内定取り消しとは?違法・取り消せるケースの違い、対処法など

内定が決まり、新しい環境への準備を進めている最中の「内定取り消し」は、生活やキャリアに支障をきたす大きな出来事です。
万が一の事態に直面した際、冷静に対処できるよう、まずは法的な位置づけや基本的なルールを正しく理解しておきましょう。
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士
目次
内定取り消しって違法?合法?
企業が出した内定を一方的に取り消すことは、法律上「解雇」と同じくらい重いものとして扱われます。そのため、企業側が自由に取り消せるわけではなく、客観的に見て納得できる正当な理由の有無で、違法か合法かが判断されます。
内定取り消しとは
内定取り消しとは、企業と求職者の間で合意に至った採用の約束を、入社前に企業側から解除することを指します。
法的には、企業が採用を通知し、求職者が承諾した時点で「始期付解約権留保付労働契約(しきつきかいやくけんりゅうほつきろうどうけいやく)」という一種の労働契約が成立したとみなされます。これは「入社日から働き始める」という約束とともに、やむを得ない事情がある場合に限り、企業が契約を解除できる権利を留保した状態です。
つまり、求職者が承諾して内定が成立した段階で、すでに労働契約は成立しており、企業側の一方的な都合で契約を白紙に戻すことは原則としてできないルールになっています。
内定取り消しの法的なルール
一方的な取り消しはできないものの、過去の裁判例に基づき、内定取り消しが認められるケースもあります。
以下の3つの条件を満たしているかが、法的な判断のポイントとなります。
- 採用時には知ることができなかった事実であること
- 解約を正当化できるほどの客観的・合理的な理由があること
- 社会通念上、相当であると認められること
例えば、重大な経歴詐称が判明した、あるいは企業の経営状態が急激に悪化し、人員削減が避けられない状況になったといったケースが該当します。
正当な理由がない取り消しは「解約権の濫用」とみなされ、法的に無効となる可能性が高いといえます。
内定取り消しの違法性が高いケース
企業には一度締結した労働契約を遵守する義務があります。そのため、正当な根拠のない内定取消しは「権利の不当な行使」とみなされます。
特に以下のようなケースは、「解約権の濫用」として法的に認められない可能性が極めて高いといえます。
| 違法性が疑われる内定の取り消し | 具体例 |
|---|---|
| 企業側の身勝手な都合 | 「より優秀な人材が見つかった」「社風に合わない気がする」といった主観的な理由 |
| 選考時に把握可能だった事実 | 採用の段階で知ることができた、あるいは注意すれば把握できた事実を後から理由にすること |
| 不当な差別や属性によるもの | 性別、結婚、妊娠、思想信条など、社会的に不当な差別にあたる理由 |
| 軽微な問題 | 業務に支障がない程度の体調不良や、個人の私生活上の問題 |
これらは判例上も厳しく制限されており、安易な取消しは損害賠償請求の対象となるリスクがあります。
内定取り消しが認められるケース
内定後に、採用時点では予測できなかった重大な事態が生じた場合、取り消しが認められることがあります。具体的に以下のようなケースが該当します。
学歴詐称・詐欺
採用の判断に影響を与えるような重大な経歴の偽りがあった場合、内定取り消しの正当な理由となります。
最終学歴や職歴、保有資格などを偽って申告していたケースが該当します。企業との信頼関係を著しく損ねるため、発覚した時点で、労働契約の維持はきわめて困難と言わざるを得ません。
健康上の理由
内定後に重い病気や怪我を負い、入社予定の業務に従事することが著しく困難になった場合です。
ただし、短期間の加療で回復が見込める場合や、業務内容の調整によって勤務が可能な場合には、安易な取り消しは認められません。医師の診断に基づき、業務遂行に耐えられないほど深刻な状況であるかどうかが判断の基準となります。
犯罪行為・著しく不適切な言動の発覚
内定後に刑事罰を受けるような犯罪行為に及んだ場合や、著しく不適切な言動が発覚した場合です。
企業の社会的信用を大きく傷つける恐れがあるため、取り消しが認められやすくなります。SNSでの誹謗中傷や反社会的な投稿なども、企業秩序を乱す要因として厳しく判断されるケースが増えています。
卒業できていない
新卒採用などの場合、入社時期までに学校を卒業できなかったことが理由となります。
採用の前提条件である「卒業」という資格を満たせなくなったため、客観的に合理的な理由として取り消しが認められるのが一般的です。内定通知書や誓約書にも、卒業を条件とする旨が明記されていることが多い項目です。
誓約書などの内定取り消し理由に該当
内定承諾書や誓約書に記載されている「内定取り消し事由」に該当する事態が発生した場合です。
例えば「重要な書類を期限までに提出しない」「正当な理由なく連絡が途絶える」といった内容が挙げられます。あらかじめ明示されたルールに違反し、かつそれが契約を継続しがたい重大な不備である場合に検討されます。
経営状態の急激な悪化
企業の経営が著しく悪化し、人員削減が避けられない「整理解雇」の要件を満たす場合です。
ただし、内定者への取り消しを行う前に、役員報酬のカットや希望退職者の募集など、回避努力を尽くしている必要があります。単なる「業績の多少の落ち込み」程度では認められず、極めて深刻な存続の危機にあることが条件となります。
内定取り消しに納得できない場合にすべきこと
もし不当と思われる理由で内定を取り消されたら、まずは冷静に事実関係を整理しましょう。具体的なステップを確認してください。
内定取り消しの理由を確認する
まずは、企業側になぜ内定を取り消すのか、その理由を明確に説明してもらう必要があります。口頭だけでなく、書面やメールなど形に残る方法で受け取ることが重要です。後述しますが、履歴は後に交渉する場面に直面した際、大切な資料となりえます。
内定取り消しによる補償があるかを確認する
内定取り消しによって、転居費用の発生や、前職をすでに退職しているなどの実害が出ている場合、損害賠償や何らかの補償が受けられる可能性があります。企業側に補償の意思があるかを確認し、示された条件が自身の被った不利益に見合っているかを慎重に検討しましょう。
内定通知書やこれまでの履歴を保存する
企業とのこれまでのやり取りは、すべて重要な証拠となります。内定通知書や採用条件提示書はもちろん、内定後のメールの履歴、内定者懇親会の案内、あれば電話の録音など、労働契約が成立していたことを証明できる資料をすべて保存しておいてください。これらの記録は、後に専門家へ相談する際や交渉を行う際の大きな支えとなります。
弁護士や労働局に相談する
自力での交渉が難しいと感じたら、専門機関の力を借りることを検討してください。各地の労働局にある「総合労働相談コーナー」では無料で相談を受け付けており、助言や指導を求めて解決を図る道もあります。また、法的措置や具体的な賠償請求を視野に入れる場合は、労働問題に詳しい弁護士へ相談するのも近道です。
内定取り消しで、雇用保険の基本手当(失業保険)はすぐにもらえる?
通常、企業都合による内定取り消しであれば、7日間の待期期間後、給付制限なしですぐに受給できる可能性が高いです。これは、内定取り消しが「特定受給資格者」等の要件に該当し、会社都合退職と同等に扱われるためです。
一方、内定者側の落ち度(学歴詐称、単位不足、犯罪行為など)が原因で取り消された場合は、離職理由の判断に注意が必要です。
| 内定取消の区分 | 失業給付の制限期間 |
|---|---|
| 内定者に落ち度がない取り消し (正当な理由のない自己都合と同等) | 2025年4月以降の離職であれば、給付制限期間は原則1ヶ月となる |
| 内定者に落ち度がある取り消し (重大な帰責事由・重責解雇相当) | 学歴詐称や犯罪行為などが原因であれば、給付制限期間は3ヶ月が一般的 |
いずれの場合も、前職での雇用保険加入期間(原則1年以上)を満たしていることが受給の条件です。内定通知書や取り消し理由がわかる書面を揃え、速やかに近くのハローワークへ相談しましょう。
一方で、新卒の内定取り消しの場合は、そもそも雇用保険に加入していないことが一般的であるため、基本手当の対象外となる点に注意が必要です。
内定取り消しに関するQ&A
内定取り消しに関するさまざまな疑問をまとめました。ご自身の状況に当てはまるものを参考にしてください。
内定を保留しているうちに内定を取り消されることはある?
内定の回答を保留している間は、まだ労働契約が成立していない状態です。そのため、企業側が「他の候補者に決定した」などの理由で、採用内定の提案(申込)を撤回することは法的に可能です。
ただし、企業側にとっても安易に撤回を繰り返すことは、求職者の「期待権」を侵害したとして損害賠償請求などのリスクを伴う行為です。内定保留をお願いする際は、企業側から提示された期限を守り、誠実な対応で臨みましょう。
リファレンスチェックで内定取り消しになる可能性は?
前職での実績や素行を確認するリファレンスチェックの結果、事前に申告していた内容と著しい乖離(かいり)や虚偽が発覚した場合は、内定取り消しの対象となることがあります。ただし、単なる「相性の不一致」程度では正当な理由になりにくく、業務遂行に重大な支障をきたす客観的な事実があるかどうかが焦点となります。
試用期間中の解雇も内定取り消しと同じ?
試用期間中もすでに労働契約が成立しているため、解雇には内定取り消しと同様に「客観的に合理的な理由」が必要です。
ただし、試用期間は適格性を判断する期間であるため、通常の解雇よりは広い範囲で認められる傾向にあります。とはいえ、企業側が自由に従業員を辞めさせられるわけではなく、教育指導の実績など、プロセスが伴わない解雇は無効とされることがあります。
SNSでの投稿が原因で内定取り消しになることはある?
過去や現在のSNS投稿の内容が、企業の社会的信用を著しく損なうものや、公序良俗に反するものである場合、取り消しの理由になり得ます。特に、特定の個人や団体への誹謗中傷、機密情報の漏洩を疑わせる投稿などはリスクが高いといえます。
内定取り消しをされたことは、次の選考で正直に言うべき?
自分から積極的に伝える必要はありませんが、聞かれた場合には事実を伝えることが望ましいです。その際、企業側の経営不振など自分に非がない理由であれば、選考に不利に働くことは少ないはずです。むしろ、予期せぬ事態に対してどのように気持ちを切り替えたかという姿勢を示すことが、信頼に繋がります。
内定取り消しの通知が電話だけだった場合は?
内定取り消しの通知が電話のみの場合、証拠として不十分です。必ず「書面(内定取消通知書)」の発行を依頼しましょう。取り消し理由が明記された書面があれば、ハローワークでの失業保険手続きや、弁護士などへの法的相談がスムーズに進みます。
もし書面の発行を拒否された場合は、以下の対応で証拠を確保してください。
- 電話の録音(担当者名、日時、具体的な理由を記録する)
- メールのやり取りを保存(削除せず、バックアップをとる)
- やり取りのメモを作成(いつ、誰と、何を話したかの詳細)
内々定を取り消された場合は?
「内々定」はあくまで「内定を出す予定」の段階であり、一般的にはまだ法的な労働契約が成立しているとはみなされません。そのため、内定に比べると取り消しへの対抗は難しくなります。ただし、入社を強く期待させるような言動があったり、具体的な準備が進んでいたりする場合は、期待権の侵害として損害賠償が認められる事例もあります。まずは専門機関へ相談してみるのが賢明です。
\内定の定義・承諾や辞退の連絡マナーなど/
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設
https://www.pright-si.com/
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