傷病手当金とは?手続きや受給のポイントを解説
病気やレクリエーション中のケガで、会社を休まなければならなくなったのに、入社間もなくで有給休暇がない、または有給休暇を使い果たした…。
そんな時に、健康保険から給付される手当として「傷病手当金」という制度があります。傷病手当金を詳しく解説していきます。
監修
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
岡 佳伸氏
アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。
傷病手当金とはどのよう制度なのか
傷病手当金は、病気や仕事以外のケガによる療養休業中に、健康保険に加入している被保険者の生活を手助けするために設けられた制度です。被保険者(健康保険に加入している人)が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。具体的には次の4点に該当するときに支給されます。
仕事以外(業務外)での病気やケガの療養のための休業であること
健康保険給付として受ける治療に限らず、自費で治療を受けた場合でも、「仕事に就くことができない(労務不能)」という医師又は歯科医師の証明があるときは、支給対象となります。入院期間中に限らず、自宅療養の期間も支給対象となります。
ただし、業務上・通勤災害によるもの(労働者災害補償保険法の給付対象)や病気とみなされないもの(美容整形やレーシック手術など)は支給対象外となります。
仕事に就くことができないこと
仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者(医師や歯科医師、主に主治医のこと)の意見などをもとに、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。
しかし、主治医が「労務不能」との見解を示さず、意見を記載しなかった時は、勤務先の産業医の「労務不能」の意見書も判断のひとつとされます。
連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
病気やケガの療養のため、仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)のあと、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。「待期」には、有給休暇、土日祝日等のカレンダー休みの公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。また、就労時間中に業務外の事由で発生した病気やケガによって、仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。
「待機期間3日間」の考え方は、会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しないので注意して下さい。
会社を休んだ期間に給与の支払いがないこと
仕事以外の事由による病気やケガで休業している期間について、生活の手助けをする制度のため、給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。しかし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。
また、任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません
傷病手当金の金額は?
傷病手当金の金額はいくらになるのでしょうか。健康保険法で決まっている最低額は、「支給開始日以前12カ月間の、各月の標準報酬月額を平均した額を30日で割った額(傷病手当日額)の3分の2の額」となります。この金額は、各健康保険組合で上積みがある時があります。
支給開始日以前の期間が12カ月間に満たないときは、支給開始日以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額か、28万円※のどちらか低い方の金額となります。
※健康保険協会(協会けんぽ)の全被保険者の平均額、各健康保険組合によって金額は異なります
傷病手当金の支給期間は?
傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6カ月です。これは、傷病手当金が1年6カ月分支給されるということではなく、1年6カ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も1年6カ月に算入されます。支給開始後1年6カ月を超えた場合には、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。
傷病手当金で気をつけておきたいポイント
傷病手当金を受給するのに注意したいポイントが3つあります
退職など、資格喪失後の継続給付
退職後の手続きは、退職日の翌日に転職先に入社する人と、日数がある人、再就職先が決まっていない人で違ってきます。
資格喪失の日の前日(退職日など)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態(例えば、連続3日間の待期期間が完成して4日目の場合)であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。
ただし、いったん仕事に就くことができる状態になった場合や、雇用保険の基本手当の受給資格決定手続きをした場合は、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。
また、退職日に出勤した場合には、資格喪失後の継続給付は受けることができません。これは、退職日に傷病手当金を受けられる状態という条件に当てはまらないためです。退職の挨拶等で会社に行く必要のある人は注意しましょう。
傷病手当金受給中のアルバイト、副業
傷病手当金は医師等が「労務不能」と証明することによって支給されるので、傷病手当金受給期間中に働いた日がある場合は支給されません。傷病手当金受給中にアルバイトや副業によって収入を得たいという人もいるかもしれませんが、軽度の就労や内職程度の作業でなければ認められないという判断も出ていますので、健康保険協会または健康保険組合に確認するなど、慎重に対応して下さい。
傷病手当金受給中の社会保険料の扱い、課税関係
傷病手当金受給中の社会保険料免除はありません。会社に在職中は、個人負担の社会保険料は通常通りかかります。この保険料の取扱いについては、会社が立て替えた後に、会社に振り込むといった対応を取るところが多いようです。
また、傷病手当金は全額非課税となります。そのため所得税も住民税も非課税となります。会社在職中であれば年末調整で納め過ぎた税金が調整されますが、退職後については自分で確定申告を行うこととなります。
傷病手当金と有給休暇について
傷病手当金受給前に有給休暇が残っている場合はどうすれば良いのでしょうか。傷病手当金の待機に当てる連続3日間については、有給休暇を使っても問題ありません。療養期間が短期間で終わるのであれば、有給休暇を使わず残しておいて、復職後の通院に使用するという選択肢もあります。
ただし、療養期間が長期間に渡る際は傷病手当金受給中に有給休暇が失効することも考えられます。しかも、傷病手当金受給中は欠勤や休職期間に当たるため、復職明けには有給休暇が発生しないこともあり得ます。その際は、年次有給休暇を傷病手当金受給前に全て消化して傷病手当金の受給開始日を遅らせるという方法もあります。
まとめ
傷病手当金は健康保険加入者が療養する際に、幅広く使えます。インフルエンザや骨折など、短期の療養でももちろん使えます。退職した後も、資格喪失後の継続給付として受給することができます。なおその場合は、失業保険は受給を後回しにする受給期間延長手続きを行います。健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合会社の人事担当者に問い合わせて活用していきましょう。
参照URL
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139
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