仕事のミスで落ち込む…失敗からメンタルを回復させる方法とは?

新卒で入社したばかりのころは仕事に慣れておらず、どうしてもミスを起こしがちです。これらの失敗を振り返って反省し、それを糧にすることでビジネスパーソンとして成長していくものなのですが、中にはミスを引きずり落ち込んでしまう人もいるようです。
ミスを引っ張ってしまい、気持ちがなかなか上向かない場合、どのように自身に向き合い、対処すればいいのでしょう?人事・採用コンサルタントで心理学にも明るい曽和利光さんに詳しく伺いました。

ミスで落ち込むビジネスパーソン
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新人~若手時代は、過度に責任を感じる必要はない

まずは大前提として、「ミスを反省することは大事だが、必要以上に気にしすぎない」ことが重要です。

仕事の現場において、一定のヒューマンエラーが起こるのは当たり前のことです。そして上司は、メンバーがミスを起こすことはある程度想定しながら、プロジェクトマネジメントを行っています。したがって若手時代は特に、努力を怠ったり、さぼったりした結果のミスでなければ、過ぎたことを必要以上に気にする必要はありません。ミスを振り返り反省したうえで、きっぱり前を向きましょう。

そもそも、努力した結果のミスであれば、責任の一端はタスクを振った上司にもあります。メンタル的に落ち込みやすいタイプの人は「今回のミスは、半分は上司のせいでもある」と自分に言い聞かせるのも一つの手です。

若くて社歴が浅い人であればあるほど、努力だけではどうしようもない「能力の壁」があります。もしかしたら上司に、自身の能力を上回るタスクを課されてしまった可能性もあります。「自分は精一杯頑張ったんだから、あとはタスクを振った上司の責任だ」と捉えれば、少し心が軽くなり、気持ちを切り替えられるのではないでしょうか。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

つらい気持ちは一人で抱え込まず、上司に相談する

上司に相談するビジネスパーソン
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部下のメンタル面のサポートを行うのも、上司の重要な仕事。ミスを起こした後につらくて苦しい気持ちが続いているならば、一人で抱え込まずすぐに上司に相談すべきです。今回のミスはどうすれば防げたのか、そして落ち込んだ気持ちをどう建て直せばいいのか、アドバイスをもらいましょう。

「いちいち上司に相談するなんて」とためらったり、「もっと自分で考え行動できるようにならなければ」などと考えたりする人も多いと思いますが、上司の立場で言葉を選ばずに言えば、一人で悩みを抱え込まれたほうが何倍もやっかいです。

特に新人~若手時代は、自己流のやりかたで動かれたところで何の解決にもならないし、逆に傷を広げることにもなりかねません。どうすれば現状を変えられるのか聞いてもらったほうが断然ありがたいし、アドバイス通りに動いてもらえればメンバーの成長にもつながるので、一刻も早く相談してほしいですね。

「問題解決もメンタル回復も自己責任で」なんて、誰一人として思っていません。メンタルのダメージを最小限に抑えるためにも、早い段階で上司を頼ることをお勧めします。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

それでもミスを繰り返し、メンタルを立て直せない場合はどうすればいい?

上司に相談してアドバイスをもらい、気持ちを立て直したつもりでも、またミスを繰り返してしまい余計に落ち込んでしまった…というケースも耳にします。
そんなときは、次のような方法を取ってみることをお勧めします。

【ミスを繰り返してしまう場合】上司を「見て盗む」か、別のデキる人に教えを乞う

上司に同行するビジネスパーソン
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上司からアドバイスを得たにもかかわらず、失敗を繰り返してしまうということは、上司の教えが自分に合っていない可能性があります。

ベテランの上司であれば通常、これまでにいろいろな部下を育成し、いろいろな質問を受け続けているので、一人ひとりの状況に合った適切なアドバイスができるはずですが、中にはそれができない人もいます。
上司の能力に問題があるわけではありません。逆に、メンバー時代にスーパープレイヤーだった人ほど、「自分がなぜスーパープレイヤーなのか」を言語化する能力が低いと言われています。

デキる人は、何をすれば成果が出るのかなんていちいち考えることはなく、頭の中で最良の方法を自動処理して動いているので、それを言語化してわかりやすく部下に説明することができない傾向にあります。プロ野球界のレジェンド・長嶋茂雄さんが、打ち方を指導するときに「球がキューっと来たら、バーンと打つ」と伝え、フィギュアスケートの浅田真央さんがジャンプの飛び方を聞かれて「よいしょって飛びます」と答えたのがその代表例です。つまり、上司が「これが最善」と思ったアドバイスが、実は的を射ていなかったがために、失敗を繰り返してしまった…という可能性は考えられます。

手っ取り早くかつ有効な方法は、上司にアドバイスをもらうのではなく、「実際の働きぶりを見て盗む」こと。例えば営業であれば、上司に同行させてもらい、自身がミスをした工程を中心に横で見て学ぶといいでしょう。

もしくは、別の「デキる先輩」に教えを乞うのも有効。もしも顧客企業とのコミュニケーションがうまくいかず失敗してしまったのであれば、顧客の懐に入り込むのがうまい先輩に具体的なアドバイスをもらったり、営業同行させてもらったりすれば、ミスの軽減につながるでしょう。

【メンタルを立て直せない場合】適切にギブアップしてタスク変更を願い出る

頑張っているのにミスを繰り返してしまい、精神的に疲弊し立ち直れない…という場合、与えられた仕事と自分の能力レベルが合っていない可能性が考えられます。能力に見合わない仕事をいくら頑張って取り組んだところで、当然ながらミスは減らず、メンタルの落ち込みをさらに悪化させてしまうことになります。

本来は上司が、メンバー一人ひとりのスキルレベルや志向に合ったタスクを考えて割り振るべきですし、もし合っていなければいち早く気づいてタスクを変えるべきですが、気づいてもらえない場合は自分から上司に相談し、ギブアップを申し出ましょう。
ネガティブな行動に思えるかもしれませんが、レベルの高いタスクに全力で臨んだ結果、失敗し思い悩んだ結果のギブアップであれば、それは「適切なギブアップ」です。現状について説明したうえで、タスクのレベルを少し落としてもらうか、別のタスクに変えてもらいましょう。

もし今のタスクに苦手意識を持っているならば、なおさらすぐに行動したほうがいいと思います。苦手かつ能力が足りない分野を克服しようと無理して頑張るよりも、得意分野を伸ばすことにリソースを集中させるほうが、今の時代に合っています。中途半端なスキルレベルでは、将来的にAIに取って代わられる可能性があるからです。

気持ちが建て直せず、なかなか復活できないという状態はかなり深刻です。メンタル面はもちろん能力開発の観点からも、勇気を持って「適切なギブアップ」に踏み切ってください。

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曽和利光さん曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラル上司等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)など著書多数。最新刊『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)も話題に。

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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