仕事の目標が思いつかないときに使える「目標設定」の方法とポイント

仕事の目標が思いつかない、上司に目標設定を迫られているけど、やり方がわからない。そんなときに使える、仕事の目標を考えるポイントや目標設定の方法について、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

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なぜ仕事には目標が必要なのか?

目標設定とは、仕事で成し遂げたいゴールとなる「目的」を達成するために、「何を」「いつまでに」「どうするか」という具体的な手段である「目標」を決めることです。

つまり、的確な目標を設定することでやるべきことが明確になり、効率的かつスピーディに仕事を進めることができます。また、目標を達成した際には、達成感を得ることができるため、仕事に対するモチベーションを高めるメリットもあります。

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仕事の目標が思いつかない主な原因とは

では、仕事の目標はどう考えればよいのでしょうか。「仕事で何を目指したらいいのかわからない」「目標が思いつかない…」という方もいるでしょう。「仕事の目標が思いつかないこと」は、それほど珍しいことではありません

特に、新入社員や転職をしたばかりの人にはよくある悩みです。また、変化が著しい現代社会のなかで、過去の常識ややり方が通用しなくなり、どのように目標設定をすればいいのかわからないと不安を感じている人も増えています。そこでまずは、なぜ仕事の目標が思いつかないのか、その原因を考えていきたいと思います。

会社のビジョンが理解できていない

仕事の目標が思いつかない原因として多いのが、会社のビジョンが理解できていないことです。会社のビジョンや方向性が腹落ちできていないと、目的となるゴールがイメージできず、明確な目標を立てることができません。自分の会社がどのようなビジョンを掲げているのか確認してみましょう。

自分の仕事の役割が認識できていない

現在の担当業務において、自分がどういう役割を担っているのか、どんなことを期待されているのか、認識できていない人が意外と少なくありません。自分の役割、仕事での強みを明確にすることで、仕事で目指すべきところが見えてくるようになります。

将来のキャリアについてイメージできていない

例えば、3年後にどのようなキャリアを築いていたいのか。自分のキャリアビジョンが描けていないと、その場しのぎの思いつきで目標を考えてしまいがちです。今の仕事を通じて、3年後にはどう成長したいのかをゴールに目標を考えてみることも必要です。

高い目標を立ててしまい、達成できない

難易度の高い目標を掲げたものの、達成できずに上司にダメ出しされたり、挫折してしまうことも原因の一つとして挙げられます。目標は高い方がいいと思いがちですが、実は目標設定のコツは、達成可能な目標を設定すること。現実的な目標を達成し続けることで、いずれ高い目標もやり切ることができるようになっていきます。

仕事へのモチベーションが低い

若手社会人にありがちなのは、上司から言う通りに仕事をしていることで、自分で何も考えずに、仕事へのモチベーションが低くなること。自分の頭で仕事の進め方や課題解決を考えるように、意識ししながら仕事に取り組むとよいでしょう。

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仕事の目標が思いつかないときに、最初にすること

上記で挙げたように、会社のビジョンや自分の役割が把握できていない場合、自分だけで悩むのではなく、周りに相談することも大切です。

上司やリーダーに確認・相談する

所属する部署の上司やチームのリーダーに、会社が目指す方向性やビジョン、仕事の役割、自分が今の仕事で期待されていることについて確認してみましょう。このときに気をつけたいのは、ただ上司が求めることを聞くだけでなく、自分がやりたいこと、目指していることをしっかり伝えることです。

所属している組織やチームで目標がある場合は、リーダーにその目標を確認し、自分の目標設定につなぐことも大切です。その際、チームの方向性だけでなく、数値的な目標も確認しておきます。定期的なミーティングや1on1の場を設けてもらうことで、目標の設定がしやすくなり、お互いの認識ギャップを減らすこともできるでしょう。

●上司やリーダーに確認すること

・会社のビジョン、今後の方向性について
・自分の役割とは何か、期待されていることを適切に把握する
・チームとして目指す数値目標について
・目標に対する取り組みの成果、評価など

自分のキャリアプランを立てる

今の仕事を通じてスキルを伸ばし、より理想的な仕事をしたい場合、自身のキャリアプランを立てることが重要です。キャリアプランを立てることで、<自分が何を目指すのか、どのような働き方をしたいのかを明確にすることができます。

そのためには、まずこれまでの経験を棚卸し(たなおろし)して、自分の伸ばしたい強みや克服したい課題を洗い出すことも必要です。強みや課題が認識できたら、将来のなりたい自分を明確にし、足りない経験を重ねて、スキルアップするための目標を立てましょう。

なるべく短期間で実現できそうな目標を立てることで、達成感を感じたり、モチベーションが下がらないような工夫を立てたりしましょう。一度決めたからといって、その通りにやらなくてはいけないということはありません。状況に合わせて柔軟に目標を変え、アップデートしていくことをお勧めします。

●キャリアプランの立て方

・これまでの経験を棚卸しする
・将来の理想像を描く
・今の自分に足りない経験やスキルを分析する
・短期間で達成できそうな目標を立てる
・状況に合わせて修正・変更していく

仕事の目標を決めるための方法

ここからは、目標を設定するための具体的な方法について、お伝えしていきます。

「定量目標」と「定性目標」を活用する

目標設定において重要なのは、まず定量目標と定性目標の違いを理解し、活用することです。
定量的な目標とは、目指すゴールを具体的な数値で示す目標です。目標の達成度を客観的に数値で測ることができます。例えば以下のように設定します。

●定量目標の設定例

・今期の売上を前年比20%増加する
・消耗品のコストを20%削減する
・新規顧客を毎月3件獲得する
・残業時間を月10時間以内に抑える

定性目標とは、目指すべき状態や行動などの質的な目標のことです。ゴールに至るまでの過程に着目し、目標達成のために必要な行動を示すため、行動目標と呼ばれることもあります。具体的には以下のように表します。

●定性目標の設定例

・顧客満足を高め、顧客とパートナー関係を構築する
・「業務改善」が当たり前となる職場風土を創り出す
・ミスのない丁寧な仕事を心がけ、社内外から信頼される

このように、定性目標を設定することで方向性が明確になり、達成するために何をするべきかがわかりやすくなります。

●定量目標と定性目標の違い

定量目標:数値で表す目標
定性目標:目指すべき行動や考え方

定性目標は結果を数値で測ることができないため、定量目標とうまく組み合わせて具体的な目標設定を考える方法もあります。定量目標と定性目標の違いを理解した上で、バランスよく目標を立てましょう。

定量目標と定性目標の組み合わせ例

今期の売上を前年比20%増加するために、顧客満足度を高めてリピート受注を増やす

「SMARTの法則」を活用する

仕事の目標を立てるときによく使われるのが、「SMARTの法則」です。具体的な目標が思いつかない場合は、この指標を用いながら設定してみましょう。

●SMARTの法則

Specific:具体的に分かりやすく
Measurable:測定可能な数値化して
Achievable:達成可能な
Relevant:経営目標などに関連性のあることを
Time-bound:期限を明確に設ける
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「SMARTの法則」を使って目標を設定してみよう

「SMARTの法則」ついて、それぞれの指標別にどのように考えて目標設定をしていくのか、もう少し詳しく解説していきます。

Specific(具体的に分かりやすく)

目標を達成するためには、具体的で分かりやすいことが重要です。例えば、「営業成績を上げる」だけでは漠然としており、どうなったら達成したのかイメージがつきにくいと思います。「営業成績を上げるために、毎月3件の新規顧客を獲得する」と具体的にしましょう。

具体的な目標を立てるためには、What(何を)、When(いつまでに)、Where(どこで)、Why(なぜ)を意識しながら考えることがポイントです。

Measurable(測定可能な数値化して)

目標を数値化することで、数字で目標が達成したことを測定することができます。「営業成績を上げる」目標のゴールは何なのか、「売上金額が●●万円」「顧客満足度を▲▲%から〇〇%に向上させる」など、具体的な数字に基づく目標を設定しましょう。

また、誰もがわかる数値目標を設定することで、上司の評価やチーム内への共有がやりやすくなり、アドバイスやサポートなども受けやすくなります。

Achievable(達成可能な)

さらに目標設定は達成可能な数値やアクションであることも重要です。高い目標を目指すことも大切ですが、実現不可能な目標や継続的に行うことが難しい目標を掲げてしまうと、途中で挫折してしまう可能性があります。達成できなかったときには、モチベーションも下がってしまうでしょう。

とはいえ、低すぎる目標を設定してしまってもモチベーションが上がらず、自身の成長にも繋がりません。これまで達成してきた目標レベルの少し高いストレッチ目標を置くことがポイントとなります。

Relevant(経営目標などに関連性のあることを)

自身の目標と会社の経営目標や組織部署の目標にどう貢献するのかを考えて目標設定することも重要なポイントです。目標を達成することで、どのような成果やメリットを生み出せるのか。例えば、目標を達成することで表彰される、褒賞金がもらえるなどのメリットがあるのなら、それらとの関連性も意識するようにしましょう。

Time-bound(期限を明確に設ける)

最後のポイントは、目標に期限を明確に設けることです。たとえ目標を設定したとしても、いつまでに達成するのか期限を設けていなければ、達成感を感じることが難しくなります。

何より期限がないことで、スケジュールが立てにくく、スピーディに行動に移すこともできず、モチベーションも上がりません。期限をしっかり決めて、いつまでに何をするかを明確にして、行動に移せるようにすることが大事です。

SMARTの法則を使って、具体的な「仕事の目標例」を職種別に紹介した記事もありますので、ぜひ参考にしてみてください。

PDCAを回して目標設定力を高めていこう

仕事における目標設定の考え方や方法について紹介してきましたが、実際は目標通りにいかず、途中でゴールが見えなくなってしまうことも少なくありません。

目標設定はPDCA(プラン、実行、評価、対策・改善)で言えば、P(プラン)の部分実際に実行して評価を行った上で、うまくいかなかった場合は、改善や対策を練り、目標をアップデートしていきましょう。

目標は一度決めたら、達成するまで変えてはいけないと思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。変化の激しい現代においては、むしろ環境変化に応じて柔軟に対応できることが大切です。達成可能なストレッチ目標を掲げて、PDCAを回すことで、目標設定力を高めていきましょう。

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粟野友樹氏組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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取材・文:馬場美由紀
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