大企業と中小企業どちらを選ぶ?メリット・デメリットを解説

経営の安定さや福利厚生の充実度から大企業を希望するケースもあれば、柔軟性やスピード感の速さから中小企業を希望するケースもあります。
そこで今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に取材し、大企業と中小企業のメリット・デメリットを解説していただきました。
大企業と中小企業の違い
法で定められた大企業の定義はありませんが、「中小企業基本法」で中小企業と小規模企業の定義を規定しています。
業種にもよりますが、従業員50~300人の企業は中小企業、20人以下の企業は小規模企業とイメージしておくといいでしょう。
業種 | 中小企業者 (下記のいずれかを満たすこと) | 小規模企業者 | |
資本金の額又は出資の総額 | 常時使用する従業員の数 | 常時使用する従業員の数 | |
①製造業、建設業、運輸業 その他の業種(②~④を除く) | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
②卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
③サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
④小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
メリット・デメリット比較表
大企業と中小企業のメリット・デメリットを比較表の形式でまとめました。
以降の項で、具体的なメリット・デメリットを解説します。
大企業 | 中小企業 | |
給与・福利厚生の充実度 | ○ | △ |
社会的な信用 | ○ | △ |
仕事の予算やプロジェクト規模 | ○ | △ |
経営の安定性 | ○ | △ |
担当業務の幅広さ | △ | ○ |
裁量権 | △ | ○ |
組織の柔軟性やスピーディな対応力 | △ | ○ |
組織体制や制度設計の充実度 | ○ | △ |
転勤やジョブローテーション | 発生しやすい | あまり発生しない |
大企業で働くメリット
まず、大企業で働くメリットをご紹介します。
給与・福利厚生が充実している
大企業で働くメリットとして大きいのは、給与や福利厚生が充実している点です。
厚生労働省が発表している「令和4年賃金構造基本統計調査」を見ると、大企業の給与は348.3千円、中小企業は303.0千円、小企業は284.5千円(常用労働者1,000人以上を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」に区分)となっており、企業規模が大きい方が給与は高いことが分かります。

出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」>第4表 企業規模、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び企業規模間賃金格差
福利厚生についても、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が発表している「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」を見てみると、多くの項目で規模の大きい企業の方が福利厚生施策を実施していることが分かります。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」>図表2-4-3 施策が「ある」企業の従業員規模別比較
社会的な信用が高い
社会的信用が高い点も、大手企業のメリットです。
国土交通省が発表した「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、融資を行う際に考慮する項目として「雇用先の規模」は25.4%(令和4年度)という結果になりました。
上位である完済時年齢や健康状態と比べると割合は低いですが、回答者の4人に1人は「考慮する」と回答しています。

出典:国土交通省 住宅局「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」>融資を行う際に考慮する項目
大きな予算・プロジェクトに関われる
大企業の場合、予算やプロジェクト規模も大きくなる傾向があるため、人事であれば採用予定人数、経理であれば売上高、エンジニアであればプロジェクト人数など、多くの職種でスケールの大きい仕事に携わることができるでしょう。
企業によってはグローバル展開など、対象範囲が海外に及ぶこともあるかもしれません。
大企業で働くデメリット
メリットがある一方で、デメリットも考えられます。
大企業で働くデメリットを解説します。
縦割りで根回しが必要なケースがある
大企業は従業員が多く、大きな予算・プロジェクトに関われるメリットがありますが、規模が大きいために縦割りの組織構造になる傾向があり、関係者に根回しをしてコンセンサスを得ておく必要があるなど、組織の壁を超えて物事を動かすには時間を要すケースもあるでしょう。
転勤やジョブローテーションが発生する可能性がある
日本の大企業は「メンバーシップ型雇用」を採用しているケースが多く、新卒採用を中心として職種を固定しない「総合職」として人材を採用し、適性に合わせて配置します。
企業を支える人材を育成するために転勤を含めたジョブローテーションを行い、幅広い業務を任せることが一般的です。
近年は、家庭と仕事の両立のために転勤を避ける傾向があり、地域限定の総合職も増えていますが、転勤やジョブローテーションを避けたい方は注意が必要です。
保守的な制度や社風の企業もある
大企業は従業員数が多く影響範囲が広いために、個別の事情に対してフレキシブルな対応ができず、保守的な制度や社風が残っている可能性もあります。
また、創業から間もないスタートアップやベンチャー企業に比べると、定年まで働く従業員も多く平均年齢が高いため、若手の場合はジェネレーションギャップや価値観の違いを感じることがあるかもしれません。
中小企業で働くメリット
中小企業には、大企業にはない魅力があります。
中小企業で働くメリットについてご紹介します。
幅広い仕事に関わることができる
中小企業は従業員人数が少ない分、社内で兼務することが多く幅広い仕事に関わることができるチャンスがあります。
例えば人事と労務、総務と広報など、営業とマーケティングなど、成果を出して積極的に手を挙げることで、大手企業よりも様々な経験を身につけることができるかもしれません。
裁量権が広い可能性がある
大企業は社内の決裁ルートや承認フローが明確に定められていることが多く、予算規模や影響範囲も大きいため、決められたルールに従って物事を進める必要があります。
中小企業の場合は、企業にもよりますが、関係者が少なかったりフローが簡略化されていたりして、逐一承認を得なくても仕事を進められる可能性があります。
柔軟でスピーディな判断
規模が小さい企業の場合、経営層や従業員同士の距離が近いため、口頭やメールで相談してすぐに承認を得るなど、柔軟でスピーディな判断を仰ぐことが可能です。
特に20人以下の小規模企業では、社内の意思決定ややり取りがスピーディに進むことが多いでしょう。
中小企業で働くデメリット
中小企業で働くメリットもある一方で、デメリットも考えられます。
代表的なケースをご紹介します。
給与・福利厚生が十分でない可能性がある
前述した通り、大企業に比べると中小企業の場合は十分な給与や福利厚生を得られないかもしれません。
給与や福利厚生に恵まれていた企業から転職する場合は、入社後の不満につながる可能性があるため、事前に待遇面を確認し慎重に判断しましょう。
また、大企業に比べて賃金の引上げが少ない可能性もあります。
厚生労働省が発表している「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」によると、企業規模が大きいほど1人平均賃金の改定額は大きくなっていることが分かります。
求人に記載されている入社後の年収も出るだけでなく、評価制度や中長期的な年収の上り幅も確認できるといいでしょう。

出典:厚生労働省「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」>賃金の改定額及び改定率(PDF)>第2表 賃金改定区分・企業規模・産業別1人平均賃金の改定額及び改定率
安定性に欠ける
中小企業は安定性に欠ける点もデメリットです。
中小企業庁が発表している「倒産の状況(令和6年1月分)」によると、資本金100万円以上500万円未満の企業に倒産が多いことが分かります。
ばらつきはありますが、資本金が多い企業に所属した方が、倒産するリスクを下げることができるでしょう。

出典:中小企業庁「倒産の状況(令和6年1月分)」>倒産の状況(令和6年12月分)(Excel)
制度が整っていないケースがある
中小企業の多くは大企業ほど制度が整っていない可能性があります。
特に創業して間もないベンチャー・スタートアップ企業では、制度を整備する人が少ないことも考えられるため、制度の不備を見つけた場合は自ら制度を提案するくらいの姿勢が必要です。
制度が十分に整備された環境で働きたい方は、中小企業は向いていないかもしれません。
自分に合う働き方を考えよう
大企業と中小企業のメリット・デメリットをご紹介しましたが、もし転職で迷っている場合は、「どちらの働き方が自分に合っているか」という観点で考えましょう。
また、中小企業に比べると、大企業はブランド力があり待遇が良いため応募が集中する可能性があります。
もし大企業を希望する場合は、求人を絞り込み過ぎないようにしましょう。
- タグ:
こちらの記事も読まれています
新着記事
- 2025年8月20日将来的に起業したい。転職の面接で伝えるべき?【転職相談室】
- 2025年8月20日フリーランスのメリット・デメリットは?会社員との違いを解説
- 2025年8月20日デジタルマーケティングの仕事に必要なスキルとは?
- 2025年8月20日フレックスタイム制度とは?働き方をわかりやすく解説
- 2025年8月20日大企業と中小企業どちらを選ぶ?メリット・デメリットを解説
- 2025年8月20日「事務処理能力」の高さを、どうアピールするといいでしょうか【転職相談室】
- 2025年8月20日「サポート力」を職務経歴書や面接でアピールする方法を教えてください【転職相談室】
- 2025年8月20日チームワークが合わない!自分のペースで働ける職種や会社の探し方