【プロが教える!】契約社員と正社員の違いとは?正社員になりたい場合に確認しておきたいこと
「契約社員の募集が気になっているけど、正社員と何が違うのだろう?将来的に正社員になれるのだろうか?」
そんな疑問をもつ方へ、正社員との違いやよくあるトラブルなど、契約社員になってから後悔しないために事前に知っておきたいポイントをご紹介します。
契約社員の雇用ルールや契約については社会保険労務士の岡 佳伸さんに、契約社員の実態や契約社員からのステップアップについては人事・採用コンサルタントの曽和利光さんに、それぞれお話を伺いました。
目次
【社労士が解説】契約社員とは?
監修
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
岡 佳伸氏
アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。
契約社員と正社員との違いについて
契約社員という名称は、法律上の言葉ではありません。正社員が定年までフルタイムで働くことを前提とした「無期雇用」であるのに対し、契約社員は契約期間が決まっている「有期雇用」の非正規社員のことを指します。つまり、正社員と大きな違いは「有期雇用」であることです。労働契約期間は通常1年で更新され、契約期間が満了した時点で、契約を継続する場合も、継続終了する場合もあります。
また「有期雇用」以外の仕事内容、労働時間、責任範囲など諸条件は企業によって異なるのが実情です。一般的に待遇面においては賞与や退職金はなく、労働基準法で定められた有給休暇はあっても傷病休暇などはない場合が多いようです。福利厚生についても社員と契約社員では利用できる範囲が異なることもあります。
ですが、2020年4月1日(中小企業への適用は2021年4月1日)に「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され、同一労働同一賃金ガイドラインなど、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差が禁止されます。また、待遇差の内容や理由について、説明を求めることができるようになります。この法律が整備されることにより、正社員と非正規社員の待遇差が徐々に改善される見通しとなっています。
正社員との違いについては、気になる点を面接時に確認しておくこともさることながら、採用時には仕事の内容や契約期間、更新の有無、給料、勤務時間、休日などの事項を記載した「労働条件通知書(雇用契約書)」を企業から交付されますので、きちんと目を通しておきましょう。契約条件を理解し、納得したうえで契約するようにしましょう。
契約期間満了後はどうなる?
有期雇用で契約期間満了時に契約終了となった場合は、「退職」の扱いになります。契約期間終了後に企業側からの意思表示により次の契約を結ばないことを「雇止め」や「更新拒絶」といい、解雇とは区別されています。
契約社員でよくあるトラブルは、「本人が希望していたにもかかわらず、契約が更新されなかった」というケースです。しかし、労働条件通知書に明記してある契約更新の有無や契約更新の判断基準(契約満了時の業務量、勤務成績、態度、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況など)に準じていれば、次の契約を更新しなくても解雇にはあたらないとされています。
ただし、厚生労働省は、3回以上更新されたか1年を超えて継続している有期労働契約については契約終了の30日前までに更新しない旨を伝えるよう、企業に指導しています。
また、一律の基準はありませんが、3年を超えて更新しているなど、継続が期待されていたにもかかわらず更新されず、それに納得できない場合には、都道府県の労働相談情報センターや労働組合などに相談するという方法もあります。
ちなみに、継続が3年未満であっても、本人が希望していたにもかかわらず契約更新が打ち切られた場合には、会社都合と同様に失業保険をもらうことができます。
契約社員の5年ルールについて
契約社員にとって一番のリスクは、有期雇用であること。契約満了時に継続終了し、仕事がなくなる可能性があるということです。
これについては、2012年に労働契約法が改正され、有期契約期間が通算5年を超えて契約が結ばれたとき、本人が望めば以降の契約を「無期契約」にできるようになりました。ただし、無期契約へと自動的に変更されるのではなく、本人から企業に対して通知する必要があります。
また、無期契約になることは雇止めがなくなることであって、正社員と同じ待遇になるかどうかは企業次第となります。
【人事・採用コンサルタントが解説】契約社員から正社員になれるのかどうか?
アドバイザー
株式会社人材研究所・代表取締役社長
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略』(講談社)など著書多数。
企業における契約社員の位置づけとは?
なぜ企業は正社員ではなく、契約社員を募集しているのでしょうか。理由として挙げられるのは、大きく4つ。
1つは、特定の年代や、特定の繁忙期に多く人を採用したいなどの限定的な事情。例えば、アパレル業界などで若い人をターゲットに事業を進めるにあたって、若手の方が適任だから募集するというような場合や、オリンピック需要のように期間限定で人手が必要となる場合に契約社員を募集します。
2つ目は、人件費を変動費化したい場合です。正社員は固定費ですが、非正規社員は変動費となります。売上の変動に合わせて人件費を変動費化することで不況時にも強い企業体質を作るという企業の経営判断によるものです。
3つ目は、地域や職種などを限定している場合。現在では、転勤なしや週四日正社員など多様な正社員雇用も増えてはいますが、転勤なし、異動なし、残業なしなどの限定条件があることで、企業として正社員と区別をして契約社員という雇用形態をとることがあります。
4つ目は、契約社員が正社員となる登竜門のようになっているケースです。やや特殊ですが、もともと正社員が少なく、採用した契約社員の中からより社風や業務にフィットした人材を正社員にしていくような場合です。
応募する企業がどういう背景で契約社員を募集するのかを知り、自分のキャリアのニーズに合うかどうか、考えてみても良いでしょう。
契約社員として働くメリットについて
次に、契約社員となるメリットについて考えてみましょう。思い浮かぶのは、以下の4つです。
- 入社できる可能性が高まる
- 職種や仕事内容を限定できる
- 勤務地域を限定できる
- 勤務時間を限定できる
注目したいのは(1)について。正社員として入社するにはハードルが高いとされる企業であっても、有期雇用である契約社員としてなら転職できる可能性が高まります。まずは契約社員として入社し、期待される以上の成果を上げていければ、正社員への道が開けるかもしれません。
ただし、ここで注意したいのは、転職先が正社員と契約社員とで職種分けをしているかどうかです。契約社員も正社員と同じ仕事に就いて活躍している企業なら、実力を発揮するチャンスがありますが、契約社員は正社員のアシスタントというように仕事が分けられている企業では、その機会を得られにくいからです。
「正社員と同じ仕事をすることは損ではないか」と思う方もいるかもしれません。ただ、これは契約社員に限った話ではありませんが、求められている以上の貢献をすることができてはじめて、その次のステージへ進む可能性が生まれることも事実です。
そして希望通りに社員登用になったとしても、(2)(3)(4)のような自分にとって好ましい働き方を手放さざるを得なくなる可能性は心得ておきましょう。
正社員と契約社員、どちらが今の自分にマッチする?
既に一定程度の実力が備わっていて、その力を発揮したいというスペシャリスト志向なら、仕事が限定されている契約社員として働き続け、存在感を発揮していくという方法もありますし、また、家庭やプライベートな事情でフルタイム勤務や転勤が難しい場合、短期的に時間や勤務地を限定して働くことができる契約社員を選択する方法もあるでしょう。
一方、「もっと成長したい」「実力をつけたい」「マネジメントを経験したい」と考えるのなら、正社員になれる可能性が不透明な約社員として転職するよりも、正社員として転職できる企業で着実にキャリアを積む方が有意義かもしれません。なぜなら、正社員の方が、企画や開発のような創造性のある仕事も含めて経験できる領域が広がりますし、教育にも投資してもらう機会が多いからです。
面接時に確認しておきたい、正社員登用の可能性
契約社員から正社員になれるかどうかは企業の経営方針にもよるので、転職先企業の仕事の実態を把握することは必須です。そのためにも、「正社員登用をしているかどうか」について、面接などで率直に尋ねてみましょう。正社員登用制度がある場合は、その条件なども押さえておくと良いでしょう。
ポイントは、「正社員と契約社員で、任される仕事に違いがあるのかどうか」を確認すること。併せて、「これまで何人ぐらい正社員に登用されたのか」など、実績についても質問してみましょう。
契約社員にも正社員と同じ仕事を任せている企業は、それだけ成長の機会が与えられているということです。たとえその企業で正社員になることが叶わなくても、そこでの契約社員経験や経歴を生かして、「次の転職で正社員にステップアップしよう」というように、長期的に自分のキャリアを捉えることも重要です。
転職後に後悔しないために
契約社員は、有期契約というリスクがある反面、入社する間口が広く、正社員になれるチャンスや、人気・有名企業での経験や経歴を将来のステップアップに生かせるなどのメリットがあります。こうしたことを総合的に考え、「この転職で、自分は何を得たいのか」を明らかにして、判断しましょう。
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