転職の面接で「成功体験」を聞かれたら?答え方とない場合の対処法

転職の面接では、過去の「成功体験」を問われることがあります。企業の採用担当者が、成功体験を聞く意図は何でしょうか。また、どのように答えればいいのでしょうか。
そこで、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、成功体験を聞かれた場合の答え方と例文を解説していただきました。
企業は成功体験を通じて何を知りたいのか?
企業が採用の面接で成功体験を聞く意図を解説します。一般的に、過去の成功体験を通じて、価値観や仕事への取り組み姿勢、成功の定義を確認しているケースが多いようです。
仕事の価値観(何を大切にしているか)
多くの企業は、ミッション、ビジョン、バリューなどで自社の存在意義や目的、行動指針などを宣言しています。こうした企業の価値観と求職者の価値観がマッチしているかどうかを、成功体験を通じて確認しています。
価値観がマッチしていれば、入社後すぐに自社に馴染んで成果を出してもらいやすくなります。また、求職者側から見ても、自身の価値観と企業が目指している姿がマッチしていれば、仕事へのモチベーションが高めやすいでしょう。
具体的な取り組み方(仕事への関わり方)
過去の成功体験を聞くことで、どのような姿勢で仕事に取り組んでいるかが分かります。
例えば、「関係者に確認しながら丁寧に仕事を進めた」というエピソードであれば、慎重に仕事を進めるタイプだと推測することができます。逆に「スピード重視で最短で企画を実現した」というエピソードは、実行力や突破力などを持っていることが分かります。
仕事への取り組み方を通じて、募集している仕事内容とマッチしているかどうかを判断しています。
客観性・自己への評価(何を成功と捉えるのか)
成功体験とは、求職者本人が「成功」だと判断している仕事ということ。すなわち、成功体験の内容によって、その人の成功の定義を知ることができます。
大きな実績を残すことができた仕事を成功体験と捉える人もいれば、課題を解決できたことを成功体験と捉える人もいます。その人なりの成功の捉え方や評価軸を知ることができる点も、成功体験を聞く理由のひとつです。
成功体験を伝える際に意識しておきたいこと
成功体験を伝える際に、気をつけておきたいことを解説します。
再現性があるか
成功体験を伝える場合は、できるだけ応募企業でも再現できるエピソードであることが望ましいです。
前職(現職)でしか実現できない内容では、入社後に同じような成果を出せるのか判断することができません。
「自社でも活躍してくれそうだ」と採用担当者がイメージしやすいように、成功体験のエピソードは再現性を意識し、分かりやすく伝えましょう。
自己PRとの一貫性
定番の面接の質問に、「自己PR」があります。自己PRは、強みや仕事へのこだわりを伝える質問ですが、成功体験で伝えたエピソードと矛盾や乖離があると、どのような人物なのか分からなくなってしまいます。
自己PRや成功体験のエピソードには、一貫性を持たせましょう。自己PRで伝えた強みを活かした結果、成功体験につながっていると、人物像を理解しやすくなります。
応募する仕事との接点
成功体験と応募する仕事に共通点があると、採用担当者が活躍イメージを持ちやすくなります。
なお、成功体験に限らず、自己PRや転職理由など面接で聞かれる他の質問でも、応募する仕事との共通点を意識することは重要です。
無理に一致させる必要はありませんが、これまでの成功体験の中から応募する仕事と接点のあるエピソードを選ぶといいでしょう。
成功体験を選ぶ際の注意点
「成功体験のエピソードがなかなか思いつかない」「どれを選んだらいいのか分からない」という方もいるかもしれません。そこで、面接で伝える成功体験の選び方をご紹介します。
華やかなエピソードでなくても構わない
成功体験を聞かれた場合に、目覚ましい活躍をしたエピソードや、華やかな実績を伝えないと評価されないと感じるかもしれませんが、成功体験とは自分が「うまくいった」と実感したり、その体験をきっかけに成長実感を得られたりしたエピソードを指します。
たとえ地味に思えるようなものであっても、自分なりの成功体験を伝えることが大切です。
成果や実績よりもプロセス重視
成功体験を伝える際は、成果や実績よりもプロセスを重視して伝えるようにしましょう。
例えば「目標達成率200%で、最優秀営業賞をもらった」と実績だけを伝えても、なぜその成果を出すことができたのか、背景や難易度、成果に至るプロセスが分かりません。採用担当者は、その人の成功体験を通じて人柄や仕事への取り組み姿勢を知りたいと考えています。
まず「置かれている状況や課題」「自分なりの目標」を説明したうえで、目標達成のために取り組んだことを伝え、その根拠となる成果や実績を端的に述べましょう。
できるだけ最近のエピソードを
成功体験はできるだけ最近のエピソードを選ぶことも重要です。遠い過去の話をしてしまうと、入社後に再現できるか判断ができず、最近の成功体験がないことを懸念される可能性があります。
また、以前と比べて仕事に対する価値観は変化しています。昔は当たり前だったことも、時代とともにどんどん変わっているので、エピソードは新鮮な方が受け入れられやすいでしょう。
成功体験を伝える際のポイント
成功体験をよりイメージしやすいよう、まずはどんな成功体験なのか結論を伝えたうえで、具体的なエピソードを交えて説明するといいでしょう。
その際、「STAR法」という情報伝達のフレームを使うと、聞き手に情報を分かりやすく伝えることができます。
初めに成功体験を伝え、次に具体的なエピソードを下記の「STAR」に当てはめて簡潔に説明すると、ポイントを絞った効果的な伝え方が可能です。
Situation(状況):自身が置かれていた状況 Task(課題):解決しようと考えた課題・問題、目標など Action(行動):課題解決や目標達成のために起こした具体的な行動 Results(結果):成果や得られたこと |
成功体験の答え方の例文
成功体験の答え方の例文をご紹介します。面接対策の参考にしてみてください。
リーダー経験の例文
コミュニケーションの見直しなどにより、メンバーがイキイキと働けるチームを作ることができた経験が、私の成功体験です。 現職では営業チームのリーダーを任されています。経験の浅い若手が多く、着任した当初は営業数字が伸び悩み、3カ月間未達成が続きました。そこで、営業同行を徹底して顧客のニーズを分類し、ニーズに対応した営業トークと商品のラインナップ、営業提案資料を用意しました。 ただし、テレワークや営業活動が多いため、メンバー同士が顔を合わせて会話ができる機会が少なく、チーム内のコミュニケーションが希薄になっていることも課題に感じていました。そこで、曜日を決めて定例会を実施し、フランクに会話できる場を設けました。 定例会では、営業提案資料の使い方や顧客事例など、直接営業活動に役立つ情報だけでなく、個人が悩みをざっくばらんに相談することができるため、若手メンバーが抱える課題の発見に役立ち、チームビルディングにも活かすことができました。 その結果、チームの売上は前年比120%を達成。7つある営業チームから優秀なチームを年に一度選出する「ベストチーム賞」にも選ばれました。 |
業務効率化の例文
繁忙期でも全員がほぼ定時に帰れるほどの働き方改革を実現できたことが、私の成功体験です。 前職では、事務チームの一員として、請求書処理やデータ入力、書類整理などの業務を担当していました。 繁忙期には残業が当たり前になる状態に課題を感じ、事務チームの業務効率化に取り組むことを提案しました。まず、業務フローの見直しを行い、無駄な作業を削減しました。可能な限り書類はデジタルに転換し、紙ベースの業務は8割ほど削減。他にも、業務システムを見直してリプレイスをしたり、RPAに取り組んだりして、チームの業務時間の圧縮を図ってきました。 ただし、業務効率化を進めるうちに、「自分の仕事を取り上げられてしまうのでは」「これまでの仕事が評価されていないのでは」と、ネガティブな印象を持つメンバーもいることに気づきました。 ただ効率化するだけではなく、チーム全体が常に業務改善を行うマインドに変わる必要があると感じ、「事務チームの目指したい姿」を言語化して、ロードマップを一人ひとりに伝えるようにしました。 その結果、過去のやり方を変えない保守的なチームから、効率的な仕事の進め方を優先するチームに変わってきたと感じます。 |
目標達成の例文
私の成功体験は、自分で設定した高い営業目標に挑み、それを達成できたことです。 現在の勤務先では、高い成績を収めた営業担当者3人がトップ営業として年間表彰されます。これまでベスト10に入ったことがあるものの、なかなか表彰には届かずにいたため、前期は期初から「表彰を目指す」と決意。事業目標をさらに10%上回る数字を自己目標として、必ず達成することを自分に課しました。 そのために、既存のクライアントをフォローしながらも、新規開拓に注力。主に、過去に取引をいただいていたものの長らく取引が停止している法人に焦点を当て、各社の情報を収集し、現在抱えている課題をイメージしたうえで商談内容を組み立て、アプローチしました。 新規開拓の時間を捻出するためには、業務の進め方も全面的に見直す必要がありました。そこで、自身の日々の動きを見直し、無駄な作業を抽出するとともに、タスク管理ツールなども導入することで効率化を図りました。 その結果、多くの新規開拓を実現でき、念願のトップ営業入りを実現。表彰はもちろん、自分が決めた目標に向かって1年間走り切れたことが大きな自信になりました。 |
プロジェクトマネジメントの例文
現在、プロジェクトマネジャーとしていくつかの開発案件を担当していますが、1年前に初めてプロジェクトマネジャーとなり、そのプロジェクトを滞りなく成功させられたことが、私の成功体験となっています。 1年前、クライアントA社の経理システム改修プロジェクトのマネジャーに抜擢され、5人のメンバーをまとめることになりました。初めての経験ではありましたが、これまでメンバーとして関わってきたプロジェクトを見返したり、社内のナレッジから学んだりして、全体の計画を立ててプロジェクトを進めました。 メンバー時代、分からないことや不安なことを抱え込んでしまった経験があったため、リーダーとして各メンバーとのこまめなコミュニケーションを意識。週1回の1on1ミーティングに加え、日々雑談の時間を設けて本音を引き出し、不安の芽を早期に潰すよう心掛けました。 それが功を奏して、普段から報連相や意見交換が活発なチームとなり、常に皆のタスクも見えるように。何かトラブルが起こっても、迅速に対処することができました。クライアントからも高い評価をいただいたことも大きな自信となり、プロジェクトマネジャーになりたいとの目標が生まれ、現在に至ります。この時の試行錯誤が、今の糧になっていると感じています。 |
成功体験がない場合の対処法
「成功体験がどうしても思い浮かばない」という場合は、自分なりに工夫した経験を伝えるといいでしょう。たとえその工夫が実を結ばなかったとしても、自分なりに課題に向き合い、真剣に考え工夫を凝らした経験は、立派なアピール材料になります。
例えば、このような伝え方が考えられます。
競合他社の人事システムを導入している大手教育系企業A社に対して、リプレイス営業に挑んだ経験が心に残っています。 当時、A社とは取引がありませんでしたが、まず同社の人材教育セミナーから入り込み、現場社員に対して人事教育系の情報提供を行うことで少しずつ関係性を築き、1年をかけてA社における人脈を広げました。そして、採用現場での課題をつかんだうえで、決裁者につないでいただき、自社システムに入れ替えるメリットをプレゼンテーションすることができました。 結果的には、メリットや優位性はご理解いただけたものの、A社の組織変更や担当者の異動によって、残念ながらリプレイスを実現することができませんでした。チャレンジ自体は失敗に終わったものの、ゼロからクライアントと地道に関係性を築き、課題を拾い上げて商談につなげた経験は、自分の営業としての糧になっています。 |
前述のように、目覚ましく華やかな成功体験である必要はありません。成功体験は決して特別なものではなく、日々の生活の中で誰しも、何らかの成功体験をしているはずです。
これまでの経験を振り返り、小さな成功体験を抽出してみましょう。そのときに何を考え、どのように取り組んだのか思い返してみることで、「自分なりに頑張り、工夫した」という気づきを得られます。
それをSTAR法で整理しながら伝えることで、仕事の価値観や仕事への姿勢、そして自分ならではの強みや持ち味なども十分アピールできるでしょう。
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