仕事の目標設定はどうしたらいい?ゴールを目的と目標で捉え、3年タームで考えよう

予測が難しく変化が著しいVUCAの時代。過去のやり方が通用しなくなり、従来の目標設定では評価はされなくなってきました。コロナ禍で上司や先輩・同僚とのリアルなコミュニケーションが減る一方で、自分の裁量に任されることも多くなり、仕事の目標をどう設定したらいいのか戸惑っている人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、多くの企業でビジネススキル研修を行っている株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズの高田貴久氏に、自分に合った「仕事の目標」の立て方について聞きました。

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その目標、本当に必要ですか?

仕事で成果を出すためには、しっかり目標設定をしなければいけないと思っている方が多いのですが、その目標は本当に必要でしょうか。

私たちの会社は「予測」はしますが「目標」は立てません。なぜなら、変化が著しく、何がどう変わっていくか分からない中で、5年後に売り上げをいくらにするというような不確実な数値目標には、あまり意味がないと思っているからです。

ただし方向も定めないまま、やみくもに動いていたら遭難してしまいます。そこで、目先の数値目標よりも、自分はどうなりたいのか、今後どんな生き方をしたいのか。最終的なゴールについて、一度落ち着いて考えてみませんか。ゴールさえきちんと見据えていれば、そこに到達するための目標は、臨機応変に時代や環境に合わせていけばいいのです。

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「目的」と「目標」の違い

理想のゴールを設定するには、「目的」と「目標」の2つが必要となります。

「目的」とは、最終的に成し遂げたいゴール、目指して向かっている方向(ベクトル)を指します。つまり、何を成し遂げたいかです。

「目標」は、目的を達成するために「何を」「いつまでに」「どうするか」という具体的な手段になります。

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目標設定に使える「SMARTの法則」

具体的なゴールをイメージできたら、そこに向けて目標を設定してみましょう。
目標を立てるときによく使われるのが、「SMARTの法則」です。

<SMARTの法則>

Specific:具体的に分かりやすく
Measurable:測定可能な数値化して
Achievable:達成可能な
Relevant:経営目標などに関連性のあることを
Time-bound:期限を明確にしてやる

とはいえ、現実にはスマートの法則通りに落とし込めないことも多々あります。自分が何をやりたいのか分からなくなったり、ゴールが見えなくなったりすることもあると思います。

そこで、まずは3年ぐらいをタームに考えてみましょう。変化の著しい現代においては、3年前に今の状況が想像ついたかというと、全く想像がつかなかったことが多いのです。

去年の段階で今の状況は大体想像できた。一昨年も今の状況は何となく分かる。しかし3年前には想像できなかった。とすると、真っ当な予測がつくのは自分の場合はせいぜい3年であるという考え方です。

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目標設定のポイントは「柔軟性を持つこと」

目標とともに意識してほしいのは、時代の流れや世の中の動きにもアンテナを張っておくことです。自分にとっての目標をつかみ、また時代の流れを読むためのアンテナを張っておくためにも、価値観が違う世代の人と知り合って話すことが大切だと思っています。

仕事の場面では、どうしても同じ業務に携わる人との固定された人間関係になりがちです。同じ企業文化の中で、生活レベルも暮らす地域も似た環境では、どうしても世の中が狭くなってしまいます。社会の流れからずれていたり、偏っていたりしても気づきにくいこともあるでしょう。

だからこそ、自分とは違う職種の人と交流してみる、町内会の年配者と話してみるなど、普段話さない人と話す、普段行かない場所に行くことを意識してやってみてください。

「音楽は全く興味がなかったけれど、クラシックのコンサートに行ってみる」でもいいし、「釣りをしたことはないけれど、釣り具屋へ行ってみる」でも、なんでもいいのです。普段やらないことを意図的にやることで、世界は広がっていくと思います。

これからの時代がどちらに流れるのかと予測しながら、その中で自分がやりたいことや自分に向いていることを見つけていくことが、キャリアアップにつながります。逆に言うと、変化に目を向けず、目標を決めつけてしまうと、変化が速いだけにどんどん世の中からずれていってしまいかねないのです。

キャリアアップを目標にする場合は他者目線を意識する

社会人が目標を設定する場合、単に「仕事の目標」だけではなく、「キャリアの目標」や「人生の目標」などと合わせて考える場合もあると思います。

キャリアアップを目指す前提で目標設定を考える場合は、ちょっと視点を変えてみてもいいかもしれません。「自分の履歴書を他者が見たときに、どう評価するか」という視点です。

私が20代、30代のときに意識したのは2つ。1つは、「キャリアにストーリーがある履歴書を作ること」です。履歴書は、自分が歩いてきた道が書かれているわけですから、そこに一貫性のあるストーリーがあれば、自分のキャリアや強みが伝えやすい。経験や仕事を一貫したストーリーとして構成し、自分のゴールとするキャリアに向かって成長していくことを目標にしようと考えたのです。

もう1つは「ユニークポジションを取ること」。コンサルティングファームで採用担当をしていた時に数多くの履歴書を目にしましたが、驚くほど同じようなキャリアの履歴書ばかりだったんですね。そこで実感したことは、ユニークポジションは強みになる。他者とは違うスキルや経験を積むことを目標に置くようになりました。

その2つを意識して、どのようなゴールを考えて、どのようにキャリアを築いてきたか。例えば、コンサルタントのキャリアアップといえば、同業のコンサルティング会社へ移る人、クライアント先の大手企業などに転職する人、もしくはMBA取得を目指す人がほとんどです。

そこで私は、あえてマブチモーターという小型モーターに特化した会社を転職先に選びました。外資系コンサルから、日本メーカーで経営企画という経歴は少ないだろうと思ったからです。

実際、他に同じような経歴の人材は希少だったため、転職先ではハイポジションで経営企画など、様々な仕事を任せてもらえるようになりました。

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目標が思いつかない場合は?

自身の人生とセットで目標を設定する場合、具体的なゴールをすぐにイメージできなくても構いません。例えば、今20代だとしたら、「カッコいい30代」とはどんな人かを考えてみてください。私は20代の頃はとにかく「仕事を任されるようになりたい」と考えていました。

でも、30代が近づいてくるにつれ、20代のようながむしゃらな働き方をしていたらしんどいとわかってきたんですね。そのときに30代は、仕事をしっかりやりながら、「プライベートも充実している」を目標にしました。

40代が近づいてきたときに目標にした「カッコいい40代」は「疲れていない40代」です。40代は仕事のプレッシャーも多くなり、気を抜くと疲れ果ててしまう。そうなってはいけないと思ったのです。

40代後半となった今の目標は、「諦めていない50代」です。50代になると、ある程度先も見えてきて、諦めが入ってくる。「もう、これでいいんじゃない」が口癖の50代にはなりたくないと思っています。

すでに目標とする70代、80代のイメージはできています。私は釣りが好きで、よく通っていた釣具屋の主人の働き方に憧れていました。この道60年以上というおじいさんで、どの時間帯に何の魚がどの餌で釣れるのか、全て頭に入っている。だから、釣り人はおじいさんの話が聞きたくて、店にやってきます。

その人を見たときに、自分にとって「80歳のロールモデルはこの人だ」と思ったのです。自分の知識や意見を求めて「いつも周りに人がいる」。ある意味、それが私にとって目指すゴールかもしれません。

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最後までわからないから、アンテナを立てて目標を作る

仕事やキャリアは「異なる分野の掛け算で広がる」とよく言いますが、実際に同じようなことをやっていると一方にしか広がらないことが、違う経験をすることが面で広がっていき、さらに違う経験をすると立体で広がっていきます。

掛け算的な広がりを意識してキャリアを作る。同業の中で転々とキャリアアップを重ねていく方法もありますが、様々なキャリアを積んでストーリー性を持って履歴書を作ってきた人には、他の人には変えがたい希少性が作れるのだと思います。

自分がやりたいことや好きなことの中でこれからの世の中の流れや社会の求めるものと、合致する方向がどこにあるのかを見ながら、アンテナを立てて目標を作ること、キャリアアップを実現してほしいと思います。

そして、ぜひ心にとめておいてほしいのは「最後までわからない」ということ。今は同僚に遅れを取っていると感じている人も、社会に出て10年を無駄に過ごしてしまったと思っている人も、これまでの自分の履歴書はぐちゃぐちゃだなと思っている人も、全く問題ありません。

実際、新卒のときは周りにサポートしてもらいながら仕事をこなしていた人が、海外大手企業の役員になっているなど、社会に出て20年後に全く違う立場になっている人も少なくありません。まさに「最後までわからない」なのです。今からの一歩一歩を、考えて踏み出していかれることを応援しています。

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プロフィール

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ
グローバルCEO・代表取締役社長 高田 貴久(たかだ・たかひさ)氏

高田貴久氏画像東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部卒業、シンガポール国立大学Executive MBA修了。戦略コンサルティングファーム、アーサー・D・リトルでプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当に携わる。マブチモーターで社長付・事業基盤改革推進本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。トヨタ自動車、イオン、パナソニックなど多くのリーディングカンパニーでの人材育成を手掛けている。著書に『ロジカル・プレゼンテーション』『問題解決―あらゆる課題を突破するビジネスパーソン必須の仕事術』がある。
▶プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 公式サイト

▶あなたの知らない自分を発見できる。無料自己分析ツール「グッドポイント診断」

取材・文:中城邦子 編集:馬場美由紀
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