契約社員が知っておきたい「無期転換ルール」の基礎知識
「無期転換ルール」をご存知でしょうか?平成30年4月より、多くの有期契約労働者(契約社員)が、「無期転換ルール」の対象になっています。
今回は、契約社員が知っておきたい無期転換ルールの対象者、無期転換申込権とその発生条件などの基礎知識、注意点などを解説します。
プロフィール
あべ社労士事務所
代表 社会保険労務士 安部敏志(あべさとし)
大学卒業後、国家公務員I種職員として厚生労働省に入省。労働基準法や労働安全衛生法を所管する労働基準局、在シンガポール日本国大使館での外交官勤務を経て、長野労働局監督課長を最後に退職。法改正や政策の立案、企業への指導経験を武器に、現在は福岡県を拠点に中小企業の人事労務を担当する役員や管理職の育成に従事。事務所公式サイト:https://sr-abe.jp/
無期転換ルールとは
平成24年に改正された労働契約法により、以下の条件に該当する方は、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)になることができます。
– かつ、契約社員が無期転換を申し込む場合
これを図示すると以下のようになります。
この法改正の施行が平成25年4月1日で、平成25年4月1日以降の契約がこの無期転換の対象となっています。この「平成25年4月1日以降の契約」、「5年を超えて反復更新」という条件により、平成30年である今年の4月から、多くの契約社員が無期転換申込権を持つことになっているわけです。
無期転換ルールの対象者
無期転換ルールの対象者となるのは契約社員です。会社によって契約社員の定義は様々ですが、パートやアルバイト、嘱託社員といった名称であっても、期間の定めのある労働契約を交わしているのであれば、この無期転換ルールの対象者となります。
そのため、一般的には珍しいケースになりますが、正社員と呼ばれているにも関わらず、もし期間の定めのある労働契約になっていれば、この無期転換ルールの対象者になります。
無期転換申込権の発生条件
先程の図では、有期契約(1年)の更新→無期転換申込権発生(1年)→無期労働契約となっています。
つまり、上の図の場合、実際に無期労働契約が始まるのは、7年目からということになります。無期転換申込権により申し込んだ後すぐに無期労働契約となるのではなく、実際に無期労働契約となるのは現在の契約が終了してからという点に気をつけておきましょう。
無期転換申込権の発生条件
無期転換申込権が発生するのは、以下の3つの要件がそろったときです。
- 有期労働契約の通算期間が5年を超えている
- 契約の更新回数が1回以上
- 現時点で同一の使用者との間で契約している
2点目の「契約の更新回数が1回以上」を補足しておくと、労働契約期間の上限は原則3年となっています。そのため、1点目の「有期労働契約の通算期間が5年を超えている」をクリアするためには、少なくとも1回の契約更新が必要になるということです。
無期転換ルールで気をつけたいポイント
無期転換ルールの注意点をご説明します。
申し込みの記録を残しておく
前述の無期転換申込権が発生し、その権利を持っている契約社員が無期転換を申し込んだ場合、会社はこの申し込みを断ることはできません。この申し込みは法的には口頭でも構わないことになっていますが、後々のトラブルのために記録を残すようにしておきましょう。
会社側も「言った・言ってない」というトラブルは避けたいので、無期転換申込に関する書面は準備しているはずです。申し込みの際には人事労務担当者に様式をもらうようにしましょう。
「クーリング期間」を確認する
無期転換申込権の発生条件の一つに「有期労働契約の通算期間が5年を超えている」というものがありましたが、この通算期間に含まれない期間として「クーリング期間」があります。
同一企業との間で有期労働契約を結んでいない期間、すなわち「無契約期間」が、一定の長さ以上にわたる場合、この期間が「クーリング期間」として扱われ、それ以前の契約期間は通算対象から除外されるという考え方です。
例えば、以下の図の場合、(1)(2)(3)で合計3年の有期労働契約がありますが、その後に6カ月以上の無契約期間があります。この6カ月以上の無契約期間はクーリング期間と見なされ、3年の契約期間はリセットされます。
そして(4)(5)の契約期間は2年と5年未満であることから、この場合、無期転換申込権は発生しないことになります。
クーリング期間として扱われる無契約期間
無契約期間の前の通算契約期間 | 無契約期間 |
---|---|
2カ月以下 | 1カ月以上 |
2カ月超~4カ月以下 | 2カ月以上 |
4カ月超~6カ月以下 | 3カ月以上 |
6カ月超~8カ月以下 | 4カ月以上 |
8カ月超~10カ月以下 | 5カ月以上 |
10カ月超- | 6カ月以上 |
無期転換ルールのよくある誤解
最後に、無期転換ルールのよくある誤解を解説しておきます。
【誤解1】平成30年4月以降、自動的に契約が切り替わる
5年を超えて会社に申し込めば、すぐに無期契約労働者になることができるものと誤解されやすいようです。
正しくは、1年契約の更新の場合、6年目(平成30年4月)に無期転換申込権が発生し、無期転換を申し込んだ場合、7年目(平成31年4月)に無期契約労働者になることができるということです。
また、無期契約労働者になるためには、契約社員本人による申し込みが必要です。申し込みをしなければ、会社としてはそのまま契約社員のままにしておいても法的には構わないことになっています。自動的に全員が無期契約労働者になるわけではないことに注意してください。
【誤解2】無期転換ルールで「正社員」になれる
無期労働契約と聞いたときの一般的なイメージは正社員かもしれませんが、無期転換ルールによって、契約社員が正社員になるとは限りません。
法律による無期転換ルールは、契約社員本人の申し込みにより「期間の定めのある労働契約(有期)」から「期間の定めのない労働契約(無期)」になることを求めているだけです。
多くの会社では、契約社員と正社員の賃金制度が異なっています。そのため、この無期転換への対応として、契約期間以外の処遇を一切変更しない無期契約労働者という、正社員とは別の新たな雇用形態を準備している会社もあります。
無期転換の申し込みをした場合に、どのような雇用形態になるのかは会社次第です。無期転換後の処遇については、人事労務担当に聞くか、会社の就業規則を確認してみてください。
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