【予約殺到!「ななつ星in九州」】客が熱狂するクルーズトレインの魅力とその経済効果に迫る!

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大人気のクルーズトレイン「ななつ星in九州」。高額な料金にもかかわらず、定員にたいして約20倍もの申し込みが殺到している。そんな「ななつ星in九州」の魅力とは、いったい何なのか。JR東日本・JR西日本で予定されているクルーズトレインとともに、その経済効果についても考えてみたい。

■“短時間・利便性”とは真逆に位置する「ななつ星in九州」

2013年10月15日、日本初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」(JR九州)が運行を開始。

この時期を前後して、日本の鉄道は大きな局面を迎えていた。2011年には九州新幹線が全線開業、そして続くようにして2015年には北陸新幹線も開業となった。この新しい2線によって、東京駅〜鹿児島中央駅間は最速で「6時間半」、東京駅〜金沢駅間は最速で「2時間半」を切るなど、鉄道のスピード化にさらに拍車がかかることとなった。

しかし、「ななつ星in九州」はこのようにスピード化された鉄道の対極に位置している。その運行路線は以下の二つ(※2015年5月現在)。

  • 1泊2日コース 博多~有田〜長崎~(列車泊)~阿蘇~由布院~博多
  • 3泊4日コース 博多~由布院~(列車泊)~宮崎~都城~隼人(旅館泊)~鹿児島中央~鹿児島~(列車泊)~阿蘇~博多

料金は1泊2日で210,000円~、3泊4日で480,000円~(2名1室利用時1人あたりの旅行代金※2015年5月現在)と、豪華客船のクルーズ同様に高額である。

先を急ぐことなく、観光地をのんびりと周遊することができ、車窓の景色を眺めながらその土地ならではの食事を楽しむ。まさに、「ななつ星in九州」は起点から目的地までの速やかな移動を目的とした、現代の鉄道が持つ常識を根本から覆す乗り物として登場したといえる。

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■「ななつ星in九州」は究極のリゾート列車だ!

新幹線網の拡張により、短時間で日本各地が結ばれるという利便性はやはり捨てがたいものがある。しかし、鉄道のスピード化はその代償として、旅の醍醐味でもある“道中での情緒”を減少させてしまった。かつての列車の旅には、過ぎ去りゆく車窓の景色を眺め、食堂車で食事をするなど、旅の過程を楽しむ「ゆとり」があった。しかし現在において、新幹線の車内でどれだけの乗客が車窓に目を向けているだろう。スピードを最優先にした鉄道は、少しでも速く、遠くに乗客を運ぶという移動手段と化してしまった。

こうした状況の中、なぜ「ななつ星in九州」には予約が殺到しているのだろうか。

九州は人気観光列車の宝庫ともいうべきエリアである。九州新幹線の開業にともなって、観光を目的とするリゾート列車を積極的に導入し、沿線各地と協力して、観光客の誘致・もてなしをしようと努めてきた。こうした努力は着実に実を結び、「ななつ星in九州」の成功にも繋がることとなった。

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■最高のサービスに美しい風景…まさにそこは非日常の世界

これだけの人気となった「ななつ星in九州」の魅力を探ってみよう。

まずはその希少性だ。1回の運行で乗車可能なのは最大で14組30人、2015年3月~9月の平均競争力が22倍という狭き門がさらにプレミア感を演出している。最後尾のDXスイートAは、最高倍率が268倍という数字を記録したほどの人気ぶりだ。

しかし、希少性だけでこの列車の人気を解き明かすことはできない。その秘密は、クルーズトレインというコンセプトの中にこそある。

「ななつ星in九州」の存在そのものが、非日常の世界にあるのだ。

高い倍率の末に手に入れたプラチナチケット。

乗車前にはドレスコードの案内等が封入されたご案内が届くとともに、クルーズトレインツアーデスクの担当者から旅の目的やアレルギーの有無、旅の間に聴きたい曲のリクエストなどのお伺いやご案内の連絡が入る。この時点でゲスト達は優雅なクルーズトレインの旅に思いを馳せて、胸を高まらせることだろう。

そして待ちに待った出発日。博多駅の専用入口からレッドカーペットを経て「ななつ星in九州」に乗り込んだ瞬間から、目の前には今までの列車の概念を超越した空間が広がる。

数日間を過ごす列車内の部屋は「懐かしくて新しい」をコンセプトとした和洋折衷で、きらびやか過ぎず、品があるウッド調の落ち着いた雰囲気に包まれている。壁や床には木が使われていて、車窓を見なければそこが列車であることを忘れてしまう。この旅における楽しみの一つでもある食事は、皆が集うラウンジカーやダイニングカーで味わう。提供される料理は地元九州を中心に厳選された食材を用いており、さらには九州を代表する料理店のシェフが自慢の腕をふるう。

クルーによる「家族のように寄り添う」おもてなしにプラスして、車窓からは九州ならではの美しい風景が広がり、その勇壮な景色も眺め楽しむことができる。ただ旅をするだけではこの二つを同時に味わうことは難しい。「ななつ星in九州」は、ゲストを日常から隔離された世界へ誘い、鉄道で旅する喜びを心ゆくまで堪能させてくれるのだ。

■「ななつ星in九州」に続くクルーズトレイン続々登場!

「ななつ星九州in九州」の成功はクルーズトレインという新たな市場を創出し、同じJRグループ各社にも大いに刺激を与える結果となったようだ。JR東日本では17組限定の豪華寝台列車「トランスイート四季島」、JR西日本も30人程度限定の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞鳳」の運行をともに2017年春から予定している。

どちらもまだその詳細に関してはイメージ画像の発表程度にとどまり、運行ルートも明らかにはしていない。しかし、路線沿いの地域との連携を密にし、観光スポットに立ち寄っての観光を含む、「クルーズトレイン」として計画されているようだ。

■クルーズトレインがもたらす経済的効果は計り知れない

「ななつ星in九州」がもたらす経済効果については様々な意見がある。

1回の定員が30名のため、年間100回運行しても売上は5億円程度にとどまる。約3,400億円の売上高を持つJR九州(2013年3月連結決算)としては経営の核になりえない。それどころか、30億円という総工費や人件費などを考えると赤字も覚悟の上だ。それはこれからクルーズトレインを運行しようとする他のJRグループにしても同様だろう。

では、なぜJR各社はクルーズトレインに力を入れるのか。それは、「ななつ星in九州」そのものを観光資源として、観光客を九州へ誘致する広告塔のような働きを持たせることができるからだ。この列車を通じて九州の文化や伝統工芸などを多くの人に知ってもらい、九州へ訪れる機会をつくること。そうすることであらゆる観光産業に与える波及効果を狙っているのである。これらがしっかりと実践できればその経済効果は計り知れないものになるだろう。そしてクルーズトレインの確固たるスタンスが築かれるのではないだろうか。

さらにクルーズトレインには、外国人観光客を取り込む狙いもあるようだ。欧米の富裕層は日ごろから船舶や鉄道のクルーズ文化に慣れ親しんでおり、クルーズトレインの客層としては最適ともいえる。彼らの口から伝わる「観光地」としてだけでなく「文化」としての日本の素晴らしさは、それだけで大きな宣伝効果を生むことだろう。

日本初のクルーズとしてだけでなく、鉄道にも観光にも様々な影響を与えている「ななつ星 in 九州」。クルーズトレインとしてだけでなく、日本における観光そのものにも風穴を開けるかもしれない。今後も変わり続けるであろう、日本におけるクルーズトレインの動向に注目していきたい。

画像提供:JR九州

監修:リクナビネクストジャーナル編集部

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