「仕事の目標が思いつかない」「仕事に無気力な状態」からの脱出法

仕事の目標が思いつかない、無気力なもやもやした状態から抜け出したいのに、目標設定の方法がわからない、そんな悩みを感じたことはありませんか。目標が見つからないときの対処の仕方、目標設定の方法を、目標実現のためのセルフマネジメントに詳しい大平信孝さんに聞きました。

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仕事の目標が思いつかない原因

周囲の人はそれぞれ目標に向かって邁進しているように見えるのに、「自分はなぜか目標が持てない、見つからない」。そんな思いを感じているとしたら、原因は2つ考えられます。

1つは、数値目標や達成期限などの目標を立てると、「実現しなければいけない責任や義務が生じた」という経験や思い込みがあって、無意識のうちに目標を立てることにブレーキがかかってしまうケースです。しっかり目標を立てることが、自分の足かせになってしまうのではないかという不安があるのです。

もう1つは、目標は自分で立てるものではなく、上から与えられるもの、指示されるものと捉えているケースもあります。実際、会社や上司から与えられた目標で手一杯でこれ以上、新たな目標を増やしたくないという方もいるでしょう。

どちらの場合も、自分の身を守るために能動的になれず、知らず知らずのうちに目標設定を避けてしまう。それは仕方がないことでもあるのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

目標設定と達成の成功体験を積み上げよう

目標を持つことは、人生を豊かにしてくれます。例えば目的地があることで、ゴールまでの道程をカーナビが示してくれるように、目標が明確になることで、前向きな行動の原動力になるのです。

そのためには、まず目標を設定したり口にしたりすることが、プレッシャーになるという先入観を払拭すること。受け身ではなく自分の意志で決めて動くことの充実感を知ることが大切です。

しかし、仕事の目標に対してネガティブな思いがあるときに、仕事で目標を見つけて自分自身を奮い立たせようと思っても、なかなか難しいもの。まずはプライベートな目標を立てて、自分の心と体を動かす練習をしましょう。

自分が好きで興味があることから始めればいいのです。例えば、「ジムに通う」「ハーフマラソンに参加する」「読書会に行ってみる」など、小さな行動目標で構いません。

「半年後にハーフマラソンに出る」という目標を立てたら、「今日1日はエレベーターを使わずすべて階段を使おう」「1週間で合計10キロ歩こう」「1カ月でまず21キロ歩ける足の筋肉を作ろう」など、目標を自分で決めて実行するサイクルを回しましょう。

プライベートで成功体験を積むことで、目標を立てることがプレッシャーになるという“目標トラウマ”から抜け出すきっかけになるはず。できない自分に注目するのではなく、できていることに注目すると、自分の「できる!」に気づき、「次もできそう!」につながっていきます。仕事での目標設定ができる自分に変わっていきます。

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仕事の目標を持つための4つのメソッド

業種や職種によって、仕事で求められるものは異なり、目標も違ってくるでしょう。「日々がやるべきことだけで終わってしまう」「ルーティン業務で充実感がない」「これといった成果が残せないまま時間だけ過ぎてしまう」などの思いがある人こそ、仕事での目標が必要です。

仕事での目標を持つためには4つの方法があります。

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初心に帰る

入社したきっかけや、当初の気持ちを思い出してみましょう。いくつかの企業があるなかで選んだこの会社で何をしたいと思ったのか、どんな活躍をし、自分はどんなことで社会に貢献したいと思い描いていたのか。日常の業務に紛れて忘れていた当時を思い出し、初心に帰ることで、自分らしい目標が見つかります。

また、入社してみて思い描いていたものと違う、希望していた部署ではなかったなど、理想と現実のギャップがある場合もあるでしょう。そんな場合も、今の自分の持ち場の中で自分が理想としていた姿に近づけるためには、何ができるかと発想できたら、新たな目標設定につながるのではないでしょうか。

学生時代の夢中を振り返る

学生時代に夢中になったことや、印象に残っていることなど、サークル活動やゼミ、アルバイトなどで、あのときの自分は頑張ったなと思えることを思い出してみましょう。

仕事でうまくいかないときや、もやもやと迷っているときに、かつて自分が乗り越えた頑張りや輝いていた場面を振り返ることで、どこを目指したらいいのか、どんなときに自分は頑張りが効くのか、目の前の山を乗り越えるための道しるべが見つけやすくなります。

モデルとなる人を見つける

あんなふうに働いてみたい、ああいう仕事の仕方を身に付けたいなど、自分にとって目標となる人物、モデルとなるような人を見つけることが、具体的な目標像を持つ一番の近道です。

モデルとなる人は、地域のコミュニティの中でもYouTubeの中でも、書物を通じて知った人でも構いません。「この取り組みはいいな」「こうしたやり方は真似したいな」と思ったものを目標にしたらいいのです。

実在する人物であれば、さまざまな場面でどう対処しどう行動しているのか観察することができますし、信頼関係がある相手なら、自分と同じくらいのときにはどんなことを目標にしていたのかを具体的に聞いてみることもできます。

1週間単位でプラス1を考える

仕事の目標設定で、一般的に言われるのはSMARTの法則です。

  • Specific(具体的に)
  • Measurable(測定可能な数値化して)
  • Achievable(達成可能な)
  • Related(経営目標に関連した)
  • Time-bound(期限を明確にした)

もっとシンプルな目標設定としてお薦めするのは、1週間単位で「こんなことができたらいいな」を1つ考えることです。

いきなり経営に目線を当てた目標を立てたり、ゼロベースから考えたりすることは、ハードルが高いもの。しかし、みなさんはそれぞれに与えられた仕事、分担している業務があるはずです。そのなかで、何かひと工夫する提案ができないかを考えてみてください。それを自分の目標としてチャレンジしてみればいいのです。

数値目標などが立てにくい管理部門や、仕事がルーティン化している部署だとしても、例えば、見積りを依頼する際のマニュアルを作ってみようなど、後方支援としてできることがあるはずです。

自分が今まで仕事をしてきていいなと思ったことや有り難かったことなど、人から受けたいい影響を、自分が他の人に与えるとしたら何ができるかを考える。現状からプラス1の目標が、ルーティンの仕事も、もっと面白いものにしてくれます。

目標の達成度を上げるのは、目的と行動目標への落とし込み

では、そうやって立てた目標をどうしたら達成できるのでしょう。

目的意識を明確にする

大事なことの一つは、自分が立てた目標を達成すると、どんないいことがあるのか、何のためにこの目標を達成したいのか、という目的意識が明確であることです。

例えば、自分がマニュアルを作ることで、来期の新入社員が早く業務に慣れるという目的がしっかりしていると、行動を起こす原動力になります。目標を立てたら、それはどんな目的があってやることなのかを自分自身でチェックしておきましょう。

行動目標に落とし込む

例えば、見積り依頼のマニュアル作りでも、「全社に共通のフォーマットを作る」を目標にするとハードルは一気に上がってしまいます。あるいは、マニュアルを作るという漠然とした目標だけでは、なかなか手をつけにくいこともあるでしょう。

例えば、過去3年の依頼書をチェックする、必要な要素を洗い出す、何ページまで作るなどの行動目標があれば動きやすく、自分の工夫で時間もやり方もやりくりができます。1年以内に何を達成するかという結果目標に対して、具体的な行動目標にかみくだくことで、今日1日の中でできることは何かを発想しやすくなります。

キャリアに対する目標も同様です。目的を明確にし、具体的な行動目標に落とし込む。例えば、将来は「社長になって、世界の食流通を変える」という理想がある場合も、1年後にはどうしたいのかと考え、行動目標に落とし込むことで、より具体的なイメージが作れるはずです。

ノートに書く

目標は紙やノートに書くことがおすすめです。キャリアプランなどの目標を実現している方たちに共通するのが、書いた目標を持ち歩いて見返していることです。頻繁に見返すことでイメージしたり、より魅力的な目標に書き換えたり、目標の実現に向けて今日何ができるかと考えたりしています。

「本当はどうしたい?」と自分に聞いてみよう

目標がなく気力がわかない状態の辛さは、私自身経験しているのでよくわかります。そうした状況のときは、目線は下がって、視野も狭くなり、どんどん行き詰ってしまう。私の場合は実際に職を転々としました。そんなときに、私がおすすめしたいのは、「本当はどうしたい?」と自分に問うてみることです。

これまでご紹介したような目標の立て方と向き合い方を繰り返しながら、キャリア全体をどうしたいのかという問いをいつも頭の片隅に置いて、1年、3年、5年、10年先、自分はどういう人生を進んでいきたいのか、理想のキャリアプランをノートに書いてみましょう

キャリアプランの目標は仮決めでいいのです。いくら変更しても構いません。いつかしっかり立てようと思って先延ばししていると、いつまでも決まりません。仮決めでいいと思うことでフットワークを軽くし、小さく仮で動いてみる。

自分で決めて主体的に行動するサイクルを回すことで、自信が生まれます。サイクルを少しずつ拡大していくことで、いつの間にか目標もない、気力もない、自信もない状態から抜け出している。誠実に前向きに仕事をするなかで、自分が行きたい未来が見えてくるはずです。

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大平信孝(おおひら・のぶたか)氏

大平信孝氏株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役。脳科学とアドラー心理学を組み合わせた独自の目標実現法を開発。経営者をはじめオリンピック選手やトップモデル、ベストセラー作家など各界で活躍する人の目標実現や行動改革をサポート。研修や講演などサポートしてきた企業は、40業種以上になる。著書に『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ』(かんき出版)、『先延ばしは1冊のノートでなくなる』(大和書房)他多数。

取材・文:中城邦子 編集:馬場美由紀
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