仕事で信頼関係を築くにはどうすればいい?信頼関係を構築するためのポイント紹介

ビジネスにおいては信頼関係が重要と言われます。しかし、信頼関係をどう築けばいいのか、何から着手すればいいのかわからない…という人は多いのではないでしょうか?そこで、信頼関係とは何なのか、どのように構築すればいいのか、人事・採用コンサルタントの曽和利光さんに詳しく伺いました。

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仕事での「信頼関係」とは?

信頼関係とは「思考や行動の予測可能性が高い」状態を指します。
例えば、「あの人にこの仕事をお願いしたら、きっとこれぐらいの成果を出してくれるだろう」「あの人ならばこんな場面ではこう考え、行動してくれるだろう」と確度高く想像できることが、仕事において信頼できている状態だと言えます。

すべての仕事は基本的に、分業で成り立っています。メンバーと役割分担しながらプロジェクトを進めたり、同僚と協力し合いながら仕事を進めたり、クライアントから業務を発注されたり社外ブレーンに発注したり…と、必ず誰かと関わり、協力し合いながら進めています。

ただ、第三者に仕事を任せる場合、任せた相手がどう仕事を進めているのか、進捗がどうなっているのか、クオリティはどのレベルかなど、途中経過を見ることはできません。本人から進捗報告があったとしても、“実際のところ”はブラックボックス化しています。

この「ブラックボックス化」は分業する以上必然なのですが、そこで必要になるのが先に挙げた「予測可能性」です。

例えば「この人ならば納期までに確実に仕上げてくれるだろう」と予測できれば、ブラックボックスの中が見えなくても信頼し、安心して任せ切ることができます。逆に信頼関係がない=予測可能性が低い場合は、仕事を振ったものの納期や精度、進捗状況などに不安があるから、たびたび「あの仕事は大丈夫?」と確認したり、定期的に進捗報告をさせたりと、余計なコミュニケーションコストがかかることになります。

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信頼関係があるとどんなメリットがある?

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信頼関係が築かれていると、当然ながら仕事においてさまざまなメリットが期待できます。

キャリアにつながるいい仕事が回ってくる

前述のように、人は他人に仕事を任せるとき、自分の手を離れコントロールできなくなることに多少なりとも不安を感じるものです。それが大事な仕事、責任の大きな仕事であるほど不安は大きくなります。

一方で、大事で責任の重い仕事は、それだけやりがいがある面白い仕事であり、大変ながら成長できたり勉強になったりと、自身の糧になります。信頼関係があればそういう仕事も、信頼し任せてもらいやすくなります。

例えば、上司と信頼関係が築けていれば、「〇〇さんならやり切ってくれそうだ」という予測可能性のもと、「大変だけれど面白い仕事」を振ってもらいやすくなるでしょう。クライアントとの信頼関係があれば「彼に任せれば大丈夫そうだ」と、よりクライアントの今後を左右するような責任ある仕事を発注されたり、より大きな額を発注してくれたりするでしょう。

人は仕事を通して成長します。どんな仕事を任せてもらえるかで5年後10年後のキャリアが変わります。信頼関係を築き、今後のキャリアにつながるような仕事を任されることで、スキルアップ、キャリアアップのスピードが速まることも予想されます。

無用なチェックが入らず、生産性が上がる

信頼関係がないと、任された仕事に対して頻繁にチェックが入ったり、「途中経過を見せて」と言われたり、たびたび進捗報告を課せられたりします。このコミュニケーションコストはバカになりません。時間もかかるし、労力もそがれます。
また、集中しているときに声を掛けられたり、キリの悪いところで急にチェックが入ったりすると、業務効率も悪くなります。

信頼関係ができていれば、発注側は成果や進捗に不安を抱くことなく「でき上がるのを待つだけ」の状態になるので、このようなコミュニケーションは不必要になります。その分のリソースを仕事に充てることができるので、生産性も上がるでしょう。

提案が通りやすくなる

よく「誰が言ったかではなく、何を言ったかが大事」などと言いますが、ビジネスにおいては決してそうとは言い切れません。信頼関係で言えば、「誰が言ったか」のほうが重要であるケースが多いと思います。

よく「ウチの上司はあの人の意見は聞くのに、私の意見や提案は全然聞き入れてくれない。えこひいきしている」などという不満を耳にしますが、おそらくえこひいきではなく、信頼関係が大きく影響していると思われます。

上司からすれば、信頼できていない人からの意見や提案は、不安要素だらけです。ファクトや事例、根拠があるのか、どんな成果が見込まれるのかなどを一つひとつ確認する必要がありますし、そもそもその人が最後まで責任を持ってやり切ってくれるかどうかも未知数なので、ジャッジを下すまでにどうしても時間がかかります。
加えて、信頼関係が薄いが故に、事実確認などのコミュニケーションがうまく取れず、結果的に提案が通らなかったという可能性が高いでしょう。

一方、信頼関係が築けている人であれば、提案を裏付ける情報が少なかったとしても「この人ならば実績もあるし、責任をもってやり切ってくれそうだから任せてみるか」と、すんなり提案が通る可能性が大。自身の意見を通し、やりたい仕事に就くためにも、信頼関係は大切なのです。

有益な情報を聞き出しやすくなる

誰しも信頼できる人に対しては、大事な情報を提供してもいい…と考えるものです。その情報の対価として、大きなリターンが得られるだろうと予測できるからです。
例えば、営業担当者が信頼できる人であれば、「この人ならわが社にとってメリットの大きい提案をしてくれるだろう」と予測がつくので、自社の大事な情報も提供しようと思えるでしょう。

一方、まだ信頼できていない相手に対しては、必要以上の情報提供はリスクでしかありません。得られる情報が浅いと、クライアントに合った提案がしづらくなり、成果も上げづらくなり、ますます信頼が得にくくなる…という悪循環に陥る可能性もあります。

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仕事で信頼関係を築くためのポイント

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信頼関係をどう築いていいかわからない…という人は、次の3つを徹底してみましょう。これらは信頼関係構築の基本です。上司や同僚、クライアントと関係性を築きたい若手ビジネスパーソンはもちろん、部下の信頼を得たいリーダー、マネージャー層にも有効ですので、ぜひ実践してみてください。

「〇〇を△△までにやる」と約束し、それを守る

これまでご説明したとおり、信頼関係がある=思考や行動の予測可能性が高い状態を指すので、信頼を得たいのであれば「相手の予測可能性を高める行動」をとるのが効果的。「自分は〇〇をやる!」と宣言したうえで、「それを絶対に守る」を繰り返すことをお勧めします。
やると言ったことをきちんとやり遂げてくれる人だとわかれば、その人に対する予測可能性が高まり、信頼につながります。

ポイントは、自分から何をやるのか宣言して、それを絶対にやり遂げるという「有言実行」の姿勢を取ること。
例えば、「この仕事、ナルハヤでやっておいて」と言われたら「明日の12時までにやりますね」、「別の提案を持ってきて」と言われたら「〇〇に焦点を当てた提案を、3日後までに持ってきます」などと具体的に宣言し、それを実行すれば、徐々にポジティブな予測可能性が高まり、信頼関係が築かれていきます。
部下に対しても同様で、「チームでこの目標を達成しよう!」と明言して率先垂範する、「トラブルがあったら必ずフォローする」と伝えて徹底的にサポートする、などの行動を取れば、「有言実行で信頼できる上司」と思ってもらいやすくなります。

さらに言えば、宣言したことをさらに上回る行動ができれば、より早期に信頼関係が築けるようになります。
例えば、「明日までにやる」といって今日中にやる、「2つの提案を出す」といって3つ以上出す、など。相手の期待を超えた行動を重ねることで、信頼関係がより強固になると期待されます。

徹底的に自己開示する

自分に対する相手の予測可能性を高めるには、自己開示も効果的です。自分はどういう人なのかが伝われば、「この人はこういう場面で、このように行動してくれそうだ」とある程度予測できるようになるからです。
ぜひ自分から、仕事に対する思いや方向性、価値観などをさらけ出しましょう。できれば趣味や特技など、プライベートについても可能な範囲で開示し「自分を予測してもらうための材料」を手厚くするといいでしょう。

相手の心を開く際にも自己開示は役立つので、例えば新たなクライアントや新任の上司などには積極的に自己開示をしましょう。自身が新任リーダーとしてチームを任されるときも同様。自らオープンにすることで、相手も自分についての情報を話してくれるようになり、相互理解が進みます。互いの予測可能性が高まることで、強固な信頼関係へとつながっていくでしょう。

こちらから逐一進捗を報告する

「以前失敗をしでかしてしまい信頼関係を損ねた」などの理由で、現状ほぼ信頼されていない相手に対しては、こちらから徹底的に進捗報告することをお勧めします。

信頼していない人に仕事を任せると、任せた側は不安になりしょっちゅうチェックを入れてくる…と前述しましたが、先回りしてこちらからどんどん現状を開示してしまいましょう。それにより相手の不安感が薄れ、「この人は計画通りにきちんとやってくれる人だ」と徐々にポジティブな予測をしてもらえるようになります。

向こうからではなく、こちらが報告の主導権を握ることで、仕事のタイミングがいいところで報告できるようになるので、生産性を損ねることもありません。

信頼関係を築く際に注意したいこと

なかには信頼関係を築かなければ!と焦るあまり、先走ってしまう人が見受けられます。特に多いのは、「上司(もしくはクライアント)の手を煩わせないことが信頼につながる」と思い込み、「なるべく相談せず自分の力でやる」と決めて行動した結果、失敗してしまい余計に信頼を損ねるケースです。

信頼関係を築きたいのであれば、不言実行は避けるべき。「なんで事前に報告しなかったんだ!」と叱責され、その後は逐一行動を監視されることになる可能性が大です。クライアントであれば、あっけなく契約を切られてしまう恐れもあります。

たとえうまく行ったとしても、相談もせず勝手に行動したことで「この人の行動は予測できない」と不安感を持たれてしまい、信頼にはつながりにくいので注意が必要。「信頼関係を築きたいなら有言実行」を肝に銘じてほしいですね。

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人材研究所・曽和利光さん曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラル上司等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。最新刊『定着と離職のマネジメント』(ソシム)も話題に。

EDIT&WRITING:伊藤理子
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