ウェルビーイングとは?企業が今注目する理由とビジネスパーソンへのメリット

「ウェルビーイング」という言葉をご存じでしょうか?身体的・精神的・社会的にも良好な状態を指すものであり、従業員のエンゲージメント向上や業績向上などにつながると、多くの企業が注目しています。人事・採用コンサルタントの曽和利光さんに、改めてウェルビーイングについて解説いただくとともに、働く個人のメリットやウェルビーイング実施企業の見極め方などについて伺いました。

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ウェルビーイングとは何を指す?企業が取り組んでいる理由

ウェルビーイング(Well-being)とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念のことです。
ウェルビーイングのポイントは、「持続的に」良好な状態が維持されるという点。一時的な幸せ(Happiness)ではなく、恒常的に幸せを感じられる状態のことを指しています。

ウェルビーイングという言葉自体は古くから存在しており、1948年にはWHO(世界保健機構)による健康の定義=「健康とは肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべて満たされた状態」の中で、Well-beingという言葉が使われています。

そんな中、日本企業において近年、ウェルビーイングが注目されています。従業員が身体的、精神的、社会的に満たされ、幸福を感じられるよう社内の環境を整える「ウェルビーイング経営」を実践する企業も増えています。

ウェルビーイングは従業員のパフォーマンス向上につながる

なぜ最近になって注目され、実践する企業が増えているのか。大きな理由は、ウェルビーイングが従業員のパフォーマンスに好影響を与えるということがわかってきたためです。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授が紹介している「ハーバードビジネスレビュー」の研究データを見ると、幸福感と仕事のパフォーマンスは密接に関係していて、幸福度の高い社員の創造性は、そうではない社員の3倍高く、生産性は31%、売り上げは37%高いとされています。一方で、離職率は59%低いという結果になっています。

また、HR総研が2022年にウェルビーイング推進企業の人事責任者・担当者に行った調査によると、社員のエンゲージメントの向上や社員のモチベーション向上、社内コミュニケーションの活性化などといった効果を感じられているようです。

ウェルビーイング=「幸福」とは個人の究極の目標。幸福とはそもそも可視化しにくいものですが、それに企業が関心を持つという姿勢が、プラスの効果を生み出しているのだと思われます。

「ウェルビーイング推進で得られている効果」アンケートグラフ

※出典:【ProFuture株式会社/HR総研】「ウェルビーイングと健康経営」に関するアンケート

人手不足や業務効率化は、多くの企業が抱える深刻な経営課題です。ウェルビーイングにより得られる効果は、企業にとっても従業員にとってもメリットが大きいと捉えた企業が、従業員のヘルスケアのサポートや、労働環境の整備・向上、社内コミュニケーションの活性化、人事制度や福利厚生の充実、キャリア自立の支援などに取り組んでいます。

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ウェルビーイングを推進する会社で働くメリットとは?

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ウェルビーイングは、「従業員が身体的、精神的、社会的に満たされた状態にあることを目指す取り組み」なので、基本的にはビジネスパーソンにとってはネガティブな要素はありません。具体的には、以下のようなメリットが挙げられるでしょう。

働きやすい環境下でモチベーション高く働ける

企業がウェルビーイングを推進するということは、従業員の経験やスキル、キャリアだけでなく「幸福感」まで気にかけ、サポートしようとしているということ。幸せの基準が人によって異なる中で、一人ひとりの幸せに寄り添おうとする企業で働くことは、非常に安心感があるはず。余計なストレスを抱えることなく、誰もが腰を据えてじっくり働けるでしょう。

よく「幸せは伝搬する」と言いますが、日々幸せを感じてイキイキ働いている人たちに囲まれることで、自身も幸せを感じ、仕事へのモチベーションも上がるでしょう。

勤務先の業績安定、成長が期待できる

前述のようにウェルビーイングは、創造性や生産性の向上につながるというデータがありますが、従業員一人ひとりの創造性や生産性が高まれば、必然的に企業業績も向上すると期待されます。

業績好調の企業で働くのは、働く個人にとって大きなメリット。より大きな仕事、チャレンジングな仕事に関われるチャンスが増えますし、オフィス環境の整備や教育研修などへの投資にも積極的。ボーナスへの反映など収入アップも期待できるでしょう。

そもそも、ウェルビーイングは、企業に余裕がないとできない取り組みです。業績不振で社内がガタガタの企業は、ウェルビーイングなんて悠長なことは言っていられないはず。ウェルビーイングに取り組めるのは、業績好調で企業体力がある企業の証とも言えます。

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ウェルビーイングに注力している企業を見極める方法

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前述のように、ウェルビーイングに真剣に取り組んでいる企業で働くのは、ビジネスパーソンにとってさまざまなメリットがあります。「転職する際には、ウェルビーイングに注力している企業を選びたい」と考えるビジネスパーソンも多いことでしょう。

しかし、自社ホームページなどでウェルビーイングに注力しているとアピールする企業は多いですが、実態が伴っていないケースも少なからずあります。今流行りつつあるキーワードだけに、「ウチは取り組んでいないけれどとりあえず載せておけ」という企業も残念ながら存在します。そんな企業を外部の人が見極め、判断するのは難しいものです。

その中、唯一ともいえる有効な指標が「離職率」。ウェルビーイングの効果の一つは、離職率の低下です。辞めている人が多いということは、この会社で幸福を得られなかった人が多い、と判断できるでしょう。
今は、ホームページや求人票などで離職率を公表している企業が多いので、是非チェックしてみましょう。同業界の企業に比べて離職率が高いならば、要注意と言えそうです。

また、「業績」も判断材料になり得ます。ウェルビーイングに本格的に注力していれば、社員のモチベーションが上がり、その効果が売り上げ・利益にも反映されているはずだからです。業績好調が続いている、もしくはウェルビーイングの姿勢を打ち出してから業績が伸びているのであれば、実態が伴っている可能性が高いでしょう。

あとは、Great Place To Workなどによる「働きがいのある会社ランキング」に選出されている企業を選ぶのは一つの方法。働きがいを感じている=幸せを感じているということであり、ウェルビーイングが功を奏していると判断できます。
くるみん認定やえるぼし認定など、女性活躍を推進している企業の認定を得ている企業をチェックするのも有効。これらは企業側が認定申請を行う必要がありますが、内部体制が整っていないと、「自ら身をさらして社内をチェックしてもらおう」とは思えないはず。ウェルビーイング実現にも努力している可能性が高いでしょう。

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曽和利光さん_プロフィールカット曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。最新刊『定着と離職のマネジメント』(ソシム)も話題に。

EDIT&WRITING:伊藤理子
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