転職先を決めずに退職した場合の社会保険の手続き
転職先を決めずに退職した時に、健康保険や国民年金の手続きはどうすればいいのでしょうか。
そこで今回は、会社を退職後に再就職まで期間が空く場合の、健康保険や国民年金の手続き方法について解説します。
監修
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
岡 佳伸氏
アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。
退職後の健康保険の手続きについて
退職後の健康保険の手続きには3種類あり、いずれかの方法で加入しなければなりません。ご自身の状況に合わせて、早めに手続きを行いましょう。
方法1:健康保険の任意継続被保険者になる
今まで加入していた協会けんぽ(全国健康保険協会)や、健康保険組合の任意継続被保険者としてそのまま加入する方法です。加入できる期間は、最大で退職日の翌日から2年間となります。退職日まで2カ月以上継続して社会保険に加入していることが条件となり、退職した日の翌日から20日以内に申請書を提出する必要があります。この申請書の提出先は、住所地の協会けんぽ各支部、または今まで加入していた健康保険組合となります。やむを得ない事情でない限り申請書の提出遅延は認められません。
任意継続被保険者として個人が負担する保険料は在職時の約2倍になります(会社が負担していた分も払うためです)。ただし、保険料の計算の基礎となる標準報酬には、保険料額に上限額が決められており、協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合は28万円(東京都で40歳未満の場合、支払額の上限は2018年4月現在で27,720円です)で計算されます。被扶養者(扶養家族)もそのまま継続して加入できます。被扶養者に対しての保険料負担は発生しません。
方法2:市区町村が窓口の国民健康保険に加入する
各市区町村が窓口となっている国民健康保険に加入する方法です。保険料は前年の所得や加入員数によって変わります。なお、国民健康保険には扶養家族という概念はなく、加入人数によって保険料が異なります。さらにお住まいの各市区町村によっても保険料は変わります。
転職を検討しているのであれば、退職予定日までに健康保険の任意継続被保険者と、保険料を比べておくと便利です。加入手続きは、会社を退職したことを証明する書類(退職証明書や資格喪失証明書、離職票等)を持参の上、各市区町村の国民健康保険窓口で手続きします。多くの市区町村で身分証明書を持参していれば、その場で被保険者証を発行してくれます。また、やむを得ない事情(特定受給資格者又は特定理由離職者)で退職し、雇用保険の受給資格決定を受けた方については、国民健康保険料の軽減措置を受けることができます。
方法3:家族の被扶養者になる
家族に健康保険の被保険者(会社勤めされている方)がいる場合、その扶養家族(被扶養者)になる方法もあります。ただし、ご自身の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である必要があります。退職した場合は、今後の収入見込みで計算します。また、この年間収入には雇用保険の基本手当や健康保険の傷病手当金も含まれます。家族の被扶養者になる場合、保険料の負担はありません。
国民年金への加入手続きについて
会社に在職していた時は、国民年金の第3号被保険者として厚生年金と併せて保険料が徴収されていました。退職時に20歳以上60歳未満の方は、国民年金の第1号被保険者として手続きをする必要があります。なお国民年金の保険料は、平成30年度時点で16,340円です。
加入手続きはお住いの各市区町村国民年金担当窓口ですが、各年金事務所や郵送で手続きを行うこともできます。国民年金健康保険の保険料負担が重い方は、国民年金保険料の免除申請を行うことが可能で、会社を退職した方の場合は、失業による特例免除を受けることができます。その際の添付書類として、雇用保険の受給資格者証のコピー、または離職票のコピーが必要となります。
なお、配偶者の健康保険被扶養者になる方は、国民年金の第3号被保険者となるため、保険料の負担はありません。
転職先が決まった時は
再就職が決まったら、退職後に加入していた健康保険の喪失手続きが必要になります。加入していた協会けんぽ(全国健康保険協会)や健康保険組合、各市区町村に問い合わせて下さい。一般的な手続きとしては、任意継続被保険者資格喪失申出書等の書類と被保険者証の返納、社会保険に加入した日付の分かるもの(健康保険被保険者証のコピーなど)が必要とされます。保険料を前納した場合は還付されます。
国民年金は、転職先の企業で厚生年金の加入手続きを行うと自動的に切り替わるため、特に手続きの必要はありません。
まとめ
健康保険の場合、家族の被扶養者になれれば保険料負担がありませんが、多くの場合、「健康保険の任意継続」か「国民健康保険の加入」のどちらかを選択しているようです。保険給付の内容には、原則として差はありません(療養給付の際の費用負担は3割、ただし付加給付や人間ドック等で差がある健康保険組合もあります)。転職先を決めずに退職する場合は、保険料を比較し、有利な方法を検討していきましょう。
参照URL
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat650/r313
www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20121003.html
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