「転職せず、他の会社を経験したい」7割は自社、3割は他社で勤務する他社留学『ナナサン』がもたらす相乗効果|エッセンス株式会社

「今の会社に不満はないけれど、他の会社も経験してみたい。でも、転職には簡単に踏み切れない…」。

そんなことを考えたことがある人は多いのではないでしょうか。
こうした声をヒントに生まれたのが、エッセンス株式会社が運営する『ナナサン』です。

『ナナサン』とは、「他社留学」の研修サービス。
勤務時間のうち7割は自社で働き、3割は他社に出社して勤務するというものです。※週5日・8時間勤務なら、週1回ペースで他社に勤務

なぜこのサービスが生まれたのか、どんな企業や人が利用し、どんな効果が生まれているのか、代表取締役の米田瑛紀さんにお聞きしました。

「今の環境を飛び出してチャレンジしたい」の声にこたえる

もともとはプロ人材のシェアリングサービスや人材紹介業を手がけてきました。
人材紹介サービスでは転職を希望する方々にお会いするのですが、30歳前後で高学歴、新卒で大手企業に入社した方々にキャリアカウンセリングを行っていると、「ベンチャーで挑戦してみたい」「大手の看板を外して、自分の力を試してみたい」「希望の部署に行けないから、その仕事ができる他社に行きたい」といった声をよくお聞きするのです。
しかし、こちらから見ると、今の会社でまだまだやれることがあるのではないか、今辞めるのはもったいないのではないか、と思うこともある。であれば、「社外で自分の力を試す」というチャレンジを、退職せずに体験させてあげることができれば、と考えたんです。

それに、ビジネス環境が大きく変化している昨今は、歴史ある大手企業であっても変革をしていかなくてなりません。ところが、大手企業が行っている階層別研修や幹部研修といったものは「インプット型」がほとんど。けれど、今の時代に本当に重要なのは「変化への対応力」なんです。だから、これからの能力開発・人材開発には「違う環境に飛び込んでも、価値を発揮できるか」にフォーカスすることが重要だと思います。つまり、企業側にとっても、社員に「異なる環境」を経験させることは価値があると考えています。

そこで思いついたのが、「他社留学」のサービスです。当社はプロ人材のシェアリングサービス事業を通じて、「非常勤でプロ人材を一定期間活用し、課題を解決する」というプロジェクトを約600件手がけてきました。このノウハウを利用すれば、フルタイム型の出向ではなく、「7割現職・3割他社」という働き方をサポートできると考えたのです。

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「副業解禁」へのトライアルとして利用する企業も

「他社留学」のサービスを立ち上げて間もないころは、企業には受け入れられませんでした。
「転職を促進させてしまうのではないか」「守秘義務の問題はどうするのか」「週1日相当、自社の仕事ができないとなると人件費がもったいない」といった理由です。

そうした中で、東京電力の人事部門の幹部の方が「ぜひやりたい」と。老舗大手が乗り出したことで、追随する企業が増え始め、日経新聞にも取り上げられ、「日本HRチャレンジ大賞」(人材領域で優れた新しい取り組みを行っている企業を表彰する制度)も受賞しました。また、経済産業省による人材力強化を図る委員会の委員にも選出いただき、「検討する価値あるコンセプト」として、研究会報告書に「他社留学」が掲載されました。こうして注目されるようになり、サービスリリースから1年で約30社の大手企業に参画いただけています。他社留学の経験者はすでに50人を超えました。

もう一つ、利用促進の追い風となったのは「副業解禁」の波です。近年、社員に幅広いビジネス経験を積むチャンスを提供するために「副業」を認める企業が増えています。しかし、いきなり副業を解禁し、制度を運用していくのはハードルが高いし、どう作用するのか不安もある。そこで、『ナナサン』を副業解禁のトライアルと位置付けて利用されている企業もあります。

最近では、若手だけでなく、50歳前後のミドルシニア層社員を留学に送り出す企業も増えてきました。役職定年層を活性化させ、カンフル剤としたいとの考えです。

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受け入れ側は、コストゼロで自社にないノウハウを取り入れられる

一方、大手企業からの留学者を受け入れる企業は、主に当社の既存顧客です。350社ほどありますので、留学者の専門分野や成長課題などを踏まえ、マッチングを行います。
受け手企業の条件としては「資本金1千万円以上」「社員数20人以上」「1年間で1名以上の採用を行っている」と規定しました。成長力を備え、留学価値があると思われる基準です。

受け入れ側企業は、コストをかけずに新たな人材を活用できること、そして大手企業のノウハウを取り入れられることにメリットを感じてくださっています。
例えば、大手企業の人事担当者を迎え入れ、自社の人事業務を担当してもらうことで、大手の仕組みやノウハウを導入する…といったようにです。

このほか、大手の事業企画部門の方がベンチャーに留学し、大手のノウハウと資産を使ってそのベンチャーと一緒に新規プロジェクトを立ち上げる、というケースも見られます。留学期間終了後も協業が続き、双方の売上拡大につながれば、まさにWin-Winとなるわけです。

なお、当初は大手→ベンチャーへの留学でしたが、大手企業側から「受け入れ側になりたい」という申し出を受けることも増えてきました。組織に新風を吹き込む価値を感じていただいているようです。

企業と働く人が、お互いの強みを取り入れ、共に成長できる

他社留学によって、送る側と受け入れ側、双方に大きな成果をもたらした例をご紹介しましょう。

大手小売りチェーンの人事部門でアルバイト採用の責任者を務めるAさん(20代)が留学した先は、人材サービス企業・B社。B社では新規事業として、アルバイト大量採用のソリューションコンサルティング事業を検討しているタイミングでした。
Aさんは自分がアルバイト採用を行う側の観点から「こんな仕組みやサービスがあれば使いたい」という意見を出し、B社のサービス設計に活かされました。
一方、「新規事業プロジェクトの企画」を初経験したAさんは、留学期間終了後、こんなことを仰いました。

社会人になって初めて、自分が主体的に取り組まなければ何も動かない、という体験をしました。ずっと仕事が振ってきて、それに対応するという働き方でしたから。留学先では『あなたはどう思う』を問われ続け、嫌な汗が出ましたが(笑)、自分自身で考える姿勢が身に付いたと思います」

Aさんの上司は「これまで寡黙なタイプだったが、留学から戻ってからは会議で率先して手を挙げ、主体的・理論的に意見を述べるようになった」と喜んでいらっしゃいました。

もう一例、組織コンサルティング会社に勤務するCさん(30代)は、自社で新たに立ち上げるITサービス事業の責任者に任命されてまもなく、他社に留学しました。留学先はクラウドサービス分野で成長を遂げているD社。Cさんは、まさに自社の新規事業に必要な知見をD社で得ることができ、D社側はCさんが得意とする「組織活性化」のノウハウを導入することができました。

このように、企業と働く人が余分なコストをかけることなく、またリスクを負うこともなく、お互いの知見を交換したり相乗効果を生み出したりして成長する機会を増やしていきたいと思います。
そして、働く人にとっては、自社ではできない経験を積むチャンスを得ることで、将来の価値アップにつなげていってほしいですね。

当社では最近、新たなスローガンを掲げました。それは「新しい“福業”文化を創る」。「副業」ではなく「福業」です。小銭稼ぎをするような副業ではなく、自分自身の学びや成長につながる福業にチャレンジしていただきたいと思います。人生100年時代に向け、長く価値を発揮して稼げる人材になるためにも、福業を通じて自身のキャリアを磨いていくことをお勧めしたいです。

エッセンス株式会社

EDIT&WRITING:青木 典子 撮影:平山 諭
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