東大が本気をだした! 大学発ベンチャー支援のメカニズムがコレだ!

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東京大学発のベンチャー企業の勢いが止まらない。2015年6月には、中国のバイドゥ(百度)がネイティブ広告事業を展開するpopIn株式会社を十数億円で買収したと発表。また、ミドリムシを培養する生産と研究活動で注目されている株式会社ユーグレナは、2015年4月にSMBC日興証券、株式会社リバネスと組んで、研究開発型ベンチャー支援のための20億円規模の新ファンドを設立したことを発表し、話題となった。

popInやユーグレナだけではない。経済産業省が2015年4月に発表した調査では、日本における平成26年度までの大学ごとのベンチャー創出数で、東京大学が2位の京都大学(84社)と100社以上の差をつけての1位(196社)となった(※)。なぜ東大から次々にベンチャー企業が生まれているのか。その背景に迫る。

※経済産業省「大学発ベンチャーの成長要因を分析するための調査 大学発ベンチャー創出数(大学別)」(2015年4月10日公表)より

大学内で“種”から“花”そして“実”まで育てるエコシステム

東京大学本郷キャンパスの一角にある、産学連携本部。この産学連携本部が、東京大学の起業支援の中心となっている。

産学連携本部で教授・イノベーション推進部長を務める各務茂夫(かがみしげお)さんは、東京大学のベンチャー支援の取り組みの特徴を「学生、教員、ベンチャーキャピタル、知的財産の専門家などが連携しながら、事業のPDCAサイクルを学内で回すことができる環境がある」ことだと言う。

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(産学連携本部 教授 イノベーション推進部長 各務茂夫さん)

学内で大学発ベンチャー育成のPDCAサイクルを回すことを可能にしているのが、産学連携本部を中心とした「三者連携の仕組み」だ。

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東京大学内には、大学全体を通じた産学連携体制の整備・支援を行う「東京大学産学連携本部」と、知的財産の管理を行う「東京大学TLO」、大学発ベンチャー向けのベンチャーキャピタル業務を行う「東京大学エッジキャピタル」が存在する。

この三者が緊密に連携することにより、大学内で生まれた発明や研究成果という“種”を発掘し、起業・事業化という“木”まで育て、社会還元という“実”を生み、さらにその“実”が新しい事業という“種”につながる……というエコシステムを確立しているのだ。

「東京大学では3つのベンチャー支援の組織が学内にあり、なおかつ密に連携していることが、多くの大学発ベンチャーを生むことにつながっているのではないでしょうか。これは他大学では見られない。」(各務さん)。

この「三者連携の仕組み」は、欧米におけるベンチャー支援の事例を参考にしつつ独自に作り上げた、“ベンチャー支援の東大モデル”と言えるものなのだそうだ。

企業が大学の資源に注目し始めた

東京大学でのベンチャー支援がさかんになった背景に、世界的なオープンイノベーションの流れがある。オープンイノベーションとは、企業の内部と外部のアイデアやノウハウ、人材などの資源を組み合わせることで、新しい価値を創り出す取り組みを指す考え方だ。

近年日本でもさかんになったオープンイノベーションの流れのなかで、大学の研究成果がビジネスの資源として注目されるようになった。「大学にもともとあった研究成果に、ベンチャーキャピタルやメンター(起業家に経営指導を行う職業)の人たちが目をつけ始め、大学発のベンチャーにお金が回りはじめたことが、注目される大学発ベンチャーが東京大学から生まれるひとつのきっかけになりました」(各務さん)。

重要なのは制度よりも“人のバトンの受け渡し”

ユーグレナやpopInなど、注目のベンチャーを生み出している東京大学のベンチャー支援。しかし「まだ成功とは言えない」と各務さんは付け足す。

たとえばシリコンバレーでは、1930年代後半にスタンフォード大学のフレデリック・ターマン教授が、教え子であったヒューレット氏とパッカード氏を見出し、ヒューレット・パッカード社の会社設立援助をしたことが、のちに多くのベンチャー企業がこの地で生まれるきっかけとなった。

日本でもシリコンバレーのようなベンチャー支援が生まれるには、制度ではなく、“フレデリック・ターマンからデイビッドパッカードへ”、さらに“デイビッド・パッカードからスティーブ・ジョブズへ”、といったような、“個人から個人へのバトンの受け渡し(イノベ―ターの連鎖)”が重要だと、各務さんは強調する。

「日本ではバトンの受け渡しは、ゲームの分野やITCの分野では進みつつあります。しかしライフサイエンスやエネルギー、バイオマスの分野ではまだ進んでいない。そこで今、ユーグレナを起業し現在も代表取締役をつとめる出雲社長がベンチャーキャピタルを設立するなど、バトンの受け渡しが今はじまっています。

その受け渡しが続いていかないと、シリコンバレーのようなエコシステムはできないでしょう。その点、東京大学は、バトンを受け渡す拠点としての役割を持っているかもしれません。」(各務さん)

1930年代にターマン教授やヒューレット・パッカード社を通してスタンフォード大学で始まり、やがてAppleやGoogleにつながった“個人から個人へのバトンの受け渡し”というベンチャー支援のエコシステムが、ここ日本でも東京大学を拠点に始まりつつある。ひょっとしたら十数年後、第2のGoogleになる企業が、本郷で産声をあげているのかもしれない。

監修:リクナビネクストジャーナル編集部

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