上司に相談、どう切り出す?「進捗」「悩み事」「退職」内容別の伝え方を解説

新人や若手のビジネスパーソンにとって、忙しそうな上司に質問や相談はしづらいもの。そこで、上司に相談するかどうかの見極めや、相談に適したタイミングや声かけ、「仕事の進捗」や「悩み事」などケース別の注意点について、キャリアコンサルタントの粟野友樹さんにお話をうかがいました。

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基本的に上司は「困ったら相談してほしい」

若いビジネスパーソンの中には、「上司が忙しくて声をかけづらい」「自分で考えろ、と言われそうで相談しにくい」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?

そういう方に知って欲しいのは、基本的に上司は「困ったことは相談してほしい」と思っていることです。なぜなら、目標を達成するために、組織全体の業務をスムーズに進めることが上司の役割であり、そのためには「部下が何をしているか」「今どのような状況にあるか」を把握することが不可欠だからです。特に、経験の浅い社員はわからないことも多いので、「わからないまま進めてミスをするよりも、早めに相談して欲しい」というのが本音でしょう。
相談をすることは、自分が疑問を解消するためであると同時に、上司のためでもあるのです。ですから、忙しそうに見える上司に対しても、質問や相談を遠慮する必要はありません。

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上司に相談する前に考慮したいポイント

とはいえ相談をする時は、相手にあまり負担をかけない配慮も必要です。相談するかどうかの判断やタイミング、声かけなどのポイントをご紹介しましょう。

自分で解決できることかどうかを判断する

言うまでもありませんが、上司に聞くまでもなく調べればわかりそうなことは、まず自分で調べて、考えてみるのが基本です。とはいえ、なかなか結論が出ない問題に直面すると、「自力で解決すべきか?相談するべきか?」と迷うことはよくあります。その場合は「自分が求められている成果を出すことができるか」を基準に判断するといいでしょう。
例えば、ある若手の営業職が、コンペで行う顧客への提案を考えているシーンを想定してみます。

  1. 自分で解決行動がとれる
    「過去の先輩の提案事例が活用できそう」「もう少し考えれば、自分で提案のストーリーが描けそう」
  2. 自分でも解決行動を取れるが、他の方法も知っておきたい
    「過去事例からでも提案できそうだが、上司のアドバイスを聞けば新たな方向性が見つかるかも」
  3. 自分では解決行動がさっぱりわからない
    「前例のない提案で、自分も顧客理解が浅いため、どうストーリーを描いたらよいかわからない」

もちろん「3」なら、素直に上司にアドバイスを仰ぐしかありません。一方で、「2」のように他の可能性を探りたい場合だけでなく、「1」のように一旦は自力で解決できていても、「この仕事で求められている成果が十分に出せる」という確証がないとすれば、どの場合も上司に相談していいのだと考えましょう。

話を切り出すタイミングを考える

上司に声をかける時は、可能な範囲で、上司に時間的・精神的な余裕がある時間帯を選びましょう。オフラインなら、上司が忙しそうに見えないタイミングを見計らうこと。オンラインの場合も上司のスケジュールを確認して、忙しくない時間帯にチャットを通じて声をかけるなどすればいいでしょう。なお、いずれの場合も会議や外出の直前などは避けた方が無難です。

ただ、トラブル対応や緊急の場合は、上司がどんなに忙しくてもすぐに相談しましょう。また、「今、相談をしなければ仕事が進まない」という場合も同様に、時間のロスを避けることを優先するべきでしょう。

声をかけて相談する時間を確保する

上司に声をかける時は、いきなり事情の説明を始めたりせず、「○○の件でご相談したいことがあるのですが」と、最初に要件を伝えることが大切です。続いて「少し急ぎなので、今○分ほどお話はできますか?」「後ほど○分ほどお時間をいただけますか?」などと投げかけるといいでしょう。

実は、仕事の懸案事項について若手の社員が考える重要度・緊急度と、会社や上司の判断は、一致しないことが往々にしてあります。つまり、自分では緊急事項だと思っていても、上司の判断では優先度が低いこともあれば、その逆もあるのです。そのため、声かけ時は相談事の概要のみを伝え、「5分くらいなら今話せます」「後で相談したいので、今週中に会議室を押さえてください」といった、上司の判断に委ねるのがスムーズでしょう。

仕事上の悩みなど他の人に聞かれたくない相談の場合は、「少し相談があり、会議室で○分ほどお時間をいただけませんか?」と相談内容をぼかして誘導するか、後述するようにメールで最初の声かけをするのがおすすめです。

メールやチャットで相談する場合

チャットで声をかける場合も基本的には対面と同じ。「○○の件で相談があります。今、お時間はありますか?」というように伝えましょう。または「○時から○分ほど(スケジュールが空いているようなので)お話できますか?」と許可を取ってもいいでしょう。

出張や会議などで不在が多く、直接声をかけるのが難しい上司には、メールで相談するのも一つの方法です。「○○と□□のどちらがいいか判断を仰ぎたい」など簡潔な内容であれば、メールの交換だけで解決することも多いでしょう。一方で、事情説明が長くなる場合や、複雑な問題について検討したい場合は、対面で話す方が効率的です。メールで概要を伝えた上で、「つきましてはミーティングのお約束をしたいのですが」と切り出しましょう。

また、人間関係やキャリアに関する悩み事なども、メールやチャットで「○○の件について」と概要を伝えた上で、対面で相談する日時のアポを取ればスムーズでしょう。

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上司があなたの状況を理解しやすくなる相談のポイント

忙しい上司に効率よく相談をするには、以下の3点を意識して話すといいでしょう。ここでも、コンペの提案内容に関する営業職の相談を例にして解説しましょう。

結論から簡潔に伝える

最初に「○○の件でご相談があります」と結論(相談内容)を端的に伝え、自分と上司の目線合わせをします。続けて何が課題なのかを、事実ベースで具体的に伝えていきましょう。

例:「A社の〇月〇日のコンペについて相談です。60%ほど準備できましたが、肝心の提案のストーリーが未完成です。できれば3日前に完成させて、チェックしてもらいたいと考えています」

自分なりの考えや意見を述べる

相談する時は、上司に答えを出して欲しいと丸投げするのではなく、基準となる自分なりの考えを提示することが大切です。例えば「○○と考えていますが、いかがでしょうか」のように伝えると、上司はYESかNOだけで答えることもできるでしょう。

例:「大まかな提案の方向性としては○○という形で考えています」
「提案の質を上げるために、□□のような資料やデータも必要ではないかと考えています」

何をして欲しいかを明確にする

上司に対して、具体的にどのようなリアクションをして欲しいかを伝えましょう。「○○以外によい選択肢はありますか?」「□□という考えについてアドバイスお願いします」など、自分が相手に期待することを明確にすれば、上司もより的確な対処がしやすくなります。

例:「提案の方向性はこれで進めてよろしいでしょうか」「○○と□□ではどちらの案がいいでしょうか」
「この提案の方向性に関して、ゼロベースでご意見をいただけますか?」
「課題解決に向けて、情報提供などのサポートをお願いしたいです」
「もう一度顧客に聞き取りをするなど、他に考えられる提案書作成のアドバイスはありますか?」
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内容別・相談方法のアドバイス

「仕事の進捗」「人間関係の悩み」など具体的なケース別に、上司に相談する場合のポイントについて解説します。

仕事の進め方について相談するとき

まず、最初に上司から仕事の指示をされたタイミングは、集中的に質問をするよい機会です。わからないことはどんどん確認し、その場でクリアにしておきましょう。

それでも仕事を進めるうちに、新たな疑問が沸いてくることがあります。わからないことを放置したまま最後まで進めてしまい、方向性が違っていたとすれば、最初からやり直しになる事態を招くことも。それを避けるためには、指示された仕事が2割〜3割ほど進んだ時点で、「この方向性でよろしいでしょうか?」と一旦確認にいくことをおすすめします。
ただ、進捗度合いに関わらず「相談しないと仕事が先に進まない」状況になった時は、上司が忙しそうにしていてもその場で質問し、確認していくことが大切です。

人間関係の悩みについて相談するとき

職場にいじめやパワハラなどの問題があると、業務に支障が出るため、上司への相談を躊躇する必要はありません。なるべく深刻な状況になる前に、早めのタイミングで相談をするのが望ましいでしょう。

相談の際は感情的にならず、また個人攻撃になりすぎないよう、「何が起きているのか」を事実ベースで伝えます。もし自分以外にも困っている人がいるようなら、合わせて伝えるといいでしょう。
こうした相談があった場合、上司は公平な判断をするため、部内の他の人にも事実関係を確認してから、フィードバックすることが多いようです。問題を認識してもらえるだけでも前進と言えますが、チームメンバーの変更や配置換えなどの解決策を希望する場合は、一言伝えておくといいでしょう。

仕事への不満について相談するとき

働き方や仕事への不満も、上司に相談できることの一つです。部下のパフォーマンスを上げることは管理職の重要な役割であり、力を発揮しづらい環境であれば、会社や上司として対応する準備があるからです。ただし相談をする際は、不平不満や愚痴を並べるだけにならないよう、自分なりに状況を整理し、具体的な希望を伝えられるようにしておくことが大切です。

例えば、仕事量が多くて辛いケースでは、「主な業務のうち○○に慣れておらず□時間かかる」「○○の負担が減れば、他の仕事でパフォーマンスを発揮できる」など、客観的に伝えられれば、上司も対策がしやすいでしょう。また、仕事で成果が出せないことに悩んでいる場合も、「○○業務で苦労しているのでサポートが欲しい」「ミスマッチを感じるので別部署に異動したい」など、希望を具体的に伝えることが大切です。
仮に希望が100%実現しなかったとしても、相談したことには意味があります。今後の仕事の振り方や異動についても、上司はこの相談を念頭に置きつつ、キャリアについて考慮してくれるかもしれません。

退職について相談するとき

退職の相談は直属の上司にするのが原則ですが、辞めるかどうかを迷っている時点で、迂闊に話すことはおすすめできません。どのような理由で退職を考えたとしても、上司に話せば、ほぼ間違いなく引き止められることになるでしょう。また、説得されて退職を考え直したとしても、一度退職を口にしたことで要注意と見なされ、結局は会社にいづらくなる可能性が高いからです。

したがって、退職については、決心したうえで上司に伝えることが大切です。「退職のご相談でお時間をいただきました」と切り出しても、実質的には相談ではなく、退職を決心した「報告」になると考えましょう。「これまで大変お世話になりましたが、○月○日に退職したく、○日までに後任を探していただくことは可能でしょうか?」というように、毅然とした態度で臨むことをおすすめします。

粟野友樹さん

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
粟野友樹さん

大学・大学院にて人材教育ファシリテーションの経験を積み、大学院を修了後、GMOインターネットグループ、外資系金融機関、パーソルキャリアを経て2018年より現職。これまでに約500人の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

取材・文・編集:鈴木恵美子
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