出会うときにはすでに友達?“日本ならでは”の恋愛マッチングサービス最新事情

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嗚呼、この夏もとうとう恋人ができなかった…とお嘆きのあなた。

恋人を探すときに「友達の紹介」や「合コン」に並ぶ選択肢となっている「マッチングサービス」をご存知でしょうか。

「出会い系」という言葉はいまや死語。結婚を目的とした「出会い」や「恋愛」は、いま形を変えつつあります。

とはいえ、実際にマッチングサービスを利用するには不安もあるし、勇気がいりますよね。そこで今回は大手恋愛・婚活マッチングサービス「pairs(ペアーズ)」を運営する株式会社エウレカの取締役CSO・中村 裕一さんに、日本のマッチングサービスの現状、そして「恋愛」提供ビジネス事業者がどのような取組みを行っているかについて伺いました。

アメリカでは3組に1組が「オンラインデーティング」で出会っている

-「マッチングサービス」事業は、日本ではネガティブイメージが強いですよね。あえてpairsに取り組んだのはなぜだったのでしょうか?

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私たちエウレカが自社でサービス展開する事業領域をリサーチしていたとき、米国では「オンラインデーティング(online dating)」がすでに一般的であるという事実を知りました。

米国では3組に1組がオンラインデーティングで知り合って結婚しているというデータの裏付けもあります。さらに、ベジタリアン専用やバツイチ専用など、特定のコミュニティに特化したマッチングサービスが次々と誕生しています

マネタイズの仕組みもできており、2013年のデータですが市場規模はおよそ20億ドル。これは、過去4年で2倍に成長している数字にあたります。

リサーチを進めるうちに、「これだけのニーズがあるのだからこの分野のサービスを日本で成功させる方法はないだろうか?」と考えるようになったことがそもそものきっかけです。

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オンラインマッチングサービスが日本で受け入れられた3つの理由

-現在日本でマッチングサービスが受け入れられた理由は、ずばり何でしょうか?

日本において、いわゆる「出会い系」サービスには強いネガティブなイメージがあるにもかかわらず、利用しているユーザーが絶えないという事実があります。つまり、安心で安全なサービスを作れば、日本でもニーズは必ずあると考えました。

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そのサービス実現のため、以下のようなポイントがあります。

ポイント(1) Facebookとの連携

Facebookアカウントをログイン認証に活用することで、「友人に知られる」というユーザーにとっての登録障壁を排除することができます。

またマーケティング戦略においても、Facebookを軸としています。「みんながごく自然に使っている」ということもユーザーの安心感を後押しすることから、Facebookページを活用することで純粋なpairsユーザーだけでなく、多くの潜在ユーザーとの接点を持つようにしています。

また、恋愛をするうえで、相手のバックグラウンドを知りたいと思うのはごく自然なことだと思うので「相手に自分のFacebookページを教える」機能を付けています。Facebookなら顔写真も載っているし、どんな友達がいるかも分かる。それで相手を深く知って、よりよい恋愛につなげていただきたいですね。

もちろん、そうするとユーザーがサービスから離脱してしまう懸念もでてきます。

しかし、私たちが実現したいのは「ユーザーからいくらお金を取ろう」ということではなく、ユーザーの一人ひとりがマッチングして入籍して、そして結婚式などで二人の出会いのきっかけとしてpairsの存在をご紹介いただくこと。そして、そこでより多くの人々にpairsの存在を知っていただくことが、結果的にサービスを成長させると思っています。

ただし、マッチングしてすぐにLINEのIDやFacebookのアカウントを簡単に教え合うのは危険です。

例えばpairsの場合、相手にFacebookアカウントを公開できるのは、pairs内でのメッセージのやりとりが2往復以上であることを条件としています。pairsからLINEやFacebookへやりとりの場を移してしまうと、私たちは違反行為やトラブルを取り締まることができません。監視によって危険要因を早めに取り除くことができますので、十分な信頼関係が築けるまではサービス内でのコミュニケーションをおすすめしています。

ポイント(2) 手厚いカスタマーサポート

投稿内容の監視やカスタマーサポートに注力し、そこにかける予算も極力削らないようにしています。最初の一年間は赤字を覚悟して、なによりユーザーを守ることを最優先に投資したことが、pairsの安心・安全なサービス作りのベースとなっていますし、現在でもその考え方は変わりません。

24時間体制でメッセージや画像投稿を監視・審査し、ユーザーからの問い合わせにも365日対応しています。

ポイント(3) コミュニティ機能の充実

恋愛とは出会ったタイミング次第で、どんな人も恋に落ちる可能性があると思っています。逆に、どんな美男美女でも、どんなに勤務地や居住地が近くても、タイミングや相性が合わなければ決して恋愛には発展しない。pairsの「コミュニティ機能」ではそうした出会いのチャンスを具現化しています。

例えば、あまり一般的に知られていないアーティストのコミュニティに参加登録したとします。するとそこで、普段の日常生活や、「音楽好き」という大きなくくりでは出会えなかったユーザー同士が知り合う接点が生まれます。そして、それがきっかけで「僕たち気が合うね」と、自然な流れで恋愛に発展するかもしれないですよね。

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pairsサービス内の「コミュニティ機能」

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「真面目な恋愛」ができるマッチングサービスを選ぶときのポイント

-マッチングサービスにおいて起こり得るトラブル事例と、その防止策について教えていただけますか?

恋愛に関するトラブルは、「オフライン」「オンライン」を問わず、いくつかあると思います。

「お金を貸したが返してくれない」といった金銭貸借、あるいは高額な商品の購入を迫られる、購入させられるなどの金銭関連のトラブル

またストーカーなどの迷惑行為、そして暴力や物を壊されたなどの被害事故も可能性としては考えられます。

例えばpairsでは、こうした万が一の事態に備え、一部有料プランに登録の方には、弁護士相談費用をサポートするサービスを整えています。(最大10万円まで)

-こうしたトラブルを避けるために、マッチングサービスを選ぶ時にチェックすべきポイントはありますか?

まず、オンラインを特別な出逢いだと思わない事です。

普通にオフラインで出逢ったお相手に、簡単に「お金を貸したり」「その方から物を買ったり」しますでしょうか?普通しませんよね?オンラインも、まず1つの恋愛のきっかけにすぎない。その手段が広がったと利用者の方には思っていただけたら嬉しいです。

その上で注意すべきなのは、サービス運用企業が真面目な恋愛・婚活を目的としているサービスかどうかという点です。先ほど、「特別な出逢いと思わない」とお話したばかりで矛盾するようですが、オンラインだからこそ「安心」というのも事実です。

pairs含め、真面目なオンラインデーティングは、身分証提示、年齢確認、本人認証(facebook ID含む)、投稿監視などに力をいれています。

こういった、安心・安全の担保は、実際オフラインの恋愛にはありません。

まだまだ認知はしていただけていないと思いますし、これからも安心・安全の実現のための努力が必要ですが、現時点でも実は、オフラインの出逢いに比べてオンラインの恋愛の方が安全だと僕らは思っています。

それに対して、従来の「出会い系サイト」と呼ばれるものは、「オンラインデーティング」とは全く異なるサービスで、こういった監視業務や、認証に力をいれておりません。そのためユーザーの匿名性が高く、サクラや業者が多いという特徴があります。先ほど挙げたトラブルに繋がる可能性が高いです。

日本人にはテキストコミュニケーションのスタイルが合っている

-利用ユーザーの傾向についても聞かせてください。

pairsのユーザーは、都市部に住む20代後半から30代前半が一番多いですね。真剣に結婚を視野にいれている方や、そこまで切羽詰まって婚活をしているわけではない方。一方で10代や20代前半のような「とりあえずデートしたい」「友達がほしい」というライトなモチベーションの方も利用しています。

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人によってやりとりするメッセージの回数やテンポはまちまちですが、pairsで知り合った方々は1〜2回目のデートでお付き合いを決める傾向にあるようですね。

これは、実際に顔を合わせる前に、1週間から1ヶ月間ほどのメッセージのやりとりを通して、お互いの趣味や価値観などをある程度理解し合っているから。なので、顔を合わせる頃にはもうすっかり「知っている人」になっています。また、こうしたテキストコミュニケーションが、慎重な日本人の気質に非常に合っているのだと思います。

オンラインデーティングサービスのリブランディングが、日本の未婚化・晩婚化・少子化対策に

-とはいえ、まだマッチングサービスに対し警戒心を持っている人は多いと想います。そうした方々に向け、今後取り組んでいくべき課題はありますか?

オンラインデーティングサービスを通じた出会いをオープンにすることが、もっと当たり前の文化を作っていきたいと考えています。そのためには私たちがユーザーと綿密にコミュニケーションを取り続けて、信頼関係を築いていくことが必要不可欠です。

私たちの目標は、オンラインデーティング分野におけるビジネス展開のみならず、将来の日本社会への貢献でもあります。インターネットでの出会いのチャンスも積極的に利用しないと、未婚化・晩婚化・少子化対策も難しいところまで来ているのではないでしょうか。そのためにも、オンラインデーティング業界全体のブランディングも見直していきたいですね。

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プロフィール

中村 裕一(なかむら ひろかず)

株式会社エウレカ取締役CSO。1986年11月14日生。 2011年、横浜市立大学大学院を中退。その後株式会社エウレカに入社し、大手化粧品企業向けの口コミ広告事業に従事。2012年、同社マーケティング事業部のマネージャーとして、企業のFacebookを活用した集客支援を行う。pairsの立ち上げとともに、Facebookページの集客事業の立ち上げ、1年間で250万人を超えるファンを獲得、リーチ数で国内No.1ファンページに育てる。2014年、執行役員CSOに就任。2016年、取締役CSO就任。

<WRITING>伊藤七ゑ <PHOTO>秋山まどか

編集:鈴木健介
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