オブザーバーの役割とは?アドバイザーとの違い、活用法を解説

会議や研修などでよく使われる「オブザーバー」という言葉。耳にすることは多いけれど、実はどのような役割なのかわからないという人は多いのではないでしょうか。ビジネスシーンにおけるオブザーバーの役割、活用するメリットなどについて、ビジネススキル研修を手がける株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ代表の高田貴久氏に解説していただきました。

オブザーバーとして会議に参加する若手社員のイメージ画像
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オブザーバーのビジネスシーンにおける意味や役割とは?

オブザーバーとは、「立会人」「傍聴人」「観察者」などを意味します。会議や研修などの場に第三者の「傍観者」として参加するものの、議論に加わることはしないのが一般的です。

企業が会議などの場にオブザーバーを招く意図はさまざまです。会議参加者がオブザーバーの目を意識することにより、気を引き締めて議論に取り組み、責任感を持って発言してもらうことを狙いとすることもあります。

また、会議中の発言は求められませんが、終了後や別の場でその人の視点での感想や意見を聞かれることもあります。部下をオブザーバーとして他部署の会議に参加させることで、新たな視点や情報を得てもらうなど、育成を目的とすることはよくあるケースだと思います。

このほかにも、経営戦略などを立てる立場の人が社内の状況や問題を知るために、自身や部下がその部署の会議にオブザーバーとして自身や部下が参加して情報収集することもあるようです。

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オブザーバーとアドバイザーの違い

オブザーバーとアドバイザーの違いは、いずれも当事者ではない立場で会議などに参加しますが、「積極的に意見を述べるかどうか」が異なります。

アドバイザーは、その人の経験や専門知識を踏まえた意見・アドバイスを求められます。オブザーバーは基本的に自分の考えを発信することはなく、求められた場合にのみオブザーバーとしての意見を述べるにとどまります。

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オブザーバーを置く目的とメリット

ビジネスシーンにおいて誰が誰をオブザーブするのか、大きく分けると3つのパターンがあります。

1.部下が上司をオブザーブする
2.上司が部下をオブザーブする
3.他部署や他領域の会議をオブザーブする

それぞれについて目的とメリットをご紹介していきます。

1.部下が上司をオブザーブする

部下が上司の会議に参加することで、知識の習得や一段高い視座で課題を捉えるようになる効果が期待されます。一方、上司側は部下の目を意識することで、課題や提案に対し、より責任を持って検討・発言するようになります。

例えば、私の前職時代の事例になりますが、役員陣が新規事業の推進可否について審議する経営会議に、その新規事業を企画したメンバーをオブザーバーとして同席させたことがありました。

役員陣は企画に携わった当事者たちが聞いている手前、真摯に議論の上、判断理由について丁寧なフィードバックを行いました。実はもしメンバーが陪席していなければ、十分な議論がなされぬままあっさり否決されていた可能性がある案件でした。

一方、メンバーたちは、自分たちの企画がどのように審議されるかという重要な議論の場に同席したことで、経営陣の視点に気付き、今後に向けた成長課題を理解することができました。

2.上司が部下をオブザーブする

上司が部下をオブザーブするのは、研修の場でよく見られるパターンです。上司の目があることで部下が真剣に取り組むというメリットもありますが、上司が研修の様子から育成上の課題などを把握し、現場での指導に活かせる点でもメリットが大きいと言えるでしょう。

某大手メーカーが実施している研修プログラムでは、最終段階で受講者が担当役員に新しいアイデアをプレゼンする場が設けられます。その際、受講者の上司が必ずオブザーバーとして出席するルールが設定されています。

つまり、上司は自分の部下が経営層に向けてプレゼンを行い、フィードバックを受ける様子を見守るという構図です。上司は現場に戻った際、気づいたことを伝え、適切な指導を行うことができます。上司が研修現場をオブザーブすることで、部下の「学習」を「実践」とリンクさせる効果が期待されるというわけです。

3.他部署や他領域の会議をオブザーブする

年次や役職に関わらず、他の部署の会議にオブザーバーとして参加する、あるいは自分の仕事とは直接関連しない領域の会議をオブザーブするといったパターンがあります。

これは主に、「新しい知見の習得」を目的とします。他部署の取り組みや組織内の課題を知ることで、視野が広がり、他部署との連携がスムーズになる効果が期待できます。特に縦割り構造の組織においては、横のつながりを持って情報共有・協業することで、新たな価値の創出につながる可能性があります。

オブザーバーとして参加する現場社員のイメージ画像
Photo by Adobe Stock

オブザーバーの立場を積極的に活用する

日常のビジネスシーンにおいては、オブザーバーとして会議などに招かれる機会はそれほど多くないと思います。しかし、オブザーバーという立場を積極的に活用することで、成長を促進することも可能になります。

自分自身が成長したい場合

例えば、自分が何か社内の企画検討会や顧客先の会議などに資料などを提出した場合、招かれていなくても「オブザーバーとして参加させてください」と申し出てみる。参加が認められれば、自分が提出した資料や提案がどのように受け止められているかを具体的に知ることができ、次に向けた改善に活かすことができるでしょう。

また、自分の業務には関係がない会議でも、知識や経験を得るため時間を見つけて、自分から積極的にオブザーブしてみるのもよいでしょう。自分の部署・担当業務の範囲内では得られない知見も、他部署の会議に参加することで学ぶことができます。

オブザーバーは社内で異動したり転職したりしなくても、手軽にさまざまな部署の取り組みや課題をつかむことができる手法と言えます。若いうちからより多くの会社や部署の情報を仕入れることで視野が広がり、日々の行動も変わって仕事での成果につながっていくはずです。

部下を成長させたい場合

上司の立場として部下を成長させたいと考える場合も、オブザーバーの立場を活用することができます。例えば、部下の指導に悩んでいる場合、部下と一緒に現場や会議などにオブザーバーで参加し、ヒントを探してみるなど。部署内外に関わらず、部下の学びになりそうな案件があれば、部下をオブザーバーとして参加させて学習させることも一つの方法と言えます。

オンライン上のオブザーブ参加なら、自分も相手も負担が少ない

コロナ禍以降、会議や研修をオンラインで行う機会が増えていますが、オンライン化はオブザーブの絶好のチャンスだと言えるでしょう。

当社では、日本にいながら海外で開催されている研修にオンラインで参加し、1時間だけオブザーブすることもあります。このように、海外や国内遠隔地の拠点の会議にもオンラインなら参加することが可能です。

また、リアルな会議室の場合、部外者が見ていることで会議参加者が落ち着かず、煩わしく思われてしまうこともあります。オンライン会議であれば、画面オフやミュートにすることで自身の存在を感じさせず、気軽に参加することができるでしょう。

新たな知見獲得や横のつながりを広げるためにも、オンラインでのオブザーブ参加を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

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プロフィール

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ
グローバルCEO・代表取締役社長 高田 貴久(たかだ・たかひさ)氏

高田貴久氏_プロフィール画像東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部卒業、シンガポール国立大学Executive MBA修了。戦略コンサルティングファーム、アーサー・D・リトルでプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当に携わる。マブチモーターで社長付・事業基盤改革推進本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。トヨタ自動車、イオン、パナソニックなど多くのリーディングカンパニーでの人材育成を手掛けている。著書に『ロジカル・プレゼンテーション』『問題解決―あらゆる課題を突破するビジネスパーソン必須の仕事術』がある。
▶プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 公式サイト

取材・文:青木典子 編集:馬場美由紀
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