転職して会社員と副業を両立したい。ポイントや注意点は?
会社員と副業の両立を認める企業は増えています。すでに副業をしているか、もしくはこれから始めたいと思っている方は、転職先が副業を認めているかどうかが会社選びのポイントとなるでしょう。
副業OKの会社への転職で気を付けるべき点を組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに聞きました。
企業を探す上で知っておくとよい副業に関する知識
副業を認める企業は増えている?
リクルートキャリアが2019年に実施した副業・兼業に対する企業の意識調査(回答数3,514人)によると、副業・兼業を推進または容認している企業は30.9%。2018年度調査の28.8%より2.1ポイント上がり、副業・兼業を認める傾向は広がっています。
副業と兼業、何が違うの?
「副業」「兼業」は、厚労省の書面でも並列表記になっており、どちらも「収入を得るために携わる本業以外の仕事」を指しています。
細かな言葉の意味として、
- 副業=主となる仕事(本業)ではない別の仕事。収入や仕事量、労働時間が本業に比べて少ない
- 兼業=本業以外の事業を同時に掛け持ちしている状態。収入や仕事量が本業と差がないこともある
などの違いはあります。
ただ、明確な定義はなく、本記事では、本業以外に仕事を持つ「副業」の言葉を使っていきましょう。
企業が副業を認める理由とは?
では、企業側にとって副業を認める理由はどこにあるのでしょう。
リクルートキャリアの調査によると、
- 人材育成、本人のスキル向上につながるため
- 社員の離職防止(定着率の向上、継続雇用)につながるため
という導入背景が、2018年度の調査よりも大きく上昇しています。
さらに、副業を容認している企業では、「今後推奨レベルまで引き上げていく可能性がある」と回答した企業が 2018 年度調査よりも 8.1 ポイントと上昇傾向にあります。
企業は副業している社員を受け入れることで、
- 多様な人材を確保できる(44.8%)
- 自社では培えない経験・知識が得られる(40.3%)
という良さを感じており、「本業に還元できている」と感じている企業も3割以上あることがわかっています。
副業OKにしている業態は、銀行などの金融機関、製造業、サービス業と多岐にわたります。リモートワークの浸透や、社会情勢の変化で業務量が減少したことで、「時間に余裕ができた」「1社に頼らずに幅広いスキルを身につけておきたい」と考える人も増えていると考えられます。
会社員と副業を両立させたい。企業探しのポイントは?
副業が可能かどうかの確認方法
求人サイトを見ると「副業OK」と検索タグに設けている場合があります。企業選びにおいて「副業OK」が重要な要素であれば、検索タグで企業数を絞って調べるのも一つの方法でしょう。
求人サイトに詳細が記載されていない場合や、副業可としながらも条件が設けられているなど、許容範囲が企業によって異なる場合もあります。
転職エージェントから応募する場合はエージェントに前もって調べてもらったり、直接応募したあとに、面接の過程で企業に直接聞いたりするのもいいと思います。
レジュメなどに「副業可の会社を探している」と記載した方が良い?
副業OKの企業からオファーをもらうために、求人サイトに登録しているレジュメや、ビジネスSNSのプロフィールに「副業可の会社を探しています」と明記する方もいらっしゃいます。
ただ、ここにはリスクもあるのでメリット・デメリットをきちんと理解しておきましょう。
【メリット】副業を推奨する企業を効率よく探すことができる
副業可と言っても、副業を容認している程度なのか、副業を推奨している企業なのかを面接前に判断するのは難しい場合があります。
そのため、「副業可の会社を探しています」と記載しておくことで、副業を推奨する企業からのオファーに絞られ、企業を効率よく探すことができます。
- すでにやっている副業をこれからも続けたい
- 副業でやりたいことを実現するために転職したい
など、「副業できるかどうか」が転職で重視したい条件であるのなら、明記するのはいいでしょう。
【デメリット】オファー件数が減少する可能性がある
一方、副業を積極推進している企業はまだまだ限られており、オファーの数が少なくなる可能性があります。
副業を認めている企業でも、転職活動での伝え方には注意が必要です。その注意ポイントについても詳しく見ていきましょう。
副業OKの企業に転職する際の注意点
志望理由が「副業できるから」となっていないか
「副業可」を企業探しの一つの条件にするのはもちろんいいのですが、「副業できるかどうか」だけで転職をしては本末転倒です。
企業側が副業を認める理由の一つは、「副業をすることで本人の経験やスキル、考え方など視野が広がり、本業にもいい影響がある」から。「副業ができる」ことだけを志望理由にしては、企業側は「副業ができれば他社でも良いのではないか?募集職種の業務を通じてか?」と疑問に感じるでしょう。
応募先企業としては、「本業で活躍・貢献できる人材が欲しい」と採用活動を行うので、まずは募集職種の業務で貢献できることや志望動機などをしっかり考えましょう。
副業の始め方、内容は企業側に相談・確認を
「副業可」としているものの、積極的に推進はしていなかったり、特定の条件をつけていたりする企業も少なくありません。
例えば、
- 副業可ではあるけれど、この1年はIPO準備に向けて本業に集中してほしいので、一時的に認めない方針でいる
- 業務内容や当社の仕事の進め方に早く馴染んでほしいために、入社後半年間に限って、副業不可としたい
といったケースです。
副業を始めるにあたり、副業先の企業や仕事内容について申請するケースも多く、競合関係になる場合はNGになる可能性もあります。
本業の労働時間外をどう使うかは原則として「労働者の自由」です。ただ、副業が、
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏洩する場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
のいずれかに該当すると、本業の企業が制限を加えることができます。(※)
(※)参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf)」
面接では、選考の段階で企業側の「副業可」に対する考え方、自分がやろうとしている副業が認められるかどうかを確認しておきましょう。
副業を積極的に推進していない場合は、「ゆくゆくは副業にもチャレンジし、自分のスキルを広げていきたいと考えています。ただ、入社後は成果を出すまで本業に集中し、御社の事業成長に貢献してまいります」など、伝え方に工夫するとよいでしょう。
会社員と副業との両立で知っておきたいメリット・デメリット
これから副業を始めたい人は、メリット・デメリットをよく理解しておくことをおすすめします。
メリット
- 離職、転職しなくても別の仕事に就いて、新たなスキルや経験を得られる
- 本業の収入を保ちながら、やりたいことに挑戦できる
- 将来の起業や転職に向けた準備につなげられるなど、主体的なキャリア形成を実現できる
- 収入が増える
デメリット
- 就業時間が長くなる可能性がある。本人による就業時間のコントロールや健康管理が必要になる
- 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識する必要がある
これらのメリット・デメリットを理解していても、「副業を始めたら思いのほか負担がかかり、労働時間のコントロールがうまくいかなくなった」「本業のパフォーマンスが落ちてしまった」というケースは多々あります。避けたいのは、それにより上司や同僚、経営陣との信頼関係が崩れ、本業で仕事をしにくくなってしまうこと。
副業可とわかってはいても、「本当はもっとうちの事業に集中してほしい」「副業の経験が本業にどう活きているのか見えてこない」と不満を感じている上司はいるかもしれません。
副業をする上では、上司や周りの同僚とよりこまめにコミュニケーションをとり、副業で得た情報を周りにナレッジとして共有するなど、本業への貢献をわかりやすく示す工夫も大切だと思います。
以上を踏まえて、転職する際は副業の目的を見直し、本当に副業が必要なのかを考えておくといいでしょう。
- タグ:
こちらの記事も読まれています
新着記事
- 2025年3月27日応募書類が自動で作成できる!リクナビNEXTの「レジュメ」機能とは?
- 2025年3月14日転職活動で役立つ!無料の自己分析ツール厳選5種を紹介
- 2024年12月17日第二新卒の転職理由・退職理由|本音も交えた上手い答え方&NG例文
- 2024年12月3日盛り上がらず淡々と終わった面接は、不合格?それとも合格?
- 2024年11月29日コンサル業界の面接特徴|企業のチェック観点と答え方、準備・対策のコツ
- 2024年11月27日自分に合う「ニッチな企業」「隠れた優良企業」の探し方
- 2024年11月19日コールセンターに応募する際のアピールポイント・志望動機の書き方(未経験からの転職)
- 2024年11月1日転職して新規事業開発に携わりたいのですが、未経験では難しいでしょうか?【転職相談室】