「仕事が暇すぎる」という悩みを抱え、苦しんでいる人は少なくないようです。しかし、「暇すぎて辛い」という悩みは周りには理解されにくいケースもあり、なかなか相談しづらいものです。
そこで、仕事が暇すぎる状況を改善するための手段や暇な時間を有効に過ごすための方法について、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに伺いました。

「仕事が暇すぎて辛い」と感じる理由
「仕事がなくて勤務時間にやることがない」「早く時間が過ぎないかな…と思っている」など、会社にいながら、あるいは勤務時間中でありながら暇を持て余す日々が続くと、不安や焦りを感じるものです。そもそも、「暇」を辛いと感じる理由はどこにあるのでしょうか。
自分だけ仕事が暇で心苦しい
辛い理由の一つが「罪悪感」です。「周りはバリバリ働いて忙しそうなのに(自分だけ時間を持て余して申し訳ない)」「給料をもらって組織に属しているのに(それに見合った貢献ができなくて申し訳ない)」という思いが、暇をしんどいと感じさせているかもしれません。
何もすることがなくて暇疲れしている
やるべき仕事が次から次へとある状況では、自分で何をすべきかを考えなくても時間はせわしなく過ぎ去っていきます。一方、仕事がなければ、何をして時間をつぶすかを考えなくてはいけません。毎朝「今日も1日をどうやり過ごそう」と考えるのは、多くの人にとってストレスになるでしょう。
仕事にやりがいを感じられない
「仕事が簡単すぎてすぐに終わってしまう」「単調でつまらない」というケースもあります。また、やりたい仕事ではなかったり、自分じゃなくても誰でもできたりする仕事だと思う内容であれば、暇や退屈を感じてしまいます。
このままでは成長できないと不安になる
周囲との差を感じると焦りや不安が生じます。周りの社員、自分の部署以外のメンバーが忙しそうに働いていたり、学生時代の友人などが活躍していたりするのが見えると、「自分だけが置いていかれている」と感じてしまうこともあるでしょう。
また、自分が目指していたポジションや職種、働き方のイメージがある方は、そのキャリアプランとの乖離を感じ、「このままでは成長できない」と不安になってしまいます。
仕事が暇になる原因
少子高齢化による人材不足が社会的に取りざたされています。そんな状況の中で、なぜ「仕事が暇で辛い」状況が生み出されてしまうのでしょうか。その原因を考えていきましょう。
職場の仕事量が少ない
会社が抱える人材の数に対して仕事の量が少なければ「暇」が生じます。また、大きな組織で業務の縦割りが進み、細分化されているがゆえに、一人ひとりの仕事量や内容が少なく、単純作業になってしまっているケースもあるでしょう。
上司や先輩のマネジメント、人事による配置に問題がある
個人のスキルを活かせない仕事に就いたことで、やることがなくて暇を感じているのなら、マネジメントに問題があるともいえます。
また、仕事が簡単・単調すぎてすぐに終ってしまい時間を持て余しているケースは、仕事内容と個人の能力が見合っていないと考えられます。その人には、本来もっとスキルレベルの高い仕事を任せるべきであり、マネジメントや人事による適材適所が考えられていないとも考えられます。
担当していた仕事、専門領域がなくなった
さまざまな外的要因により、部署異動や職種転換をせざるを得なくなり、スキルを活かせなくなって暇になることもあるでしょう。
例えば、もともとあった事業部が売却されて、そこで活躍していた人がほかの部署に異動すると、持っていた専門知識や経験が不要となります。自分の強みを活かせない仕事内容に、暇でつまらないと感じることもあります。
会社の経営状態がよくない
会社自体の経営状況が悪ければ、そもそも仕事の発注がなく、業務が発生しません。計画していた事業が経営難などで頓挫してしまう場合も、そこで働く個人は「仕事がなくて暇」な状況に陥るでしょう。
「仕事が暇すぎる」を改善する7つの対処法
仕事が暇すぎる状況を改善するための方法を7つ、ご紹介します。
1.上司に相談して現状を共有する
「仕事が暇で辛い」と嘆いているだけでは、状況は改善しません。本気で改善したいのであれば、まずは上司に相談して現状を共有しましょう。業務量を増やしてもらったり、目標数値を今より高く設定してもらったりと、何らかの改善策を考えてくれるはずです。
また、上司に相談したうえで、社内の業務フロー改善や仕組みづくりなどといった、日々の業務に追われているとなかなか着手できない課題に取り組むのもいいでしょう。
2.周囲を手伝ったり、興味のある仕事に手を挙げてみたりする
上司に相談すると同時に、自ら仕事を見つけ、増やす努力をすることも大切です。忙しそうな先輩や同僚がいたら「今手が空いているので、何か手伝えることはないですか?」と聞いてみるといいでしょう。それが思わぬ学びにつながる可能性があります。
興味を持っている業務やプロジェクトがあれば、それらを狙って「手伝いたい」「サポートできることがあればやりたい」と手を挙げてみるのも一つの方法。暇な状況が改善できるだけでなく、やりたい仕事に関われる可能性があります。
3.ジョブ・クラフティングの考えを取り入れる
やりたい仕事ではない、誰でもできる仕事だという理由で「仕事が暇すぎる」と感じている場合、ジョブ・クラフティングという概念が効果的です。
ジョブ・クラフティングとは、自身の働き方を変え、主体的に取り組めるよう工夫することで、仕事のやりがいや満足度を高めること。例えば、「企画部門に行きたかったのに、営業に配属されてやる気が出ず、暇だと感じる」場合は、今の業務の中で企画に近しい業務を見つけ、積極的に関わるようにすれば、仕事そのものにやりがいを覚え、暇だと感じる機会も減るはずです。
実際、営業の仕事では顧客のニーズに合わせて提案内容を企画したり、最適なプレゼンの流れを企画したり、ターゲットとなる市場をリサーチしたりと、視野を広げれば企画の要素がたくさんあります。今の仕事への見方、向き合い方を変えるだけで、状況はがらりと変わる可能性があります。
4.異動や転職を検討してみる
社内に、自分のスキルが活かせそうな仕事や、今よりチャレンジができそうな部署があるのなら、人事に異動願を出すのも一つの方法です。
そもそも、上司や人事になぜ「暇」になっているのか、理由を聞くのも大切です。個人のスキルや業務姿勢に起因し、「今のスキルや知識量では仕事を任せられないので、より簡単な仕事をお願いしている」など、上司側に何らかの意図があるかもしれません。
任せてもらうためには、どうスキルアップすべきかを相談し、まずはその改善行動に取り組むのもいいでしょう。
経営状況の悪化や、正当な理由なく「暇」を押し付けられているといった場合は、転職活動を始めて外の情報を集めてみてはいかがでしょうか。ほかにも、副業や兼業で仕事を増やしたり、独立を検討したりとさまざまな選択肢があります。
5.業務外の時間にスキルアップのための勉強をする
資格取得や新たなITスキルの習得を目指して勉強を始めるのも一つの方法です。また、業務に直結しなくても、視野や人脈を広げる上で、社会人大学院に行く「リカレント教育(学び直し)」という選択肢もあります。
経営学、社会学、心理学、哲学など、すぐに役立たないかもしれない分野でも、時間にも心にもゆとりがあるときこそ学べる贅沢な時間とも考えられます。
6.プライベートを充実させる
「仕事は仕事」と割り切って、プライベートの充実を図ることで人生全体の満足度を上げるという方法も考えられます。
暇であることを有効活用し、定時で業務を切り上げて、趣味の活動や副業、ボランティアなど、やりたいことに打ち込んでみましょう。
プライベートが充実すれば、「仕事ももう少し頑張ってみよう」と仕事への活力も湧くかもしれません。プライベートな人脈から刺激を受け、新たにやりたいことが見つかる可能性も考えられます。
7.社内外で人脈を増やす
社内のセミナーや勉強会などに参加し、今まで接点のなかった社内の人と交流を持つのも有効です。
いろいろな人の仕事ぶりやキャリアビジョンなどに触れることで、「こんな働き方があったんだ」「こんな役割に就いてみたい」など仕事に対する視野が広がる可能性があります。異動希望を出す際のヒントにもなるでしょう。別の部署でロールモデルが見つかれば、目標が生まれ日々の仕事にハリが出るかもしれません。
社外の人脈拡大に注力するのも、視野が広がるのでお勧めです。仕事の前向きな取り組み方や、暇だと感じたときの対処法などを相談すれば、思わぬ視点からアドバイスをもらえ、発想が転換できるかもしれません。
仕事が暇でもやってはいけないこと
いくら仕事がなく暇だとはいえ、勤務時間内であることは変わりません。勤務中に私用のSNSを投稿・チェックしたり、ゲームで遊んだり、ネットサーフィンをしたりすると、企業が定める「就業規則」に反する可能性があります。
規則の内容として、以下のように明記されているところが多くあります。
- 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れない
- 正当な理由なく、私用で携帯電話他、通信機器での通話・メールなどを行わない
また、遅刻、早退、欠勤や、勤務時間中に私用で事業場から外出する際については、以下のような勤務ルールに関する項目が書かれていることが一般的です。
これらに反して、偽りのアポイントを入れて外出を繰り返したり、職場や業務から離れたままになったりすると、勧告や減給などペナルティが課されることもありますので、注意が必要です。
「仕事が暇すぎる」状況を前向きに捉え、今後のキャリアを見直すきっかけに
「暇や退屈が辛い」のは誰しも同じ。その状態を逃れようとあれこれやってしまうのが人の性です。哲学者の國分功一郎先生による著書『暇と退屈の倫理学』では、人類の歴史とともに興味深く説明されています。
ビジネスパーソンとして成長したいのに、暇である現状に焦りを感じているのであれば、前述のような対処法を実践し、現状を改善するために行動することをお勧めしますが、「暇なときはチャンス」と捉えることもできます。仕事に追われ多忙なときは、いわば他者や周りから動かされている状態ともいえますが、暇であればこそ、普段向き合えないことにもじっくり考えを巡らせることができるでしょう。
暇な状況をいったん受け入れ、「これまでの仕事やこれからのキャリアについて考えるいい機会」と前向きに捉えるのも一つの方法です。
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組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。