30代後半になり、将来の転職に備えるため、何かを学びたいと考えています【転職相談室】
「現状のキャリアのまま、40代・50代になって生き残っていけるのだろうか」「人生100年時代を見据えて、今のうちに学び直して知見を広げおくほうが、この先の転職に役立つのではないだろうか」と悩んでいる相談者に、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
将来の転職に備え、知見を広げるために業務外で学ぶことを考えています。学びの方法や仕事と両立させるポイントなどについて教えてください(Hさん/35歳/営業/IT企業マネージャー)

人生100年、VUCA(※1)、ニューノーマルなどの言葉を目にする機会が増え、これからの自分について考えるようになりました。40代以降にも転職する可能性があることを考えると、今までの営業一筋の自分のキャリアでは不安です。将来の転職に備えて大学院で学び、知見を広げておこうと考えています。社会人の学び方や仕事と両立させるポイントなどについて教えてください。(Hさん/35歳/営業/IT企業マネージャー)
(※1)VUCA(ブーカ)=あらゆる環境が目まぐるしく変化し、予測できない状態を示したVolatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった略語
「なぜ・なにを学びたいのか?」を明らかにしよう
アドバイザー
Hさんは、新卒で入社以来、ずっと営業職なのですね。
相談者
はい。12年間続けて、それなりに成績も上げてきましたし、3年前にはマネージャーにも昇進しました。
アドバイザー
今の仕事に不満があるわけではなさそうですが、なぜ今、学びについて考えるようになったのですか?
相談者
今すぐ転職したいわけではないのですが、コロナ禍の影響で在宅ワークも一部導入されるなどして、自分の働き方に変化が出ました。そんな中で、自分の人生について考えるようにもなり、営業スキルだけでこの先も生き残っていけるのだろうかと不安を感じ始めたのがきっかけです。
いつかは転職する可能性があると思っていて、そうなれば30代の今のうちに自己啓発というか、業務外で知見やキャリアの幅を広げておいたほうがいいのではないか、と考えるようになりました。
アドバイザー
そうでしたか。厚生労働省の「人生100年時代構想会議」が発表した『「人生100年時代」に向けて』でも、「100年という長い人生をより充実したものにするには、生涯にわたる学習が重要だ」と説かれています。
Hさんが70歳まで働くとしたら、この先あと35年は働き続けることになります。今まで過ごした社会人人生の3倍は働くと考えたら、今からでも学ぶことは決して遅くはありません。
相談者
遅くはない、と聞いて安心しました。でしたら、以前から興味があったマーケティングの勉強を始めようかと考えているんですが、どうでしょうか。せっかく学ぶのなら、大学院で本格的に勉強したほうが評価してもらえるのではないかと思いまして。
アドバイザー
なぜ、マーケティングを学ぼうと思っているのですか?
相談者
このまま営業を続けていくにしても、マーケティングの知識はプラスになるでしょうし、今のうちに知識を身につけておけば、将来の転職に有利になりそうな気がしたからです。
アドバイザー
確かに、大学院で学べば新しい人脈もできるでしょうし、視点や視野・視座も変わって、組織への提案力も含めて仕事の質が高まるでしょう。
具体的にどこの大学院に通うとか、かかる費用や時間などの労力的負担についても検討されましたか?
相談者
それは、まだこれからです。
アドバイザー
大学院で学ぶにしても、マーケティング単体なのかMBA取得を目指すのかで負担はかなり違いますので、十分な下調べが必要です。
ですがその前に、ほかに考えるべきことがあります。
将来の転職に役立つ、仕事に根差した学び方とは
アドバイザー
冒頭でお話したように、学ぶのは良いことです。ただし、大学院で学んだからといって、それが有利な転職を約束してくれるわけではありません。
まだ20代なら、例えば「営業×MBA=経営企画で活躍してくれそう」というポテンシャル採用があり得ますが、35歳から学んで40代での転職は、実務経験が伴わない限りそれほど評価されないのが現実です。
相談者
やはり、ある程度の年齢になると、評価されるのは実務経験なんですね。
アドバイザー
現職が忙しい中で学びに時間と労力を数年間投じたからと言って、残念ながらすべてが報われるとは限りません。そのことも念頭に置いて、もっと仕事に根差した学び方についても検討してみてはいかがでしょうか。
相談者
具体的にはどういうことですか?
アドバイザー
主に3つのアプローチが考えられます。まず1つは、現業務と関連の深いところ、つまり社内で学ぶ方法です。HさんはIT企業の営業とのことですから、社内でマーケティングに関係する仕事に積極的に関わってみてはいかがでしょうか。
相談者
なるほど。身近にも学べる環境はある、ということですね。
アドバイザー
そうです。例えば、マーケティング部門が営業部門との間に垣根を感じているケースは少なくないので、営業からマーケティングに働きかけて連携する業務を増やしていくんです。そうすれば、実践で学びながら実務経験が積めるはずです。
これまで培った社内の人脈を活用して高度な経験を積んでいき、実績が評価されればマーケティング部への異動も期待できると思いますよ。
相談者
おっしゃる通りです。
アドバイザー
2つ目は、会社が副業を認めているのなら、スタートアップ企業や中小企業、地方企業などでマーケティングを兼務していく方法です。
得意分野である営業支援をメインにサポートしつつ、マーケティングの仕事も支援してみるのも1つの手です。そうすれば、副業でマーケティングの実績やノウハウを蓄積していくことができるでしょう。
相談者
副業というスタイルで、他社で実務経験を積むのですね。
アドバイザー
3つ目は、転職です。未経験のままでも、ある程度学んだあとでも、ひとまず転職して営業として働きながら、徐々にマーケティングを兼任させてもらう方法です。
マーケティングの専任者を置いていないスタートアップ企業や中小企業などに転職すれば、マーケティング業務に携われる可能性はあると思います。
ただし、新しい職場の人間関係の中で初めてのマーケティング業務を習得していくので、かなりハードかもしれません。
相談者
確かに、それは本気度が問われますね。
仕事と学びを両立させるためのポイント
相談者
最後に、仕事と学びを両立させるためのアドバイスがあったらお願いします。
アドバイザー
仕事と学びをうまく両立させている社会人の中には、制度を利用している人も少なくありません。企業によっては、資格支援制度や自己啓発費用の補助を行っているので、今の会社の状況を調べてみるといいでしょう。
そうした制度を導入していない場合でも、経営者が賛同すれば導入してくれるかもしれません。まずは、人事部に相談してみてはどうですか?
相談者
わかりました。早速、社内の制度について調べてみます。
アドバイザー
Hさんは大学院で学ぶことを検討していたようですが、大学院に通う以外にも、大規模な公開オンライン講座や、オンライン学習サービスがあります。
大学院は受験勉強が大変ですが、オンラインを活用した学びなら手軽に始められますし、仕事との両立もしやすいと思います。
また、公的支援制度もありますので、活用できるかどうか、ぜひ調べてみてください。
相談者
オンライン学習サービスがいろいろあるという情報は目にします。これを機に、オンライン学習や支援制度についてもしっかりとリサーチしてみます。
アドバイザー
転職を見据えた学びであれば、今の仕事へのプラスアルファで実績を積んでいくほうが、転職時の選択肢が広がると思います。この先30年、40年の職業人生を考えて今から学ぶことは良いことなので、大学院やマーケティングにこだわらず、いろいろな角度から検討してみてください。
相談者
わかりました。手段や分野について、もっと身近なところから再度検討してみます。いろいろなアドバイスをありがとうございました。
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