社長の「しっくりこない」を問いと仮説で言語化。難航する幹部採用を成功に導いた “GOOD AGENT AWARD 2019” 大賞・オーディエンス賞・金賞
株式会社YOUTURN 高尾 大輔氏
若い力で躍進した福岡のベンチャー企業が、さらなる成長を目指して経営幹部を採用。東京からのUターン、異業種間転職、50歳という年齢と障壁の多いマッチングが成功した背景には、高尾大輔氏の卓越した「言語化」技術がある。
言語化しにくい部分を読み解き真のニーズを探り当てた
福岡のベンチャーシーンで存在感を放つA社。全国自治体の広告事業を支えることで躍進し、2016年には東証マザーズ上場も果たした。しかしさらなる成長を目指すには、創業以来若手中心だった組織に経験豊かな幹部クラスを招く必要がある。社長はそう感じていた。
当初は地元大手企業の部課長クラスとも面談を重ねた。しかし社長は「しっくりこない」という言葉を繰り返すばかりだった。どんな人材を採用すればいいのか、具体的なイメージが湧いてこない。のちに依頼を受けた高尾氏は「その、社長自身が言語化できない部分にこそ、一番のニーズが隠れていると感じました」と、当時を振り返る。
必要なのは「しっくりこない」の正体を解き明かすこと。きっかけを作ったのは高尾氏の問いかけだ。「『今まで面接した人のダメだったところや悪口を全部言ってください』とお願いしました」
出てきた言葉は次のようなものだ。なんだか迫力を感じない、仕事ができそうにない、若手がいうこと聞かなそう、経営会議の席に座っているイメージがわかない等。「こうした違和感は全て、求める人材像の裏返しだと思うのです」
今度は高尾氏が仮説をぶつけていく番だ。例えば「『迫力がない』とは人物的に?それともお話の内容に迫力がないということですか?」「きれいごとが多く、実際に人を率いて結果を出したエピソードがないということでしょうか?」。これに社長は「ああ、そうそう」。
「『こいつ分かってくれたな』と思っていただいたのか、前のめりになってくださった瞬間があったように思います」
2人はこの作業を繰り返した。いつしか「しっくりこない」の正体は明らかになり、求人票にも当初書き込まれていなかった真の要件が見えてきた。
「一言で言えば『実力者で人格者』。実力者とは事業の成長に必要な手を打てる事業家であり、専門性よりも『実績』を、何をしてきたかよりも『どのようにしてきたか』を重視する人材です。人格者とは、どんな問題も解決できる自信があり、かつ若いメンバーを尊重できる人材、新しい環境に適応できる柔軟性がある人材を意味しています」
「福岡でキャリアの集大成を」求職者の願いも叶えた
そこで高尾氏が推したのが通販・EC業界で13年のキャリアを積み、大手子会社で社長経験もあるBさんだった。50歳という節目に東京から福岡へのUターン転職を希望していた。経歴だけ見ればA社とBさんの接点は少ないように思える。だがここでも徹底した言語化が活路を開いた。
実は、それまでのBさんの転職活動に、高尾氏は違和感を覚えていた。違和感を言語化するため不発の理由を尋ねると、Bさんはこう答えた。
「どれもすでにやり尽くしてきた仕事に思える。男にしたいと思える社長がいない。自分でなくてもよい気がする。これまでの成功体験で得た貯金を崩していく仕事が、キャリアの集大成でいいのだろうか」
言語化を繰り返していくと、やがてBさんが本当に求めるものが見えてきた。
「年収は下がってもいい。心から共感できる経営者と一緒に、会社を次のステージに引き上げたい。社員の成長にも貢献したい」
A社ならこの条件を満たせる、Bさんこそふさわしい人材だと高尾氏は確信した。常識的に考えれば50歳という年齢にA社が不安を抱く可能性もあったが、社長は「高尾さんが言うなら会ってみるよ」と言ってくれた。ただ、1つだけ想定外のことが起こった。Bさんは、幹部ではなく一営業としてのスタートを志願したのだ。幹部候補でも、若手リーダーやメンバーとの関係構築が何より重要という考えからだ。
「それで社長はBさんの幹部適性を確信したと思います。Bさんは『50歳の僕がこの若い会社に入るのはAKB48に北島三郎が入るぐらい違和感がある。それぐらいやらないと馴染めません』と笑っていました」
現在のBさんは、社長の期待に応え、中四国エリアの支社長を任されている。
「福岡には優秀な起業家が多い反面、“ナンバー2”になり得る人材が圧倒的に少なく、東京等“居る場所”から人材を連れてこなければ立ち行かない。この案件は、その取り組みの布石になったと思います」
転職者・企業へのメッセージ
【転職者の方へ】
転職も副業も兼業もUIターンも人生の選択肢です。でもあなたにとっての正解はひとつです。それを発見できる機会を提供していきたいと思っています。
【企業様へ】
可視化されていない情報を人間の力で可視化し、マッチングする。そこに、テクノロジーではなし得ない、エージェントとしての価値があると思います。ぜひお声がけください。
【プロフィール】
株式会社YOUTURN 高尾 大輔氏
住宅関連のベンチャー企業を経て、2005年にリクルートエージェントに入社。ベンチャー企業の幹部採用に特化したプロコミットでも経験を積んだのち、福岡へのUIターンを希望するプロフェッショナル人材を支援するYOUTURNにジョインした。
金賞受賞者
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