眠気の推定や集中度が測れる?JINSが切り開くメガネの新たな可能性

メガネチェーン「JINS」を展開するジェイアイエヌから11月5日、世界初の“自分を見る”ウエアラブルメガネ「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」が発売される。

メガネの眉間と鼻パッド部分に同社が独自開発した「3点式眼電位センサー」を、テンプル(つる)に「6軸(加速度・ジャイロ)センサー」を搭載し、目の動きを元に心や体の状態を可視化するという。まずは、オフィスシーンなどで自身の頭(脳)の活性度を測ったり、ドライブシーンで眠気の兆候を推定したり、フィットネスシーンで体の動きを測定するなどの用途が見込まれているが、ゆくゆくは医療分野などさまざまな用途への展開が期待されている。

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目や頭の動きを測ることで、心と体の状態が分かる

人間の眼球は、角膜側が正、網膜側が負の電位を帯びており、その電位差を「眼電位」という。視線を動かした際や瞬きの際に、目の周辺の皮膚に電位差が生じるが、それを「3点式眼電位センサー」で捉えることで、目の動きがより正確に、かつリアルタイムで計測できるようになった。

「“目は口ほどにものを言う”とのことわざのように、人が五感で得ている情報の9割は目からのものと言われており、人の心の状態を色濃く反映しています。『JINS MEME』は眼電位センシングにより取得された“目”の動きから集中度や落ち着きといった心の状態を可視化します。独自開発した3点式眼電位センサーで、瞬きや視線移動を正確に検出するほか、『6軸センサー』も搭載することで、体の動きや体軸なども測定できるようになっています」(マーケティング室・渡辺里実さん)

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▲11月5日に発売されるのは、3点式眼電位センサーと6軸センサーを搭載したウエリントンタイプの「ES」(写真左)と、6軸センサーのみ搭載で主にスポーツ用途に特化した「MT」の2種。いずれも測定されたデータはスマートフォンの専用アプリに送られ様々なシーンや用途で応用が可能だ。価格は「ES」が3万9000円、「MT」が1万9000円(いずれも税別)。

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メガネに付加価値を加えることで、新しいマーケットを切り開く

しかし、なぜメガネチェーンの「JINS」がこのようなウエアラブル領域に進出することになったのだろうか?

「日本において視力矯正が必要な人は約6000万人と言われますが、この6000万人だけをターゲットにメガネを作って“視力矯正”の機能を提供していくだけだと、市場規模に限りがあります。そこで、視力矯正以外の付加価値をメガネに加えるという発想が生まれました。そしてブルーライトの影響を軽減するPC用メガネ『JINS PC』や花粉対策用の『JINS 花粉CUT』などの機能性アイウエアを開発し、新しいマーケットを切り開いてきました。今回の『JINS MEME』は、さらに次のステップになり得るもの。当初社長(代表取締役社長の田中仁氏)は、開発にご協力いただいた川島隆太教授(東北大学加齢医学研究所所長)に『頭がよくなるメガネが作れないか』と相談に行ったそうですが、ブレストする中で川島教授から『目の動きを測る眼電位センシング技術を応用すれば人の状態がわかるかもしれない』とアドバイスをいただいたことを機に、開発がスタートしたのです。開発期間は構想も含めて約5年半です」

眼電位センシング技術自体は以前からあったが、目の周りにいくつもセンサーをつけて大型の機械で計測しなければならなかった。一方で、JINSはあくまでメガネブランドであるため、「見た目はあくまで普通のメガネであること」が必須条件だった。

「多くの機能をメガネに搭載しようとすると、どうしても重量があったりバッテリーを消費するので、普段使いに適しません。そこで、機能を必要なものだけに絞り、鼻パッドと眉間部分の3点にセンサーを付け、テンプル(つる)の内部に電極を収めることで、メガネとしてのデザインを維持し、毎日使い続けられる軽さを実現することができました」

実際、かけ心地は全く違和感がない。従来品と同じぐらい軽く、見た目もメガネそのものだ。

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▲株式会社ジェイアイエヌ・マーケティング室の渡辺里実さん

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長距離ドライバーの管理、合コンでの相性診断…外部からも斬新な活用アイディアが集まる

実は、「JINS MEME」が発表されたのは、2014年5月のこと。発売開始まで1年半もかかったわけだが、それには理由があった。

「メガネメーカーの我々の知見だけではJINS MEMEの可能性を狭めてしまいかねない。開発段階でオープンイノベーションにすることで、JINS MEMEにどんな可能性があり、どんな展開が可能なのか外部からアイディアを募りたいと考えたのです」

実際、多くの企業や研究機関からアイディアが集まったという。

多かったのは、自動車関連。例えば、長距離ドライバーが利用することで、ドライバーの健康管理や労務管理に応用することができるかもしれない、というアイディアが寄せられた。

また、教育機関からは、生徒に「JINS MEME」をかけさせて授業の集中度を測り、講師の評価や授業内容の見直しに活用したいとの意見もあった。広告関連業界からは、消費者がどんな広告をどれぐらい見ているのかを測ることで、マーケティングツールとして活用したいとの声があった。どれも同社が想像していなかった活用アイディアだ。

今年4月以降に開催された「ハッカソン」では、さらに思いもよらない斬新なアイディアがたくさん寄せられたという。
「瞬きの同期率で合コン相性診断を行ったり、体の動きによってクラブミュージックのリズムがどんどん変化する、座禅中に一定以上傾いたらスマホからアラートが出て喝を入れられる…などバラエティに富んだアイディアが集まり、刺激を受けましたね。改めて、JINS MEMEのポテンシャルの大きさに気づかされました」

目指すは「先制医療」への活用。病気を未然に防ぐことができるウエアラブルへ

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前述のように、今後も「JINS MEME」の可能性を検討し、用途拡大を進めていく計画だが、最終的な目標は「先制医療」。つまり、発病する以前の段階で、将来的に罹患可能性の高い病気を見つけて予防するというものだ。

例えば、川島教授とは認知症予防への活用を研究している。作業に集中しているときは脳が活性化している。「JINS MEME」を使って集中状態をマネージメントできれば、認知症を未然に防げる可能性がある。

厚生労働省では「ロコモーティブシンドローム(運動器症候群:ロコモ)が寝たきり、要介護につながるとして警鐘を鳴らしているが、ひざなどを傷めない正しい歩き方、姿勢を指導することも検討している。プロに見てもらわずとも自分の歩き方のセルフチェックができれば、ロコモ防止にもつなげられる可能性がある。

「実は人が1日にどれぐらいまばたきするか正確に測ったデータはほとんどないのですが、『JINS MEME』ならば正確なまばたきの回数を取得できるので、そのようなことも可能です。先制医療分野において眼電位センシングと頭部6軸センシングが秘める可能性は非常に大きく、今後も研究開発に注力することで、『JINS MEME』が寄与できる可能性を模索していきたいと考えています」

もはや「メガネ」と呼ぶのもためらわれるほど、さまざまな可能性が広がっている「JINS MEME」。まずは発売される2モデルを体感し、自ら将来性の大きさを探ってみてはいかがだろうか。

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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