30代で仕事辞めたい・疲れたと感じたら?対処法や辞めるかどうかの判断基準を解説

「仕事を辞めたい、疲れた」と感じている30代ビジネスパーソンは、実は少なくないようです。なぜそのように感じてしまうのか、そして「辞めたい」「疲れた」と感じたときの対処法などについて、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに伺いました。

疲れて横になっている30代のビジネスパーソン
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30代が仕事を辞めたい・疲れたと感じる主な理由

株式会社リクルートが実施した「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」(※1)によると、転職経験者に聞いた「退職理由」の上位は、年代に関わらず「仕事内容への不満」「人間関係への不満」「賃金への不満」「労働条件や勤務地への不満」となっています。

また、厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」(※2)の「仕事や職業生活に関するストレスの状況」では、「強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある」と答えた30代は86.5%に上っています。

理由としては、「仕事の失敗、責任の発生等」(42.0%)、「仕事の量」(34.7%)、「対人関係」(31.8%)が上位を占めます。他の年代に比べると「仕事の質」「役割・地位の変化等」の比率が高いことが特徴的です。

これらの調査結果を見ると、30代が仕事を辞めたい・疲れたと感じる大きな理由は、特に「仕事内容や人間関係」「ライフステージの変化」「仕事の責任の重さ」の3つにあると考えられます。

(※1:出典)「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」株式会社リクルート
(※2:出典)「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」厚生労働省

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理由別「仕事を辞めたいほど疲れた」と感じたときの3つの対処法

「辞めたい・疲れた」と感じる現状を変えるためには、以下の3つの対策が考えられます。

  1. 自力で解消する
  2. 周囲に相談してサポートを仰ぐ
  3. 距離を取る

それぞれの対処法について、先ほど紹介した「仕事内容や人間関係」「ライフステージの変化」「仕事の責任の重さ」の3つの理由別に紹介します。

仕事内容や人間関係が理由の場合

まず、どの年代にも多い理由「仕事内容や人間関係」の対処法を紹介します。

【自力で解消】ジョブ・クラフティングの考えを実践してみる

人間関係が理由の場合は、コミュニケーション力が高い人を参考にするのがおすすめです。その人が普段どのように立ち回り、周囲の人と接しているのかを観察することで、自分に合ったコミュニケーション方法のヒントが得られるかもしれません。

また、苦手な相手には「自分から歩み寄る」のも一つの方法です。相手の性格や置かれた状況を知れば、「言い方がきついだけで、悪気があるわけではないのかも」など、これまでと見方が変わるかもしれません。

仕事内容が合わない、やりたい仕事ではない理由で「辞めたい・疲れた」と感じている場合は、ジョブ・クラフティングの考えを取り入れてみましょう。ジョブ・クラフティングとは、自身の働き方を変え、主体的に取り組めるよう工夫して、仕事のやりがいや満足度を高めることです。

例えば、「企画の仕事がしたい」場合は、今の役割の中で企画に近しい業務を見つけ、積極的に関わることでやりがいを感じやすくしていきます。同時に企画力が磨かれ、将来的に異動しやすくなるかもしれません。

やりたい仕事があるのに現在の職場では叶えられない場合は、社内FA制度や社内公募などに手を挙げ、自らチャンスをつかむ方法もあります。

【周囲に相談】仕事内容や人間関係の悩みを上司に相談してみる

仕事内容の場合は、仕事の量や質、目標設定などに関して上司に相談するのが最良の方法です。まずは上司に自身が置かれている状況を理解してもらいましょう。

その上で、例えば「今これだけの業務を抱えているので、少し役割を減らしてほしい」などと要望を伝えれば、適切に対処してもらえるでしょう。それでも改善されない場合は、人事部門に相談し、異動を検討するなどの方法が考えられます。

人間関係の場合も、まずは上司や同僚、人事などに相談しましょう。現状をフラットに伝え、対応方法についてアドバイスをもらったり、チームを変えてもらったりするといいでしょう。また、家族や友人など職場以外の人に相談することも有効です。

【距離を取る】プライベートを充実させる、苦手な人とは距離を置く

仕事内容、人間関係いずれの場合も、「仕事や職場と距離を取る」のは有効です。可能な限り残業を減らし、プライベートの時間を確保しましょう。趣味でリフレッシュしたり、副業やボランティアを始めたりして、オンオフのメリハリをつけるのもおすすめです。思い切って有給休暇を取り、気持ちを切り替えるのもいいでしょう。

人間関係の場合は、苦手な相手と物理的な距離を取る方法も考えられます。チャットやメールでのやりとりをメインにすることで、ストレスを軽減できるかもしれません。

ライフステージの変化が理由の場合

30代が感じやすい「ライフステージの変化」による「辞めたい・疲れた」への対処法を紹介します。

【自力で解消】一時的にキャリアプランを見直す

仕事と家庭の両立に疲れ、辞めたいと感じている場合は、仕事のやり方を一時的に変えることをお勧めします。例えば、「〇年間は時短で働き、その後はフルタイムに切り替えキャリアアップを目指す」など。その際は家族・パートナーと話し合い、協力体制を築くことも大切です。

【周囲に相談】上司や人事に役割の相談をする、ロールモデルを探す

プライベートと仕事の両立については、上司に相談して担当業務を見直したりするなどの対応を取るといいでしょう。例えば、リモートワークの機会を増やしてもらう方法もあるかもしれません。上司や人事にどのような役割を担い、どれぐらいの評価を得られれば昇給が可能なのか、評価基準を確認・相談して、目標を明確にするのも一つの方法です。仕事へのモチベーションが高まるでしょう。

同じようなライフステージを経験したことがある先輩が社内にいれば、プライベートと仕事を両立させる方法や仕事のやり方をどう工夫していたかなどを相談してみましょう。

「以前は仕事を一から十まで自分がやらないと納得できなかったが、今は自分しかできない重要部分以外は上司や同僚にサポートしてもらえるように仕事の仕方を変えた」などアドバイスがもらえるかもしれません。社内で同じ境遇にある人が見つかれば、しんどい気持ちを分かち合うだけでも、ストレスが軽減できるでしょう。

【距離を取る】固定概念を取り払い、今できることに目を向ける

「自分の思い込みや固定概念から距離を取る」ことも大切です。例えば「これまで以上に仕事で成果を上げないといけない」「家庭を持ったからにはもっと稼がないといけない」などの思いがストレスとなり、心身のバランスを崩してしまう人も少なくありません。

ライフステージの変化に柔軟に対応し、「今できること」「これだけは大事にしたいこと」などに、優先順位をつけて対応することが大切です。

仕事の責任の重さが理由の場合

30代は責任ある仕事を任されたり、管理職に昇進したりすることから「辞めたい・疲れた」と感じる人も多いようです。これらの対処法について紹介します。

【自力で解消】責任の重さに対応すべくスキルアップする

自力で現状を変えるためには、「責任の重さに対応できる自分」に成長するべく、努力することが一番の解決策かもしれません。例えば、管理職向けの研修やセミナーを受講したり、書籍などで独学したりする方法が考えられます。専門性を高めたり、業務を体系的に把握・整理したりするために、関連する資格の勉強をするのも有効でしょう。

【周囲に相談】同じような役割を担っていた上司や先輩から学ぶ

責任ある仕事を任され、つらい状況にあるならば、同じような役割を担っていた上司や先輩に話を聞き、どのようなスキルとスタンスで仕事に臨めばいいのかなどを教えてもらうといいでしょう。

他部署や社外のロールモデルに相談するのも一つの方法です。別視点からアドバイスをもらうことで、視界が開けるかもしれません。

【距離を取る】「仕事のことを考えない時間」を確保する

すでにストレスフルな状態にあるならば、仕事と距離を取ることも重要です。責任ある立場を任され、業務量も多い30代は、常に仕事のことを考えている人も多いと思いますが、「仕事を忘れる時間」を意識的に設けましょう。プライベートの時間を確保し、リフレッシュすることが大切です。

それでも解決しない場合は、キャリアチェンジも選択肢に入れましょう。例えば、マネジメントの仕事が辛いのであれば、専門性を追求するスペシャリストの道を選ぶ、会社の収益柱で常に忙しい職場であれば異動を検討する、過剰労働が当たり前の会社であれば転職に踏み切るなどが考えられます。

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30代が「今の仕事を辞める・辞めない」を判断する基準とは?

「辞めたい・疲れた」と思っても、衝動的に仕事を辞めてしまうのはお勧めできません。次が決まらぬまま辞めてしまうとブランク期間が生じてしまい、転職活動において企業から懸念を抱かれる可能性があります。家族がいる場合は特に、収入面などの不安から「早く次を決めなければ」と焦ってしまい、希望に沿わない転職を決めてしまうケースもあります。

まずは「自力で解消する」「周囲に相談してサポートを仰ぐ」「距離を取る」などの方法が取りながら、3カ月間や半年などと期間を決めてアクションを起こしてみましょう。ライフステージの変化に対しても「今できることを頑張ろう!」と気持ちを切り替えることができるかもしれません。

それでも自分が決めた期間を過ぎても状況が変わらない、逆に悪化したという場合は、本格的に転職を検討しましょう。

なお、自分が決めた期間内であっても、転職活動を始めてみるのは一つの方法です。転職活動を通じて別の会社に触れることで、「今の立場は恵まれている」「やりがいを得やすい環境がある」など、自社の良さが見えてくることがあります。「辞めたい・疲れた」という気持ちも変化するかもしれません。

もちろん、心身への大きな負担がある場合は、この限りではありません。パワハラなど職場で不当な扱いを受けている場合は、人事や社内の相談窓口などに相談しましょう。精神的ストレスが強い場合は、産業医もしくは医療機関を頼ってください。

今の仕事を続けながら、自分に合った仕事やキャリアを考える

「辞めたい・疲れた」けれど、会社を辞める決断はできないという場合は、前述の改善方法を試しつつ、以下のように「自分に合った仕事やキャリア」を考える時間を設けるといいでしょう。

自分の価値観に合った仕事はないか考える

今の仕事よりも自分の価値観に合う仕事であれば、やりがいを感じやすく、ストレスを覚える機会も少なくなると思われます。自己分析で自分の価値観を明確化し、それが叶えられる仕事は何か考えてみましょう。

自分で洗い出すのが難しければ、適職診断などを活用し、自分の強みや持ち味、価値観を明らかにするという方法もあります。

自分の市場価値を確認する

自分のどんな経験やスキル、強みが転職市場で評価されているのか、「自分の市場価値」をつかむことができれば、それを軸に今後のキャリアを設計することで「より高く評価される人材」を目指すことができます。

転職エージェントに登録し、転職市場の動向に詳しいキャリアアドバイザーに客観的なアドバイスをもらう方法や、スカウトサービスに登録して、企業からのオファーを待つのも有効です。現状の市場価値がつかめるでしょう。

転職情報サイトに登録して情報収集する

転職情報サイトには、多くの求人情報が掲載されています。どんな企業がどんな理由で採用を強化しているかがわかり、転職市場のおおよその動向をつかむことができます。

また、気になる求人を見ていく中で、さまざまな職種や働き方、働く環境や風土などに触れることができ、「こんな環境でイキイキ働きたい」「こんなキャリアステップを踏みたい」など、自分の思いが整理できる可能性もあります。

粟野友樹氏組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

取材・文:伊藤理子 編集:馬場美由紀
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