仕事の目標の立て方を5ステップで解説し、個人目標の具体的な例文、目標設定フレームワークSMARTの法則の活用法、目標を思いつかない原因と解決法を組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目標達成のために押さえるポイント・注意点なども紹介するので、「仕事の目標が思いつかない」「上司に目標設定を迫られているけど、やり方がわからない」と悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。

目次
目標設定とは
目標設定とは「目的」を達成するために、「何を」「いつまでに」「どうするか」という具体的な手段である「目標」を決めることです。
仕事で目標設定をするメリット
目標を定めて仕事をすることで、やるべきことが明確になり、以下のようなメリットを得ることができるでしょう。
- 仕事を効率的かつスピーディに進められる
- 仕事に対するモチベーションを高められる
- 目標を上司と共有することで、成長をアピールしやすくなる
- 目標達成できたときに自信や達成感、自己肯定感を得やすくなる
- スキルアップなどにつながり、市場価値があがりやすくなる
仕事の目標の立て方
仕事の目標はどう考えればよいのでしょうか。
「仕事で何を目指したらいいのかわからない」「目標が思いつかない…」という場合、具体的にどのようなアクションをとればいいのか5ステップで解説します。
● 仕事の目標の立て方5ステップ
- これまでの経験を棚卸して「現状」を把握する
- 将来の「理想」像を描く
- 現状と理想を基に、今の自分に足りない経験やスキルを分析する
- 短期間で達成できそうなことを選ぶ
- 目標設定フレームワーク(SMARTの法則)に沿って整理する
ステップ1.これまでの経験を棚卸して「現状」を把握する
これまでの社会人経験を振り返り、取り組んだ業務や成果、身につけた知識やスキルなどを洗い出して整理する「キャリアの棚卸し(たなおろし)」をしてみましょう。今の自分の強みや持ち味、得意分野や志向性、モチベーションの源泉などを明らかにすることができます。
ステップ2.将来の「理想」像を描く
将来の理想像をイメージしてみましょう。例えば10年後、「誰のために、何をしていたいか」「どんな状態になっていたいか」を考えてみましょう。職種や仕事内容で考えるのではなく、「社会の中での役割」を考えてみるのも一つの方法です。
ステップ3.現状と理想を基に、今の自分に足りない経験やスキルを分析する
現状の自分の強みや経験と、理想像との間にあるギャップを分析しましょう。理想を実現する上で足りない経験やスキルをリストアップしたり、役立ちそうな強みの中でさらに伸ばしたいことを洗い出したりするのが有効です。
ステップ4.短期間で達成できそうなことを選ぶ
洗い出した課題や、伸ばしたい強みに対して、なるべく短期間で実現できそうなこと、優先度が高いと思うものを目標にしてみましょう。期間が短ければ、モチベーションが下がらないように工夫がしやすく、達成感も感じやすくなるでしょう。
ステップ5.目標設定フレームワーク(SMARTの法則)に沿って整理する
仕事の目標を立てるときによく使われるフレームワークが、「SMARTの法則」です。具体的な目標が思いつかない場合は、この指標を用いながら設定してみましょう。
● SMARTの法則
Measurable:測定可能な数値化して
Achievable:達成可能な
Relevant:経営目標などに関連性のあることを
Time-bound:期限を明確に設ける
なお、SMARTの法則を使って、職種別に「仕事の目標例」の具体例を紹介した記事もあります。ぜひ参考にしてみてください。
▼【職種別】SMARTの法則:営業職(個人営業)の目標例
仕事の目標設定に役立つフレームワーク「SMARTの法則」の使い方ポイント
「SMARTの法則」ついて、それぞれの指標別にどのように考えて仕事の目標設定をしていくのか、もう少し詳しく使い方のイメージとポイントを解説していきます。
Specific:目標を具体的にわかりやすくする
目標を達成するためには、わかりやすいことが重要です。具体的な目標を立てるためには、What(何を)、When(いつまでに)、Where(どこで)、Why(なぜ)を意識しながら考えることがポイントでしょう。
例えば、「営業成績を上げる」だけでは漠然としており、どうなったら達成したのかイメージがつきにくいと思います。「営業成績を上げるために、毎月3件の新規顧客を獲得する」など具体的にしましょう。
Measurable:測定可能な数値化して目標にする
目標を数値化することで、数字で目標が達成したことを測定することができます。
また、誰もがわかる数値目標を設定することで、上司の評価やチーム内への共有がやりやすくなり、アドバイスやサポートなども受けやすくなるでしょう。
例えば「営業成績を上げる」目標のゴールは何なのか、「売上金額が●●万円」「顧客満足度を▲▲%から〇〇%に向上させる」など、具体的な数字に基づく目標を設定しましょう。
Achievable:達成可能なことに絞る
目標設定は達成可能な数値やアクションであることも重要です。高い目標を目指すことも大切ですが、実現不可能な目標や継続的に行うことが難しい目標を掲げてしまうと、途中で挫折してしまう可能性があります。達成できなかったときには、モチベーションも下がってしまうでしょう。
とはいえ、低すぎる目標を設定してしまってもモチベーションが上がらず、自身の成長にも繋がりません。これまで達成してきた目標レベルの少し高いストレッチ目標を置くことがポイントとなります。
Relevant:経営目標などに関連性のあることを入れる
自身の目標と会社の経営目標や組織部署の目標にどう貢献するのかを考えて目標設定することも重要なポイントです。目標を達成することで、どのような成果やメリットを生み出せるのかなどを考慮しましょう。
例えば、目標を達成することで表彰される、褒賞金がもらえるなどのメリットがあるのなら、それらとの関連性も意識するようにしましょう。
Time-bound:目標達成の期限を明確に設ける
最後のポイントは、目標に期限を明確に設けることです。たとえ目標を設定したとしても、いつまでに達成するのか期限を設けていなければ、達成感を感じることが難しくなります。
何より期限がないことで、スケジュールが立てにくく、スピーディに行動に移すこともできず、モチベーションも上がりません。期限をしっかり決めて、いつまでに何をするかを明確にして、行動に移せるようにすることが大事です。
定性目標と定量目標を組み合わせ、目標を立てることが大切
目指すべき行動や考え方など、結果を数値で測ることができない目標は「定性目標」と呼ばれます。一方で、目指すゴールを具体的な数値で示した目標が「定量目標」です。
目標を設定するときは、定性目標と定量目標をうまく組み合わせて、具体的な目標設定を考えましょう。定性目標を設定することで方向性や行動が明確になり、定量目標があることでゴールが明確になります。
● 定性目標と定量目標の組み合わせ例
今期の売上を前年比20%増加するために、顧客満足度を高めてリピート受注を増やす
● 定量目標の設定例
- 今期の売上を前年比20%増加する
- 消耗品のコストを20%削減する
- 新規顧客を毎月3件獲得する
- 残業時間を月10時間以内に抑える
● 定性目標の設定例
- 顧客満足を高め、顧客とパートナー関係を構築する
- 「業務改善」が当たり前となる職場風土を創り出す
- ミスのない丁寧な仕事を心がけ、社内外から信頼される
どんな職種にも応用しやすい「個人目標」の具体例(13選)
目標設定フレームワーク「SMARTの法則」に沿って立てた個人目標の具体例13個を紹介します。どんな職種にも共通しそうな基本的な目標をベースに、営業職を想定して具体化しているので、ぜひ参考にしてみてください。
● 個人目標の具体例
1. 売上アップ
Measurable:既存顧客の契約更新率を75%から85%に向上させ、更新契約の月間売上を現在の月間1,200万円から1,500万円に向上させる
Achievable:契約更新終了前に、今月の振り返り・改善策・継続後の効果予測を提示する
Relevant:安定収益を確保したいという会社目標に直結
Time-bound:来期末までに達成
2. 利益率アップ
Measurable:更新契約時の利益率を25%から32%に向上
Achievable:上位顧客の平均利益率が35%なので、事例と一緒に契約更新時にオプション提案をする
Relevant:全社の収益性向上方針に合致
Time-bound:今期中までに達成
3. リピート率アップ
Measurable:年関契約の継続率を75%から90%に向上
Achievable:契約更新提案時に、更新率95%を維持している上位顧客の事例を展開する
Relevant:顧客生涯価値の向上という経営方針に合致
Time-bound:3月末までに達成
4. 契約数アップ
Measurable:前月の平均契約数の100社から130社に増加(新規30社の純増)
Achievable:見込み顧客150社からの獲得し、既存顧客の解約率5%以内で維持する
Relevant:顧客基盤拡大という事業戦略に合致
Time-bound:今期中までに達成
5. 行動量アップ
Measurable:月間の顧客商談数を40件から60件に増加(1日あたり3件)
Achievable:過去に取引があった顧客に対してWeb商談を提案する
Relevant:営業活動の生産性向上という部門方針に合致
Time-bound:来月末までに達成
6. 単価アップ
Measurable:アップセル・クロスセルの実施によって20万円から28万円に向上
Achievable:上位20%の顧客は既に30万円の単価を実現しているので、中規模顧客への機能追加を提案する
Relevant:顧客あたりの収益性向上という経営方針に合致
Time-bound:来期末までに達成
7. 契約率アップ
Measurable:契約成約率を現在の20%から35%に向上(月間商談60件中21件の成約)
Achievable:トップ営業担当者の成約率が32%なので商談プロセスを標準化する
Relevant:営業活動の効率化という部門方針に合致
Time-bound:今年度第3四半期末までに達成
8. 業務効率アップ
Measurable:1件の商談完了までの所要時間を平均4時間から2.5時間に短縮
Achievable:提案資料の標準化とWeb商談を活用する
Relevant:営業活動の生産性向上という部門方針に合致
Time-bound:今年度第3四半期末までに達成
9. 満足度アップ
Measurable:社内の顧客満足度調査のスコアを現在の平均7.5点から8.5点に向上
Achievable:評価指標に直結するカスタマーサポートを強化、製品トレーニングを充実させ、迅速な問題解決プロセスを導入する
Relevant:顧客維持率が改善し新規顧客の獲得につながるので成長戦略に貢献
Time-bound:今年度第3四半期末までに達成
10. ミス削減
Measurable:価格の誤記、納期の誤案内、仕様の誤説明などの発生率を現在の月平均5件から1件以下に削減
Achievable:チェック項目を作成しダブルチェック体制を強化して定期的に社内研修する
Relevant:顧客満足度の向上と業務効率の改善につながり、部門の品質向上に貢献
Time-bound:今年度第3四半期末までに達成
11. 工数削減
Measurable:1件の商談完了までの平均工数を現在の40時間から30時間に削減する
Achievable:提案書テンプレートを最適化し、オンライン商談ツールを活用、契約プロセスを電子化する
Relevant:工数削減が営業活動の生産性向上につながり、部門の効率化方針に直接寄与
Time-bound:今年度第3四半期末までに達成する
12. 経費削減
Measurable:交通費、接待費、通信費などを現在の平均300,000円から225,000円に25%削減
Achievable:商談は基本的にオンラインで行いデジタル資料を使用する
Relevant:部門全体のコスト効率化と会社の収益性向上方針に貢献
Time-bound:今年度第3四半期末までに達成する
13. 労働時間削減
Measurable:残業時間を含む月間平均労働時間を現在の185時間から165時間に削減
Achievable:定型業務のテンプレート化を進める
Relevant:部門の残業時間削減と業務効率化の方針に合致
Time-bound:3ヶ月後の月末までに達成する
仕事の目標が思いつかない5つの原因と対処法
目標設定のやり方を知っていても、具体的な仕事の目標が思いつかないという人は少なくありません。新入社員や転職をしたばかりの人にはよくある悩みでもあります。
なぜ仕事の目標が思いつかないのか、以下に挙げた5つの原因のうち思い当たるものがある場合は、対処法を実践してみましょう。
- 会社のビジョンが理解できていない
- 自分の仕事の役割が認識できていない
- 将来のキャリアについてイメージできていない
- 過去に目標設定したがうまくいかなかった
- 上司に言われたことだけ仕事をしている
1.会社のビジョンが理解できていない
仕事の目標が思いつかない原因として多いのが、会社のビジョンが理解できていないことです。会社のビジョンや方向性が腹落ちできていないと、目的となるゴールがイメージできず、明確な目標を立てることができません。
<対処法>
自分の会社がどのようなビジョンを掲げているのか確認してみましょう。
2. 自分の仕事の役割が認識できていない
現在の担当業務において、自分がどういう役割を担っているのか、どんなことを期待されているのか、認識できていない人が意外と少なくありません。
<対処法>
上司やリーダーに相談をして、自分の役割、仕事での強みを明確にしましょう。仕事で目指すべきところが見えてくるようになります。
3.将来のキャリアについてイメージできていない
将来どのようなキャリアを築いていたいのか。自分のキャリアビジョンが描けていないと、目標を立てづらく、その場しのぎや思いつきで行動をしがちになります。
<対処法>
今の仕事を通じて、3年後にはどう成長したいのかなど、具体的な期間を設定して理想の自分をイメージしてみましょう。具体的な目標を見つけやすくなります。
4.過去に目標設定したがうまくいかなかった
目標設定に対して自信を無くしているケースもあるでしょう。過去に難易度の高い目標を掲げたものの、達成できずに上司にダメ出しされ、挫折してしまった人、目標設定に苦手意識を持ってしまった人は少なくありません。
<対処法>
目標は高い方がいいと思いがちですが、まずは簡単すぎるくらいの達成可能な目標を設定してみましょう。現実的な目標を達成し続けることで、いずれ高い目標もやり切ることができるようになっていきます。
5.上司に言われた仕事だけをしている
若手社会人や、仕事へのモチベーションが低い場合にありがちなのは、上司が言う通りに仕事をし続け、自分で何も考えずにいることで、目標の立て方がわからなくなっているケースです。
<対処法>
自分の頭で仕事の進め方や課題解決を考えるように、意識ししながら仕事に取り組むとよいでしょう。
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【シーン別】目標達成のために押さえるポイント・注意点
ここでは、目標設定が必要な4つのシーン別に、押さえるべきポイントを解説します。
- 上司や会社に求められたときの目標設定のコツ
- 年度やキャリアの区切りなどにする個人的な目標設定のコツ
- 目標がなく、仕事に身が入らない現状を変えたいときの目標設定のコツ
- 転職のため、市場価値を上げたいときの目標設定のコツ
1. 上司や会社に求められたときの目標設定のコツ
所属している組織やチームで目標がある場合は、リーダーにその目標を確認し、自分の目標設定につなぐことも大切です。その際、チームの方向性だけでなく、数値的な目標も確認しておきます。定期的なミーティングや1on1の場を設けてもらうことで、目標の設定がしやすくなり、お互いの認識ギャップを減らすこともできるでしょう。
● 上司やリーダーに確認すること
- 会社のビジョン、今後の方向性について
- 自分の役割とは何か、期待されていることを適切に把握する
- チームとして目指す数値目標について
- 目標に対する取り組みの成果、評価など
2. 年度やキャリアの区切りなどにする個人的な目標設定のコツ
年度のはじまりや、入社○年目など区切りのタイミングで個人的に目標設定をするときは、これまでの経験の棚卸しと自己分析をしっかり行い、現在地点を把握しましょう。
その上で、中長期のキャリアビジョンを構想するし、未来から逆算して具体的な目標やプランを立てることが大切です。
また、個人的な目標設定では、以下の点にも注意しましょう。
● 個人的な目標設定を成功させるポイント
- 目標の数を多くしすぎない
- 目標を高くしすぎない
- 他人と比べすぎない
- 目標までの道筋を細分化して具体的な行動アクションに落とす
3. 目標がなく、仕事に身が入らない現状を変えたいときの目標設定のコツ
仕事に身が入らないときは、いきなり高い目標を立てて完璧に達成しようと思わず、あえてハードルの低い小さな目標を設定するようにしましょう。
また、自己分析やキャリアの棚卸しによって「自分にとって大切な仕事の価値観」を整理して、それに沿った目標を立てると、モチベーションが湧きやすくなります。そのためにはリクナビNEXTが提供している「適職診断」のように、簡単に仕事選びの価値観と隠れた性格がわかる自己分析診断ツールを使うのもお勧めです。
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4. 転職のため、市場価値を上げたいときの目標設定のコツ
市場価値を上げたいときは、プロセスを意識して仕事に取り組めるような、今より少しだけ難しいレベルの目標にしましょう。成果を上げやすく、日々の仕事がスキルアップや専門性の向上に繋がり、自分の市場価値も高めることができるでしょう。
志望する企業や職種で求められるスキル習得や、一般的に評価されやすい資格(簿記やMBA、TOEICなど)の取得を目指すのも一つの方法です。
ほかにも、自分の強みを活かせる目標を設定して現職での実績を積み重ねるのも有効です。自己分析診断ツール「グッドポイント診断」などを使って、自分の隠れた強みや才能を把握して、目標設定に活かしてみるのもお勧めです。
● グッドポイント診断の特徴
- 診断結果は8568通り
- 志向を分析する質問を通じて、18種類の強みのうち5つを診断
- 診断された強みがどのような仕事の成果をもたらすかを解説
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PDCAを回して目標設定力を高めていこう
仕事における目標設定の方法について紹介してきましたが、実際は目標通りにいかず、途中でゴールが見えなくなってしまうことも少なくありません。
目標設定はPDCA(プラン、実行、評価、対策・改善)で言えば、P(プラン)の部分実際に実行して評価を行った上で、うまくいかなかった場合は、改善や対策を練り、目標をアップデートしていきましょう。
目標は一度決めたら、達成するまで変えてはいけないと思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。変化の激しい現代においては、むしろ環境変化に応じて柔軟に対応できることが大切です。達成可能なストレッチ目標を掲げて、PDCAを回すことで、目標設定力を高めていきましょう。
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代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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