文系ですが、理系職に転職することはできますか?【転職相談室】
社会人として働くうちに、自分の志向や適性が分かり、キャリアの方向性を変更したいと考える方も少なくありません。
今回は、「文系出身だが、理系職に転職したい」というご相談に、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が回答します。
目次
文系ですが、理系職に転職することはできますか?(Mさん/25歳/営業)
【相談内容】
新卒で入社した金融機関で3年間営業をしています。
他の業種と比べて年収が高いのと、人生においてお金に関する知識は無駄にならないと思い、現在の金融機関に入社しましたが、営業目標が小刻みに定められており、ずっと数字に追いかけられて休む暇がありません。また、基礎的な金融の知識は身につきましたが、金融マーケットも商品もどんどん変わっていくのと、AI(人工知能)による投資関連サービスも増えています。
そこで、このまま現職を続けるよりも、理系職種に転職し、専門スキルを磨いた方がいいのではないかと考えています。文系出身の営業から、理系職種への転職は可能でしょうか?
ものづくり系エンジニアの場合は、未経験でも理系出身者が歓迎される傾向がある
▶アドバイザー
営業から理系職種に転職を検討しているのですね。理系職種というと、どのような職種をイメージされていますか?
▶相談者
自分は文系だったので理系職種にあまり詳しくはないのですが、ものづくり系やIT系のエンジニアをイメージしています。
▶アドバイザー
理系の分野は、大きく分けて機械・電気、情報通信、化学、物理・数学、生物・農学、建築・土木などが挙げられます。
これらの専門分野に対して、研究開発や設計、システムエンジニア、生産技術、品質管理、サポート、統計・金融工学、そして技術営業などの職種が活躍しています。
なかでも、研究開発や設計の仕事は未経験者の求人が少ない上に、第二新卒など未経験者の応募が可能な求人だとしても、理系学部出身者を歓迎する傾向があります。
研究開発や設計の仕事の多くは、数学や物理など理系の素養が必要だからです。
そのため、もしものづくり系の仕事に転職を希望するのであれば、未経験を歓迎している設備の保守や定期メンテナンス、品質管理などの職種で、教育体制が整備されている企業に応募し、ものづくり系の経験・スキルを磨くという方法があります。
特にエンジニアの派遣企業では、教育研修を充実させて未経験者を採用するケースも見られます。
最初は幅広く応募して、自分の興味関心の軸がどこにあるのかを確認したり、選考の通過率を見たり企業から話を聞いてみたりして、方向性を固めていってもいいでしょう。
なお、ものづくり系の設備保守や品質管理の場合は、工場が地方や郊外にある可能性もあるので、転居も視野に入れて検討しましょう。
▶相談者
なるほど。全くの未経験でものづくりの領域にキャリアチェンジするのは、なかなかハードルが高そうですね…。では、IT系の理系職種はいかがですか?
IT系エンジニアの場合は、4つの働き方があり積極的に応募し話を聞くことが大切
▶アドバイザー
IT系の場合は、ものづくりのように工場などで大量に製品を生産する工程がないので、生産技術のような生産や設備に関する職種がありません。
ただし、ものづくりと同様にITも複数の工程があり、設計、開発、実装、テスト、サポート、保守・運用などに分かれています。
また、企業の課題に応じて、IT戦略やDX、クラウドやセキュリティなど、各領域の専門職種が関わることもあります。
このうち、未経験でも転職がしやすいのは、システム開発でもテストやサポート、保守・運用など、業務内容がある程度明確になっていて、教育研修がしやすい工程です。
また、インフラやネットワークエンジニアとして、最初は未経験で保守・運用から始めて、設計や開発などの工程にステップアップするというケースもあります。
さらに、システムエンジニアの働き方は、大きく分けて「自社開発」「受託開発」「派遣・SES(System Engineering Service)」、そして「社内SE」の4種類の働き方があります。
自社開発とは、自社の商品・サービスを開発するエンジニアで、企画段階から効果検証まで自社で行うため、一気通貫でサービスに携われるというやりがいがあります。
一方、受託開発は、顧客からの依頼で開発を行うエンジニアで、SIerと呼ばれる企業がこれに該当します。
自社開発の仕事に比べて、様々な業種、規模、目的の開発に携わることができる点がメリットになります。
派遣・SESはエンジニアの労働力を企業に提供するサービスですが、こちらも様々な環境でプロジェクトを経験することができるでしょう。
社内SEはその名の通り、社内のシステムエンジニアとして、システムの選定や導入に関わります。
自ら開発するよりも、ベンダーとのやり取りが仕事の中心となり、自社のIT戦略に携われる点が魅力です。
こうした4つの働き方のうち、未経験に門戸を開いているのはSESが多くなります。
SESは教育研修制度が整っている企業が多く、指揮命令権がクライアント先ではなく自社にあるため、ベテランと一緒に客先に常駐し、OJTでエンジニアを育成するという方法を用いているケースもあります。
受託開発や派遣・SESは様々なプロジェクトを経験できるので、自分の向いている方向性を見極めるという考え方もあるでしょう。
なお、客先ではなく自社で働きたい方は、自社開発を行っている企業を狙うか、社内SEとして入社し、従業員のシステム管理やPCやスマートフォンなどの機器管理などから始めて、ステップアップするケースもあります。
ただし自社開発や社内SEで、未経験にも門戸を広げている求人はあまり多くはないので、見つけたら積極的に応募し、話を聞いてみましょう。
▶相談者
ありがとうございます。選択肢がたくさんあると悩みますね。
予測困難な時代。どの業界や職種に転職したとしても、知識やスキルのアップデートが必要
▶アドバイザー
ちなみに、転職ではなく現職で開発系の部門に異動することは、ご検討されていないのでしょうか?未経験でエンジニアに転職する場合、恐らく年収ダウンとなってしまいます。
異動した方が、すでに社風は理解されていますし、業界知識や社内人脈を活かすことができると思うのですが…。
▶相談者
現在の職場は、昔ながらの対面での営業活動を中心としており、インターネット系の金融機関に押されつつあります。
そのため今後の業績に不安があり、「専門スキルを身につける」という目的以外にも、早いうちに転職したいという気持ちがありました。
▶アドバイザー
分かりました。では、金融業界を含めて幅広くチャレンジして、多くの企業に話を聞いてみるのがいいのではないでしょうか。直接話を聞くことで、興味を持った業界・職種・企業が見つかると思います。
ただ、「金融商品はどんどん変わり、AIも台頭しているので、専門の仕事に転職してスキルを身につけたい」というご相談は、ものづくりにもITにも言えることです。
例えば、日本のものづくりの代表格である自動車業界は、「100年に一度」と言われる産業構造の変化を迎えています。
ITも非常に変化の激しい分野で、常に新しい技術を学ぶ必要があります。
予測困難な時代を迎え、将来安泰な業界や職種は分からなくなっているので、どの業界や職種に転職したとしても、継続的に知識やスキルのアップデートを図ってください。
▶相談者
なるほど。継続してアップデートし続けるには、興味がある業界・職種かどうかが重要になりそうですね。情報収集をして自分の方向性を決めていきたいと思います。
アドバイスいただき、ありがとうございました!
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