「次の仕事が決まっていないけれど、今の仕事を辞めたい」と考えている人もいるかと思います。ただ、次が決まっていない状態で辞めてもいいものかどうか、迷いますよね。
この記事では、次が決まらないまま会社を辞めた場合のメリット・デメリット、それでも辞めたい場合の判断基準などについて、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに伺いました。
目次
次の仕事が決まっていなくても、仕事を辞めることはできる?
労働者には職業選択の自由があり、自由に会社を辞める権利もあります。当然ながら、次の仕事が決まっていようがいまいが、辞めることは可能です。
株式会社リクルートの「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」によると、現在正社員・正職員の20~50代転職経験者において、転職先が決まる前に前職を離職した人は、年代に関わらず4割を超えており(2022年3月時点)、実際に多くの人が「次が決まる前に辞めている」ことがわかります。
ただ、次が決まる前に辞めるのは、少なからずデメリットもあります。離職することで安定した収入源がなくなるうえ、離職期間が長引けば応募先企業から「ブランク期間が長いけれど大丈夫だろうか?」と不安に思われる可能性があります。「早く次を決めないと!」と焦ってしまい、意に沿わない企業に入社を決めてしまう可能性も考えられます。
会社や仕事に縛られず転職活動に集中することができ、面接日程の調整もしやすいというメリットはあるものの、デメリットを念頭に置いたうえで、本当に今辞めるべきか十分に考えて決めることをお勧めします。
(出典)「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」株式会社リクルート
次の仕事は決まっていないけど「仕事を辞めたい」と思う理由とは?
「次が決まっていないのに仕事を辞めたい」と思う理由には、一般的には「人間関係の問題」「評価への不満」「仕事内容、任される役割への不満」の3つが挙げられます。
次が決まっていなくても辞めたほうがいいかどうかは、どのような理由であっても、(1)短期的なものなのか、長期的に続きそうなものなのか、(2)ストレス度が高いか、そうでもないか、の二軸で検討するといいでしょう。
辞めたい理由が長期的に続きそうであり、かつ仕事に影響が出るぐらいストレス度が高いのであれば、次が決まる前に辞めるという選択肢もありだと思います。
ただ、ストレス度が高くても短期間で済みそうな理由であれば、上司に悩みや不安・不満を相談する、その期間だけ割り切って働くと決める、などの方法で乗り切るという選択肢もあります。
一度仕事から離れた方がいいケースとは?
ただ、「明日仕事だ」と思うと眠れなくなるほどのストレスを抱えている場合は、次が決まっていなくてもいったん仕事から離れたほうがいいでしょう。
睡眠に支障をきたすほどのストレスは、一刻も早い対処が必要。上司や勤務先の産業医などに、現状について相談しましょう。仕事内容を変えてもらったり、仕事量を減らしてもらったり、場合によってはしばらくの間休職したりする方法を取りましょう。
この場合も、あえて辞めるという選択をしなくても、会社や仕事から距離を取ることで辞めたい理由が軽減される可能性はあります。
いずれにおいても、悩みや不安は一人で抱え込まないことが大切。仕事内容や仕事量に関しては、周りに相談することでサポートが得られるようになるなど道が開ける可能性がありますし、つらい気持ちを吐き出すだけでも心が軽くなるかもしれません。
今の仕事を辞めずに自分に合う環境を見つける方法
繰り返しになりますが、次が決まる前に辞めてしまうと収入が不安定になり、焦って意に沿わない企業に入社を決めてしまう可能性があります。転職活動が長期化しブランク期間が増えると、応募先企業の印象にも関わるため、できることならば辞める前に次を決めておいたほうがいいでしょう。
そして、在職中に次のような方法で、自分にはどんな環境が合っているのか考えてみることをお勧めします。
自分の価値観に合った仕事は何か、考えてみる
もし「仕事内容が合わない・向いていない」「今の仕事は自分がやりたいことではない気がする」という不満・不安を抱えているならば、会社を辞める前に「自分に合う仕事とは何かをじっくり考えてみることが大切です。
就活時に行った「自己分析」に再び取り組んでみるのは有効。これまでの経験を振り返り、成功体験を洗い出してみたり、仕事で楽しいと思えたもの、熱中できたものを洗い出してみたりしましょう。
その過程で、自分ならではの強み、持ち味、志向が明確化するので、それを軸に次のステップを探すといいでしょう。診断テストなどを活用して、自身の特徴を客観的に洗い出すのも一つの方法です。
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異動ができないか相談してみる
ほかにやりたい仕事があるならば、異動を申し出てみるのも一つの方法です。上司や人事部門に、「経験を活かして○○部署に異動したい」旨を相談してみましょう。
勤務先に「社内公募制度」や「社内FA制度」などがあれば、それを活用するのも有効。もしくは新規事業提案に応募したり、新規プロジェクトに手を挙げてみたりすることで道が開ける可能性もあります。
転職エージェントに相談するなど、転職活動を始めてみる
まずは転職活動を始めてみることで、自分の強みや特性、そして転職市場で評価されやすい特徴が明らかになる場合があります。
転職エージェントに相談すれば、キャリアアドバイザーが自身の経験やスキル、強みなどを客観的視点で明らかにしてくれます。自分に向いている仕事や目指したい環境など、これからの方向性についてのアドバイスが得られるでしょう。
スカウトサービスに登録するのも有効です。自分の経歴などを登録しておけば、その内容を評価したさまざまな企業や転職エージェントから声がかかるので、自分の特徴を活かせる環境が見つけられる可能性があります。
仕事に対するモチベーションがどうしても湧かない場合は、仕事は必要最低限の役割を果たして、転職活動に振り切るという考え方もあります。「残業はせず、求められていることはやり切る」と割り切り、平日の空いた時間や休日を転職活動に充てたり、有給休暇をフル活用したりして可能な限り転職活動をやり切り、メドが立った段階で退職に踏み切るといいでしょう。
転職情報サイトに登録して、情報収集する
転職情報サイトに登録し、求人を眺めてみるだけでも情報収集になります。募集が多い企業や職種、募集条件などを見れば、今の転職市場の流れがつかめるでしょう。自分が重視しているキーワードを検索して求人情報を一つひとつ見ていけば、求められている経験やスキル、特性なども把握できるでしょう。
次の仕事を探さず辞めるのはリスク。冷静に準備をしておこう
基本的には「辞めたい!」と思っても、一時の感情に流されて安易に決断せず、いったん気持ちを落ち着けて考えてみることが大切です。辞めるのは個人の自由であり、いつでも辞められるのだと思えば、冷静になれるのではないでしょうか。
生産年齢人口の減少を受け、どの企業でも人手不足が深刻化しています。つまり売り手市場は当面続くと見られ、無理に急ぐ必要はありません。辞めてから次を探すデメリットを考えれば、在職中に着々と準備を進めるほうがメリットは多いと言えるでしょう。
ただ、前述のように心身に支障をきたし「もうどうしても耐えられない」という場合は、次が決まる前に辞めることも選択に入れましょう。売り手市場の中、焦らず自分に合う会社を見極められれば、転職活動も長期化せず、スムーズに決まると思われます。転職エージェントなどもうまく活用しながら、転職活動に注力しましょう。
なお、転職以外にも、独立・起業する道や、いったん会社員から離れて学び直しをする道など、「現職に留まるか、転職するか」以外にも選択肢はあります。視野を広げ、今の自分に合った道を選択してほしいですね。
組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。