SIerに興味を持っているけれど、どのような業務を手掛けるのかピンとこない…という人は意外に多いのではないでしょうか。この記事では、SIerとはどんな業界なのかを解説するとともに、SIerがどのような業務を手掛け、どのような将来展望を描いているのかなどについて、株式会社NTTデータ関西の常務取締役執行役員である植野剛至氏に詳しく伺いました。
目次
「SIer」とは?
SIとはシステムインテグレーション(System Integration)の略。そしてSIerとは、システムインテグレーター(System Integrator)、すなわちSIを実行する企業群を指します。
SIerは、顧客のニーズに応じて、IT戦略の立案からシステムの設計、開発、運用・保守などのプロセス全体や協力会社をコーディネートすることが主な役割です。
SIerの種類
SIerには、大きくわけて5つの種類があります。
メーカー系SIer
PCやサーバーなどハードウェアメーカーから独立し、システム開発に携わっているSIerのこと。親会社と協働して業務を行うケースが多い。
ユーザー系SIer
一般企業(主に大企業)の情報システム部門が分離・独立したSIerのこと。親会社やグループ会社の案件を手掛けるケースが多く、業績安定性が高いとされる。
独立系SIer
メーカー系、ユーザー系とは異なり、特定の親会社を持たないSIerのこと。しがらみがなく自由度が高いシステム開発ができる点がメリット。
コンサル系SIer
主にITコンサルティングファームが展開するSIerのこと。コンサルティング力をベースに、企画提案や要件定義からSIとの相乗効果を生み出すのが特徴。
外資系SIer
グローバルに事業展開するIT企業が、日本法人で事業展開するSIerのこと。日本企業のグローバル展開や、海外企業の日本進出などに伴うシステム開発案件に強みを持つところが多い。
NTTデータ関西の事業内容とSIerとしての将来展望
SIer大手のNTTデータ関西。どんな事業を手掛け、SIerとしてどんな展望を描いているのか、常務取締役執行役員の植野剛至氏に詳しく伺いました。
SIerの価値は「顧客がまだ気付いていない課題」の解決に向け伴走すること
NTTデータ関西は関西エリアを中心に、全国のクライアントのシステム開発およびソリューションを手掛けています。
事業部門としては、公共、金融・ヘルステック、法人の3分野に分けていますが、事業領域は幅広く、クライアントも多岐に渡ります。
これまでSIerの役割は、「クライアントが抱える課題をシステムで解決する」ことがメインでしたが、最近は世の中の変化が激しく、クライアント自身も自社の課題を把握し切れていないケースも増えています。「DX活用というけれど、デジタル技術を使って何をどう変えていけばいいのか…」とお悩みになっておられるクライアントも少なくありません。
その悩みに伴走するのが、われわれSIerの仕事。クライアントの事業の先行きを予見して仮説を立て、最適なDXを提案するという「クライアントの価値創出」をサポートすることが、これからのSIerの主な役割になると考えています。
トータルプロデュース力、伴走力を強みにSIerの中で差別化を図る
そんな中、NTTデータ関西では、トータルプロデュース力の高さで他のSIerと差別化を図っています。その姿勢を「4つのwith」と表現し、大切にしています。
1つ目は、「総合的な事業展開と豊富な実績」。これまでの豊富な経験と実績をベースに、お客様の業種や規模を問わず、さまざまなお客様のIT課題を解決しています。
2つ目は、「ロングターム・リレーションシップの構築による安心の提供」。お客様の課題に寄り添い続けることで信頼関係を築き、そこから新しい価値を生み出しています。
3つ目は、「グループ内外の経営資源・知見の活用」。NTTデータグループの経営資源や知見を最大限に活かし、さまざまなプロジェクトを推進し実行しています。どんな課題にもヒットするベストプラクティスが示せるのは、当社ならではの強みです。
そして4つ目が、「デジタル人材・各領域のプロフェッショナル人材育成」。われわれの事業は「人」がすべて。社員一人ひとりが主体的に物事に取り組み、プロを目指してもらうための環境づくりに注力しています。
また、「伴走力の高さ」も当社ならではの武器であると自負しています。
NTTデータ関西はNTTデータグループの中核企業でもありますが、そのNTTは古くは日本の電気通信事業を支える国営企業・電電公社でした。そのためか「利他精神」のDNAが脈々と受け継がれていると感じます。
目先の売り上げ・利益ばかりを追うのではなく、例えば一つ案件に臨む際には「この案件をわれわれが請け負う意義は何か?どのように貢献できるのか?」を徹底的に議論しています。青臭く感じるかもしれませんが、本気でクライアントのため、世の中のためという意識の強い人が集まっています。
顧客のグローバル展開に伴い、海外にもビジネスフィールドが広がる
当社は社名に「関西」とあるように、関西をメインエリアに事業展開していますが、関西エリアは経済規模も大きく活況が続いており、世界に羽ばたくグローバル企業が多いのも特徴。この地をビジネスの地盤にできているのは、当社の大きな強みだと思っています。
ただ、関西だけに留まろうとは考えていません。実際、クライアントは全国に渡るうえ、グローバル展開を行っている企業も多いため、今後はSIerとしてクライアントのグローバル展開をサポートする機会がますます増えるでしょう。当社のビジネスチャンスもワールドワイドに広がると予想しています。
そのため、今後は連携やアライアンスの機会を増やしたいと考えています。NTTデータグループとの連携機会を増やし、これまで以上にグループのシナジーを発揮するほか、グループ外の企業と大手・ベンチャー問わずアライアンスを行うことで知見を広げ、ケイパビリティを高めていきたいと考えています。
同時に、自社内での連携もさらに強化しています。現在、大きく3つの事業分野にわかれていますが、その垣根を越えて相互連携を図り、ナレッジを共有し合うことに注力しています。実際、「法人向けに行っているこの仕組みは、行政向けにも活用できるのではないか」「金融機関も行政も、その先の利用者は個人なので、両者をつなぐサービスを考えられないか」など、事業部間でさまざまな議論が進んでいます。
当社は約1150名の社員がいますが、一人ひとりの知見を活かし、連携し合えばさまざまなかけ合わせができ、思いもよらないアイディアが生まれるはず。さらにグループ企業をはじめさまざまな企業との連携が加われば、SIerとしての知見も可能性も、これまで以上広がると考えています。
グループのメリットを享受しつつ、多方面の業務に関われるのが強み
公共、金融、あらゆる業界の企業が当社のクライアント。一部を除いた案件はプライムであり、独立系SIerと認識しています。
一方で、グループのメリットを享受できるのも強みです。グループ内にはあらゆるナレッジが膨大にあり、たとえ未知の案件だと思っていても、グループ内の誰かが必ず知見を持っています。利他精神はグループ各社に根付いている文化でもあるので、相談すれば詳細なナレッジを共有してもらえます。逆に相談されることも多く、刺激を得られる機会が多いでしょう。
当社はキャリア採用者が多く、昨年は100名程度が新たに入社しました。バックボーンはIT業界以外にもさまざまであり、十人十色のメンバーがそれぞれの経験・知識を持ち寄っている点が、当社のバリューの一つになっています。挑戦する人を応援し、社員のアイディアをくみ上げる仕組みも整えています。
例えば、社員の主体性と挑戦意欲を育てる取り組みとしてスタートした今年3年目の「変わるワークショップ」にはこれまで100名以上が参加し、新たなビジネスの芽が生まれ始めています。例えば取り組みの中から新たに生まれた一つとして、アスリートを応援しながらファンエンゲージメントを向上させるようなサービスも展開予定となっています。
「無」から「有」を生み出せるのが、SIerの仕事の醍醐味。そして、クライアントだけでなくその先のエンドユーザーにも関わる、すそ野の広いシステム開発に関わる機会が多いのも特徴的です。より多くの人に影響を与える価値を創造できるのは、SIerならではだと実感しています。
いくらITが進化しようが、それを手掛けるのは「人」。いろいろなバックボーンの人が当社にジョインしシナジーを生み出すことが、当社のますますのプレゼンス向上につながると期待しています。