「やりたい仕事がない」ときはどうすればいい?考え方と見つけ方

今の仕事はやりたい仕事ではないけれど、かといって何がやりたいのかわからない…という人は少なくないようです。「やりたい仕事がない、わからない」という場合、どうやってやりたい仕事を見つければいいのでしょうか。組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに具体的な方法を伺いました。

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そもそも、あなたにとって「やりたい仕事」とは?自分の軸を見つけよう

「やりたい仕事」とひと口に言っても、その基準は人によって異なります。「バリバリ働いて成長できる仕事」がやりたい人もいれば、「アットホームな環境の中で自分のペースでできる仕事」がやりたいという人もいます。一方で、「都心で働ける仕事」「高収入を目指せる仕事」など条件面を軸にやりたい仕事を捉えている人もいますし、「営業職がやりたい」「マーケティングの仕事がしたい」など、就いてみたい職種をやりたい仕事と捉えている人もいます。

したがって、やりたい仕事をやみくもに探しても基準が定まっていなければ迷うだけ。まずは、仕事においてどんなことを大切にしたいのか、何を重視したいのか、自分の「軸」を見定める必要があります。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

キャリア・アンカーの考え方で自分の「軸」を洗い出してみる

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キャリア・アンカーとは、どうしても譲れない「価値観」や「欲求」を基準にキャリアを決めていくという考え方。組織心理学者でマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院名誉教授のエドガー・H・シャインが提唱したキャリア理論です。
アンカーとは「いかり」のこと。自身の価値観にいかりを置き、キャリアを決めていくことを勧めています。この理論をもとに、やりたいことを考えてみるのは一つの方法です。

キャリア・アンカーには、次の8カテゴリーがあります。自分の思いに合ったものがあれば、それがあなたにとっての「軸」であり、「やりたい仕事」である可能性が高いでしょう。

●キャリア・アンカー8つのカテゴリー

1.専門・職能別能力
専門家として能力を発揮したいタイプ。自分の才能や専門性を高め、それを活用できる環境で働きたいという思いが強い。

2.経営管理能力
リーダーとしてチームをまとめたい、出世したいタイプ。組織の中で、責任のある役割を担いたいとの思いを持っている。

3.自立・独立
規則や慣習に縛られず、自分の裁量で仕切っていきたいタイプ。自分が納得できるやり方で仕事をしたいという思いが強い。

4.保障・安定
安定した組織、仕事、報酬など安全性を重視するタイプ。会社の雇用保障などの経済的な安定を重視し、大きな変化を好まない。

5.起業家的創造性
クリエイティビティを発揮し、新しいものを生み出すことにやりがいを覚えるタイプ。会社に勤めながらも、常に会社や事業を起こす機会を探っている。

6.奉仕・社会貢献
仕事を通じて社会に貢献したい、世の中をよくしたいと考えているタイプ。能力を発揮して活躍するより、人の役に立ったり奉仕したりすることを好む。

7.純粋な挑戦
解決が困難な問題に挑み、打ち勝つことに喜びとやりがいを感じるタイプ。ハードワークを厭わず、挑戦しがいがあると思えるテーマにはとことん取り組む。

8.ライフスタイル
仕事とプライベートのバランスを常に考えたいタイプ。個人のキャリアを追うだけでなく家庭との調和を大切にしていて、福利厚生の充実や柔軟な働き方ができる人事制度の有無を重視する。

8つの中から自分に少しでも当てはまりそうなものがあれば、それをキーワードに今後のキャリアを考えてみましょう。1つだけでなく、複数の項目に当てはまる場合は、その中でどちらがより強く共感できるかを考え、優先順位をつけるといいでしょう。

例えば、3の「自立・独立」がしっくりすると感じたら、自分はどのように仕事を進めたいと思っているのか、どうすれば納得のいく働き方ができるかを考えてみれば、今の仕事においてもやりがいを感じられる方法が見えてくるかもしれません。「このような働き方をすれば、もっと自分は効率的に働ける」などと上司に進言してみる、などの行動ができるようにもなるでしょう。
転職に踏み切る際も、「裁量権がある」「若手にも仕事を任せる」などのキーワードで求人を探せば、やりたいと思える仕事に出会える可能性が高いでしょう。

8の「ライフスタイル」が合うのであれば、ワークライフバランスが保てそうな部署を調べて異動を申し出たり、今の職場でバランスよく働く方法を進言したりするといいでしょう。ワークライフバランス、柔軟な働き方などをキーワードに転職先を探す方法もあります。

関連記事:適職発見に役立つ「キャリア・アンカー」とは?──自分の仕事観を核に「変わり続ける」ために

8,568通り、あなたはどのタイプ?

やりたいことではなく「できること」から考える方法もある

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キャリアプランを考えるうえでのフレームワークに「Will 」「Can」「 Must」があります。Will=やりたいこと、Can=できること、Must=やるべきこと、の3項目に分けてキャリアを考えるというものです。

一般的には、まず仕事を通じて実現したいこと(Will)を明らかにし、それを実現するために何ができるか、どのようなことができるようになる必要があるか(Can)を洗い出したうえで、何をすべきか(Must)を考えることで、キャリアプランを明確にしていきます。

ただ、この方法は「やりたい仕事」がわからないと取り組みにくいかもしれません。初めのWill=「やりたいこと」がなかなか思いつかず、手が止まってしまう人もいるようです。

そういう人にお勧めしたいのは、Canから考え、Willを増やす方法。まずは「今の自分ができること」を洗い出し、今の仕事で「できること」を強みに経験を積むことを考えてみてください。「できること」がわからない、ピンとこないという人は、周りから褒められたり、評価されたりしたことを挙げてみるといいでしょう。

例えば、行動力に自信があるのであれば、それを意識して仕事に臨んでみましょう。営業の仕事であれば、クライアントのもとに足しげく通う、積極的に連絡を取りどんどんアプローチする、など。「できること」を磨けば、それが突破口となって成果が出しやすくなります。その結果、評価されればモチベーションが上がり、今の仕事が「やりたい仕事」になる可能性があります。

なお、社会人歴が浅く、「まだできることがない、自信が持てるものがない」という人は、まずは目の前の業務に取り組んで「できること」を増やしましょう。できることが見つかれば自身の可能性が広がり、「やりたいこと」の方向性も見えてくると思います。

働き方や環境を変えれば、今の仕事が「やりたい仕事」になる可能性も

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「今の仕事は自分に向いていない、やりたくない」と思っていても、働き方や環境を少し変えれば、見方が変わってくる場合もあります。

ある求職者は「営業は向いていない、営業はやりたくない仕事だ」と思い込みキャリアチェンジを考えていましたが、かといってやりたい仕事もわからず悩んでいました。しかし、今の仕事への思いを紐解いてみると、不満の元は「激務が辛い、ワークライフバランスが取れない」ことにあり、営業の仕事そのものが嫌なわけではないことが判明。営業職の経験は活かしつつ、残業が少ない、ワークライフバランスが保てるなどのキーワードで転職先を探すことになりました。

この事例のように、実は会社の環境や体制、働き方などが原因なのに、「この仕事はやりたくない仕事だ」と勘違いしているケースは少なくないようです。冷静に「やりたくない」と思っている原因を洗い出してみると、視野が開けるかもしれません。

「やりたい仕事」に就けば、イキイキ働ける、キャリアプランが立てやすくなる

「やりたい仕事」に就くメリットはさまざまあります。例えば、自分が望んだキャリアを歩むことができ、高いパフォーマンスが上げられる、仕事に取り組む意義や目的意識が明確になる、目指すキャリアに必要な仕事に集中できる、などが挙げられます。

そして、やりたい仕事が明確であれば、転職活動の際も、自分の特性・価値観やキャリアビジョン、ライフスタイルに合致した企業が見つけやすくなるでしょう。

やりたい仕事がわからない…とモヤモヤしたまま過ごしていては、キャリアの方向性が見えず精神的にもしんどいもの。ぜひ前述のいずれかの方法で、やりたい仕事の芽を見つけてみてください。

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組織人事コンサルタント・粟野友樹さん組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
粟野友樹さん

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

EDIT&WRITING:伊藤理子
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