転職活動で「昇給基準」を確認する方法【逆質問例文あり】

転職活動中に「入社意欲が低く、年収ばかり気にする人」という誤解を受けずに、昇給基準を確認するにはどうすれば良いのかを組織人事コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
面接中の質問例や、選考応募前の下調べの方法など、具体的に確認する方法を紹介しています。
転職活動の選考で「昇給基準」を質問すると企業は嫌がる?
転職活動の選考中に昇給基準を確認されたとしても、企業が懸念を抱くことはほぼないでしょう。
ただし、「どこまでの内容を、どう回答したらいいのか戸惑う」ことはあるかもしれません。
というのも昇給基準は、就業規則などで「年2回、それまでの勤務成績や勤務態度をもとに総合的に判断して決定する」などとしている企業がほとんどだからです。
転職活動の選考中は、具体的にどの部署でどんな仕事を担当するか決まっていないケースもあるでしょうし、応募者の仕事の質や期待できる成果なども不透明でしょう。
そのような状態で、具体的にどのくらいの期間で、どんな仕事をすれば、どのくらい昇給できるかといった内容を明確に伝えるのは困難です。
等級(グレード)制度と、入社時に予想される等級内での給与テーブルや昇給幅などは伝えることはできるかもしれませんが、具体的に何をいつまでにすれば次の等級に上がり昇給するのかまで面接時点で明確に伝えられる企業は少ないでしょう。
そもそも昇給にはどんな種類がある?昇進・昇格とはどう違う?
そもそも「昇給」と一言でいっても、いくつかの種類があり、昇給する理由もタイミングも異なります。
ここでは、昇給とはどういうことなのか、どんな種類があるかとともに、昇進や昇格との違いをお伝えします。
昇給(しょうきゅう)= 基本給が上がること
給与は、基本給+各種手当で構成されています。昇給は、このうちの「基本給」が上がることを示します。
昇給するタイミングは、企業や労働者によっても様々ですが、勤続年数に応じて毎年安定して給与が上がる定期昇給や、昇格、昇進にあわせた昇給など、様々な種類があります。
例えば年2回(4月、10月)など、毎年会社が定める決まった時期に行われる昇給のこと。 会社の規定に応じて、勤続歴や年齢、仕事の成果に応じて昇給されるケースが多い。 |
企業が事前に定めた特定の時期(例えば年2回、4月と10月など)に関係なく行われる昇給のこと。 業績が好調な時などに臨時で行われる場合が多い。 |
勤続年数や年齢を基準にした昇給のこと。 個人の能力や業績とは関係なく、すべての従業員が定期的、かつ一律で昇給する。 |
仕事の成績への考課(評価)によって行われる昇給のこと。 定期昇給と同タイミングで考課昇給の査定が行われることもある。 |
スキルや能力の向上などの理由に基づいた昇給のこと。 |
普通昇給の範囲外となる特別な理由に基づく昇給のこと。 例えば、特別な実績や功労がある、特殊な職務を担当するなど、特別な理由に基づいて行う。 |
従業員全体の給与水準を一斉に引き上げること。 ベースとなる基本給を、個人の勤続年数や成績は関係なく、一定率(%)昇給させる。 |
【参考】昇格(しょうかく)= 社内での等級(グレード)が上がること
例えば、同じ役職や年次であっても、経験値や職務遂行能力、期待役割、職務レベルなどに応じて、それぞれの社員には社内等級(グレード)が定められています。
社内での評価が上がって、その等級が上がることを昇格といい、昇格時にはあわせて昇給も行われることが多いでしょう。
【参考】昇進(しょうしん)= 役職(職位)が上がること
例えば、「課長」から「部長」になるなど、肩書が変わって、役職が上がるのが昇進です。
役職は名刺などにも表記されるため、昇進は社外の人に対しても、社内での地位を示すことになり、昇格と同様に、多くの場合は昇給をすることになるでしょう。
昇給基準を確認する方法【質問例あり】
どんな業務を担当するかわからない転職活動の時点では、正確な昇給基準を把握するのは難しいとお伝えしましたが、そうは言っても「どうすれば昇給できるのか」「どんな人が昇給していくのか」を知りたいという人も多いでしょう。
ここでは、昇給について確認する方法をいくつか紹介します。
【昇給基準を確認する方法】
- 選考前は、採用ピッチ資料などを確認する
- 選考中は、上司となる予定の人に昇格や昇進の事例を逆質問で確認する
- 内定承諾前に、人事に給与テーブルについて確認する
【選考前】採用ピッチ資料などを確認する
採用ピッチ資料とは、企業の採用活動において応募者をターゲットにしてまとめられた、企業の説明資料のことです。
商品やサービスの紹介だけにとどまらず、社風、文化、福利厚生、働いているメンバーの紹介や働き方なども広く説明し、その企業で働くイメージを具体的につけてもらうために作成しています。
中には、給与テーブルについても詳しく紹介しているケースもあるため、転職先として気になる企業がある場合には、採用ピッチ資料が公開されているかどうかを確認しましょう。
・「株式会社〇〇(企業名) 採用ピッチ資料」などとWebサイトで検索する ・SpeakerDeckなどのスライド共有システム上で、企業名を検索する |
【選考中】上司となる予定の人に昇格や昇進の事例を逆質問で確認する
昇給基準については、具体的に知りたいことや、知りたい背景を伝えた上で質問をしなければ、満足のいく回答が得られない可能性があります。
例えば、「昨年度の平均昇給額」を聞いたとしても、入社後に自分が実際に昇給できるかどうかは不明ですし、「昇給基準」を聞いたとしても、どの部署でどんな仕事をするかが確定していない状態では「勤務成績や勤務態度をもとに総合的判断して決定する」としか答えようがないかもしれません。
面接で昇給基準について逆質問をする際は、具体的にどんなことをなぜ知りたいのか自分なりの意図や背景を伝えるようにしましょう。
上司となる人に昇格に必要な条件や、どんな人がこれまで昇格や昇進をしているかなどの評価基準を聞いてみるのも一つの手です。
「入社後、早々に成果を出して貢献するためにも、どういった仕事の進め方や取り組みをしている人が実際に評価をされて昇格や昇進をしているのか、具体例を教えていただきたいです。」 |
【内定承諾前】人事に給与テーブルを確認する
内定が出た後は、企業によっては人事に給与テーブルについて説明してもらうことが可能なケースもあるでしょう。
給与に関わることは、同僚となる社員などには確認しづらいので、質問がある場合には人事に確認するのがオススメです。
その際も、具体的にどんなことをなぜ知りたいのか、自分なりの意図や背景を伝えるようにしましょう。
「仕事内容に大変魅力を感じており、ぜひ御社で働きたいと考えています。ただ、提示頂いた年収の場合、現職に比べると給与が月間○万円ほど下がってしまうため、入社後にどのくらい等級を上げれば元の水準に戻すことができるか知りたいです。 恐れ入りますが、給与テーブルをもとに順調に成果を出していけた場合に、どのくらいの期間で目標とする等級まで上がることができそうか、お聞かせいただけないでしょうか。」 |
まとめ:昇給基準を確認するときの注意点
職種や役職、年齢によっても異なる可能性があるので、自分の類似ステータスではどうなのかを聞くことが大切です。
下記のように、質問意図を説明してから確認すると、企業側から「給与や昇給ばかり気にしている、入社意欲が低い人」と誤解を受けるリスクが減るでしょう。
・年収そのものや、昇給のしやすさだけで入社を決めることはない ・〇〇な理由が合って(仕事が魅力的なので、下がった分の年収を元の水準に引き上げるのに必要な期間を知るためになど)聞いている |
最後に、求人票に「年1回昇給」と書いてあっても、社員が全員昇給するとは限りません。昇給をしなかったとしても違法ではないということにも留意しておきましょう。
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