ホワイト企業に転職しても失敗するケースはあるのでしょうか?【転職相談室】
ホワイト企業であれば、転職後も安心だろうと思う人がいるかもしれません。
実際には、必ずしも転職成功につながるとは限らない、と組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏はいいます。
本記事では、ホワイト企業への転職で後悔したケース、失敗しない企業の選び方などをアドバイスします。
目次
転職をするにあたり、いわゆるホワイト企業を候補にしたいと考えています。ホワイト企業なら安心だと思っていますが、失敗することもあるのでしょうか?(Tさん/26歳/事務職)

キャリアアップについて真剣に考えるようになり、いろいろなことに挑戦できる企業に転職しようと思っています。ホワイト企業なら失敗はないだろうと考え、候補先の条件にしていますが、周囲から「ホワイト企業に転職して失敗した」という話を聞きました。どうやら理由は人間関係のようですが、それ以外にもホワイト企業に転職して失敗するようなケースがあれば知っておきたいと思います。
ホワイト企業だからといって転職が成功するとは限らない
▶アドバイザー
ホワイト企業への転職を考えているんですね。
▶相談者
何となく「安心だ」というイメージで候補にしています。ところで、ホワイト企業の定義ってあるんですか?
▶アドバイザー
明確な定義はありませんが、一般的には、
- 福利厚生が手厚い
- 人事制度や評価制度などが整っている
- 休日・休暇が多い」「給与水準が高い
- 女性が育児と両立して働きやすい
- オフィス環境が快適
などがホワイト企業の指標とされています。
また、コロナ禍で浸透してきた「リモートワーク可」も新しい指標と言っていいでしょう。
▶相談者
どれも、働きやすさに欠かせない要素ですね。やはり、転職するならホワイト企業が安心なのでしょうか?
▶アドバイザー
そうとは言い切れません。どのような状態が働きやすいのかは人によって異なりますし、たとえホワイト企業に転職しても、どの部署で誰と働くかによって状況は変わってきますから。
▶相談者
確かにそうですね。
▶アドバイザー
例えば、人事評価制度が整っている企業に転職しても、その企業の評価ポイントと自分の強みが合致していなければ、結果的に評価されないかもしれません。
▶相談者
そこまで考えていませんでした。
▶アドバイザー
評価制度が整っていて、1カ月ごとに評価シートを提出するような企業では、シート入力が仕事の一部になってしまったり、評価を上げることに意識が向いた働き方になり、“働き甲斐”が得られなくなってしまったりということも考えられます。
▶相談者
ほかにはどんなケースが考えられますか?
▶アドバイザー
休日・休暇が多くて残業が少ない企業に転職したものの、「もっと早くいろいろなことを経験したい」と物足りなさを感じるようなケースや、給与水準が高い分、求められるスキルや評価基準も高くてついていけないようなケースもあります。
▶相談者
なるほど。意外なリスクがあるんですね。
▶アドバイザー
離職率が低い企業では、人間関係が硬直していて居心地が悪い、なかなか昇進できないといったケースも見受けられます。
また、福利厚生が手厚いと思って転職したのに、業績悪化や企業買収によって待遇がガラリと変わってしまうこともないとは言えません。
▶相談者
いろいろなケースを聞いて、ホワイト企業なら安心とは限らない、ということがよくわかりました。
“働きやすさ”だけでなく“働き甲斐”も考えよう
▶アドバイザー
働きやすさの指標となる福利厚生や給与水準、休日休暇や残業時間、育児休暇などのさまざまな制度、オフィス環境などは大切ですが、同時に重視しなくてはいけないのが働き甲斐です。この両輪がうまく回ってこそ、充実して働くことができるのだと思います。
▶相談者
働きやすさばかりに気をとられていましたが、確かにそうですね。私の場合は、新しい仕事やマネジメントなど、「いろいろなことに挑戦したい」というのが転職理由です。ということは、私はもっと働き甲斐を重視するべきなんですね。
自分の条件を企業選びの4軸と照らし合わせる
▶相談者
ところで、働き甲斐を大切にする視点に立って、どのように企業探しをすればいいのでしょう?
▶アドバイザー
企業選びには、次のような4つの軸があります。
【企業選びの4軸】
- 目的への共感:企業理念に共感できたり、ビジョンにワクワクしたりする
- 活動内容の魅力:扱う商品が好きである、仕事内容が魅力的である
- 構成員の魅力:風通しの良い社風である、優秀な社員が多い
- 特権の魅力:給与や福利厚生、勤務場所、評価、教育制度など
「いろいろな仕事に挑戦したい」と考えているTさんは、この4つの中の「活動内容の魅力」、つまり仕事内容に注目するといいでしょう。
加えて「特権の魅力」にある教育制度にも注目し、どんなキャリアパスがあるのかなどについてもチェックしておきましょう。
▶相談者
わかりました。働き甲斐についての情報は、応募先企業のホームページから読み取れるものですか?
▶アドバイザー
企業HPにある社風や社員インタビュー、求人票などに、自分のキーワードやそれに近い言葉が使われている可能性があります。Oさんのキーワードは、「いろいろな仕事に挑戦できる」ですから、それに近い言葉に着目して読んでみてください。
▶相談者
そういう視点で読むんですね。勉強になりました。
▶アドバイザー
そして、選考段階でカジュアル面談を設定してもらい、気になっていることを質問してみるといいでしょう。30分程度でいいので、入社したら上司や同僚となる人との面談やオフィス見学をさせてもらうと、何かしら“感じるもの”があると思います。
▶相談者
紙やWeb上の言葉の情報だけでなく、体感することも大切ということですね。
客観的な情報を第三者から得る方法も
▶アドバイザー
近年は、多くの人たちが応募先企業に関するクチコミ情報もチェックしています。
ほかにも、転職エージェントへの登録やリファラル採用など、第三者を利用することも検討してみるといいでしょう。
▶相談者
第三者を利用すると、どんなメリットがあるんですか?
▶アドバイザー
自分のリサーチだけではわからなかった情報や客観的な情報を得ることができます。
転職エージェントは、「過去にこんな人が転職して活躍している」「こんなタイプの人には合わないかもしれない」といった情報も持っているので、参考になると思います。
▶相談者
そのほかに参考にするといい情報はありますか?
▶アドバイザー
厚生労働省の『女性の活躍推進企業データベース』も参考になるでしょう。22,000社を超える企業の働き方を検索できる無料のデータベースです。採用者に占める女性の割合、年次有給休暇取得率、平均残業時間/月、育児休業取得率、平均勤続年数、採用10年前後の継続雇用率、女性管理職の割合、男女の賃金の差異などのデータを調べることができます。
▶相談者
いわゆるホワイト企業の指標を確認できるわけですね。
▶アドバイザー
そうです。ホワイト企業という言葉に捉われる必要はありませんが、一般的に評価されている働きやすさも参考にしながら、広い目で情報収集をしましょう。
▶相談者
最後に、企業選びのアドバイスがあったらお願いします。
▶アドバイザー
繰り返しになりますが、大切なのは、働きやすさだけでなく、働き甲斐も意識して自分に合う企業を見つけること。ホワイト企業という言葉に対する先入観や偏見を捨てて、とにかく面接などで企業と直接コミュニケーションをとってみることです。
その上で、「自分がどう感じるか」を大切にして転職先を選べば、失敗する確率は低くなるでしょう。
▶相談者
わかりました。
▶アドバイザー
現在ホワイトとされている企業だからといって、10年後、20年後もそのままの状態が続く保証はありません。それに、自分自身が成長していき、自分に合うかどうかも変化していくはずです。
ですから、ホワイト企業という言葉に踊らされることなく、転職活動では企業と地道にコミュニケーションをとり、その時々の自分に合った企業を選択するようにしましょう。
▶相談者
働きやすさだけでなく働き甲斐にも目を向けて、候補先企業を検討し直してみます。参考になるお話をありがとうございました。
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