履歴書「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄の正しい書き方をケース別に解説

履歴書に設けられている「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄は、応募者の所得税や健康保険の手続き、社宅・家族手当などの支給要件を企業が把握するための情報として使われてきました。
しかし、実際の記入にあたっては「配偶者がいても“扶養義務”は無にするべき?」など判断に迷うことも多いものです。
この記事では、それぞれの欄の正しい記入方法を、健康保険や税法の観点とケース別の状況に沿ってわかりやすく解説します。
履歴書の「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄の書き方
履歴書の「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄の書き方と記入例を紹介します。
履歴書の様式によっては、これらの記入欄が設けられていない場合もあります。 その場合は、企業に伝える必要はありません。
「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の基本的な書き方
履歴書の「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄は、基本的に以下のように記入します。
▼【記入例】独身で同居する家族がおらず、単身で暮らしている場合

|
「扶養家族」「配偶者」は家族の就労状況などによってさまざまなケースがあり、記入には注意が必要です。
続いて、ケース別の書き方を紹介します。
【ケース別に紹介】「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の書き方
履歴書に記入する「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」のケース別の例を紹介します。
配偶者や家族が「扶養家族」であるかどうかは、健康保険上の扶養家族の条件に基づき判断されます。具体的な条件として、年収や同居・別居の状況、仕送りの有無などを踏まえて、被保険者の収入により生計を維持されているかがポイントとなります。
以下の事例集では、配偶者の扶養状況と配偶者以外の扶養家族について紹介します。扶養家族に該当するかどうかの判断基準となる項目について、表を用いて整理していますので参考にしましょう。
【3人家族(夫・妻・子ども)の場合】
|
■ 配偶者の扶養状況
年収 | 扶養対象 |
---|---|
0円 | 〇 |
■ 配偶者以外の扶養家族
家族 | 同居・別居 | 年収 | 仕送り(年間) | 扶養対象 |
---|---|---|---|---|
子ども | 同居 | 0円 | 0円 | 〇 |
■ 履歴書への記入内容
配偶者:有/配偶者の扶養義務:有
扶養家族数(配偶者除く):1人
【4人家族(夫・妻・子ども2人)の場合】
|
■ 配偶者の扶養状況
年収 | 扶養対象 | 備考 |
---|---|---|
140万円 | × | 年収130万円以上のため |
■ 配偶者以外の扶養家族
家族 | 同居・別居 | 年収 | 仕送り(年間) | 扶養対象 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
長男 | 別居 | 120万円 | 72万円 | × | 仕送り<年収となるため対象外 |
長女 | 同居 | 0円 | – | 〇 | 年収130万円未満のため |
■ 履歴書への記入内容
配偶者:有/配偶者の扶養義務:無
扶養家族数(配偶者除く):1人
長男の年収は130万円未満ですが、仕送り額よりもアルバイト年収の方が多い為、被扶養者には該当しません。 |
【4人家族(夫・妻・夫の父・妻の母)の場合】
|
■ 配偶者の扶養状況
年収 | 扶養対象 | 備考 |
---|---|---|
128万円 | 〇 | 年収130万円未満のため |
■ 配偶者以外の扶養家族
家族 | 同居・別居 | 年収 | 仕送り(年間) | 扶養対象 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
父 | 同居 | 180万円 | – | × | 60歳以上で年収180万円以上のため対象外 |
配偶者の母 | 別居 | 100万円 | 120万円 | 〇 | 仕送り>年収となるため対象 |
■ 履歴書への記入内容
配偶者:有/配偶者の扶養義務:有
扶養家族数(配偶者除く):1人
あなたの父は、60歳以上で年収180万円未満ではないため、被扶養者には該当しません。 配偶者の母は、60歳以上で年収180万円未満であり、かつ仕送り額の方が多いため、被扶養者に該当します。 |
【3人家族(夫・妻・夫の弟)の場合】
|
■ 配偶者の扶養状況
年収 | 扶養対象 | 備考 |
---|---|---|
100万円 | 〇 | 年収130万円未満のため |
■ 配偶者以外の扶養家族
家族 | 同居・別居 | 年収 | 仕送り(年間) | 扶養対象 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
弟 | 同居 | 0円 | – | 〇 | 年収がなく、被保険者に生計を維持されている |
■ 履歴書への記入内容
配偶者:有/配偶者の扶養義務:有
扶養家族数(配偶者除く):1人
同居しているあなたの弟は収入がなく、被保険者に生計を維持されているので、被扶養者となります。 |
扶養家族とは
端的に言うなら、扶養家族とは生活費の面倒をみなければならない家族のこと。正式には、社会保険上では「被扶養者」、所得税法上では「扶養親族」といいます。
混同してしまいがちですが、その対象範囲も、社会保険上(被扶養者)と税法上(扶養親族)とでは異なるので、全く別モノと考えたほうがいいでしょう。
そこで、まずは社会保険(健康保険)上と、税法(所得税・住民税)上での扶養家族条件について、それぞれ解説していきます。
健康保険制度上の扶養家族(被扶養者)条件
健康保険法に基づく被扶養者の認定条件は同じですが、ここでは、健康保険組合に加入していない場合の企業の加入先である、全国健康保険協会の資料を元に例示します。
【健康保険における被扶養者の範囲】
※1.か2.のどちらかに当てはまる人
1.被保険者の直系尊属 ※a、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、弟妹、兄姉で、主として被保険者に生計を維持されている人(必ずしも同居している必要はない)
2.被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
①被保険者の3親等以内の親族 ※b(1に該当する人を除く)
②被保険者の事実婚の配偶者の父母および子
③【②】の配偶者が亡くなった後における父母および子
1.にある「生計を維持されている人」とは、被保険者の収入で生活している人という意味です。被保険者とは別々に住んでいる親や子どもに送金して援助している場合も、これに該当します。
2.にある「同一の世帯」とは、住民票の世帯が一緒であるという意味です。大学に通うために離れて暮らしている子どもに仕送りをしている場合、住民票を移していなければ厳密には同一の世帯となりますが、別世帯とみなしても特に問題はありません。
<用語解説>
※a 直系尊属
祖父母より前の世代で直通する系統の親族、養父母も含まれる。
※b 3親等以内の親族
1親等は父母・子。2親等は祖父母・孫・兄弟。3親等は曽祖父母、曾孫、おじおば、姪。本人の兄弟姉妹の配偶者は含むが、本人の配偶者の兄弟姉妹の配偶者は含まれない。
被扶養者は、上記の【健康保険における被扶養者の範囲】に該当することに加えて、収入の基準が次のように定められています。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上、またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない。
収入の基準について、一般的に要望の多い「同居していない親を扶養家族にしたい」というケースを例に説明しましょう。
親が60歳以上の場合は、年収が180万円未満で、被保険者からの仕送り額が、親の年間収入より上回っている必要があります。
ですから、年間170万円の年金で生活している親に、年間171万円の仕送りをしていれば、扶養家族と認定されます。しかし、仕送り額が年間169万円だと、扶養家族とは認定されません。
要注意なのが、失業手当を受給している場合です。例えば妻が「会社を退職したので一時的に夫の扶養家族に入りたい」と思っても、1日あたり3,612円以上の雇用保険基本手当(失業手当)を受給していると、扶養家族とは認定されません。
所得税法上の扶養家族(扶養親族)条件
所得税法上の扶養家族の条件については、以下の通りです。冒頭で述べた通り、税法では扶養家族のことを扶養親族といい、その年の12月31日時点で次の4つの要件すべてに当てはまる人が、扶養親族となります。
【税法における扶養親族】
※(1)~(4)すべてに当てはまる人
(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族 ※c及び3親等内の姻族 ※d)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や、市町村長から養護を委託された老人 ※eであること。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が58万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が123万円以下)。
(4) 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと。または白色申告者の事業専従者でないこと。
(2)の「生計を一にしている」は、必ずしも同居している必要はありません。例えば、勤務や修学、療養などで別居していても、生活費などを送金していれば、生計を一にしているとみなされます。
(3)の「年間の合計所得金額が48万円以下」とは、課税される所得の金額です。株や不動産などによる年収が48万円以上ある人は、扶養親族となりません。
<用語解説>
※c 6親等内の血族
1親等=父母・子
2親等=祖父母・孫・兄弟姉妹
3親等=曾祖父母・曾孫・おじおば・甥姪
4親等=高祖父母・玄孫・祖父母の兄弟姉妹・いとこ・甥姪の子
5親等=高祖父母の父母・来孫・高祖父母の兄弟姉妹・祖父母の甥姪・いとこの子・甥姪の孫
6親等=高祖父母の祖父母・昆孫・高祖父母の父母の兄弟姉妹・高祖父母の兄弟姉妹の子・祖父母の甥姪の子。
※d 3親等内の姻(いん)族
配偶者の血族。自分の兄弟姉妹や甥姪の配偶者、おじおばの配偶者、子や孫の配偶者。
※e 市町村長から養護を委託された老人
身寄りのない高齢者や適切な養護を受けられない高齢者で、個人の家庭において養護されている人。
よくあるのが、妻のパート年収が123万円を超えたり、子どものアルバイト年収が123万円を超えたりするケースです。給与収入が123万円以上ある人も、税法上の扶養親族にはあたりません。
健康保険上の扶養家族には該当しないものの、税法上の扶養親族には該当するケースがあります。それは、130万円を超える年収があって自分で健康保険に加入している配偶者が、育児休業をとっている場合です。
育児休業中は健康保険料が免除になりますが、加入していることに変わりはありません。一方、育児休業手当として通常の給与の3分の2から半額が支払われますが、育児休業手当は課税収入扱いではないため、税法上では扶養親族となります。
ところで、健康保険上の被扶養者には配偶者が含まれていますが、税法上の扶養親族には配偶者が含まれていません。その理由は、税法で定められている所得控除額の計算が「配偶者控除」と「扶養控除」に分けられているからです。
扶養控除にかかわる扶養家族(被扶養者と扶養親族)については上で述べましたので、以下、配偶者について解説します。
配偶者とは
配偶者の範囲(対象)についても、健康保険上と税法上では以下のように異なります。
【健康保険における配偶者】
健康保険の配偶者の範囲は、戸籍上の配偶者と、事実婚・内縁関係の配偶者(戸籍上の婚姻届がなくとも、事実上婚姻関係と同様の人)も含まれます。
【税法における配偶者】
所得税の配偶者は、「民法上の配偶者(戸籍上の配偶者)であること」いう要件があります。つまり、事実婚・内縁関係の相手は対象となりません。
法的には入籍していない状態で、婚姻の意思を持って共同生活を営んでいる事実婚・内縁関係の場合、「妻(未届)」あるいは「夫(未届)」と記された住民票などで証明することになります。夫婦別姓のカップルも、これに該当します。
「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」項目がない履歴書もある
2021年(令和3年)4月、厚生労働省は公正な採用選考とプライバシー保護の観点から、新たな「履歴書様式例」を公表しました。
これにより「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」などの項目が削除されています。
こうした項目は、これまで所得税の計算や健康保険の手続き、社宅・住宅手当・家族手当などの支給判断に用いられてきました。
引き続き「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」などの項目がある従来の様式を使っても差し支えありませんが、その場合は空欄を避け、前述までの解説を参考に必ず記入しましょう。該当項目の記入を避けたい場合は、記載欄がない新様式の履歴書を選ぶ方法もあります。
「扶養家族」「配偶者」の記入に関するQ&A
Q. 「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の記入を間違えた場合、採否に影響はありますか?
A. 採否そのものに直結することはほとんどありませんが、正しく記入することは重要です。
特にこれらの項目は「基本情報」にあたるため、記入ミスがあると企業側に「注意力に欠ける」「入社意欲が低いのでは」といった印象を与え、信頼性を損なう可能性があります。
もし記入を間違えた場合は、二重線と訂正印で修正するのではなく、新しく書き直した履歴書を用意しましょう。
Q. 妻側の履歴書の場合、「扶養家族」「配偶者」などはどのように記入しますか?
A. 「扶養家族数」や「配偶者の扶養義務」は「自分の収入で生活を支えている家族がいるかどうか」を基準に記入します。
例えば、夫が働いている場合、妻の履歴書では扶養家族数は「0人」、配偶者の扶養義務も「無」となります。
反対に、夫が無職で収入がなく、妻が世帯を支えている場合は、扶養家族数に夫を含める必要があります。
Q. 学生が履歴書を作成する場合、「扶養家族」「配偶者」などはどのように記入しますか?
A. 学生であっても、履歴書にこれらの項目がある場合は、現状に即して記入しましょう。
自分の収入で生活を支えている家族がいないのであれば、扶養家族数は「0人」、配偶者の扶養義務も「無」となります。
また、配偶者がいるかどうかは家庭環境によるため、結婚をしていれば「有」、していなければ「無」に〇をつけます。
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