社会人にこそお勧め!仕事で成果を出すための「大人の自己分析」紹介

「自己分析」というと、学生時代に就活のために行うものというイメージがあるかもしれませんが、社会人になっても仕事で成果を出すために、キャリアの選択時に、そして転職活動時に…と、自己分析が活きる場面は実は多いものです。今回は、社会人が自己分析に取り組む重要性と、実際のやり方などについて、ビジネスデザイナーであり自己分析に関する講座も手掛ける、Zoku Zoku Consulting代表の中野崇さんに伺いました。

パソコンに向かうビジネスパーソンのイメージカット
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社会人が自己分析に取り組むメリット

自己分析とは、自身の強みや持ち味、価値観などを理解するために、これまでの経験や考え方などを振り返って整理すること。学生時代の就活で、仕事選びの軸をつかむために自己分析に取り組んだ人は多いと思います。

ただ、下記のように、社会人にとっても自己分析は非常に有益です。今後のキャリアや働き方を考えるうえで、継続的に自己分析を行うメリットは大きく、社会人こそ取り組むべきものだと捉えています。

仕事で結果を出しやすくなる

自己分析で自分の強みや持ち味を把握し、それを活かせるような働き方を選択することで、仕事で結果を出しやすくなり目標達成も容易になります。その結果、より高く評価されるようにもなるでしょう。同時に弱みや苦手分野も把握すれば、「苦手な仕事の前には丁寧に事前準備する」などの対策が打てるので、失敗も回避しやすいでしょう。
つまり、自分の力を最大限発揮できる仕事や職場、働き方を選択しやすくなります。

中には、「仕事で成果を上げる・目標を達成する」ということに魅力を感じない人もいると思いますが、自分の強み弱みだけでなく好き嫌いを理解し、それに沿った働き方や生き方をすれば、オン・オフともに喜びを感じる機会が増え、人生そのものがもっと楽しくなるはず。プライベート重視型の人にも、自己分析のメリットは大きいと言えます。

働きがいを感じやすくなる

自己分析で洗い出した「自分が好きなこと、楽しいと思えること」に時間を割くようにすれば、より仕事をすることが楽しく、有意義なものになります。

嫌い、苦手と思える仕事は、早く終わらせられるよう工夫をしたり、場合によっては断ったりすることで減らす努力をすれば、「好きな仕事」の比率が増え、より働き甲斐を感じやすくなるでしょう。

キャリアの選択時に迷わなくなる

自己分析で強みや持ち味、自分の好きなこと、楽しいと思えることを把握しておけば、それが部署異動や転職などといったキャリア選択における判断軸になります。

より自分の志向に合った道が選択しやすくなり、希望通りのキャリアが歩めるようになるでしょう。転職活動での志望動機や自己PRなどにも、役立てることが可能です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【目的別】社会人にお勧めしたい自己分析の方法

就活での自己分析の方法は、やりたいことや価値観などにフォーカスを当てるものが多いですが、社会人の場合は強みや持ち味、好きなことや楽しいと感じることを丁寧に深掘りすることをお勧めします。それにより、仕事で成果を出せたり、自分が求める働き方ができたりと、働き甲斐や人生の充実度そのものを高められるようになるからです。

次からは、「仕事を含めた人生そのものの充実度を上げたい場合」と「仕事で得られる喜びややりがい、成果を高めたい場合」にわけて、お勧めの自己分析方法をご紹介します。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

人生を充実させたい→「楽しかったこととその理由」を洗い出す

人生そのものの充実度を高めたいなら、「自分の価値観」と「それに対する時間とお金の使い方」を振り返って洗い出す方法をお勧めします。

とはいえ、自分の価値観はそう簡単にはつかめないので、これまでの人生を振り返り「楽しかった・嬉しかった思い出」を挙げ、なぜ楽しい・嬉しいと思ったのか「その理由」を深掘りしていくといいでしょう。
そのうえで、「楽しい・嬉しい」と思える活動に、どれだけの時間とお金を費やしてきたのか、振り返ってみましょう。大半の人が「思ったよりも費やせていない」という感想を持つと思いますが、その後意識的に楽しい・嬉しいと思えることに時間、お金を割くようにすれば、日々の生活が今より楽しくなり、人生そのものの充実にもつながります。

「人生を充実させる」ことを目的とした自己分析方法なので、過去を振り返る際には仕事もプライベートも含めた中から、楽しかった・嬉しかった思い出を洗い出すことが大切。そして、その理由を深掘りすることが何より重要です。それにより、表面的な楽しさ・嬉しさではなく、本質が洗い出されてきます。

例えば、「昇進した時が嬉しかった」という場合。なぜ嬉しかったのかを深掘りしてみると、「キャリアアップできて裁量権が増えたから」という人もいれば、もしかしたら「家族が自分以上に喜んでくれたから」という人もいるかもしれません。後者の場合は、「大切な人の喜ぶ顔を見るのが嬉しく、それを大事にしたい」という価値観が洗い出されてきます。

さらに、「家族はなぜそこまで喜んでくれたのか」まで深掘りしてみましょう。その結果、「昇進すれば給与が上がり、家計が潤うから」喜んでくれたのだとわかれば、仕事で頑張って収入を上げようと奮起できるでしょうし、「昇進すれば仕事のこと、部下のことを自宅でもっと話してくれるようになる」と思って喜んでくれたのだとわかれば、家族との時間を増やすべく努力すれば自身の喜び、幸せも増えるでしょう。

仕事を充実させたい→「Will/Can/Know/Personality」を洗い出す

仕事のやりがいを高め、充実させたいという人は、「Will/Can/Know/Personality」という4つの視点で自己分析することをお勧めします。

・Will=やりたいこと、実現したいこと、達成したいこと
・Can=得意なこと、できること
・Know=詳しいこと、関心があること
・Personality=価値観、キャラクターや性格

まずは土台となるPersonality(価値観)を洗い出す

くり返しになりますが、「自分の価値観とは何だろう」と考えても、なかなか洗い出すのは難しいものです。
「仕事のやりがいを高め、今よりさらに充実させる」ために行う自己分析の場合は、「仕事で大切にしていること・言葉」を書き出してみるといいでしょう。そこから、自分にとって重要な価値観が見えてきます。

例えば私の場合、下図の左側のように「面白いかどうか」「価値があるかどうか」などを重視していて、「真摯に」「自由」「効率的に」などの言葉を大切にしています。同時に、書かれていないもの=大切にしていないものを書き出してみると、より自分の価値観が洗い出しやすくなります。

そして、自分が大切にしているものの中でも、特に重視しているものが、自分にとって重要な価値観です。書き出した中から3つぐらいを目安に選び出してみてください。私の場合は、「面白いかどうか」「真摯に」「自由」の3つが、自分にとって重要な価値観であることが把握できました。
これが、Will/Can/Knowを考えるうえでの土台になります。

自己分析に関する図表

Willは「楽しかった仕事」の中にキーワードがある

「Will=やりたいこと」は、楽しかった仕事、印象に残っている仕事の中にキーワードがあります。前述の「人生を充実させたい」場合の自己分析と同様、理由とともに洗い出し、深掘りしてみましょう。

私の場合は、下図のように洗い出されました。
例えば、営業職時代、最終営業日に受注して目標を達成できたことがとても嬉しく、印象に残っていますが、その理由は「目標達成できた喜び」ではなく、「行動すれば報われる」と実感できたから。ここから、自分のWillの一つは、「努力を重ね、行動し続けることで、報われるということを実感し続けたい」であるとわかりました。

上海で新規事業を立ち上げたことも印象深い出来事ですが、その理由は、圧倒的な学びを得ることができ、成長実感を得られたから。ここから、学びながら成長し続けられる仕事に携りたいという自分の意志が見えてきました。

このように、楽しかった仕事、印象に残っている仕事について振り返り、深掘りを行うことで、漠然としていたWillが明確に見えてくるようになります。

自己分析に関する図表

CanとKnowは「9-BOX」を使って整理する

「Can=できること」、「Know=知っていること」は、「9-BOX」というツールを使うと整理しやすくなります。

すべてのスキルは、複合的要素で成り立っています。例えば、できることを洗い出したとき、「自分は営業だけれど、行動量ぐらいしか秀でていることはない」と思ったとしても、実際には行動量を担保するにはそれを支える情熱や体力が必要ですし、効率的に客先を回るための計画立案力も重要。新規顧客や大企業の顧客にも物おじせず臨む胆力や、相手が「いらない」と態度で示していても鈍感力を発揮して臆せず売り込む力なども備わっているはずです。このように考えていくと、下図のように「できることのボックス」が埋まっていきます。

同様に、思いついた「できること」「知っていること」をまずボックスの中央に記し、関連すると思われるスキルを洗い出しながらボックスを埋めていくと、自分が思っている以上のCanやKnowに気づくきっかけになります。

自己分析に関する図表

もしも、なかなか9-BOXを埋めることができない場合は、Canは「評価された仕事や仕事ぶり」「大きな努力や苦労がなくても、他の人よりできている仕事」を、Knowは「ほかの人より知っている仕事、教えることが多い仕事」などを振り返ってみると、洗い出しやすくなります。

このように洗い出したWill/Can/Knowの3つの円が重なった部分が、あなたの「強み」になります。この強みを意識すると、面白さを感じかつ成果も得やすい仕事や職場、働き方を選択できるようになり、結果的に評価されやすくなりモチベーションも上がる…という好循環が生まれるようにもなります。

自己分析に関する図表

自己分析は継続的に何度も行ったほうがいい

自己分析は、自分自身に向き合い行うもの。そのため、その時の自分のコンディションによりブレが生じやすく、1回だけでは本質にたどり着きにくいという側面もあります。
「自分はこうありたい」という願望が入ってしまう場合もありますし、仕事が忙しかった、プライベートで大変なことがあったなどの特殊要因にも左右されがちです。

定期的かつ継続的に取り組むことで、自己分析の精度が上がり、自身の特徴を的確にとらえやすくなります。そして、徐々に自分の揺るぎない軸が見えてくるようになります。
少なくとも1年に1回、できれば四半期に1回ペースで取り組むことをお勧めします。

自己分析ができたら…それを日々にどう活かせばいい?

前述のような方法で洗い出した価値観や強みを活かせる仕事、職場、働き方を日々選択しながら働くことで、よりイキイキやりがいを持って自分らしく働くことができるようになります。

そして、「仕事を充実させたい」人は、特にWillに注目しましょう。やりたいことや目標が明確であれば、現在の自分との差分が見えてきます。Will実現のために足りない部分をどう埋めるか、具体的な策を練ることができるでしょう。

一方で、Will/Can/Knowの3つの円が重ならないという人も多いと思います。特に多いのは、Willがどうしても明確化できず、Willの円が極端に小さいケース。経験が浅い若手は特に、この傾向があります。

自己分析に関する図表

Willは、CanやKnowが大きくなるにつれて育つもの。まずは、「Can=できること」に着目し、それを強化し、かつ増やす努力をしましょう。プレゼンが得意ならば、トレーニングを積んでプレゼンの精度を上げたり、さらに上手な人にフィードバックをもらってブラッシュアップしたりする。プレゼンの周辺にあるスキル…例えばコミュニケーション力などの強化に努める、など。

そうすれば、徐々にCanが拡大し、付随してKnowも増えます。そして、それらをベースに「こんなこともやってみたい」という思いが生まれやすくなり、Willが大きく育って円の重なりが生まれるようにもなります。

自己分析は、「自分らしいキャリア」を歩むための指針になる

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自分の強みや持ち味、価値観などを理解することは、人生を漫然と過ごさず、目的を持って突き進むことにもつながります。

もちろん、自己分析をしなくても仕事はできます。何もせずとも仕事は日々上から降ってくるので、それをこなせばいいと考える人もいるでしょう。しかし、自分自身を把握しておかないと、「仕事はこなせているし、評価もされているようだから、まあこの道でいいか」と何となく毎日を過ごしてしまうことになりかねません。結果、定年退職するぐらいの年齢になって初めて「自分にはこんな可能性もあったはずなのに」とか「本当はこういう道を歩みたかった」などと後悔する人が、実はとても多いのです。

少しでも早く、その事実に気づいたほうが方向転換しやすく、自分で決めた人生を歩み直すことが可能。そのためにも自己分析は今すぐ行うべきだし、定期的なチューニングもお勧めしたいです。

なお、経営サイドから見れば、上記のような「指示通り漫然と働いてくれる人」が多いほうがマネジメントしやすいもの。自己分析の結果、やりたいことが明確になり、「私はこの仕事がしたい」「こういう働き方をしたい」と考え行動する姿勢は必要ですが、その結果、「一人ひとりにあまり主張してほしくない」「同一性を求めたい」という勤務先の方針との違いに気づかされ、悩む人もいるかもしれません。

もしそんな状況に陥った時は、転職を選ぶのも一つの方法ではありますが、まずは勤務先との距離を再考することをお勧めします。

例えば、月30時間残業をしていたのであれば、業務効率化に注力して月10時間まで抑えれば、差分の20時間分、勤務先との関係性が薄まります。関係性が薄まれば勤務先とのギャップを感じる機会も減り、悩みが軽減されますし、20時間の差分を「できること」の強化に費やせば、秘密裏に「やりたいこと」にも近づけるでしょう。

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Zoku Zoku Consulting 代表 中野 崇さんZoku Zoku Consulting 代表
中野 崇さん

早稲田大学教育学部教育心理学専修卒。良品計画を経て2005年にマクロミルへ入社。事業部長として上海支社の立ち上げ、取締役として韓国支社の経営再建、執行役員としてSaaS型の事業開発・統合マーケティング部門の立ち上げ・グループ全体のMission/Vision/Value策定、電通マクロミルインサイトの代表取締役社長など、第2創業期の要職を歴任。現在はZoku Zoku Consulting代表としてスタートアップ・大手企業・NPOなど様々な法人に対して新規事業開発・組織開発のコンサルティングを提供するほか、キャリアデザイン支援・エグゼクティブコーチングも実施している。
著書に『多彩なタレントを束ね、プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事』『マーケティングリサーチとデータ分析の基本』(いずれもすばる舎)など。動画講座は「ユーザーインサイトから始めるDX新規事業の超基本」「今日から始めるデータ分析の超基本」「30代・40代から始めるシンプルな自己分析」(いずれもUdemy)など。

EDIT&WRITING:伊藤理子
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