志望動機は多少嘘を言ってもいい？それとも本音を伝えるべき？【転職相談室】

内定をもらうためには多少の嘘も必要なのでしょうか。

でも、自分を取り繕い、嘘を言って入社しても、ミスマッチにつながり不幸な結果になるかもしれません。

志望動機の嘘と本音をどこまで正直に伝えるべきかを組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに聞きました。

アドバイザー 粟野友樹

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

プロフィール詳細

志望動機は給料がいいことです。でも、本音よりも多少は嘘を言ったほうがよいですよね? （Yさん/企画・マーケティング/20代/女性）

相談者

■相談内容
新卒で小さな文具メーカーに入社し、企画、マーケティングを5年間経験してきました。マーケティングの仕事は好きで続けたいのですが、業界の先行きが不安で転職を考えています。今の会社では5年間ほとんど給料が上がらず、これからも期待はできません。
本音を言えば、もっと給料がよくて残業は少なく、福利厚生が充実している大手企業で働きたいです。でも「給料がいい」という志望動機ではどこも受かりませんよね？多少嘘を言って、企業の求める人材像に合わせた志望動機を考えるべきでしょうか。

本音を言うときは、別の言葉に置き換えるなどの工夫をしよう

アドバイザー

転職活動で嘘を言うことは、入社後のミスマッチにつながるのでおすすめできません。それに、志望動機が「給料がいい」「残業が少ない」「家が近い」「福利厚生がいい」など条件面だけにフォーカスしていると、企業側に「当社じゃなくてもいいのでは？」「条件が悪くなれば辞めるかも…」と思われて、採用を躊躇される可能性もあります。

やはり「給料がいい」というのは、心証がよくないですね。ほかの理由を探した方がいいでしょうか。

相談者

アドバイザー

そうですね。「給料がいい」という本音を否定する必要はありませんが、あまりにもストレートに伝えてしまうと、相手によっては心証が悪くなるケースも否めません。まずは、転職を考えた理由として、給料以外の要素をいくつか整理してはいかがでしょう。

給料以外の要素ですか…。

相談者

アドバイザー

5年間の企画・マーケティングで得たスキル・経験や実績、やりがいを感じた業務内容などを振り返ることで、転職によって実現したいことが見えてくるのではないでしょうか。

なるほど。

相談者

アドバイザー

例えば、「マーケティング戦略によって購買層を広げ、消費者の行動変容を起こすプロセスが面白かった。その経験を活かし、より高額商材を扱う大手企業で、扱う予算やプロジェクト規模の大きいインパクトのある仕事を任されたい」など、仕事内容から考えた志望動機にすることで、給料アップや転職してやりたい仕事にもつながっていくかもしれません。

そうですね。

相談者

アドバイザー

仮に本音は「給料のいい大手企業に入りたい」だったとしても、企業側への伝わり方はまったく変わるでしょう。

はい、変わりますね。

相談者

アドバイザー

もしも本当に給料だけを優先して転職するのであれば、成績を上げれば上げるほどインセンティブがもらえる歩合制の営業職（不動産・保険会社の営業）や、年収ランキングで上位にある金融業界を選ぶのも一つの選択です。

それも考えたことはあります。

相談者

アドバイザー

しかし、それでは「マーケティングの仕事をしたい」というYさんの思いや経験、スキルとはマッチしません。せっかくやりたい仕事があるのですから、その仕事内容からやりがいやスキル・経験を掘り下げるのがよいでしょう。

確かに、給料がよければどんな仕事でもいい…というわけではないです。

相談者

アドバイザー

そうですよね。経験してきたことを活かせる同職種への転職であれば、アピールできることは多いでしょう。企業側は、Yさんを採用したことで会社にどんなメリットがあるのか、どう貢献してくれるのかを知りたいと思っています。そのため、企業視点で考えてみて、言葉を整理していくことをおすすめします。

本音の言い換え例

志望動機で本音を言い換えるとき、企業側に印象良く伝えるためのポイントは何でしょうか。

相談者

「給料がいいから」を印象良く伝えたい場合

アドバイザー

「給料がいい」ことを転職理由に挙げるのは、現職の給料に不満があるからでしょう。Yさんのように「業界の先行きが不安で、給料が上がらない」という思いは、「自分の頑張りを正当に評価してくれない」と言い換えられます。そのため、「評価体制がきちんとしている会社で仕事に集中したい」「業界や企業が成長しているフィールドに身を置きたい」と伝えれば、仕事への熱意や成長意欲が伝わりやすくなります。

確かに、印象の良い言い換えですね。

相談者

アドバイザー

また、今よりも給料を上げるべき事情があるのなら、正直に伝えるのもポイントです。「両親の介護のために資金が必要」「夫や妻の収入が不安定になり、家計を支える必要がある」など、給料にこだわる背景を伝えれば、企業側の理解も深まるでしょう。

「安定している会社だから」を印象良く伝えたい場合

アドバイザー

志望理由が「大手企業は安定しているから」だけでは、恵まれた環境をただ享受したいという受け身の姿勢に捉えられてしまいます。「前職では手がけられなかった大規模なプロジェクトでマネジメント経験を積みたい」「経験豊富な先輩方に学び、マーケティングのスペシャリストとして知識を身につけたい」など、大きな会社だからこそ挑戦できる業務内容や得られる経験・スキルを言語化することで、積極的な姿勢やモチベーションの高さを伝えることができます。

「福利厚生がいいから」を印象良く伝えたい場合

アドバイザー

「福利厚生がいい」という理由も伝え方次第では、「恵まれた職場環境で居心地よく働きたいだけではないか」と思われてしまう可能性があります。福利厚生には、その会社が大事にしている価値観を反映したものが多くあります。例えば「社員とその家族のことまで大事に思う御社のあたたかさに魅力を感じた」など、福利厚生から読み取れる経営理念やカルチャーを引き出し、共感した点を伝えてみましょう。それにより企業側は「うちの会社についてよく調べている」と理解することができ、印象アップにもつながります。

そうですね。福利厚生にはその会社の価値観が表れてますよね。

相談者

アドバイザー

加えて、子育てや介護など、個別の事情から重視している福利厚生があるのであれば、それも伝えるのもポイント。その際、「長く働く上でこれらの福利厚生が必要だ」と企業側が納得できる理由を補足すると、企業側の理解が得られやすいと思います。志望動機の伝え方については、次の動画も参考にしてみてください。

なるほど。企業側の視点で考えたり伝えたりすることが大事だということがよくわかりました。本音に対する言い換え表現なども参考にしながら、さっそく志望理由を整理していきたいと思います。

相談者