
以下は具体例です。
「広告業界は顧客がコロコロ変わるのでNGにしています。自社製品の広報職でキャリアを深めていきたいので、形がある製品を作っているメーカーで広報の仕事を探しています。希望年収はこれまでと同水準かそれ以上を希望しています。エリアは渋谷から池袋に絞っています」
この事例は、条件を細かく限定している分、転職活動が長期化してしまう可能性があります。
どちらの方法がいいかは、その方の置かれている状況や、こだわりの強弱、市場の需給バランスなどがあるため一概には言えませんが、新天地に対して自分の可能性を広げたいと考えるのであれば、「コト軸」のほうが、圧倒的に理想に近い働き方を速く手に入れることができると思います。
「コト軸」で転職の可能性を広げた成功事例
異なる業界や環境に移っても活用できる「持ち運び可能な能力」をポータブルスキルと呼びます。コト軸で転職先を探すことで、ポータブルスキルを活用して、非常に満足度が高い転職に成功した事例が多数あります。
得意なマネジメント手法を生かし、異業界へ
Fさんは、金融業界で営業部門のマネジャーを長く務めた方。しかし、スタッフ部門に異動となり、「営業の現場に身を置きたい」という思いから転職を決意しました。
「営業マネジャー」の求人案件が複数ある中、Fさんが選んだ転職先は、ホテルやレストランを運営する会社でした。
今まで経験してきた業界とはまったく異なる世界ですが、Fさんの経験が生かせる共通点がありました。それは「女性スタッフが主力の組織」であること。Fさんは前職で女性を対象としたマネジメントを経験しており、女性メンバーへの接し方、モチベーションの高め方などを心得ていました。そのスキルが買われたのです。
このように、業界が異なっても、マネジメントスタイルが共通していれば、歓迎されるケースは多数あります。Fさんの武器は「女性のマネジメント力」でしたが、「若手中心の組織」「正社員・契約社員・派遣など多様な雇用形態が混在する組織」など、自分がどんな組織、手法のマネジメントが得意かを意識してみてください。思いがけない業界にフィットするかもしれません。
「仕組み作り」の経験を生かし、異業界へ
ネットサービスの開発を行っていたKさん。40代になって強く意識するようになったのが、「子どもの目に、父の仕事はどう映っているのか」ということでした。「お父さんはよりよい社会をつくるために頑張っている」――。そんな姿を見せたいという思いが強くなり、転職活動を開始。選んだのは、地域の活性化を支援する会社でした。
観光やレジャーの知識はなかったKさんですが、「新しい仕組みを作る」「すでにあるものに新たな付加価値をつける」といった経験が地域活性化の施策に生かせると期待され、採用に。入社後は、「事業開発室長」のポジションで活躍されています。
「海外ビジネス」経験を生かし、異業界へ
大手メーカーで海外事業部門のマネジャーを務めていたSさん。大きな組織では根回しや稟議(りんぎ)に時間がかかり、スピーディーにプロジェクトを推進できないことに不満を抱き、中小ベンチャーへの転職に踏み切りました。
そこで出合ったのは、レジャー用品メーカー。ちょうど海外市場の開拓に乗り出していました。そのメーカーの商材は、Sさんがこれまで扱ってきた法人向け商材とは異なり、最終ユーザーが手に取る商品です。しかし、Sさんの海外市場のマーケティング経験、現地企業との交渉スキルに期待が寄せられ、COO(最高執行責任者)として迎えられました。
このように、「海外ビジネス」の経験は、思いがけない業界で活かせるチャンスがあります。
「自分のキャリアなら、転職先はこういったところだろう」と、自分のイメージが及ぶ範囲内だけで選んでしまうのはもったいないこと。視野を広げてみると、意外な業界に活躍の場が見つかるかもしれません。
転職後の後悔を生む「いま、ここ、自分志向」
転職した後で後悔する方の傾向として、「今、ここ、自分」志向というものがあります。
この3つのキーワードが先行する状態は、なんらかの焦りを持たれているケースで、通常と比べても視野が狭くなっている可能性があります。
キーワード1:「今」
1つめの「今」というキーワードは、「転職した瞬間から、一定以上の役割や報酬を求めてしまう」というケースです。
「転職後すぐ部長以上の役割を担いたい」「入社した段階から前職水準の年収を確約してほしい」という方がおられます。こういう場合、相思相愛で最終面接まで進み、ほぼ内定が決まりそうな場面でも、条件面の考え方の相違で破談になることもあり、活躍機会を逃してしまう残念な事態になりがちです。守るべき家族や生活がある以上、特に経済面での安定性の確保が最優先されることは当然ですが、雇う側の観点から見ると、「採用した人が必ずしも自社の風土や業務に適性を発揮して活躍してくれるかどうかわからない」というリスクがあります。
もし業界や職務に土地勘がある方であれば、自分なりに生み出せる成果もある程度見通せるはずなので、半年後や1年後にどれだけの成果を出せば、どんな待遇が得られるのかを確認しつつ、入社直後の、双方にとってのテスト走行期間は、いくらかの条件的譲歩をするということも有効な戦術になりえます。ぜひ「時間を味方につける」という考え方も視野に入れていただければと思います。
キーワード2:「ここ」
2つめの「ここ」というキーワードは、主に求人案件の重要な選択肢となる、業界や仕事、地域を指しています。
業界や仕事については、「今までやってきた業界」「今まで担当してきた職種」しか選択肢に入らないという“限定型”と、「絶対に考えたくない業界」「決して検討したくない職種」が多い“食わず嫌い型”があります。
「これまで積み上げてきた経験という財産を手放したくない」という気持ちは、とても自然なものですが、「自分が気づいていなかった強みが発揮できる機会」や「自分の経験が意外なところで転用できる機会」まで潰してしまうのはもったいない、と思う場面は本当に多いものです。
キーワード3:「自分」
3つめの「自分」というキーワードは、「自己の能力を固定的なものとしてとらえていること」を指しています。
これも、時間を味方に付けられていない現象の1つですが、「自分の能力はこれ以上、進化も成長もしないもの」ととらえてしまうリスクです。
特定の分野での経験やスキル、知識を豊富に持っていることと、今後の自分の成長は本来は無関係なはずなのですが、経験値が高い人ほど、無意識のうちに上限値を決められているふしが見えることがあります。ここに自己評価のズレが重なると、求人を選択する基準にぶれが生じて、自分の力が必要とされ生かされる求人を見落としたり、逆に自分のキャリアが必要とされにくい会社ばかりに応募を続けたりしてしまい、やがてキャリアの迷子になってしまいます。
ちなみに自己評価のズレとは、特定の環境やコンディションに依存していたこれまでの実績を拡大的にとらえてしまい、周囲の評価よりも自己評価を高めに自覚しているケース、逆にかなり応用範囲も広く、他業界から見てもかなり高い評価を得られる力量がありながら、ご自身で過小評価してしまっているケースなどです。
先に異業界に転職した先輩や、異業種の知人・友人、転職コンサルタントなど、自身のキャリア価値を客観的にアドバイスしてくれる人を複数見つけて、転職市場における自分自身のキャリア価値を把握することを強くお勧めします。
事実と思いを重ねて仕事人生をストーリー化する
新卒や第二新卒とは異なり、ある程度経験を持ったベテランの方の転職の場合は、どんな仕事でも多かれ少なかれ、自分なりに戦略を練る力、周囲のメンバーをマネジメントする力、そしてメンバーのマインドを奮い立たせるリーダーシップを求められるケースが圧倒的に増加します。
ただ、歴史の古い会社や、景気に左右されない安定的な業界、カリスマ経営者がトップダウンで長年采配を振るうなど、閉鎖的な環境で変化が少ない業界の場合は、管理職であってもプレーヤーに近い期待値しか受けないこともあります。
そういう環境に長くなじんでしまうと、当然ながら、自分の頭の中での管理職や経営幹部の役割責任の定義が、本来求められるべき範囲よりも小さなものになってしまうことがあります。一生、同じ環境にいるのであればそれでも問題はありませんが、いざ外部に出て、競争環境の激しい会社の経営幹部というモノサシで期待を受けると、それに応えきれずにオーバーフローしてしまいます。
その段階で、社会人として生まれ育った環境に疑問を持ち、ギャップ解消に動き出せればいいのですが、長年の習慣はなかなか簡単には変えられません。結果的に、他責的になり、次の職場へ移り、また同じ壁にぶつかる、というケースは往々にしてあります。「1社目の経験が長く、それ以降、短期間で転職を繰り返す」というパターンの方は、その可能性が高いかもしれません。
ただ、だからと言って、方法がないわけではありません。どんな方でも、ていねいに過去の仕事をひもといていくと、自分の意思で業績を生み出してきた経験はあるはずです。自分自身が確信をもって勝ち取った成果は、高い自己信頼とともに語られるので、説得力は圧倒的です。
みずみずしくリアリティーを持ったエピソードを職務経歴書や、面接時の自己紹介で伝えれば、きっと面接相手の心を動かすはずです。
そういった経験を自分自身で見つけるのが難しい場合は、同僚やキャリアアドバイザーなどに客観的な意見を求めましょう。
(記事作成日:2017年8月29日 EDIT:リクナビNEXT編集部)
黒田 真行(くろだ・まさゆき) ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役
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