「要領が良い」ことを上手くアピールする方法を教えてください【転職相談室】

多忙な本業で成果を上げながらも、副業にもコミットしている相談者のTさん。今後の転職活動では「要領の良さ」をアピールしたいと言います。ただ、「要領の良さ」をうまく伝えるには工夫が必要です。
本記事では、組織人事コンサルタントの粟野友樹氏が注意点やアピール方法についてアドバイスします。
目次
「要領の良さ」をアピールする場合のポイントを教えてください(Tさん/24歳/IT業界)

<相談内容>
新卒で日系IT企業に入社し、営業職を半年経験しました。より成長できる環境を求めて、現職の外資ITに転職し、営業を約1年担当。入社以来、営業目標はずっと達成しており、上司からも「仕事の飲み込みが早い」と要領の良さを評価されています。
加えて、副業として、スタートアップ2社からマーケティング業務を請け負っており、いずれは営業からマーケターへのキャリアチェンジを考えています。
副業にある程度ウェイトを置くために、仕事・プライベートの時間管理、仕事の進め方、体調管理など含めて効率よく行動しているので、次の転職活動では、そうした要領の良さ、切り替え力、タイムパフォーマンスの良さなどをアピールしたいです。どのように伝えるといいでしょうか。
「要領が良い」とそのまま伝えるのはおすすめしない
▶アドバイザー
外資ITの営業職に加えてスタートアップ2社での副業をしているのならば、平日の夜や土日もお忙しくされているのでは。
普段の業務をかなり効率的に進めて、時間を作っているのだろうと感じます。
▶相談者
そうですね。マーケターになるための投資と捉えて、時間管理には常に気を配っています。
▶アドバイザー
「要領が良い」ところは、確かにTさんの強みだとは思いますが、「要領が良い」という言葉自体にはネガティブな意味もあります。
改めて、言葉の定義を見ていくと、「処理のしかたがうまい。手際がいい」というほかに、「手を抜いたり、人に取り入ったりするのがうまい」という意味もあります。
そのため、転職活動の面接などでただ単に「要領が良い」ことをアピールすると、「表面的に取り繕うのがうまいだけなのでは」「仕事内容に深みがないのでは」という懸念を持たれる可能性があり、伝え方には工夫が必要です。
要領の良さを伝える際の懸念と注意点
▶相談者
そうなんですね。具体的にどのような懸念が考えられるのでしょう。
▶アドバイザー
Tさんにそのまま当てはまるかは分かりませんが、抱かれがちな懸念には2点あります。
一つが、組織に入ったときのチームワークに関する懸念です。
多くの仕事はチームで取り組みます。中には、自分にはメリットがあまりなかったとしても円滑な組織運営のために時間をかけなくてはいけない仕事もあるでしょう。
例えば、すぐに成果が出ない中長期の業務改善や組織文化づくりなどは、短期的には無駄のように思えることもあるでしょう。
そうした場面を想定したときに、「要領の良さ」を強調しすぎると、「この人は、自分に関すること以外に取り組めるのだろうか」「組織貢献への意識を持ってやってくれるだろうか」と思われてしまう可能性があります。
これから年次が上がれば、マネジメント層での活躍を期待されます。
するとますます、物ごとをチームワーク視点で考えられているかを見られることになると思います。
▶相談者
なるほど。確かに今は、自分のキャリアチェンジのために…と自分視点で動いているところが多いかもしれません。
▶アドバイザー
もう一つの懸念は、質を求められる仕事に対応できるのか、という点です。
要領が良い、という言葉には、パッチワーク的に使えそうなものを組み合わせてその場を乗り切る、というニュアンスで受け取られる可能性もあります。
そうした仕事のやり方は得意でも、自分の頭で考えて業務改善に取り組んだり、新たに創り出したりといったことができないのでは…と思われる可能性もあるでしょう。
▶相談者
それはあまり印象が良くないですね。では、どう伝えるとポジティブな面をアピールできるのか注意すべき点はありますか。
組織に対して貢献したことを伝えよう
▶アドバイザー
一つ目の懸念に対しては、要領の良さを活かして「所属した組織に対して貢献したこと・取り組んでいること」を伝えるといいでしょう。
自分のタイムパフォーマンスだけを考えているわけじゃない、ということをアピールするためにも、これまで手掛けてきた中で、組織やチームを意識して行った仕事があれば具体的に言語化していきたいところです。
そのようなエピソードはありますか?
▶相談者
そうですね。例えば、現職の外資ITは、なかなか人が定着しないという課題があり、転職者の早期戦力化が重要です。
上司から、「成果を出すポイントを中途入社者に伝えてほしい」と依頼されたことがあり、自分なりの経験をもとに、自社のプロダクトの特徴、相性の良い顧客層、アプローチの仕方などの要点を抽出し、資料にまとめて簡単な社内勉強会を開催したり、事例共有をしたりしました。
▶アドバイザー
組織の営業力向上に貢献した、というエピソードですね。すごくいいと思います。
自分なりの観点や思考力をアピールしよう
▶アドバイザー
もう一つの懸念に対しては、「効率よくタスクに対応して成果を出している」という事実だけを伝えるのではなく、「それぞれのタスクに対応する際の独自の観点や思考力」も伝えることです。
複数・大量のタスクに対応できるのもTさんの強みですが、例えば、「営業で成果を出すための創意工夫」まで具体的に話せると、転職先の企業でも質の高い仕事ができそうだな…と企業側は思うでしょう。
▶相談者
なるほど。自分なりの工夫としては、受注確率が高い見込み顧客の分析を徹底しています。
ただやみくもに顧客接点を増やすのではなく、自社プロダクトの過去導入実績を洗い出し、実績の多い業界を絞ってアプローチしていて、営業の前工程を重視しているんです。
ほかにも、売上や従業員数などの企業規模でフィルターをかけたり、成長フェーズにある企業に絞ったり、決裁権限のある役員以上との接点が持てない見込み客はアプローチしないなど、自分なりの観点はいくつか設けています。
▶アドバイザー
それが、営業成績をきちんと残しながら、時間に余裕を作る工夫になっているんですね。
▶相談者
そうなんです。見込み顧客1社ごとへの情報収集や分析、提案内容の準備などに集中できれば質の高い提案につながるので、受注率や受注金額が高くなります。
結果的に効率良く達成につながりますし、本業で効率的に成果を出せるので、副業にも時間を割り当て、コミットできているのだと思っています。
▶アドバイザー
そこまでしっかり言語化できていれば、「要領の良さ」のネガティブな側面は払拭できるのではないかと思います。
面接では、今のような具体的な課題や工夫した活動を伝えるといいでしょう。
▶相談者
「要領の良さ」という表現を企業側はどうとらえるのか。相手目線で考える視点が欠けていたなと感じました。
もう一度、自分が取り組んできたことを整理していきたいと思います。本日はありがとうございました!
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