転職で「妥協すべき点」は?うまくいかない時は「前向きな妥協」も考えてみる

転職成功するために「妥協すべき点」について、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんが解説。
転職活動が思うように進まない時に妥協が必要な4つのポイント、妥協してはいけないこだわるべき点などを具体的に紹介します。
転職に「妥協」は必要?不要?
転職活動が思うように進まない時、行き詰まっていると感じる時に、「妥協した方がいいのかな?」と考える人は少なくないでしょう。
転職に妥協が必要なのか、不要なのかを断言する前に、まずは妥協の定義を確認する必要があります。
辞書などで妥協という言葉の意味を引くと、「納得をして折り合いをつける」というニュアンスが含まれますが、日常生活では「諦める、投げ出す」といったネガティブなニュアンスで使うケースも多いでしょう。
結論を伝えると、転職活動では、諦めて投げ出すような妥協は不要ですが、納得をして折り合いをつけるという意味での妥協は必要です。
例えば、現職で仕事をしながら、子育て・介護など家族と生活をしながらの転職活動は、そこに割ける時間や労力が限られます。
何かしらの制約事項がある状況下では、完璧な選考準備をして、完璧な転職先を納得できるまで探し続けるというのは無理があるでしょう。
そういった意味で、理想と現実の折り合いをつけるという作業はどうしても必要になります。
ただしこれは、「出来ないからもういいや、諦めよう」という意味ではありません。
納得できていないことを、諦めたり投げ出したりしては、転職先に満足できずにまた再度転職を繰り返すという悪循環に陥ってしまうかもしれません。
転職を成功に導くためには、自分なりに取り組み、調べたりすることで納得感を持って、理想と現実の折り合いをつける「前向きな妥協」が必要なのです。
転職が思うように進まない時に妥協すべき4つのポイント
理想と現実の折り合いをつける「前向きな妥協」は、転職活動のどんなポイントで必要になるのかを具体的にみていきましょう。
なお、以下の4つのポイントを見直して転職活動を進めたにも関わらず、思うように選考が進んでいかない場合には、転職活動を一時的にストップして、現職でスキルを磨くというのも一つの道です。
1. 自己分析・棚卸しにかける時間と視点 2. 書類作成の完成度 3. 面接準備にかける時間 4. 求人応募、転職先に求める条件 |
1. 自己分析・棚卸しにかける時間と視点
転職活動では、自己分析と棚卸しに時間をかけすぎて、いつまで経ってもその先の応募書類の作成に取りかかれないというケースは珍しくありません。
転職サイトなどが用意している自己分析ツールなども活用しながら、限られた時間を有効活用すると良いでしょう。
また、「こういう仕事がしたい」「こういう条件で働きたい」という欲求だけで突き進みすぎると転職しづらくなります。
自己分析や棚卸しをより効果的に進めるためには、転職市場や応募企業の視点も踏まえることが大切です。
これまでの自分のキャリアを、やりがいなどの自分目線で整理するだけではなく、転職市場に希望する仕事がありそうか、応募する企業にとって自分の何がアピール材料となるのかなども考えて整理しましょう。
2. 書類作成の完成度
転職活動に必要な応募書類の完成度は、こだわってしまいがちです。
「書類選考に合格するためにも完璧なものを用意したい」と思う人もいるでしょうし、一度書いてみた結果「他の事例も書いたほうがいいかも」「この書き方では伝わらないかも」「文字数が多すぎる・少なすぎるから書き直したほうがいいかも」などと迷ってしまう人もいるでしょう。
実際に、文章構成や内容、言葉選び、文字数、書類の体裁や見せ方など、こだわりだしたらきりがありません。
しかし、書類作成に時間や労力を使いすぎると、なかなか転職活動そのものを進めていくことができません。
最初の応募書類がいつまで経っても完成せずに、なかなか選考応募できないのはもったいないので、最低限押さえておくべきポイントを押さえたら、一旦は完成扱いにするのが良いでしょう。
理想と現実の折り合いをつけるためには、各種転職サイトなどのサンプルなど比べてみて、遜色がないレベルを目安にしましょう。
例えば転職エージェントなど利用している人は、キャリアアドバイザーに確認してもらい「これなら企業に提出しても大丈夫」と言ってもらえるレベルに達したら、それ以上はこだわりすぎずに選考に応募してみましょう。
初回から完璧を目指すのではなく、選考を進める中で改善すべき点が見えてくることもあるので、その都度、空いた時間を使って微修正をしていくとよいでしょう。
3. 面接準備にかける時間
企業研究や業界研究、面接対策と練習なども時間をかけて準備をしたくなりがちですが、1社に時間をかけすぎると他の企業の準備に手が回らず、結果として面接社数が少なくなったり、転職活動期間が長引いたりするため、折り合いをつけることが必要でしょう。
面接のために公開情報を収集して分析したり、転職エージェントや知人に企業特性などを聞いてまとめ、想定問答集を作って練習したりすることは有効ですが、作り込みすぎると面接の場面で違う内容が来た時に、対応できないケースもあります。
面接準備にかけた時間がそのまま結果に繋がるとも限りません。
最低限、面接でよく質問されている内容や自己紹介、志望動機、自己PRなどで伝えたいキーワードをまとめておき、自分の言葉で話せるような下準備を整えておけば良いでしょう。
4. 求人応募、転職先に求める条件
転職活動の選考が思うように進んでいかない場合は、求人応募や転職先に求める条件を広げたり、変えたりして折り合いをつけることが必要になります。
その場合は例えば、以下の3つのような希望条件に固執していないかを見直してみましょう。
- 転職理由とリンクしていない希望条件
- 以前の転職理由から変更していない希望条件
- こんなのもあったらいいなと追加した希望条件
これらは、妥協しても良い条件である可能性も高いでしょう。
例えば「職種や勤務地などを追加して広げる」「年収レンジを広げる」など可能な範囲で条件を緩和したり、「転職理由とリンクしていない条件」は、思い切って希望条件から外してみたりするのも有効です。
また、年功序列の社風が合わないという理由から転職を考えていたはずなのに、社風とは関係ない「上場企業」などにこだわっている場合もあります。
他にも、自己分析を深めた結果、本当の転職理由は別にあったと判明するケースや、以前の転職理由から希望条件を見直していないケースもあるでしょう。
例えば、転職活動初期には「年収アップ」にこだわっていたけれど、自己分析をしてみたところ本当に不満があるのは年収ではなく「サービス残業」だった場合は、希望年収を現職と同じ設定に変えて、残業代などの支払い制度に注目をして探し直すのも手でしょう。
また、転職活動を始動した時には絶対条件ではなかったはずの、「ストックオプション」や「家賃補助」など、こんなのもあったらいいなと後から追加した希望条件は、状況によっては外してみるのも良いでしょう。
転職で妥協してはいけない、こだわるべき点は?
納得できる転職をするためには、転職先を決定するタイミングで、転職をゴールにしないことが重要です。
内定を得た後は、どうしても「内定を得た企業の中から1社を選んで転職をしないといけない」という気持ちになりがちです。
しかし、ここで「もうこの企業でいいや」という妥協をしてしまってはいけません。
転職先を決断する際は以下の4つのポイントを再確認すると良いでしょう。
- 転職理由を満たせるか
- それを外したら転職したくないという条件を満たせるか
- 家族などの環境や条件に応じて決まっているパターン
- 直感
まずは転職をしたいと思った理由を深掘りしてみましょう。
そこから、転職によってそれを叶えるために必要な条件を考えて見落としていないかを確認します。
例えば、「安定した働き方をしたい」であれば、自分が求めている安定は「年収アップ」なのか「固定給35万円以上」なのか、「上場企業で働くこと」なのか「設立30年以上の会社で働くこと」なのか、「転勤なし」なのかなど、具体的な条件で考えてみましょう。
他にも「自由な環境で働きたい」という希望も、「5日以上の連続休暇制度あり」「フレックス勤務OK」「定時退社」「在宅勤務OK 」「服装自由」「副業OK 」など、様々な考え方ができます。
具体的な条件が思いつかないという人は、転職サイトの絞り込み検索機能を見ながら考えてみるのも良いでしょう。
次に、仮に他の条件が良くても、その条件を外したら転職したくない条件を見落としていないかも確認してみましょう。
例えば、「完全土日休み」などの休日条件は初期の検索では見落としがちですが、外してしまうと転職を躊躇してしまうというケースも少なくありません。
他にも、「転勤なし」でなければ家族からの賛同が得づらいなどもあるかもしれません。
また、これらに加えて、自分の直感も大切にすると良いでしょう。
例えば、人によっては「服装自由」な会社ならば自分らしく過ごせて、その社風の中で働く人とも馴染めそうだ、などと感じることもあるでしょう。
転職活動で行き詰まった時に「前向きな妥協」をするための3つのコツ
転職活動で行き詰まった時に、理想と現実の折り合いをつけて「前向きな妥協」をするためには、
以下の3つが大切です。
1. 余裕や選択肢を持てるようにする 2. 転職軸を明確にしておく 3. 転職市場を知る |
1. 余裕や選択肢を持てるようにする
経済的・時間的な余裕と選択肢を持てれば、心身のコンデションも整いやすくネガティブな妥協をせずに冷静に判断しやすくなります。
在職中に転職活動を行うのもそのための1つの方法です。
思うような転職先がない場合に、「現職に残る」「異動する」「転職の時期を再検討する」などの複数の選択肢を残すことができるでしょう。
他にも、転職活動を行う時は、時間・行動の優先順位を切り替えるのも有効です。
例えば、3ヶ月間など期間を定めてその期間中は転職活動を優先させることを家族などに共有し、勤務後の時間や、休日などを転職活動にあてると良いでしょう。
こういったことの積み重ねが、時間と心の余裕を作ってくれるはずです。
また、転職エージェントなどを活用して、相談相手を見つけるのもおすすめです。
2. 転職軸を明確にしておく
転職軸を明確にすることは、自分の中での判断軸を明確にすることでもあります。
これらが明確であれば、希望条件の優先順位付けがしっかりとできるので、ネームバリューや条件だけで選んだり、転職がゴールになったりせずにすむはずです。
例えば、仮に年収を少し下げて転職をしたとしても、より重要視する仕事内容で十分満足している場合は前向きに折り合いをつけた妥協となり、自分自身で納得ができるでしょう。
3. 転職市場を知る
どのくらいの譲歩ならば、自分にとって前向きな妥協なのかを判断するためには情報が必要です。
今の自分のスキルや経験で希望する転職を実現できそうか、希望条件はどのような水準に設定すると良いかなどは、転職エージェントからアドバイスを受けたり、応募・選考を通じて自身の市場価値を把握したりすることで判断しやすくなるでしょう。
転職市場は、企業や他の求職者、社会情勢、経済環境などにも影響されます。
調べたことは自分の中だけで考えるのではなく、相対比較するようにしましょう。
情報と比較を元に、今の自分なら、どのくらいの背伸びをして、どのくらいのレベルを狙えるのか、適切な目標設定をすることで納得感を伴った転職ができるようになるはずです。
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