産後復帰の女性の転職 40歳からのキャリアアップ
カズコさん(仮名):40代 事務職 |
新卒入社した銀行を一年で退職し、理想のキャリアを追い求めた20代
大学卒業後、大手の都市銀行に就職したカズコさん。店頭の窓口業務に就いたが、規律を重んじ、細かなところまでルールを厳守しなければならない銀行の堅苦しさが肌に合わず、1年で辞めた。およそ25年前、1990年代に入ったころだ。
「当時は第二新卒がもてはやされていて、今よりもっと気軽に転職できる風潮があったので、どうせ辞めるなら早いほうがいいと思いました。新卒の就職活動で知った外資系の証券会社が頭に浮かび、会社説明会に行ってみたんです。そうしたら雰囲気がピリッとして身が引き締まる感じで、それまで見た会社とは全く違いました。なかでもプレゼンテーションをしていた女性はとても聡明でテキパキとしていて、いかにも仕事ができそうな人。強く印象に残りました。」
もともと外資系企業に憧れを抱いていたが、まだ経験も浅く、厳しい環境でやっていけるか分からない。そんな不安もあって、結局、国内の投資顧問会社に転職をすることにした。仕事は資産運用の委託先でもある海外の投資信託会社のデータを管理するバックオフィス業務だ。価格の変動に伴う照合や入力など作業量は多かったが、自分の裁量で仕事が進められるのが魅力だった。残業するか早く帰るか時間の使い方も自由だ。もちろん仕事のやり方について干渉されることもない。居心地がよく7年ほど働いたが、仕事に余裕ができて、自信もついてきたことで、「やはり外資系の証券会社に挑戦したい」という思いがよみがえってきた。
「学生時代に『すごいな』と圧倒された、外資系で働く女性の姿が鮮烈でいつまでも忘れられず、ああいう人たちの中で働きたいという気持ちが捨てきれませんでした。でも当時、外資系証券会社の正社員の募集が見つけられず、派遣スタッフならいくらでもありました。派遣法などの規制緩和が進んでいた時期でもあったので、どんな形でも働いていれば社員になれるかもしれないと思い、転職を決断しました。」
外資系の証券会社は時給が高く、月に手取りで50万円ほどにもなった。収入面には満足していたし、仕事もやりがいがあった。だがその一方で、カズコさんはこの会社の社員の優秀さに何度も驚き、より正確にいえば打ちのめされた。
「ヘッドハンティングで入社した人が多いせいか、皆さん本当に優秀でしたね。一流大や大学院卒など学歴が高いだけでなく、例えば大学時代に税理士資格を取るなんて当たり前。雑談しながら手を休めず、パソコンでさらりと書類を仕上げるのを目の当たりにして、とてもかなわないと思いました。追いつきたいけど、このレベルに達するのは無理だと感じました。」
会社を辞め育児に専念、40代になって就職活動を始める
正社員を目指すのをあきらめたカズコさんは、契約期間終了とともに会社を離れ、派遣社員として複数の会社で働いたあと、結婚を機に家庭に入った。
しばらくは家事や育児に専念したが、子どもが小学校に入り、さほど手がかからなくなったことから、働く意欲が芽生えてきた。42歳の時だった。年齢的に採用のハードルは高そうに思えたが、たまたま銀行に勤めていた経験を買われ、建設会社の事務職に就職できた。
面接では「経理担当」と聞いていたが、小さな会社のため一般事務まですべて任された。給与計算や労務管理など、カズコさんには未経験の業務も多い。インターネットで調べたり、総務業務の手引書を買って勉強したりして、少しずつ知識を身につけていった。「できることが増える」という手応えが楽しかったが、職場の環境にはいつまで経ってもなじめなかった。
「アットホーム過ぎるというか、小さな会社特有の濃密な人間関係が苦手でした。ほかの社員から毎日のように子どもの様子を聞かれたり、皆も家庭のことをあれこれと話したがります。飲み会には当たり前のように参加するなど、社員には家族同然の付き合い方が求められ、職場の親睦会に取引先の人や社員の家族が気軽に来るのも違和感がありました。身内感覚ではなく色々な人と関わりたい、もっとビジネスライクなところで働きたい。この会社でキャリアが終わるのは嫌だなと思うようになりました。」
カズコさんにとって幸運だったのは、4年間の経理・総務経験を通して、評価されるスキルが身についていたことだ。業種は変えずに何社か受けた結果、中堅の建設会社に就職することができた。資材部に配属され、事務職として書類作成や電話応対を担当するほか、出張の手配など営業職のアシスタントのようなこともしているが、前の会社で経験したことばかりなので戸惑うことはない。「干渉されずに自分の裁量で働きたい」という希望を満たしている職場であることも嬉しかった。以前の会社で依頼されていたような、社長の個人的な買い物などの用事を頼まれることもない。部署ごとに組織が分かれていて、福利厚生も整っているから安心できる。家族的な経営スタイルではない、現在の職場で働くようになった今が、「本当の意味で社会復帰を果たした」と感じている。
さまざまな会社を経験したのち、自分の居場所を見つけた
「大学を出てから26年のキャリアを振り返って、後悔があるとすれば待遇が良かった最初の銀行を辞めなければよかったこと、もしくは新卒で証券会社を選んでおけばよかったということですね。でも時代の風に影響されて身軽に会社を変えて、外資系の証券会社や投資顧問会社をはじめとして、いろんな職場を経験したことに後悔はありません。金融経験があったからこそ、ブランクがあってもすぐに就職することができたし、そこで総務関係の知識を積むこともできた。今回、これまでの経験を活かして望み通りの転職ができましたし。」
まっすぐにキャリアアップし、責任ある立場で活躍する道もあるが、家庭人としてかけがえのない時を過ごし、再び社会に出る道もひとつの生き方である。これまでの職業経験や培ったスキルをベースに転職を果たしたカズコさん。現在は「自分なりの居場所を手に入れられた」という実感を持って働いている。
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