業界の市況感を詳しく調べる方法を教えてください【転職相談室】

転職活動を始めるにあたり、業界の市況感を知りたいという相談者。業種を問わないITスキルを身につけたい、というのが理由のようです。
業界動向を調べる方法とともに、リサーチを進める上での注意点やアドバイスを、組織人事コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
業界の市況感を詳しく調べるにはどのような方法がありますか?(Fさん/25歳/教育業界)

<相談内容>
学生時代からアルバイトをしていた進学塾に正社員として入社し、現在3年目。来年から教室長を任されるかもしれないという話があります。評価をもらえてうれしいのですが、その先のキャリアの広がりを感じられず、これを機に転職を視野に入れたいと思っています。
教育業界にいる中でも、ITスキルを身につけることはこれからの社会で必須だと感じており、高い成長が見込めそうな業界としてIT業界がいいのでは…と漠然と考えています。また、リモートワークや土日休みの働き方ができる環境に身を置き、プライベートの時間も大切にしていきたいです。
周りの転職経験者からは、そうした希望条件を叶えるためにも、転職準備として業界の市況感をリサーチすることが大事だと聞いたのですが、どうやって調べていけばいいのでしょうか。
業界の市況感を調べる方法とは
▶アドバイザー
Fさんの希望するポイントを整理すると、
- 成長が見込める業界
- ITスキルが身に着けられる
- リモートワークなど働き方が柔軟なところ
の3点がありますね。
IT業界に対して、「なんとなく良さそう」と考えている段階とのことですが、なぜIT領域に興味を持ったのでしょうか。
▶相談者
教育業界に身を置いていると、業務IT化や学習アプリ活用、プログラミング教育など、ITスキルの必要性を感じることが多いんです。
生徒や保護者の方にも、「これからはITスキルが欠かせません」などと説明することがある一方、自分自身はその専門スキルが全然なくて…。若いうちに身につけたいと考えるようになりました。
転職サイトなどに目を通すと、IT通信、Web・インターネットなどは企業の採用ニーズも高そうだし、業界の市況も良さそうだなと思っています。
営業やカスタマーサクセスなどは未経験からでも挑戦できそうですし、エンジニアへのキャリアチェンジも、可能性がなくはないのかな、と。
▶アドバイザー
具体的な職種への転職可能性も探っている段階なんですね。
▶相談者
現時点で働くイメージが持てるところはどこかな…と見ている程度なのですが、普段の生活でよく使うECなどのネットサービス企業だけではなく、現職の業務の中で使う法人向けのソフトウェア企業やネット広告関係も検討してもよいかななどと考えています。
ただ、業界情報をどうリサーチすればいいのか、やり方が分からないので、具体的な方法を知りたいです。
▶アドバイザー
Fさんがおっしゃるように、転職活動を進めるにあたって業界の大まかな動向は見ておくことは大切です。
リサーチ先には、例えば次のようなものが参考になるかと思います。
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(※1)」:産業別の求人状況がわかる。
- 財務省「法人企業統計調査(※2)」:業界ごとの売上高や利益率の推移などをチェックできる。
- 帝国データバンク「業界天気図」:主要業界の情勢を7段階の天気と簡潔なコメントで発信している。
- リクルートエージェント「転職市場の動向」:業界ごとの動向やニーズの高い経験スキルについてまとめている。
- リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(※3)」(2022年度実績、正規社員):企業規模別や業種別の中途採用動向、未経験者比率などがわかる。
(※1)参考:一般職業紹介状況(令和5年11月分)│厚生労働省
(※2)参考:法人企業統計調査│財務省
(※3)参考:中途採用実態調査│リクルートワークス研究所
ただ、そこまで専門的にリサーチを進めなくても、業界地図、新卒サイト、業界専門誌や専門サイト、新聞、業界団体サイト、金融機関・シンクタンクからの情報発信も多くあります。
転職エージェントに聞いたり、転職サイトに登録して求人数やスカウトなどで判断したりするのもいいでしょう。
市況感を調べる上での注意点
▶相談者
いろいろな団体や企業が情報を出しているんですね。
市況感を調べる上で、注意すべき点はありますか。
▶アドバイザー
動向を知ることは大切と言いましたが、市況感調査に時間をかけすぎるのには注意しましょう。
全体動向の把握や分析をするエコノミストやアナリストではないので、「より深く正しい情報を網羅しよう」「精緻に分析しよう」と進めるのは現実的ではありません。
専門家でも未来予測は間違えるものですし、正解もありません。
市況感調査ばかりに時間と労力がかかり、転職活動が進められなくなっては本末転倒です。
あくまで業界の市況は、転職先の業界や企業、職種を検討する際の材料の1つ。業界の市況は全体感なので、企業ごとの状況も異なります。
▶相談者
業界全体では市況が良くても、成長可能性が高い企業とそうでもない企業があるということですね。
▶アドバイザー
そうです。志望動機にしても「成長産業だから」だけでは不十分で、なぜその企業が伸びているのかまで調べて考える必要があります。
また、業界の市況が良くて採用が盛り上がっていても、Fさんの経験スキルを活かせる募集があるかどうか、希望を満たせる募集があるかどうかは各社で異なります。
より具体的な企業情報は、転職サイトや転職エージェントを通じて情報収集することが必要でしょう。
▶相談者
確かにそうですね。
▶アドバイザー
一方で、業界動向を見ていると、現在の教育業界の見え方も変わってくる…という良さはあるでしょう。
少子化が進む中、子ども一人当たりへの教育費用は増加しており、プログラミング学習や英語など新たな事業ニーズは増えていきます。社会人向けの学習コンテンツニーズも高まっていくでしょう。
そう考えれば、教室長の現場経験を活かして、本社の事業企画にチャレンジするという選択肢も出てくるかもしれません。
ほかにも、対個人向けサービスや店舗マネジメントの経験を活かすという意味で、小売流通という道もあるのでは。
小売流通業界は、人手不足により積極的に人材募集をしているところが多く、領域にもよりますが、海外展開やEC化、プライベートブランド開発などの面白いキャリア展開があるかもしれません。
教室長経験を生かして、小売店舗でのマネジメントやSVを経て、海外経験やEC(ネット)などというキャリアを積むという選択肢もあると思います。
業界動向を調べるとともに、個社の成長フェーズや事業内容、自分のキャリアパスの可能性まで、より具体的に見ていくことをおすすめします。
▶相談者
業界の市況感を調べることは、あくまでも転職活動の入り口に過ぎないということですね。
まだ業界を絞り切れていないので、動向は大まかに見て広く情報を集めつつ、個社の企業研究や、自分の経験・スキルの整理も同時に進めていきたいと思います。本日はありがとうございました。
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